呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

平林初之輔「頭と足」を読む。

 論創ミステリ叢書を現在まで定期購読しており、これを書いている現在、112巻まで刊行されている。

 このシリーズが創刊された時は嬉しかった。

「おぉ、遂に私のハートを鷲掴みにするシリーズが始まった」

 と小躍りしたものだった。

 そして今、本棚からはみ出したシリーズを眺めて、ハタと気付く。

「このうち何冊読んだというのだ。本棚に収まって安心して、いつでも読める、と思いながら創刊から十年以上も経過しておるではないか」

 私はちょっとだけ焦った。この先不慮の事故で死んでしまうことだってあるかもしれない。

 そろそろ本腰を入れて読まねばならぬ。

 そしてこのブログを立ち上げた。

 私には「だめなやつら」というホームグラウンドがある。が、あそこは趣味であるアイドルCDのジャケ画像をアップしており、そこへ読書日記を絡めたら、何のブログか分からなくなる。

 よって永らく積ん読であった論創ミステリ叢書シリーズを消化すべく、鞭打つ意味を込めて読書日記を立ち上げた。

 で、平林初之輔の二本目「頭と足」である。

 軽い読み物で枚数も少ない。当時流行っていた「ビーストン風」とでも言おうか。

 新聞記者二人が船上で互いを気にしている。

 船上で手に入れた特ダネを本社へ伝える為、お互いの様子を探っているのだ。

 港から郵便局までは数キロある。

 駆け足で勝負すれば、若い商売敵の方が先に着くだろう。

 はて、どうしたものか。

 というショートストーリー。

 結末は足の遅い主人公が、かなり遅れてライバルに追いつくのだが、後ろに並んでいるのに、ちゃっかりスクープを先に本社へ届けている。

 というWHYに、ちゃんと論理的な結末を付けている。

 スマホもない時代、ドローンでもありませんよ。

 理知的な作者の好みが伺える。

 

「頭と足」1926年(大正15年)二月「探偵趣味」