呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

彦根旅行8

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 長浜城を出て、駅前から伸びる旧街道の面影を残した商店街を歩く。なかなか風情があって良い。

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 通りは結構な賑わいであった。木造と昭和初期のモダンな建造物が良好な状態で残っており、インスタ映えを狙ってか、若い女性、色気ムンムンの熟女グループがスマホで自撮りする姿が目立った。

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 この商店街では、フィギュアで有名な海洋堂のショップがあったので入ってみた。精巧なモデルはどれもなかなかのお値段で、欲しかったがちょっと手が出なかった。

 手ぶらで帰るのも寂しいので、飛び出し小僧の可愛らしいメモ帳を買って帰る。このノートに新作のネタを書き込んでいく予定。

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 商店街をゆっくり眺めていたら、あっという間に夕方の四時。慌ててショップ巡りのルートに戻る。そうして、ここのブックオフで私は遂に禁を破る。

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 この旅ではAKBのコーナーはスルーしてきたのだが、つい手にとってしまった。手に取ったら最後、ジャケットの写真に見入ってしまう。忘れよう、忘れようと努力していた、ジムで出会った『まゆゆ似の彼女』との顛末。苦しくなるだけであるし、思いだすから所有せねばよいものを、人間とは弱い。レジに持って行ってしまった。

 

 (※顛末はコチラ↑)

 

 そうして私は金平を助手席に乗せると、その買ったCDを無言でカーステレオにセットした。音量は爆音である。鳴り響くイントロ。私は涙を堪えて一緒に歌うのだ。

呉「♪パパラー、パパラー♪

金平「頼むから50のオッサンがアイドルソング熱唱するのやめれ!(一人の時やって)」

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 そうだ。女は裏切る。うつつを抜かす俺が間抜けであった。人生、そんなことに時間を使っていてよいのか? 私には金平がいるではないか。ジムで熱視線を送るヒマがあったら、金平と創作談義をしていた方が何倍も有意義ではないか。確かにまゆゆ似の彼女は可愛かったけど……。いや、それがイカンのだ。未練タラタラやないかい!

 私は夕焼け輝く琵琶湖を眺めながら、頭を切り替えた。

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呉「金平、ちょっと語らせてくれ」

金平「おぉ、ええど。なんや?」

呉「最近感動したことが二つある」

金平「ほうほう」

呉「一つは明石家さんまの番組で観たんやけど、五十代の漁師が七年間練習してピアノで『カンパネラ』弾いた話。カンパネラって知ってる?」

金平「いいや」

呉「ピアノの難解な曲らしくて、音大出た人でも演奏できへん激ムズな曲なんや」

金平「それを素人が?」

呉「そう。テレビで聴いて感動して『自分でも弾いてみたい』って思われたらしいわ。それから七年間、毎日八時間の練習。楽譜読めへんから、1音ずつ指で覚えてな。で最後、尊敬するピアニストの前で披露するんや。周囲から最初は馬鹿にされたらしいけど『絶対に無理や』って。でも完璧に演奏できたんや」

金平「そりゃ凄いな。でもう一つは?」

呉「たまにツイートしてる作家の佐川恭一さんのことなんやけど」

 

サークルクラッシャー麻紀 (破滅派)

サークルクラッシャー麻紀 (破滅派)

  • 作者:佐川恭一
  • 出版社/メーカー: 株式会社破滅派
  • 発売日: 2017/12/16
  • メディア: Kindle
 

 

金平「最近オマエ、リツイートしてるな」

呉「前回話題にした波野發作さん同様、破滅派さん(※利害関係は全くありません。ただの好みのプッシュです)っていうグループの方なんやけど、その佐川さん、自身のツイートで『○○賞二次まででしたー』って、カラッと呟いてはるんよ

金平「それが何?」

呉「佐川さんな、既に阿波しらさぎ文学賞受賞されてるんやで?」

金平「賞取ったのにまた別の賞に投稿してはるの?」

呉「普通な、文学賞受賞したらよ? それにすがると思わへん? 既に雑誌でコラム連載してはるし、小説も掲載されてるんやで? もし投稿作が落選したらマイナスしかないやん。俺が受賞できたらよ? ええ、はい、私が文学賞受賞した呉エイジです。はい、ええ、貴方は? 文学賞を受賞されていない。はいはい。紙の単著は? 無い。はい、そうですかそうですか。みたいに受賞後、天狗になってまう可能性あるやん」

金平「ひどい応対やな(笑)」

呉「紙の単著出せたことにすがる気持ちあるやん。ホンマは創作家は『常に今』が勝負やのに過去の栄光やまぐれに頼りたい気持ちあるやん」

金平「バブルの時に本出せて良かったな(笑)」

 

 

呉「選考委員もな『この方、既に阿波しらさぎ文学賞受賞されてる方やわ』『ならチャンスは他の新人の方に』って絶対になると思うやん? でも送るんやで? そこ感動してな」

 

受賞第一作 (破滅派)

受賞第一作 (破滅派)

  • 作者:佐川恭一
  • 出版社/メーカー: 株式会社破滅派
  • 発売日: 2019/07/30
  • メディア: Kindle
 

 

呉「カンパネラの漁師もそうや。佐川さんもそうや。『やり続ける』それが結果、すごい成果に繋がってる。常人を越えた思考や。毎日書こう、とは思っても、人間なかなかスイッチは入らへん。でもな、継続は裏切らへんねん」

金平「シンプルやな」

呉「オマエもそうや。オマエの『やり続ける力』も俺は怖い。旅行より家で漫画描いてる方が楽しい、言うてずっとやってるやろ。そこに圧倒される畏怖を感じるし、見習わなアカンって本当に思ってる」 

 

連載島 (ヤングキングコミックス)

連載島 (ヤングキングコミックス)

 

 

金平「嬉しいな。じゃあオマエは、今年は『読む』より『書く』を優先するんやな。前々から言うてるけど、オマエはもうインプット必要ない」

呉「いや、それは反論させて。よい書き手はよい読み手である。この持論は変わらへんねん」

 ずーっとこんな調子で創作に関する話。得がたい友である。

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 さぁ、そろそろ琵琶湖の店も最終である。今回の旅はお目当てのブツ大量購入、とまではいかなかったが、雄大な琵琶湖、木造天守彦根城を巡れて、良い旅となった。

呉「おっ、金平。あそこに近江牛の看板あるぞ。牛丼ならワシらの予算に合うんちゃうか?」

金平「ええな。せっかく滋賀県に来たんや。最後はちょっと贅沢するか」

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店員「いらっしゃいませー」

 この店は『乃木坂46が運営しているのか?』と思うくらい、厨房は若くて綺麗な女性ばかりで目を奪われる。

 メニューに目を通す。さすがに我々御用達の牛丼屋チェーン店で出てくる280円の並盛りみたいな値段ではなかったが、それでもなんとか手の届く一杯1500円の近江牛牛丼。

金平「あっ、美味しそうな匂いしてきた。これ絶対に美味しいやつや」

呉「見て見て、金平。お肉が山盛りでやってくるよ!」

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呉・金平「ンマーイ!

