呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

甲賀三郎「印象に残る作家作品」を読む

「アンタ、二階のアレ、捨てるで」

 また嫁さん恒例の『死の宣告』が出た。何故こうも嫁さんというものは、自分の価値観で平然と人の物を捨てようとするのか。

「あかんがな。まだ充分動くし、そもそも大切に使ってるがな」

 必死の抵抗を試みる。

「邪魔でしゃあないねん。掃除もしにくいし」

「それだけの理由で人の物を捨てるんか?」

「じゃあアンタ、毎日動かしてあの下拭くか?」

 よく分からない論理の四次元殺法。

「頼むからワシの私物、簡単に捨てるって言うてくれるな」

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  私の愛機「ジョーバちゃん」の件で嫁さんと一悶着なのであった。

「大体な、夜仕事から帰ってきてからな、二階でウィーンガチャコン、ウィーンガチャコンうるさいねん」

「ワシはな、時間が足りんのや。仕事して、残業して、本も読みたいし、ネットで文章も書きたいし、腹の贅肉も取りたいし、だからアレに乗って読書すれば、同時にウエストを刺激して一石二鳥やろ」

 皆さん、この読書日記ブログは、ジョーバちゃんに乗って読んでいる本の感想文なのですぞ。

「時間短縮に貢献してくれてるんや。捨てるとか堪忍してくれ。本を読みながらダイエット、これ捨てられてしもうたら、川沿いの自転車専用道路あるやろ、あそこに行って本読みながらウォーキングでもせんと仕方なくなるやろ」

「世間に恥さらしかい! そんなアホの二宮金次郎みたいなことさせへんぞ!」

 なんだか毎日少しずつ傷ついているような気がする。

 この日記の読者が、右肩上がりで増えていることだけが、今の心の支えだ。

 さて、今回は「印象に残る作家作品」を読み終えた。

 甲賀三郎の肩の力を抜いたエッセイ。コリンズの「白衣の婦人」よりも「月長石」を推し、ポー、ドイルは当然としてルパンシリーズを挙げている。

 特に「本筋と横筋を縦横無尽に織り込んで」という一節は、そのまんま甲賀の代表作「琥珀のパイプ」における構造と同じである。影響の大きさが窺える。

 次にルルーの「黄色い部屋の謎」チェスタトン、ビーストン、ルヴェルを挙げている。

 日本の作家では岡本綺堂江戸川乱歩を挙げた。このエッセイが出たのは、乱歩の「新青年」連続短編が終わった頃、という黄金の絶頂期だ。

 1925年(大正14年)8月「新青年

甲賀三郎探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

甲賀三郎探偵小説選 (論創ミステリ叢書)