呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

松江旅行1

 1月の9、10日で、出雲、松江、米子ブックオフ&開放倉庫巡りツアーに行ってまいりました。

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 相棒の漫画家、金平とともに、結果から言いますと不完全燃焼でしたが(笑)

 それもこれも、私の計画が杜撰であったからであります。猛省しております。我がケツにスパンキングです。

「週の真ん中に旅行を設定しときゃ、平日だし、全部開いてるだろう」

 というユルイ計画で臨んだのが裏目に出ました。裏目裏目 浦辺粂子です。

 姫路から山陽自動車道に乗り、一路西へ。途中から雲行きが怪しくなり、パーキングエリアでは雪!

 米子道を途中で降ろされ、ヨチヨチ運転で峠を越えました。

 嫁さんが前日に『こんなにあったかいんじゃ、タイヤ履き替えんでもエエやろ』と、タイヤ交換代をケチったのであります。信じられません。私の命より節約を取るのですから。

 金平も『マジか?!』と驚愕しておりましたよ。

 そしてようやく出雲にたどり着き、まずは腹ごしらえ。

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 出雲そばを食べました。「ンマーイ!」

 色々と細かい作法を知らないので、例えば蕎麦湯の正しい飲み方、とか。

 個室で他に客がいなかったので、蕎麦湯に残りのそばつゆをぶっ込んで、グビグビいきましたよ。

 で、この旅の目的である1件目の古本屋に行きます。商店街にあるのですが、ナビでは通り過ぎてしまい分かりません。路上に止めて電話しました。すると

「えーはい、そのう、申し訳ありません。今日と明日、お休みを頂いておりまして、はい」

 と、物凄く低姿勢な店主の電話応対。

『マジか?!』

 出鼻から暗雲立ち込めます。なんで週のど真ん中に連休するのだ。

 そう簡単には行けない距離だ。姫路から出雲である。旅行の半月前にでも、電話で確認しておけば良かった。

 二泊できれば良かったのだが、相棒の金平が締め切りで、一泊が限界なのであった。

 この落胆。これを読む方々は『出雲大社とかあるじゃん』と思われるかもしれませぬが、我々の旅はその土地の名所に行く旅ではないのです。その土地のブックオフと開放倉庫を漏れなく回る、という狂ったツアーなのであります。

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『男ふたり旅なら風俗とかそういうことでしょ?』

 みたいな声も上がるやもしれぬ。包み隠さず言いますと、そういう助平なオプションは全く組み込まれていないのです。ストイックな旅なのです。

 私は『あればストリップくらい行くべ?』と金平に言うのですが、金平は首を縦に振りません。

 ひたすらブックオフと開放倉庫を回っていくのです。

 ということで何回か続きます。今日はこの辺で。

橋本五郎「海龍館事件」を読む

一月九日に予定している相棒金平との山陰、松江城経由ブックオフ&開放倉庫巡りツアーの準備に余念がない。

ニコンのカメラ、オッケー。

 

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 メガネと時計もオッケー。

 

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 戦士の銃もオッケー。

 

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 で、問題なのは天気だ。9日から寒波到来(笑)楽しみにしまくっていた四国は松山城で、土砂降りに見舞われた、それでも一つの傘に寄り添って山城を登りきった雨男二人組である。

 スタッドレスタイヤに一応換装しておこう。

 行きたい店リスト。

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 以上18店舗(笑)なかなかの強行軍である。是非、全部回りたい。金平、御願い、二泊してその後徹夜して締め切り迎えて(笑)


 さて、今回は「海龍館事件」を読み終えた。

 うむ、いいね! 橋本五郎。まず堂々としたタイトルが良い。館ものを思わせる、いかにも探偵小説、なタイトル。松本泰の清風荘事件」の時のタイトルから受ける期待値を楽に超えて行きましたよ(笑)

 ものすごく寂れた街にある海に近い和洋折衷の旅館「海龍館」そこへ二人組の紳士が二組も、シーズンオフの旅館に駆け込んでくる。

「この旅館を売らぬか? 一万でどうだ」

 旅館の主人はどう贔屓目の見積もっても八千円が限度だと思っていた。それが思いもよらぬ高値。それを聞いたもう一方は

「向こうが一万なら一万二千出そう」

 次第にヒートアップして遂には二万を超える。

 そこで主人は食客である若者、当麻君に相談する。当麻君は色々な知識に通じた温和な青年で、宿賃も払わず、子供のいない主人に愛され、家族のような扱いを受けているのであった。

 このキャラ設定がとても良い。

 博学な当麻君は推理する。以前に街で起こった銀行強盗事件の事を。犯人は捕まったが、肝心の五万円が見つからない。犯人は逮捕直前に海龍館に泊まっている。

 五万円をこの旅館に隠したから、そしてその五万円のありかを知っているから二組の客は高額でこの土地と建物を買い取ろうとしているのではないか?

