ジェダイのフォース、あの力を使えればな、といつも思うのだ。
といってもライトサーベルで敵の攻撃をかわすとか、離れたものを引き寄せる、といった力ではなく、相手をコントロールするやつ。
手を相手の顔の前でスッと動かせば、操れる力。
「乳首を見せなさい」
とやれば、嫌な顔一つせず綺麗な女性がシャツをまくってくれるのだ。
しかしここに落とし穴がある。
最近では電柱やビルの側面などに防犯カメラがある。
私が綺麗な女性の前で手をかざして操っている動画を見て、
「こんなブサイクにこんな綺麗なお姉ちゃんが乳首見せるわけなくね? こいつ超能力を使ってるんじゃね?」
と気付くはずだ。って、チョ待てよ、誰がブサイクじゃゴラァ!
そうなると大抵アメリカからNASAが調査に来る。
私は不意打ちで猿ぐつわをかまされて、首筋にピストル型の注射を打たれ白眼を剥くのだ。
そして連日続く実験と研究。
両手を鎖で繋がれ電流を流されたり、ギザギザの木でできた座布団に正座させられたりするのだ。
それでも宇宙の神秘、フォースの秘密は吐かない。
時折羽ぼうきで乳首をチロチロされたりもする。
これは個人的に気持ちがいいので、もう少しで吐きそうになるのだ。
一進一退の攻防、研究者も埒があかない。
こっちもおいそれとフォースの秘密を喋れない。
何故ならヨーダが超怖いからである。
温厚そうに見えるが、ひとたびヨーダを怒らせると、細野晴臣の様な目がまぶた上下全部ひっくり返って、見開きながら睨みつけてくるらしい。
そしてその飛び出た目で睨まれたら、死を意味するらしい。
なので最後まで口は割らない。
となると当然解剖になる。
私はバラバラにされ、ビンに詰められるのだ。大友克洋の「アキラ」のように。
「脳みそ」とか「肝臓」とかラベルに書かれて、そしてだいたい研究者は頭は良くても実生活では馬鹿だから、テストは出来てもバスの乗り方が分からない的なアレだ。
先にラベルを瓶に貼ってしまい、後からマジックで書くものだから、字がグニャグニャに歪んで小学生の標本みたいになるのだ。情けなや。
ここまでされたら、流石にフォースの遣い手である私だとしても、再生は無理だろう。
くわばらくわばら。やはり普通に生きよう。
※
論創ミステリ叢書も二冊目に突入である。さて、今宵は「平林初之輔探偵小説選2」より「アパートの殺人」を読んだ。
タイトルも挑戦的で、平林初之輔がミステリに対して積極的に取り組んでいることが窺える。
あるアパートの一室で、映画女優の山上みさをが不審死を遂げた。死因は絞殺。直接の手がかりは何も発見されなかった。
簡単な前置きから物語は各関係者の証言で進めていく、という構成。
情夫の野球選手、神村。自称「恋人」を名乗る、雑誌編集者の村井。50歳のパトロン、製菓会社取締役の松木。女優仲間の植田。食堂のボーイ、鷲尾の証言が並ぶ。
みさをはヤク中であり、部屋は乱雑、ヘビースモーカーで寝るときは全裸。
関係者がそれぞれ「自分こそが人気女優の歓心を一番買っている」と思い込んでいるところが面白い。
それが各証言でちょっとずつズレていき、みさをの恋愛に関しての「だらしなさ」が原因で、事件全体の構図が証言が増えるたびに形を変えていく、というのが主眼だろうか。
みさをの吸わない銘柄のタバコが灰皿にあり「他に誰か来ているはず」という嫉妬心から問い詰めたい野球選手。などホームズ譚のような趣向も盛り込んでいる。
最後は意外な犯人を設定はしているが、それほど伏線も盛り込めておらず、尋問時の自白で解決になり、後出しジャンケン的な印象が強い。
1930年(昭和5年)7月「新青年」