「アンタ、二階のアレ、捨てるで」
また嫁さん恒例の『死の宣告』が出た。何故こうも嫁さんというものは、自分の価値観で平然と人の物を捨てようとするのか。
「あかんがな。まだ充分動くし、そもそも大切に使ってるがな」
必死の抵抗を試みる。
「邪魔でしゃあないねん。掃除もしにくいし」
「それだけの理由で人の物を捨てるんか?」
「じゃあアンタ、毎日動かしてあの下拭くか?」
よく分からない論理の四次元殺法。
「頼むからワシの私物、簡単に捨てるって言うてくれるな」
私の愛機「ジョーバちゃん」の件で嫁さんと一悶着なのであった。
「大体な、夜仕事から帰ってきてからな、二階でウィーンガチャコン、ウィーンガチャコンうるさいねん」
「ワシはな、時間が足りんのや。仕事して、残業して、本も読みたいし、ネットで文章も書きたいし、腹の贅肉も取りたいし、だからアレに乗って読書すれば、同時にウエストを刺激して一石二鳥やろ」
皆さん、この読書日記ブログは、ジョーバちゃんに乗って読んでいる本の感想文なのですぞ。
「時間短縮に貢献してくれてるんや。捨てるとか堪忍してくれ。本を読みながらダイエット、これ捨てられてしもうたら、川沿いの自転車専用道路あるやろ、あそこに行って本読みながらウォーキングでもせんと仕方なくなるやろ」
「世間に恥さらしかい! そんなアホの二宮金次郎みたいなことさせへんぞ!」
なんだか毎日少しずつ傷ついているような気がする。
この日記の読者が、右肩上がりで増えていることだけが、今の心の支えだ。
※
さて、今回は「印象に残る作家作品」を読み終えた。
甲賀三郎の肩の力を抜いたエッセイ。コリンズの「白衣の婦人」よりも「月長石」を推し、ポー、ドイルは当然としてルパンシリーズを挙げている。
特に「本筋と横筋を縦横無尽に織り込んで」という一節は、そのまんま甲賀の代表作「琥珀のパイプ」における構造と同じである。影響の大きさが窺える。
次にルルーの「黄色い部屋の謎」チェスタトン、ビーストン、ルヴェルを挙げている。
日本の作家では岡本綺堂、江戸川乱歩を挙げた。このエッセイが出たのは、乱歩の「新青年」連続短編が終わった頃、という黄金の絶頂期だ。
1925年(大正14年)8月「新青年」