 いいね、このシチュエーションもグイグイ引っ張られて非常に上手いし巧み。

 本当に五万円が埋まっているのか? 当麻君が一方の紳士と隠れて相談していたのを見てしまった主人は、可愛さ余って憎さ百倍、当麻君にも不信感を抱く。

 結局、高額で売り払った主人、それと同時に部屋がもぬけの殻になって消えてしまった当麻君。

 えげつない事件は何も起こらない、上質な日常の謎

 続きが気になるでしょう? 気になった方はぜひ本編の方で結末のご確認を。

 

 1928年3月「新青年

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

 

橋本五郎「塞翁苦笑」を読む

 あけましておめでとうございます。

 2019年もツイッターとこのブログを通じ、マイペースで呉エイジの妄想等をつらつらと書き紡いでいく所存でございますので、どうぞ気楽にお付き合いください。

 新年からは、先ほどのことでありますが、嫁さんから頭を叩かれました。

「ええ歳こいて、何を見とるんじゃ!」

 無実です。私は無実なのです。

 iPhone8プラスの画面でツイッターを開いていたのですが、どこぞのフォロワーさんが、水着のグラビアアイドルの画像を添付しており、それを私が自分の意思で検索して見入っていた、と嫁さんは勘違いしたのです。

「違うがな、他の人がアップしてたんや」

「見え透いた嘘ついて」

 信じてもらえないですし、叩かれ損であります。まぁ、その数分前には今どハマり中の吉川友ちゃんの写真集を物色していたので、完全に無実とは言えないのでありますが(汗)

 

吉川友 写真集 『 誘惑 』

吉川友 写真集 『 誘惑 』

 

 

みなさま、今年もどうぞよろしく御願い致します。

 さて、今回は「塞翁苦笑」を読み終えた。

 内容に踏み込んでいるので、未読の方はご注意を。

 橋本五郎を読み始めて今回で4本目だが、当時の探偵文壇に照らし合わせると、残虐な殺害現場の描写とか、変態心理みたいなものとは縁遠く、今で言う『日常の謎』を純文学に近い文体で紡ぎ、上質なユーモアも醸し出している。そのユーモアも作者が狙って読者に仕掛けているようなものではなく、それまでに吸収してきたものが自然に文体となって表現されているように感じた。

 冒頭の共同生活をしている貧乏画家二人の会話も、この作品に『謎』というものがなければ、そのまま文学作品の短編の一本になりそうな軽快さである。

 前提として『運命のいたずら』を描いてはいるが、橋本五郎の筆致に力があり、不自然さはそれほど目立ってはいない。

 貧乏画家二人が生活に行き詰まり、田舎に帰ろう、ということになる。最後の一円を握りしめて夜の酒場に出て、酒を酌み交わし、いよいよ明日の生活費も底を尽き、二人で道行く人に乞食のフリをして恵みを乞う。

 偶然出会った裕福そうな紳士は『仕事があるから』といって名刺を渡し、手付金として五円を二人に渡す。

 ここからは読者も作中人物と同じ視点に立たされ、サスペンスを共有していく。ここを作者は書きたかったのだろう。

 都会を引き払い、田舎の駅に降り立つと、見知らぬ男が『お迎えに参りました』と、スーツケースを持って豪邸に案内するのだ。

 貧乏画家は実家に帰る途中で宿に泊まる金もなく、後で謝ればいいか、と間違ったまま招かれることになる。

 読者は『全く予備知識もないのにどうやって誤魔化していくの?』とか『誰と勘違いされて、この場合どういう返事をすれば乗り切れるの?』といったことをあれやこれや考えながら一緒にドキドキする寸法だ。

 どうやらスーツケースに貼っている、夜の街でもらった紳士の名刺、これで勘違いされているのだ、と貧乏画家は悟る。

 この豪邸の主人から不正に遺産をせしめてやろう、という奸計を察し、この家に本当の使者が向かってきている、というカウントダウン要素も絡めながら、最後はカラッと爽やかな大団円を迎える。

