呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

論創ミステリ叢書「平林初之輔探偵小説選1」総評

 ジムでいつまでも太っちょな女の子がいる。結構動いていて、汗もかいているのだが、通っている期間の割には体型に変化がない。

 きっと夜中に間食をしているのだろう。ポテチとかチョコとか。

 せっかくジムでカロリーを消費しても、ポテチ一袋を一人で食べたら、消費分など一発でオーバーする。

 そこで私が同棲して間食を我慢させる。

 女の子は(痩せたらきっと美人な子、ジムにも多いのだ)いつもの習慣で、寝る前にポテチの袋を開けようとする。

「ダメだ。せっかく昼間にジムに行ったのに、無駄になるじゃないか」

「お願い、この半分だけにするから」

 私は女の子の両手を握って見つめる。

 そんな日々が三ヶ月ほど続く。女の子は規則正しい食生活とジムでみるみる痩せていく。見違えるように綺麗になって自分に自信を持ち出す。当然私に告白しようとする。

 が、私は置き手紙を残してある日忽然と消えるのだ。鉄郎に別離を告げるメーテルのように。

「私はあなたの想い出の中にだけいる男。 少女の日の心の中にいた青春の幻影」

 金平、どうや。ぽっちゃり女の子を痩せさせる漫画とかは(笑)

 さて、総評「平林初之輔探偵小説選1」を読み終えて。

 発売から何年経過したのだろうか、ようやく通して一冊、読み終えることが出来た。

 私が「飽き性」なので、あっちの本の短編をちょこっと、こっちからもちょこっと、という浮気な読み方をするので、このような読書日記ブログでも立ち上げなければ、まだ数年先まで積ん読であったことだろう。

 1を読み終えて思ったことは「余技作家」と言われているが、娯楽性、構成などにも気を配り、松本泰あたりよりも頑張っているじゃないか(松本泰も通読していけば意見が変わるかもしれないが)という印象だ。

 文章や書き方も作品によっては古臭く感じるものもあるが、概ね理知的な読みやすい文章である。

 もしアンソロジーを私が編むとすれば、この本からどれを選ぶだろうか。

 代表作と言われる「予審調書」は、最初ぶっきらぼうな尋問から入って引っ掛けながらの最後はいい話。で面白いのだが、いかんせんこの制度が廃止になっているため伝わりにくい。

 やはり「私はかうして死んだ!」が、それまでの創作の蓄積から一歩飛び抜けた作りで、最後はユーモアまで滲み出ていて味のある一本となっている。一等はこの作を推したい。

 二番手には「誰が何故彼を殺したか」信念の殺人というテーマが面白い。

 三番手には本格ファンに向けて「山吹町の殺人」がいいだろう。

 次点で「頭と足」短いページ数ながら内容とタイトルの関係も決まっている。

 続けて「平林初之輔探偵小説選2」を読み進めて行きます。どうぞご愛顧のほどを。

 DMで「日記パートだけ読んでます!」と言われて、送り手としてはライダーカードだけ抜いて捨てられるライダースナック感がビシバシきておりますが、自分が楽しいのでこれからも時間の許す限り頑張ります!