 少し甘めのタレが絶品であった。肉も軟らかく甘味があって口の中でとろけていった。普段食べている牛丼とは別次元の味である。

 少食である相棒も丼を片手に持ちかきこんでいる。そうして再び目が合う。

呉・金平「ンマーイ!」(本日二度目!)

呉「思い切って入ってみて良かったな」

金平「満腹、満腹」

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 姫路までの帰り道で、粘り強くブックオフを絡めて帰るルート取り。

 佐川恭一さんの単行本は今回の旅では見つけることが出来なかった。文学賞受賞後、マケプレでは価格が高騰している。佐川さんはもっと紙の単著をバンバン出していなければおかしい作家さんだ。

終わりなき不在

終わりなき不在

 

 

 定休日地獄もあったが、なんとか無事故で帰ってくることができた。神戸のパーキングエリアで少し休憩。

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 お疲れさん。さて、今回の旅で得た教訓を書き残しておこう。

・すべての中古ショップをマップで表示したまでは偉い。だが、面倒でも定休日は全部外そう。それが無理なら日程をずらすことを優先しよう。

・素泊まりの安い宿で充分だ。そして車でスーパー銭湯に行けば良いのだ。風呂は重要。翌日の疲れが全然違う。温泉には肩まで浸かって足をほぐすべき。

ご当地グルメはやっぱり最高。そこでしか食べられない物は、今後の旅でも下調べして積極的に寄っていこう。

 ありがとう相棒。ありがとう彦根。良い旅だったよ。

 

〜完〜

 

旅のオマケ

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 そうして私は小型ビートルのフィギュアを部屋に飾ろうと、箱を開けてみた。

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呉「プラモかい!」

 

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彦根旅行 完〜

彦根旅行7

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 さあ、彦根城を満喫したのでショップ巡りの再開だ。開放倉庫に到着。

 

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 お宝市場系は思わぬ品物に血がたぎり、予期せぬ買い物をしてしまい勝ちである。

 ここでは美しいフォルムの小型ビートルを買ってしまった。

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 次々とノルマをこなしていく。ハードオフももちろんチェック。

 ここで私は相棒の金平に隠れて地図を確認する。長浜城は近い。問題はどうやって切り出すか、だ。

呉「さて、そろそろここらへんでサプライズの時間や」

金平「おおっ、何か仕込んできたんか?」

呉「ジャジャーン、ここから近い長浜城に進路を取りまーす!」

金平「オマエだけのサプライズの話かい!

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 行けば行ったで、文句を言いながらでも付き合ってくれる相棒。長浜城の敷地には猫をよく見かけた。撫でてやろう、と思い近付くと猫たちはサーッと逃げる。

 ジムでまゆゆ似の彼女に熱視線を送ったことでお馴染みの、肉食系の私に猫が恐れおののいたのであろうか。全く触ることができなかった。詳細はこちら(笑)

 

 

 

金平「よーしよしよし」

呉「金平先生なんという懐かれ率!

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呉「オマエすごいな、猫寄ってきてるやん」

金平「けっこー猫には好かれてるで。東京のアパートでもベランダにウンコされてたことあるしな!」

呉「(それ、猫に舐められてるだけやんっ!)」

 猫は最後には白目になるくらい、頭を金平の足にこすりつけていた。私は離れて見ながら相棒に人徳オーラを感じ、こういう引きつける力が、漫画の仕事が途切れずあることにも関係してるのかなー、と少し羨ましく思うのであった。

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呉「おお、デカいな」

金平「また階段、急なとこか?」

呉「大丈夫、大丈夫。オマエに優しい城や。鉄筋の再建天守やから。エレベーター付きや」

金平「なら行く」

 鉄筋の天守も私は大好きである。上から眺める街並みは、かつて城下町がどのようなものだったのか、いろいろとロマンなのだ。

呉・金平「うおおー」

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 最上階は見事な眺望であった。琵琶湖を一望である。雄大な景色に心を奪われる。ちんかすのような仕事を忘れ、ノルマも忘れ、嫁さんからの束縛からも逃れ、相棒と、思いの丈の創作談義と古本屋巡り&城(笑)

 一年に一回は、このような心の洗濯をしたいものだ。

 そうして景色に見とれて目に入らなかったが、最上階の端っこにはなんと!

呉「ああっ、あああっ!

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呉「最近復元された城だから、昔ながらの記念コインは諦めてたんやけど、まさかこの城で出会えるとは」

金平「今回の旅は老舗の古本屋、軒並み定休日やったから、せめてもの神様の情けかな」

 私はホクホク顔で硬貨を投入する。

 そうしてまた打刻機で打ち込むのだ。『かねぽんと』と。

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〜つづきます〜

彦根旅行6

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 金平が自然に目覚めたことを確認し(笑)荷物を纏める。少し早いが、チェックアウトを済まし、ここを起点にして再び中古ショップ巡りを再開させるのだ。

 平日の朝なので観光客は全然いない。城内駐車場には我々だけである。気温も低く、少し肌寒い。

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 9時24分彦根城着。

 相棒の金平は、これまでに何度も城へ引き連れて行っているのに、一向に城好きになる気配がない。私のテンションの高さと、かなりの温度差がある。

 ここは日本に残る、たった12個のうちの一つ、木造現存天守が残る彦根城だ。天守といえば前に行った備中松山城の木造現存天守の感想を聞いた時でも、あいつの言い草はどうだ。