 終盤には不覚にも、ちょっとグッときてしまった。

 橋本五郎は本当に探偵小説作家になりたかったのであろうか? こういう作品を読むと、純文学に近いものを感じるのだ。

 

 1927年2月「探偵趣味」

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

 

戯作・私小説

「金平先生、それでは原稿、お預かりします」

 若い編集者は老齢の漫画家から原稿を受け取ると軽く頭を下げた。

「年々パソコンが新しくなってね、デジタル化に移行したんだけど知識が追いつかなくなって。聞けばアナログ原稿は僕だけらしいね。悪いね」

「いえいえ、今の時代、それも珍しくて『売り』になっていますよ」

 

コレハラ? (ヤングキングコミックス)

コレハラ? (ヤングキングコミックス)

 

 

「あっ、そうそう、周囲から『ボケたんじゃないか?』って言われるんだけど、君たちなら知ってるよね? 僕が表紙をデザインした物書きの呉エイジのことを」

 

 

我が妻との闘争2018〜昼下がりの冤罪編〜 (呉工房)
 

 

呉エイジ? さぁー? 存じ上げませんが」

「ホント? 知らないの?『我が妻との闘争』という作品で電子と紙の書籍も出ていたんだけど」

「いや、勉強不足で、すいません先生」

「誰に聞いても知らない、って言われてね。そんなはずはないんだけど。じゃあ原稿よろしく」

 老齢の漫画家、金平は、膝を庇いながら椅子から立ち上がると、重い足取りで編集部を後にした。

「金平先生、顔色悪いね」

 同僚の編集者が金平の担当編集者に声をかける。

「そりゃ90歳で現役の漫画家だもんな。それもアナログ原稿」

「身寄りはあるの? あの先生」

「独り者らしいよ。てか病気してるんじゃない? 調子悪そうだったけど」

 心配そうな顔つきで、金平が出て行ったドアを見つめる編集者二人。

 金平はゆっくりと歩いていた。健康のためにアパートから編集部のビルまでの道のり、3キロを歩いていくことに決めていた。

 歩きながら編集部で言われた言葉が引っかかった。呉エイジを知らない。誰に聞いても知らない、という。中には『ボケて作中の人物が現実にいる、と思い込んでるんじゃないですか?』とまで言われてしまった。

「そんなはずはない。奴とは幼馴染だ」

 金平は懐からスマホを出すと、旧友の名前をタップした。

「あけましておめでとう。塩屋氏」

「おめでとう金平氏、どうした? 急に」

「塩屋氏は最近、呉エイジと連絡取ってる?」

「誰? それ」

 金平のスマホを持つ手が凍りつく

「誰? って高校の時の同人じゃないか。同人誌も作ったし一緒に遊びにも行ったろ?」

「沢山同人いたからなぁ。ちょっと思い出せないなぁ」

 金平は呆然としたまま道路で立ち尽くしてしまった。『本当にボケてしまったのだろうか』自分の記憶力に自信がなくなってきた。

 道の先には公園の入り口があった。休憩して頭を冷やそう。金平は小さな公園に入り、ベンチに腰を下ろした。

 座ると何度も咳き込んだ。痰が絡まっているのか、気道で変な音がする。

 激しい咳で涙目になり、前を向くと光の中から一人の少年が歩いてくる姿が目に入った。

「お、お前は呉」

「久しぶりだな」

「な、な、なんで初めて会った小学6年生の時の姿なんだ? 呉エイジの孫か? 俺は夢を見ているのか?」

「俺はこの世に来て小学3年の時から漫画を書いていたんだ」

 

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「教室でいつも漫画を描いている子供だったんだ。最初はクラスの子どもたちも珍しがって、一緒になって騒ぐのだが、そのうち私の真剣な締め切りの催促、8時だよ全員集合!の話題よりも、4コマ漫画のオチの話に段々と『気味の悪いもの』を見るような目で見られだしてね。学年が終わる頃にはいつも一人さ」

「……。」

 

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「こっちでもずっと思い続けていたことなんだ。この人たちと私とは、何かが決定的に違う、ってね。そのうちに変格探偵小説を読み出して、その影響で『奇妙な味、奇妙な味』と呟く気味の悪い中学生になって、書くものもドきつく奇妙なものを描くようになって」

 

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「初めて君と会ったのは、小学6年の時の漫画クラブだったね。君は僕にこう言ったね。『小学生でペン入れしてるの? すごいね』って」

