呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

平林初之輔「ジャックリイン」を読む

 ツイッターのフォロワーさんには、この件に関してよく呟いているのでご承知のことと思うが、通っているジムでよく目のあう美魔女さんがいる。

 最近会わなかったので、てっきり退会したものと思っていたのだが、通う時間がずれていただけのようで、先日ジムでその姿を見かけた。

 話は飛ぶが、私の趣味は探偵小説を読むことで、何年も読んでいるうちに自然とシャーロックホームズのような推理力が備わるものである。私は美魔女さんとの関係を推理してみた。

 まず、美魔女さんとスタジオの際(50人くらいフロアーに入り、前のインストラクターと同じ動きをする)数分おきに水分補給タイムがあり、ジムの端っこに置いたそれぞれの水筒のところへ行くのだが、美魔女さんはゴクゴク飲みながら遠目に私を見る。

 私も二秒ほど視線を固定し、恥ずかしいから逸らす。

 美魔女さんはタンクトップ姿で肌の露出が凄い。その格好で私が列に並んでいる時、横に来たりする。そして大きめの声で連れの女性の方と喋り、笑ったりする。

 存在をアピールしているのだ。クールビューティーなので、自分からは行かない。ルアーを投げつけて、かぶりつくのを待っているのだ。

 これは私の推理だが、この奥さん、きっと年上の夫なのだろう。美魔女さんは私より1、2歳年上っぽい。ご主人は60手前ではなかろうか?

 当然、夜のお勤めも枯れているのだろう。美魔女さんは悶々と日々を過ごす。

 その悶々を払いのけるために、あれだけジムで激しくエアロビを舞うのだ。

 こういう女性は、交際したとしたら攻撃的なのではないだろうか?

 私は唱歌『ドナドナ』に登場する、か弱い子牛のようなキャラなので、きっとこの美魔女さんは、自分主導でリードしてくるに違いない。

 私の口をアイアンクローのようにクワッと広げ、上から唾液を落としそうな雰囲気を持っている。

 そして私もそういうことをされたことがないので、案外屈辱よりも先に興奮してしまうかもしれない。

 要するに先に進めば『ヤバイ』ということが言いたいのだ。

 私はジムでの美魔女さんとのやりとりを、表現を柔らかめにして『私を好いておる』という実例を証拠を並べて説明して見たのだが、嫁さんは無表情で

「オマエの頭の中は盆踊りか」

 とだけ言うと、洗い物のためにさっさと台所へ歩いて行ってしまった。

 妻のヤキモチ、というものは可愛いものである。

 さて、今宵は「ジャックリイン」を読み終えた。

 これも平林初之輔の手による翻訳作品である。

 この作も、なかなか迫力があって面白い。

 貴族が街で出会った下町の女、恋に落ちてそのまま結婚するのだが、男の高貴さに女はだんだん息苦しくなる。

 家に帰ると来客に若い男、妻の友達らしいが、その存在も面白くない。

 そこへ警察から一報が。妻が殺されたらしい。それも不倫男と密会中、男の妻に射殺されて。

 貴族は妻を蔑み、軽蔑から顔色一つ変えない。

 数年後、射殺した相手の妻から頼まれる。あの後、国外に逃げた夫と、この街でまた暮らしたい。が、夫は貴方を恐れている。許してやってくれ、と言うものだ。

 ここで貴族は話をしながら、改めて事件を見つめ直す。

 本当に妻は不貞を働いたのか。

 妻から誘惑したのか。

 嫉妬に狂ったこの目の前にいる女が、家庭を守る為に射殺したのではないか。

 貴族は遺体安置所に横たわる妻のビジュアルを思い出す。そこには男の暴力から抵抗しようとした痕跡が浮かび上がった。

 どのような結末を迎えたか、これはなかなか面白かったので、興味を持たれた方はどうぞご自身の目でご確認ください。

 

平林初之輔探偵小説選〈2〉 (論創ミステリ叢書)

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