『階段が急で怖い』

『物置みたい』

 などと、まるで小学生の作文のような頭の悪い感想しか出てこなかった。

呉「おおっ、見ろ金平。当時の建物で厩(うまや)が残っているぞ! 全国でも珍しい遺構だ」

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 私はうひゃうひゃ言いながら一眼レフのシャッターを切る。馬の置物に感動する。江戸時代に想いを馳せるロマン。ここから駆けだしていったのだ。

 私は城の『建造物』が好きで、歴史にはほとんど興味が無い。城主は誰だったとか、そういう情報は詳しくはない。城の美しい造形美に惚れ込んでいるのだ。

呉「おおっ! 復元された御殿が見えるぞ! 半分木造で半分鉄筋再現らしいわ」

 金平は聞いているのかいないのか、手に息を吐きハエのようにこすり合わせながらついてくる。

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 ちょっと様子がおかしい。いくらなんでも閑散としすぎであろう。気配が全く感じられない。

呉「な、なにぃっ?!(ガッデム)

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 この日は28日である。よくもまぁこんなスポットで休館してくれたものだ。定休日は確認していったのだが、メンテナンス工事の告知まではホームページを確認しには行ってなかった。

金平「うわぁ、ホンマ残念やなぁ。見たかったなぁ。帰ろか」

 隣で金平が台本を読む棒読みの三流俳優のような口調で慰めてきた。感情は全く入っていない。

呉「アホ言うな。御殿は休館やけど、天守はやってるぞ!」

 私は相棒の後ろに回り背中を押した。本丸までは緩やかな坂になっており、石段が続いている。

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 天守はお楽しみににとっておいて、私は天守の奥にある、これも現存数では数少ない、三重隅櫓の方へと足を向けた。

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 見よ。このCGのような均整の取れた美しさ。私は歴史的背景の書かれた案内板は飛ばし、ひたすら建造物に向かってシャッターを切る。

 そこで城巡りの時は、相棒を退屈させない為に、歩きながら創作談義をするのが常であった。

金平「最近、何か読んだ?」

呉「一番最近読み終えたのは、波野發作さんの『縄文スタイル』だな」

 

縄文スタイル (破滅派)

縄文スタイル (破滅派)

  • 作者:波野發作
  • 出版社/メーカー: 株式会社破滅派
  • 発売日: 2020/01/22
  • メディア: Kindle
 

 金平「どんな話?」

 私は手短に概略を説明する。再会すると、会えなかった間で互いに吸収したものの意見交換をするのだ。それが互いに刺激となり、自分の創作に活かせることが何度もあった。

呉「デザイン事務所の先輩と後輩の視点で進んでいってな、その二人が手がけた『縄文スタイル』という生き方の提案が、二人の手を離れて段々一人歩きしだしてな」

金平「ほうほう」

呉「で、おそらく『江戸しぐさ』への警鐘パロディを狙ってはると思うんやけど、縄文が社会ブームになってな、金になるからいろんなところが乗っかってくんねん」

金平「エスカレートギャグやな」

呉「そうそう、なんでも縄文にこじつけてな、書籍で『縄文スローセックスライフ』とか。縄文は夜が長いからな(笑)あと縄文老人ホームで悠久の時を、みたいな」

金平「そこは悪のりして目一杯書きたいところやな(笑)」

呉「そうそう。で、楽しんで読んだんやけど、作者さん、こんだけ手堅くそつなく纏めてはるのに、ツイッターで創作悩んでます、言うてはって、分からんもんやなぁ、と」

金平「なんでやろな。ワシが思ったのは、これ根拠の無い勘やで。その方短編が主体で得意なんちゃう? 長編の形を模索してはるように感じたわ」

(※波野發作さん好き勝手言ってすいません。二人は縄文スタイルをプッシュしております)

金平「オマエ、今までのツイッターから探偵小説ばっかり読んでると思ってたけど、最近は違うんやな」

呉「ちょっと普通文学にも目覚めてな。殺人のない物語も面白くて。キンドルのアンリミ入ってるから、手当たり次第に乱読しとるんよ」

金平「どうや、活かせそうか?」

呉「アップデートは常にしていかなあかんと思ってる。ネタ、発想力は気にせんでええねん。乗り物や。言葉を運ぶ乗り物。つまり文体やな。ここは新しい風を常に入れておきたいし、動向は気になるな」

 琵琶湖を見ながら城内を歩く。やはり創作の話を相棒としている時が一番楽しい。

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 会社で交わされる株や経済の話、儲け話、プロ野球高校野球、スポーツ全般の話、ノルマの話、上司の悪口、別の支店の不倫の噂(これだけは好き)(笑)

 そのような話ばかりで、実生活では創作の話などできる相手がいない。相棒の金平は私の身の周りでは得がたい希有な存在なのである。

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 そうして本丸に戻り、これも木造で現存している天秤櫓まで来た。これは珍しい橋で、時代劇のロケにもよく使われる場所である。この橋の下は空堀になっており、歩いて移動できるのだ。

 坂を上り、待望の三重天守とご対面。

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呉「う、美しい」

 私は小型のビデオカメラも回す。それをクリップで肩に引っ掛けて、歩きながら城内の様子を撮影する。ブルーレイに落として、旅の記録は毎回金平と共有するのだ。

 天守を堪能し、出口へ向かうと売店が目に入った。

呉「ああっ、あああっ!

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 私が集めている『城メダル』の販売機を見つけ、狂喜乱舞する。私はベロを出し、ハァハァ言いながら前のめりで購入する。そうして打刻マシンにセットした。

『かねぽんと』

 私は毎回こう打刻する。

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 我々は今年五十だ。あと元気に動き回れるのは、あと十年くらいかな。相棒とこの先、どれだけ日本の名所を巡ることができるだろう。

 そんなことを考えながら売店の外へ目をやる。得がたい相棒はニコチンが切れたのか、喫煙スペースで美味そうに煙草を吸っていた。

 

〜つづきます〜

彦根旅行5

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 楽しい彦根旅行の初日は、ショッカーワイングラスでファンタの乾杯をした後、コンビニで買った缶チューハイで改めて乾杯したのであった。下戸なので普段は酒を飲まないのだが、友との旅行では話は別。今回は互いの電子書籍出版のお祝いもある。

 

連載島 (ヤングキングコミックス)

連載島 (ヤングキングコミックス)

 

 