「あれは驚いた。カブラペンで描いてたよな、お前。ていうか、説明してくれよ。なんでお前は小学生の姿なんだ?」

「そうして俺が同人誌を作ろう、と言えば、君は真剣になって付き合ってくれたな。俺より描いたくらいだった。そんなことは今までになかった」

 

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「この街(下界)に越してきて、君が心を開けるただ一人の友人だった。君の親切が本当に身に染みたよ」

「お、お、お前、その両手の丸い穴はどうしたんだ? い、痛くないのか? 大丈夫か?」

「見えるのか? これは『愛の傷』なのだ」

 金平は太陽を後ろに、眩しくて直視できない少年呉エイジの姿を見ながら、理由もわからず嗚咽とともに滝のように溢れ出す涙を止めることができなかった。

「今度は僕が君の親切に報いる番だ。さぁ、一緒に行こう。パラダイス(天国)へ」

 翌朝、公園の植え込みで老齢の漫画家が自然死している姿が発見された。冬だというのに漫画家の身体の周りには、白い花が咲き乱れていたという。

橋本五郎「探偵開業」を読む

 痩せましたよ。今のところキープしつつ、徐々に落としていっております。

 長々といろんなことを頑張りました。読み返せば今年の夏頃から悪戦苦闘していたことになります。

 まず筋トレして代謝を上げれば脂肪が減るのではないか、という考えの元、猛烈にマシンで胸板を鍛えましたね。

 そこでホエイプロテインを常に摂取してきたのですが、筋肉は育ちましたが、痩せない原因でもありました。今はソイプロテインに変えています。

 やっぱり日々の食事で一旦無駄肉を削ぎ落とさないと、デブはデブのままなのでした。

 こんにゃくステーキにえのきのパリサク揚げ。夜はこれに徹しました。

 

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 そうして今、ようやく夏に74キロだった体重が67まで落とせましたよ。

 今後は64キロくらいまで落として、再びホエイプロテインに切り替え、胸板を厚くしていきますから。

 40代に入って、今が一番スリムな状態です。嫁さんが「アンタ、最近格好ええな」と言うております。

 会社勤めの仕事に明け暮れる同胞よ、腹の脂肪で悩んでおるのなら、私の手法を真似たまえ。見直すべきはやっぱ夜のご飯ですよ、重要なのは。

 お皿に醤油1みりん1の割合で混ぜ、そこへにんにくチューブをぶにゅっと投入。

 えのきを手でちぎり、その出汁に浸して片栗粉にまぶす。フライパンを熱し、そこへオリーブオイルを多めに敷く。きつね色から焦げがつくくらいで丁度いい。

 食感はパリサク。チリソースで食べるとホント超美味いのだ。病みつきである。

 チリソースもスーパーで買えば高いが(700円もした)業務スーパーに行って驚いた。倍の容量で298円だったのだ。これからは業務スーパー一本である。

 

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 一緒に腹回りの肉にオサラバしましょう!

 さて、今回は「探偵開業」を読み終えた。

 内容に踏み込んでいるので、未読の方はご注意を。

 一読、明朗探偵小説だなぁ、と声が出た。健全で朗らか。平林初之輔が微笑みそうな『健全派』の小説である。

 タイトルからも分かる通り、大学を出てブラブラしていた男が、事件をきっかけに探偵としてスタートする、という物語。

 友人が押しかけてきて「同棲したい」と主人公の堤に相談を持ちかける。堤は快諾し下宿を明け渡し、友人が紹介したホテル風の住居に引っ越し、入り口へ名刺の裏に書いた『堤』の表札を貼り付け新生活が始まった。

 ここから何故か堤の元へ令嬢の失踪事件の捜査依頼が入ったり、告知もしていないのに『堤探偵事務所宛』の郵便物が届いたり、と理由がわからないまま堤は事件に関わっていく。

 この『謎』がこの作品の核になる。堤は友人が急に女性を連れて押しかけてきたことと令嬢失踪事件を結びつけ、相手の親に友情から確認を取り、家柄に格差があっても一方的に反対しないことを約束させ、事件を纏めてしまう。

 タネを明かせば、堤が越す前に住んでいた住人が、有名な『堤探偵』という同姓の探偵だった。というオチで、伏線もなくいきなりだなぁ、と思わなくもないが、明朗な作品の雰囲気が、そういうことも忘れさせてしまう。

 

1926年12月「新青年

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

 

橋本五郎「狆」を読む

 レトロゲームファンなので、ファミコンは大好物である。

 アマゾンアプリで漂っているうちに、気になる一冊を目にした。

 これは任天堂非公認の、ファミコンで動作する、いわゆる『エロゲー』の紹介本である。

 今では写真か? と思えるほど、ゲームでは発達した3D表現だが、私が子供の頃にプレイしたゲームはドット絵であった。

 そのドット絵にロマンを感じた子供の頃、子供用のゲーム機ではご禁制であった女体、からの乳首(笑)

 近いうちに買おうと思っている本である。

 さて、今回は「狆」を読み終えた。

 正直に告白すると、初読時、理解できなかったのだ。分からなかったのである。

 変に深読みをしたせいかもしれない。

 二、三度読み返して、なんとなくではあるが自分の腑に落ちた。

 爺の妾である女性と浮気をする年下の男。女性から家の腕時計や指輪を持ち出させて、金に換える男。証拠はないから犯人は挙がりっこない、と構えている。

 指紋にも気を使い、警察の目も何度か欺いている。

 爺は『男がいるなら言え、一緒にさせてやる』とは言うが、それを言えばこれまでに悪事が露見する。

 ケチの爺は、無くなるものが泥棒のせいとは思えず、探偵を雇う。

 探偵は男の下宿を訪問した時に、女の家で飼っている犬『狆』を抱きかかえて聞き込みに来た。

『長らく会っていない』という証言と食い違う、狆のなつきよう。探偵の手を離れ、男の膝に収まる。

 冷や汗をかいて必死に『大の犬好きでして』と弁明する日頃指紋まで気にしていた男だが、これだけで犯人は特定されたようなものだった。

 結局、男と女は貧しくも一緒になる。

『逢引の現場を狆に見せてたのは失敗だったなぁ』

 という言葉が漏れる。

 読み進めて、女の元を去る時、草履の片方が無くなるシーンがあるのだが、これがわからない。裏口の戸の鍵は開いており、人の気配はない。

 結局男は女ものの下駄を履いて帰るのだが、この草履がなくなったのが狆のせい、と女は言うが、探偵の仕業であったのか。

 描写がない分、推測になるのだが、完全犯罪を信じて、誰の目をも盗んで逢引できている、と思っていた男、草履を隠されたのは、狆であたりを付けていた探偵からのメッセージであった。というのが私の読みですが合ってます?(笑)

 

 1926年8月「探偵趣味」

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

 

橋本五郎「赤鱏のはらわた」を読む

 いやぁ、この歳で同僚と仲違いするのは精神的に堪えますな。

 仮にね、こちらが会社的ルールで正しかったとしても、言い方に悪いウェーブが乗っかれば、理由に関係なく「何かが確実に壊れる」ことを知ったんですよ。

 高い勉強代になりましたね。おそらく修復は無理でしょう。

 たかが仕事、でしたよ。今にして思えば。しょうもない仕事の手順ごときで、人間関係を崩すまでもなかった。

 反省、というか、やり込めても虚しさだけが残ることを知る。教訓、ですね。

 傷心です。

 さて、今回は「赤鱏(えい)のはらわた」を読み終えた。

 どう書こうか(笑)同じ時期に発表の、前回読み込んだデビュー作「レテーロ(略)」に比べると、一段落ちる出来だ。

 内容に踏み込んでいるので、未読の方はご注意を。

 小説投稿サイトが百花繚乱な現代において、この構造では短編一本を支えるには弱すぎる。

 タイトルで「オチ言っちゃっていいの?」という感じだし。

 なら読まずに済ませていいのか? というものでもない。流麗な文章、味のある語り口は一読の価値あり、である。

 放蕩息子を嘆く、父親の一人語り、という体裁。聞き手の姿は見えない。

 飲む打つ買う、の息子が「改心するからまとまった金を貸してくれ」というのが本筋。結婚すれば落ち着くか、と考える父と、芸者を身請けする金など出さない、と反対する義母。

 ここでヤケを起こした息子は「貸してくれないのなら腹を切る」と言って晒しの上に刃物を突き刺す。

「最後の頼みだ、死ぬ前に大金を握らせてくれ」

 と、握らせたら、先ほどまでの苦悶の表情は何処へやら。スタコラサッサと逃亡してしまった。

 これではなぁ。読者は奇妙なタイトルが常に念頭にあるし。晒しの上に刃物を突き立てて、溢れ出る贓物が、となれば鈍感な読み手だとしてもタイトルと直結するだろう。

 何に焦点を置いて書かれたのか。

 タイトルを「死の間際に」とかにすれば、オチの露見は未然に防げたのではないか。冒頭に「釣りが趣味」「大物を釣り上げた」みたいな伏線をサラリと滑り込ませておくとか。

 親父さんの語り口に味がある分、勿体無いなぁ、と。森下雨村が「新青年」に採った理由は、探偵趣味ではなく、達者な語り口と、凄惨な事件に一見見えるが、実は、といった独特のユーモアセンスだったのかもしれない。