呉「夜は結局ラーメンやったな。美味しかったけど」

金平「近江牛なぁ、そこそこのコースで最低料金がお一人様3500円から、やもんなぁ」

 貧乏性の二人はベッドに腰掛けながら溜息をついた。たった一回の食事で3500円である。そんな豪華な食事、我々には完全に身分不相応だ。ジーパンの小汚いオッサンが料亭みたいなところにノコノコ出向くのも完全にアウェイであろうし。高価なスーツを身に纏った金持ち家族の冷たい視線が簡単に想像できた。我々は完全に金玉が縮み上がり、更に玉が内側にめり込んで陥没乳首みたいになってしまっていたのであった。

呉「二千円ならなぁ」

金平「今回は見送るか。この宿も素泊まり二人で5500円やもんな。夕飯一回の合計がホテル代越えるて(笑)」

呉「ワシ、チューハイ一杯で酔いが回ってきたわ。目覚ましどないしよ」

金平「九時くらいでええんとちゃう? まぁ歩きまくったし、起きるまで寝とこうや」

 そう言いながら消灯。私も9時くらいに目が覚めるだろう、と踏んでいた。この時は。

 何度か夜中目が覚め、ここはどこ? 私は誰? みたいな感じで室内、天井を見渡し、そうだ、ここは彦根であった、と安心して眠りにつき、それを何度か繰り返すうちに完全に覚醒してしまった。左腕のApplewatchに目をやると、まだ六時(笑)

 嬉しすぎて早起きしてしまう遠足の日の小学生の如くである。

「ここで起きるのはさすがに相棒には悪いか」

 カーテンの隙間から陽が射し込んでいる。天気は腫れたようだった。私はユニットバスに行き大便を済ませる。それでもまだ六時半。

「起こすのは悪いなぁ」

 カーテンをそっと開ける。なんとホテルの五階だから、彦根城は真正面から見えるではないか。私は現存木造12天守に対面できて、射精してしまいそうであった。

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呉「あうぅ。嬉しい。早く行きたい」

 隣のベッドを見る。相棒はバンザイしたままの格好で気持ちよく寝ている。声をかけて起こすのは可哀想だ。

呉「そうだ、奴の体内時計に訴えかけてみよう!」

 私はカーテンを全部開け、窓を全部開け放した。早朝の冷たい空気が容赦なく部屋に流れ込んできた。

 寝ながら相棒の眉間にシワが寄る。風はビュウビュウ吹き込んでくる。相当寒い。さすが五階の部屋だ。

金平「んーっ」

呉「あー、すまんすまん、起こすつもりはなかったんや。天気が気になってな

 私は声のボリューム二倍で相棒に話しかけた。友を叩き起こしたのでは無く、自然に目が覚めてくれたので安堵した(笑)

金平「今何時や。まだ七時やないか」

呉「いやぁ、オマエがウンコする時間とか逆算してチェックアウトのこと考えててな」

金平「その心配には及ばん。ワシ、ひどい便秘なんや。だから昨日の夜食べたラーメンセットや昼の唐揚げ定食も、出てくるのは三日後やと思うで!」

呉「女子か!

 テレビを点け、出発の身支度を始める。今の今まで気が付かなかったが、私はその時、ベッドでひっくり返りそうになったのである。

呉「か、か、金平。オマエ、ジーパンめっちゃ破れてるやんけ!」

金平「ああ、これか?」

 友は『何大きな声だして驚いてるねん』といった風である。なにこの温度差。

呉「いやいやいや、尋常じゃ無い破れかたしてるぞ。隙間から完全にパンツ見えてるやんけ」

 友の尻からはグレーのブリーフが完全にこんにちはしていた。

呉「百歩譲ってそれがダメージジーンズとしよう。それでも破れてる箇所は膝とかな、太もものところとかやな。桜木ルイがそういうの履いてたよなぁ」

金平「ダメージジーンズをイメージして桜木ルイが思い浮かぶオマエの脳細胞もどうかとは思うけどな」

呉「昨日小雨降ってたし、今から行く彦根城でベンチ座るとき、パンツに雨が染みこむやないかい」

金平「そんなもん『尻の先っちょ』だけで座ればすむことや。なんも問題あらへん」

呉「い、い、一回整理させて!」

金平「おいおいおい、またオマエ、ブログに書くつもりか? オマエのは寄り道が多いねん。読者さんは店の品揃え情報とか、城の写真とか待ってはるんちゃうか?」

呉「まず、なんで破れたジーンズ履いてるねん」

金平「気に入ってる色やさかいな」

呉「濡れたベンチに座るとき、どないすんねん」

金平「ケツの先っちょで座ればなんも問題あらへん」

呉「後ろから人に笑われたら一体どないするつもりや?」

金平「ジャンパー長いし隠れてるやろ?」

呉「オマエ今年で何歳や」

金平「50や」

呉「素材全部いただきますっ(まんまんちゃーん!)

 私は写真を撮り、手短に起こったことをツイートした。

金平「オマエなぁ、オマエのブログに登場して、ワシ、メリットいっこもあらへん」

呉「こういうのはな、読者を無理に笑わせようとして、仮にな、寝ている金平のパンツから金玉がはみ出していたのであった。とありそうな嘘を書いた所で全く面白くないねん。魂がこめられてないから。だから俺はあったことを冷静に観察する。嫁さんに怒られてる時もそうや。そうして書くときになって、バイブスを乗っけて書く。それが俺の創作スタイルや」

 そう熱く語っているうちに愛機iPhoneに通知のチャイムが鳴る。

 まだ朝の七時過ぎであるというのに、熱いリプライが数通舞い込んできた。

〜か、金平さん。く、食い込みが〜

〜呉さん、お二人がお泊まりのアパホテルの近くにあるブックオフには、古着を扱っております。どうか金平さんに新しいジーンズを買ってあげてくださいっ(号泣)〜

呉「見ろ、熱い返信が来てはるわ」

 文章で魂を撃ち抜いた瞬間であった。

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〜つづきます〜

彦根旅行4

 こんな感じの旅を十年は続けている。十年続けるとどうなるか。大抵のCDは購入済みになっているのである! そして恐ろしいことに、買ったのに聴いていない。集めることが目的となって、ただ珍しいから、というだけで発作的にレジへ持って行く。

 その時だけ脳内にアドレナリンが充満する。買ったはいいが、いつ聴こう。そんな感じでザイオン(※屋根裏部屋)には大量の本とCDで溢れかえっている。

 

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 これもいつ通しで聴く時間を確保しよう(笑)ちゃんと聴く気があるのか?!