 

 1926年5月「新青年

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

 

橋本五郎「レテーロ・エン・ラ・カーヴオ」を読む

 ジムのまゆゆ似の彼女の姿が無い。仕事が忙しくて通えない、ことを神に祈りたい。

 順調に痩せてきているのに。

 ここでの別れは後悔しかない。挨拶くらいしたかった。

 哀しみから彩流社のアンソロジー未所持分を発作買いしそうである。いや、するだろう。

夢の器  原民喜 初期幻想傑作集

夢の器 原民喜 初期幻想傑作集

 

 

 さて、今回は「レテーロ・エン・ラ・カーヴオ」を読み終えた。

 ここのところ久山秀子の女スリ譚を連続で読んできたので、新鮮であった。探偵小説を読んだー、という感じだ。

 久山秀子が『つまらない』というわけではない。貴重な作品を掘り起こしてくれた論創社さんには感謝の念しかない。

 単に私の根気と飽き性のせいに他ならない。

 で、久山秀子の二巻を一冊飛ばしての『橋本五郎探偵小説選1』である。

 この作品、橋本五郎の代表作でアンソロジーにも採られている。変わったタイトルが印象深い。解説によれば、エスペラント語で「小さな穴の中の手紙」という意味だそうだ。

 真相に踏み込んでいるので、未読の方はご注意を。

 この作品、書簡を並べて進んでいく。主人公が想いを寄せる『女性側』の手紙だけを並べているのだ。

 読み終えて自分の読みに自信がなかったので、ネットで感想を検索してみた。

 少ないがいくつかヒットした。「探偵小説ミステリー読書日記」「taipeimonochrome」「exlibris...

 この辺りを読んでも微妙に『読み』が違っている。まず主人公が恋する相手は主人公を「兄様」と呼ぶが、これは敬称で実際の妹ではないだろう。

 そして主人公の恋心をからかう男友達の『いじめ譚』でもない、と思うのだ。

 余り自信は無いが、私が感じ取った作品の感想を書き留めておこう。

 この短編は6通の書簡からなる。主人公はある女性を愛している。その女性からの手紙を順番に並べていって、最後に物語をどう転がすか、という趣向の短編だ。

 まず1通目、主人公の意中の彼女は『M子』を通じて主人公の手紙を受け取った。その返事、である。ここではその意中の彼女の情熱が溢れており、男心をくすぐる、というか、大いに『脈あり』を匂わせている。

 そして文中に〜下駄を私が探してあげて〜とあることから、この手紙は主人公と彼女の共通の思い出がある、ために『本物の手紙』であることが保証されている。

 そして最後に『M子』を通じての手紙のやり取りが嫌だ、という理由で、今後手紙は教会の石垣の穴の中に入れてやり取りしましょう、という提案が女側から出されるのだ。なぜ、意中の彼女が『M子』を介するのが嫌なのか、それは伏線にもなっていると思うのだが『M子』は主人公に想いを寄せているので、自然彼女に対して態度に棘がある、からではないだろうか。

 続いて2通目。手紙はここで筆記者が入れ替わっているのだ。文中には〜手紙を抱いたのでお乳のあたりが苦しくなって〜という男性読者サービスとも思えるような記述があって微笑ましい。読者の注意を扇情的な文章に留める役割のミスリードだ。何故、すり替わったと思ったか。それは主人公の問いに対して弁明しているからだ。現実世界では二人は時計屋の前ですれ違ったのだ。その時意中の彼女は知らぬふりをして過ぎていき、それを手紙で主人公はなじったのだろう。偽の記述者からなる手紙は〜それは人前だから恥ずかしくて〜とはぐらかしている。主人公の手紙は石垣の中に投函されるが意中の彼女には届いていない。仕掛け人たちに抜き取られ、読まれているからだ。一方、意中の彼女の本当の手紙はどうなっているのか? 恐らく仕掛け人達が抜き取る前に偽手紙とすり替えているのではないだろうか?