 

行くね

行くね

 

 

呉「ハードオフは狙い目だな。さぁ、次行くか」

 

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 そうしてあっという間に夕方の五時。あけぼの書店は定休日なのであった!(涙)

金平「今回のオマエのプラン、ズタボロやんけ。歴代の旅でも特にひどいな。まぁ多くは言うまい。喧嘩になる。ワシが社長ならオマエ降格やな」

呉「ぐぬぬ

 個人経営の古本屋を楽しみにしていたのだが、今回はのきなみアウト。ブックオフに頼らざるを得ない。

 

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 そうして無理して開放倉庫までルートに組み込んだため、これが大幅な計画の遅れとなった。地図で改めて確認したら、相当遠かった。

 

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 そうしてこの店で手応えが無かったのが痛かった。時計を見ながら、また琵琶湖方面に大慌てで戻る。

 

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 朝からぶっ通しで19時半である。ひたすら店巡りで何も食べていなかった。ペコペコのクタクタで、取り敢えずチェックインをそろそろしておかねばならない。

 今宵の宿は彦根アパホテルさんだ。

 

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アパ「いらっしゃいませ」

呉「ネットで予約していた呉です」

アパ「あ、呉様、本日キャンセルが出ましたので、同じ価格でダブルの部屋をご案内いたします」

呉「ええっ? 追加料金はいいんですか?」

アパ「結構です。またご利用ください」

呉・金平「ありがとうございます!」

 思わぬラッキーに疲れも和らぐ。

呉・金平「ひろーい!

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呉「広い方で二人並んで寝るか、狭い方で二人並んで寝るか……」

金平「別々に寝る選択肢は無いんかい!

呉「どうする? まだブックオフは開いてるぞ。荷物だけ置いてギリギリまで攻めるか? それとも早めに休むか?」

金平「いいや、どのみち素泊まりやろ? 飯も外に出るんや、なら目一杯回っとこ」

 そうして飲まず食わずで再びブックオフへ。

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呉「あら? ナビではまだ営業時間中のはずなんやけど」

金平「もしかしてホームセンターは閉まっててて、二階のブックオフだけやってるパターンとか?」

 

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呉・金平「開いてた!

 

 そうして店内に蛍の光が流れるまで物色。夜の十時である。とても五十歳の旅の内容とは思えない。

呉「ヘトヘトやな」

金平「ヘトヘトや」

呉「前回の福山旅行な、部屋に備え付けのユニットバスに入っただけやったやろ?」

金平「あの旅は疲れたよな」

呉「やっぱ風呂が重要やと思うねん。スーパー銭湯行かへん?」

金平「ええかも。足とかむくんでるもんなぁ」

 旅は宿と風呂だ。宿は広い部屋を確保出来た。あとは風呂で疲れを取れば完璧だ。しかしこの時はまだ、金平に災いが襲いかかってくるなどとは、予想もしていなかったのである。

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呉「おお、帰り道にスーパー銭湯が!」

金平「ええな。ここに行こうや!」

 二人仲良く並んで入店。中は大層な賑わいを見せていた。私が熱い風呂が苦手なので、37度の湯があるのが有難かった。

金平「オマエ、ぬるいの好きか?」

呉「そうやな、熱いの苦手やな」

金平「もうちょっと熱い方が気持ちええど。この隣の炭酸泉入ろうや」

 そうして金平に誘われて炭酸泉へ。しばらくすると身体中に炭酸の泡がまとわりつき、身体がポカポカしてきた。

呉「血流が四倍になるらしいな。こりゃ気持ちええわ」

金平「な、40度くらいでも気持ちええやろ?」

 二人で並んで足を伸ばす。やはり銭湯は正解であった。

呉「せっかくや、露天風呂の向こうにあるサウナ入ろうや」

金平「ワシはサウナは苦手やねん」

呉「まぁそう言わんと。せっかくや、二人で入ろうや」

 そうして無理矢理金平をサウナの中へ引き込む。充満するスチーム。そして煙の奥にはオケが。

呉「なんやこれ?」

金平「塩や、ここ塩サウナやってさ」

 サウナの真ん中にオケがあり、そこに塩が山盛り盛られていた。

呉「えーなになに? 塩を身体に擦り込んでください? デトックス効果が見込めます? やってみっか」

 二人は両手一杯に塩を掬うと、身体中に塗りたくった。

呉「金平、スキンヘッドにも塗り込んでみろや(笑)」

金平「こうか?」

 この悪のりがいけなかった。銭湯から出て、車に乗る。しばらく走ると金平が奇声を発した。

金平「く、呉っ、すまん。車を停めてくれ」

呉「ど、どないしたんや?」

金平「あ、汗が止まらんっ!

 見れば金平の顔は大量の汗にまみれていた。てっぺんから汗が噴き出し、目を開けていられないくらいであった。調子に乗って頭に塩を塗り込んだからだ。

金平「タ、タオルで拭かねば」

 汗にまみれてナメクジのように溶けてなくなるのではないか? というくらいの勢いであった。

金平「オマエが塩を頭に塗れ、いうから大変なことになったやないかい!」

呉「デトックス効きまくってるやないかい。オマエ風呂とかどないなってるねん」

金平「ワシは漫画家やから外出歩かへんやろ。だから風呂は週一回や」

呉「少なっ! オマエ、歩く老廃物やったんかい!

 友は何度もタオルで汗を拭き取っている、が汗はとめどなく流れ落ちた。サウナと炭酸泉のダブルパンチが効いたようだ。私は日頃からジムに通っているから、至って平常運転。クリーンであった。

金平「お、おまえ、こういうこともブログに書くんか?」

呉「当たり前やろう。こういう作ってない出来事がオイシイんや」

金平「ワシのイメージ下がるやんけ。オマエのブログに登場して、ワシなんも得があらへん。それにオイシイってなぁ、ワシ芸人ちゃうわい。漫画家じゃい」

連載島 (ヤングキングコミックス)

連載島 (ヤングキングコミックス)

 

呉「漫画家でも芸人要素あった方がええやろがい!」

 だんだんと声が大きくなり、ヒートアップする二人。イライラは頂点に達しつつあった。

呉「か、金平。ワシら、日付変わりそうやのに、晩飯食うてないやんけ。だからイライラしてるんや。飯行こう」

金平「ホンマや、風呂でリラックスしすぎて晩飯の時間、とうに過ぎてるな」

 そうして空腹から来る怒りを抑え、ホテルまでの道のりで一軒のラーメン屋さんが目に入った。

呉・金平「ここにしよう!」

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呉「金平、メニュー見てみ、こってりラーメンや」

金平「あぁ、ええ匂い。ここ絶対に美味いで。あっ、運ばれてきた」

 

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呉・金平「ンマーイ!