 3通目、ここで記述者は主人公に誘いをかける。母が帰省するので、明後日の夜、会えないか? というものだ。ここまでで、手紙の内容は女性側の情熱が書き綴られ、男側からしてみれば『えらく情熱的に惚れられたもんだな』と思わせている。

 4通目、偽の手紙なのだから、本当の彼女が当日の夜、逢引に来るわけがない。その理由が書かれた手紙だ。母が急に帰ってきた、というものだ。現実世界では主人公は寒い中、待ち続けたことだろう。仕掛け人達は『立腹して嫌いになればいい』と思って仕込んだのではないだろうか。それでも主人公は彼女への想いを変えない。三時間も待ちぼうけを食ったにも関わらず。手紙の中で〜兄様の夢をみる、喧嘩では兄様が負ける〜と蔑んで見せたり、実は縁談が多くて、といったことを書いて主人公に諦めてもらうようにも書かれている。

 5通目、雑談の中で彼女は『M子』に結婚を申し込まれたことを話したのだろう。この手紙では両親に意中の人はいない、と伝えたことや、両親の勧める相手の結婚せねばならないような気持ちになってくる。と書かれている。主人公の気持ちをグラつかせるためにだ。この時点で現実の主人公と彼女がどこまで会話できたかはわからないが、相当な齟齬があったことだろう。

 そして『オチ』である6通目。あの手この手を使っても、主人公は諦めるどころか熱を上げるばかり、だったのだろう。仕掛け人の方が根をあげてネタバラシする6通目だ。動機は忠告と友情だった。この彼女は奔放で、何人も男を取り替え、有望だと思えばすぐに鞍替えする。我々はその被害者だ。というのだ。君が我々と同じ道を歩まないように、という老婆心からの計略であった。なら女文字は? それは『M子』が引き受けてくれた、というのだ。

 君を想っているからこそ代筆を引き受けてくれたんだよ、と。

 ここで読者はドーンという衝撃と共に「ここまでの手紙は悪女から友を守るためのドッキリかよ!」と突っ込むことになる。

 というお話。構成の妙で魅せるタイプの作品だ。

 しかし、実際にこんなことをされて恋心を諦められるだろうか? 友情とはいえ。スナック菓子感覚でセックスする『まゆゆ似』の彼女に接近する私を見た相棒の金平が、私を思って偽のラインアドレスで『まゆゆ似』の彼女になりすまし文通、熱い胸の内や、ツンデレとも思える約束のドタキャンを経て

「お前のためだった」

 とネタバラシされたらどうするだろう。迷わず金平をグーで殴る。となるのではないだろうか。

 

1926年5月「新青年」 

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

 

久山秀子「隼いたちごっこ」

 10月に74キロだった体重が、これを愛機金のマックブックで打ち込んでいる私は、68キロ台である。と行っても68.9キロでギリなのだが。

 ダイエット、というか最早『格闘』である。

 おっさんの代謝率の悪さを運動とサプリで攻め続けている。

 最近摂り始めたサプリはキノコパワーのキノコキトサンである。

キノコキトサン(キトグルカン) 30日分

キノコキトサン(キトグルカン) 30日分

 

 キノコパワーが憎き腹の贅肉を連れ去ってくれるらしい。なので飲んでいる。

 それから昆布フコイダンも中年の腹に効くらしい。

昆布+フコイダン 30日分

昆布+フコイダン 30日分

 