呉「ニンニクが相当ガツンと効いてるわ」

金平「スープ超美味い。完飲できるわ」

 知らずに入店して、実は閉店時間ギリギリだったのに温かく迎えてくれてありがとうございました! 豚人さん! むちゃくちゃ美味しかったです!

 そうして満腹になりアパまでの帰り道に、調べ漏れていた中古ショップを発見し寄り道し。

 

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 激突しても二人は小6からの仲良しさんではないか。ホテルに戻って昼間に買ったレアなショッカーワイングラスで仲直りの乾杯をしたのであった。

 

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 カッコつけてるけど実はファンタだけどね!

 

〜つづきます〜

 

彦根旅行3

 一軒目のハードオフブックオフの攻略を終え、旅のしおりに従ってiPhoneにグーグルマップの行き先を設定する。次はブックオフではなく個人経営の古書店だ。

 

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 車で移動すると雄大な琵琶湖がお出迎え。海のようだけど潮風ではない不思議な感覚。街はこじんまりしていて商店街もシャッターだらけではなく機能しているのが良い感じ。路面電車も趣がある。

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 時間があれば、こういう商店街も端から端まで歩きたいのだが、いかんせん時間が無い。泣く泣くスルー。

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 ここは学術書が多かった。山岳関係の書籍が多かったのも印象的。破格値のワゴンに文庫が並ぶ。古き良き古書店である。店内に入った瞬間の古本の匂いもたまらない。

 そして次へ。マップによれば高校の近くにあるチェーン店ではない古本屋である。

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呉「ああっ、嗚呼ッ!!」(涙)

 入り口にはカーテン、そして無常にも『火曜定休日』のお知らせが。

金平「オマエなぁ、また定休日確認せんと旅のプラン立てたんか?」

 とてつもない衝撃が私を襲う。ホセ・メンドーサに打ち砕かれたカーロス・リベラのテンプルかの如く。

金平「日頃の行いで神様云々とか言うてたが、日頃の行い、オマエ悪いんかもな。浮気性やしな(笑)」

 

 

呉「あぁー、サンバルカンのポスターとか貼ってる。絶対に俺好みの古本屋さんやわ」

金平「気を取り直して次行くか。天罰もここまでやろう。オマエの不運を俺の幸運でひっくり返したるわ」

 後ろ髪を引かれる思いで、その際、頭頂部から数本抜け落ちて、って誰が『頭頂部少なくなりましたね』じゃゴラァ!

 

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 時間は13時33分。お宝倉庫と向かいにはまんが古本屋が見えた。

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呉「何がワシの幸運じゃ! まんがひろば定休日やんけ! オマエの幸運も大概やのぅ! 幸薄人生やのぅ!」

金平「オマエの旅のプランがいつもアバウトやから、こうなるんやろうがい!」

 店の前で一触即発である。悪態をつきながら金平は、先ほど買ったコンデジで店を撮影し始める。

金平「あれっ? あれれっ?」

 移動中、シガレットソケットから充電して満タンにしていたのに、数枚撮影しただけでバッテリー切れとなったようだ。そりゃ十年前のバッテリー、へたっていて当然であろう。結局この旅では、五分ごとに充電せねば撮影できないという、ウルトラマンに毛の生えた程度の活動時間なのであった。私に悪態をついた天罰であろう。

 お宝広場で店内を物色。

呉「お、おい金平。お揃いでこれ買おうや」

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 ショッカーのロゴが入ったワイングラスである。見たことがない。何かのイベントの時の記念品であろうか? 纏まった数が出ている。激レア入手困難は誇大広告ではなさそうだ。

金平「ええな、これで世界征服、読書界の席巻を願って乾杯や」

呉「赤ワイン注いで乾杯の写真、夜にツイートしよう!」

 激レア品をお揃いで買って仲直りである。店を出たら腹が鳴った。

呉「近くに唐揚げ屋さんが見えるぞ」

金平「もう腹ぺこや、そこ行こう」

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呉「おい金平、この普通の唐揚げと味噌唐揚げのセット定食が二つの味を味わえてグーとちゃうか?」

金平「ええな、じゃあそれで」

呉「僕は二個増量の大盛りで」

金平「よう食うやっちゃな」

 可愛い店員さんが苦笑しながら厨房に戻る。

 運ばれてきたのは絶対にオイシイビジュアルの、たっぷり味噌に漬かった唐揚げであった。

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呉・金平「ンマーイ!

 舌鼓。頭振り回しながらの乱れ打ちの舞、である。

呉「味噌味が最高」

金平「この普通の唐揚げも、柔らかくってタレが美味いわ」

呉「毎度お馴染みのご当地グルメの件やけど、滋賀県近江牛が美味いらしいから、この旅で一度は食べような」

金平「検索せなな」

 腹ごしらえを終えて次の店に向かう。

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呉「でっかいイオンやなぁ、マップではここにブックオフがあるらしいんやけど」

金平「姫路のリバーシティよりデカいな」

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呉「よっしゃ、店内散策や」

 そうして我々は巨大なショッピングモールに突入したのだが、まず二階の端から端まで、そうして一階の端から端までをゆっくり歩きながら探したのだが、全く見つからない。

金平「おい呉、ホンマにここか?」

 相棒の眉間にシワが走る。

呉「間違いないわい。下調べはちゃんとしたんじゃ。オマエこそホゲーッとしとらんと探せや」

 美味い物を食って仲直りしたのに、速攻で険悪なムードである。

呉「ないなぁ、三階に上がって端から端まで歩こうか」

金平「足が棒じゃ! 既に1キロくらい歩いてるんとちゃうか?」

 巨大ショッピングモールで、泣きそうな顔になった五十のオッサン二人が迷子のお知らせである。

呉「あっ、あそこにサービスカウンターが見える。ギブや。悔しいけど聞いてみよう」

 私はプライドを捨てて、巨乳でフェロモンムンムンなサービスカウンターの厚化粧熟女に声をかけた。

呉「あのぅ、ブックオフは何階ですか?」

熟女「ブックオフはこの建物を出て、道を挟んで向こうに建っている別館内にございます」

呉・金平「別館!

 金平が無駄な運動をしたため、恨めしそうな目で私を見る。

呉「ま、まぁええやないか。食後の運動や。それよりもブックオフ、もっと主張せいよ!」

 結局2キロくらいウォーキング彷徨いになった格好で、我々は遂に店を発見した。

 

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 今回の旅では90年代のよくわからない女性のCD、設楽りさ子三井ゆり杉本彩東京パフォーマンスドールなどを確保する目標を立てた。

 そうして本ではミステリ関連と、最近イチオシの佐川恭一さんの本がターゲットであった。京大のお膝元、京都からも近い。もしかしたら出会えるかもしれない。

 マケプレでは阿波しらさぎ文学賞受賞後、プレミアが付き、値段が高騰していた。

終わりなき不在

終わりなき不在

 

 

無能男

無能男

  • 作者:佐川 恭一
  • 出版社/メーカー: 南の風社
  • 発売日: 2017/04/07
  • メディア: 単行本
 

 

 これといった手応えのないまま数軒、通過する。陽は沈みかけていた。

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 ここに至ってようやく持っていないCDを確保。広末涼子である。デビューアルバムで、発売当時は相当話題になった。

 竹内まりやなど、豪華作曲陣で作られたポップなアルバムである。

 

ARIGATO!

ARIGATO!

  • アーティスト:広末涼子
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1997/11/19
  • メディア: CD
 

 ショートカット美少女はたまらない。

 

〜つづきます〜

彦根旅行2

 今日はノルマを口にする上司もいなければ、即ギレスイッチの異名を持つ嫁さんもいない。

 天気は微妙な曇り空だが、なんとか雨にはならずに済んだ。

 我々は日々の苦労を互いに労い、謂わば『ネギラー』と化し、生活のストレスを解消すべく、姫路から一路滋賀県を目指していた。

 一発では行けない。我々は五十歳なので、喜び先走って一気に飛ばそうものなら『頻尿地獄』が待ち構えているのは明白である。

 ちゃーんと途中でおしっこを済ませてから目的地へ向かうのだ。

 というわけで明石インターでトイレ休憩。

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 新年の挨拶を済ませ、久しぶりの再会に握手を交わす。

「お互い新刊を出せて良かったな」

「我が妻、好調やないか」

「おまえこそ。連載島、めっちゃレビュー付いてるやん」

 

 

連載島 (ヤングキングコミックス)

連載島 (ヤングキングコミックス)

 

 

 二人でそれぞれの創作に対し、簡単な意見交換。2020年、幸先の良いスタートである。

「今日は予定お任せしてるけど、どういうペースで行くんや?」

「まず琵琶湖の左下から攻める。で、反時計回りでグルーッと彦根を経由して長浜まで、二泊三日で城二つ攻めたいな」

「おいおいおい、オマエ最初一泊って言うてたやないか」

「気付いたか」

「気付いたわ!」

「いやぁ、誤魔化し通せると思ったんやけどなぁ(笑)」

 だまし討ちでどさくさに紛れて彦根城長浜城をじっくり見学するプランを立てたのだが、人気作家の金平先生は連載が増えて、スケジュールが引っ張り上げて食い込ませたパンストの如く、ビチビチなのであった。

「定休日とか大丈夫やろうなぁ。松江、米子ではボロボロやったもんな、オマエのプラン」

「今回は大丈夫やろう。日頃の行いがワシらはエエんや。神様はご褒美をくださるはずや」

「またノーチェックかい! めっちゃアバウトなどんぶり勘定ぶりやのぅ」

 渋滞にもひっかからず車は大阪を通過し順調に滋賀県へ。

「よっしゃ一軒目や! 張り切って行こう」

 

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 時間は11時22分。まずはハードオフからである。血湧き肉躍る。『誰がぜい肉も踊ってますね』じゃゴラァ!

 瞳孔が開ききった状態で店内を物色。ここはレトロゲーが凄かった。メガドラマウスの箱付きとかあった。あとセガマスターシステムのソフトとかPCエンジンデュオの本体まで置いてあった。

「ほ、欲しい。が、高くて手がでん……」

 金平はコンデジを物色。

「ん? オマエどないしたん? 結構エエやつのサイバーショット持ってたやん。壊れたんか?」

「それがな、出版社のパーティー行ってな、有名作家さんと飲めて舞い上がってな。嬉しいのと悪酔いしたのとで、家に帰って気付いたらデジカメないねん(号泣)」

「会場でか? 駅とかでか?」

「分からへんねん」

 友はメソメソしていた。

「このあたり、どう思う?」

 10年くらい前のニコンコンデジが割と安く売られていた。

「1620万画素やん。充分やで」

 格安だったので箱も無く、本体をビニールで巻いただけでピアノ線で吊られていた。周辺機器も全く無い状態である。

「あのぅ、これ、充電方法とかは?」

「ええと、それはもうそのビニール袋の中身だけの販売になるんですよ」

 本体からバッテリーを抜いて、そのバッテリーをコンセントに刺し充電することはできないようだ。そこで私が本体の側面を見て気付く。

「あっ、店員さん、これバッテリー内蔵させたままで、横からUSB-A刺せば、本体で充電とか出来るタイプですか?」

「穴はありますね。試してみましょう」

 店員さんは奥のジャンクコーナーに行く。そうして大量の様々な規格のケーブルから見つけ出しレジに戻ってくる。

「USBをコンセントに刺す器具はお持ちですか?」

「持ってないんですよ」

 再び店員さんは別のジャンクコーナーに行って、iPhoneでもお馴染みの、白い四角いUSB穴の空いたコンセントを持ってきた。そして全て連結。コンセントに刺してみた。デジカメの充電ランプが点灯する。