 この二つはレアな部類のサプリなので、直営店に行かねば店頭で買うのは難しいだろう。姫路には駅のビル、ジュンク堂の真下に直営店がある。

 74キロからスタートしたダイエット。今は68だが、64くらいを目標にしている。

 なかなか落ちない。腹の贅肉と戦うのに必要なのは『怒り』である。電人ザボーガーで言うところの『怒りの電流』だ。ほとばしらなければならない。

 まず、朝起きて洗面台で上半身裸になる。寒いけど。そして鏡で身体の線をチェックする。そこで無駄肉に向かって叫ぶのだ。

「くそったれ。いつまでもそこに居座れると思うなよ。このハゲ」

 ハゲというワードを自分で口走ってヒートアップ。少しづつ薄くなってきているのだ。

「絶対に殺す。キルユー。摘めないくらいにしてやる。わかったか」

 目は血走っている。これくらいの怒りのパワーがなけりゃ、中年の贅肉は落ちませんよ、ホント。

 さて、今回は「隼いたちごっこ」を読み終えた。

 長らく付き合ってきた「久山秀子探偵小説選1」もこの短編でラストである。

 この短編の構造は(ここから先は読み終えた人向けです)まず『隠し場所トリック』を思いついたところから組み立てられたのだろう。

 話の流れとしてはこうだ。隼組の子分である由公が泣きついてくる。どうやらスリに失敗し、相手は大男で、その怪力で商売道具である右腕の骨を折られたのだった。

 その話を聞いた隼お秀は、弔い合戦とばかりに街に繰り出して……。

 子分がやられる→お秀が大男に近づく→大男はその時袱紗に包んだ大金を所持していた→近くに刑事もいる→大男がスリに気付き叫ぶ。

 そこで公衆の面前で身ぐるみ剥いで見やがれ、と啖呵を切るお秀。江戸の水で磨いた玉の肌を見て驚くな、という台詞にプチエロな読者サービスが見える。

 お秀からは金が出てこない。大男も諦める。少し離れて包帯で片腕を釣った由公がお秀にぶつかってお宝を失敬していく。

 帯と背中の間に大金を包んだ袱紗を隠していたのだった。

 隠し場所トリックの創造から話の組み立て、世界観への組み込みは流石に手馴れたものである。

 さぁ、順当に行けば「久山秀子探偵小説選2」に移行するのだが、ちょっと小休止。正直に言うと、下町の人情スリ話、連続して読みすぎて今はお腹いっぱい(笑)

 一巻飛ばして、リフレッシュしてから2巻に戻ってきます。

 

1929年12月「新青年

久山秀子「隼の万引き見学」を読む

 ジムのまゆゆ似の彼女が12月に入ってから来なくなった。

 11月で退会してしまったのだろうか。誰かが、かっさらっていったのだろうか。

 単に仕事が忙しく、ジムに来る時間が無い、ことを祈りたい。

 世間には12月、嘘みたいに忙しくなる会社あるもんね。

 そのせいもあって、文章に身が入らない。

 それにしても同じ中年男性なのに、ジムでフランクに女性と話をしているオッサンは凄いなぁ、と思う。

 私は相手に『この人本気になりそう』とか『足の裏を舐めたそう』みたいに、変に勘ぐられてしまうのだろうか。(見抜くのだろうか、とは書かない)

 女性に対してサラリと話しかける、これも一種の才能だと思いますね。

 さて、今回は「隼の万引き見学」を読んだ。

 ちょっと隼シリーズに物足りなさを感じていたのだが、今回は楽しめた一編。内容に踏み込んでいるので未読の方はご注意を。

 銀座を歩く隼お秀、そこへ顔見知りの新聞社部長、津崎と出くわす。お互いに軽口を叩きながら銀座を並んで歩く二人。ここで街を歩く人や服装をスケッチするような描写が続く。

 こういうところが当時の風俗小説として貴重であり楽しめるところ。

 さて、面白いのが二人、前を歩く婦人に目がいく。この婦人、代議士の妻なのだが、盗癖がある、という。が、代議士の妻なので事件は公にはならず、いつももみ消されているらしい。

 万引きするシーンを見物できるか? 二人は興味本位で尾行する。

 ここまでの流れは探偵小説的でとてもよろしい。

 ここから先は好みの問題になるだろう。

 デパートの中には私服警官が巡回している。この私服警官は以前、代議士の妻の犯行を目撃したのだ。

 宝石ケースに近づく婦人、そこで婦人は店員に告げる。

「あの刑事が宝石を盗むところを見た」と。

 その騒動の中、隼は野次馬根性で聞き耳を立てに近づいて向こうに気づかれて顰蹙を買い赤面で離れる。

 宝石は実際に無くなっている。婦人はかつての密告を根に持ち、罪を刑事に着せようと思っての犯行か? 代議士の妻なので身体検査はできない。

 なら刑事の犯行か? 刑事は身体検査をされ、身体から宝石は出なかった。

 じゃあどういうこと? という探偵小説である。

 ここで聞き耳を立てて接近した伏線が活きてくる。ここで隼は宝石を失敬していたのだ。

 犯人は刑事の方だったのだ。刑事のポケットから宝石をスリ、その宝石を隼は津崎のポケットに入れておいた。

 というのが真相。

 読んでいる方は、盗癖のあるワガママな代議士の妻をギャフンと言わせて欲しかったが、そうはならない。作者は一回ひっくり返している。

 出来心で宝石を盗んでしまった刑事、この言いがかりだけでも免職になるのだが、罪人になるのは忍びない、と感じた隼お秀が、証拠品を得意技のスリで抜き取って、逮捕を免れるようにした、という『イイ話』に仕立てているのだ。

 

1929年6月「新青年」