「やったぁー!」

 三人で声を上げる。妙な連帯感が生まれた瞬間であった。

「じゃあこれ、全部買います」

 友はホクホク顔であった。

「やっぱ一眼も持ってるけど、コンデジが楽でええわ」

 中古のSDカードも購入して店を後にする。その近所にブックオフもあるので移動。

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 12時、近くのブックオフに移動。本、DVD、写真集を物色し、購入リストに沿ってロボットのように無駄なく確認していく。

 ダラダラと見るのではなく、要領よく店をはしごしていかなければ、すぐ夕方になってしまうことを、我々はこれまでの経験で知っていた。

 さぁ、お宝に巡り会えるのか。

 

〜つづきます〜

彦根旅行1〜旅のしおり〜

  新刊が無事に刊行できたので、ご褒美として遊びに行くことにする。

連載島 (ヤングキングコミックス)

連載島 (ヤングキングコミックス)

 

 

 有給を消化しきれていないので、三月で消えてしまわぬ内に使うことにした。現存12天守のうちの一つ『彦根城』へ金平を連れ回して差し上げる(笑)旅を計画した。

 我々の旅は、男二人旅であるにも関わらず、嫁さんの目を盗んでストリップとか風俗などとは全く無縁なストイックな旅なのである。

 まず、車のダッシュボードにビデオカメラをセットし、毎回旅の記録を全プレとして配布している(といっても二人だけだが)。

 語られる内容というのは、創作談義である。誰だ『きしょい』とか言う人は。

 それを永久保存版として、たまに見返すのだ。そうして金平が先に死んだら私が、私が先に死んだら多分金平が、おいおいと泣きながら見返すことだろう。それが人生だ。

 城を中心に、今回も周辺の古本屋、ブックオフを攻略していこうと思っている。

 

BOOKOFF 滋賀西大津店 滋賀県大津市松山町4−30

ハードオフ西大津店 滋賀県大津市皇子が丘3丁目9−1

古今書房 滋賀県大津市中央1丁目5−5

古書クロックワーク 膳所駅前店舗 滋賀県大津市馬場2丁目9−8

まんがひろば 滋賀県大津市大萱7丁目13−6

お宝ザクザク大津店 滋賀県大津市大将軍1丁目1−27

ダイナミックレコード 滋賀県草津市野村4丁目9−22

BOOKOFF イオンモール草津店 滋賀県草津市新浜町300

BOOKOFF 滋賀草津追分店 滋賀県草津市追分南1丁目1−19

ハードオフ草津栗東店  滋賀県栗東市坊袋251−1

あけぼの書店 滋賀県草津市野村3丁目3−23

BOOKOFF 滋賀草津駒井沢店 滋賀県草津市駒井沢町33

買取倉庫 甲西店 滋賀県湖南市夏見163−1

BOOKOFF 堅田店 滋賀県大津市真野2丁目29−1

BOOKOFF 近江八幡店 滋賀県近江八幡市白鳥町37−1

本の森 滋賀県近江八幡市出町4

北川書店 滋賀県彦根市高宮町1893

BOOKOFF 彦根店 滋賀県彦根市高宮町1525−1

半月舎 滋賀県彦根市中央町2−29

開放倉庫米原店 滋賀県米原市顔戸1429

(株)泰山堂 滋賀県米原市長岡1725−7

ハードオフ長浜店 滋賀県長浜市宮司町1148

さざなみ古書店 滋賀県長浜市宮前町10−12

三洋堂書店 長浜店 滋賀県長浜市小堀町424

BOOKOFF 滋賀長浜店 滋賀県長浜市八幡中山町535

 

 リストアップしてみたが、今回もなかなかの強行軍である。旅のレポートはiPhoneからツイート報告と、このブログと、あと、途中でツイキャス中継できたら移動中にやってみます。二人とも新刊出たてホヤホヤなので、その辺の話などを織り交ぜながら。

我が妻との闘争2020〜浮気心の代償 篇〜

 有言実行! 遂に完成しました!

 

 

  リアルでは年下の上司にメッサ怒られる日々ですが(苦笑)ネットでは結果を出す男、呉エイジでございます。

 

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 発売日、予想だにしない順位を頂きました。皆様のお陰でございます。

 今はこれを打ちながら祝杯を上げております。下戸だけど(笑)。

 今回は時間がかかりました。途中『書き下ろし、完成できるだろうか』みたいな弱気な感じになりもしましたが、なんとかやり遂げましたよ。大いなる安堵に今は包まれております。

 いいのが出来ました。可愛がってやってください。

 

 

新年一発目

 皆様、だいぶ遅くなりました。あけましておめでとうございます。

 2020年、あたくしは現在作業を進めている『我が妻との闘争2020〜浮気心の代償 篇〜』で毎晩せっせと頭の中の文章をアウトプットする日々でございます。

 三日坊主はとりあえずクリアしました!(笑)

 今年は『走る』『自分の文章を書く』『短編を寝る前に一本読む』を己に課し、まずは早い段階で我が妻の新刊、そしてずっと頭の中にある懸案の長編二本の制作に取りかかりたいと思っています。

 さぁ、最近の私の愛用品を皆様にもお勧めしておきましょう。実はSNSの誘惑に駈られぬよう、文章に専念するために『ポメラ』が欲しかったのですが、iPhoneを機種変し、11のproMAXになったため格段に処理能力が向上し、スマホでテキスト入力することにしました。

 それでこいつを買ったのですが、これが良い。

 

 

 真ん中にボタンがあり、押すとスライドして高さ調節ができ、背面の足も適度な堅さで角度を調整できます。

 このメカニカルな感じがいいんです。

 それに二階の私の自室は『部屋に籠もって出てこなくなるから』という嫁さんの命令により、暖房設備が無く(号泣)このシステムならリビングのホカホカカーペットの上で作業できて快適です。

 

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 金のMacBookは、iPhoneでひたすら入力したテキストを、最後に纏めて電子書籍化する母艦とし、今年はフットワーク重視で、立ち上げ時間も瞬時なスマホで制作していこうと思います。

 このコンパクトなテキスト入力環境、とても集中できてオススメです。本当はもっとコンパクトな折りたたみブルートゥースキーボードも欲しかったのですが、今使っているキーボードが故障も無く動いているので、しばらくはこれで行こうと思います。

 一月、遅くとも二月の前半には、我が妻の新刊を出せるよう現在急ピッチで作業中であります。

 その折りはどうぞ、皆様のご支援を賜りたく存じます。

 今年も良い一年にしていきましょう!