呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

松本泰「ガラスの橋」を読む

 言葉の解釈の違いを極め、なんとか困難などを乗り越えていけたら、と思うのだ。

 今日もジムでまゆゆ似の奥さんと、結構近くで筋トレが一緒になった。向こうも距離を詰めてきているのだ。しかし私はチキン野郎なので、向こうのご期待に添える展開は期待できない。

呉「可愛いスポーツウェアですね」

奥さん「そういうの、セクハラじゃないですか?」

呉「こ、言葉の解釈の違いです。私はあなたの半袖から時折覗く、ワキの地肌を盗み見ているわけではありません」

 釈明しすぎて自爆しているパターンだ。言わなくてもいいワキの盗み見を全部バラしてしまっているではないか阿呆めが。

呉「そんなにスリムなのに、ジムに来る必要なんてないじゃないですか。まぁジムに来なければ貴方と顔見知りになることもなかったので、それはそれで寂しいですけども」

奥さん「どこ見てるんですか? 私の身体の線を見てるんですか?」

呉「こ、言葉の解釈の違いです。身体の線を見てるなんて心外です。この僕があなたが時折ダンベルを持って体を横に倒した時に覗く、脇腹の地肌を0.05秒だけ盗み見ているとでもいうのですか?」

 これも慌てすぎて、決して相手に知られたくない情報を全部さらけ出してしまっている自爆のパターンではないかタコが。学習能力ゼロか。まず0.05秒ってなんだ、ギャバンの蒸着か?!

会社の後輩「呉先輩、それ、先輩のこと気になってるんっすよ。女性はね、強引な男に弱いんですよ。ずっと押せばそのうち恋愛感情に変化していくんっすよ」

 そう力説する後輩が、36歳で彼女無し独身なので、論に全く説得力など無かった。

 真面目に筋トレやっときます。

 ※

 さて、今回は「ガラスの橋」を読み終えた。

 ここから先はネタバレがあるので未読の方はご注意を。

「使ってしまったな」というのが率直な感想である。この作品の構造はいわば「夢オチ」である。なので、どのような荒唐無稽な話を書いたとしても、所詮は与太話である。

 そこで松本泰はどのような工夫をしたのか。

・主人公は悪夢を見る。そしてそれが本当のことになる、という意味深な前振り

切り裂きジャックの紹介記事(これは当時の日本の読者にはウケたのではないだろうか?)

・それに似たロンドンの殺人鬼、ベイリーの紹介(創作)、愛する妻を何故殺したのか? という「WHY」を設定しているが、泰の創作上の殺人鬼なのに、その動機は説明されない!

 唯一探偵小説的な趣向を探そうと思えば、終盤、後追い自殺したベイリーのことを思い出し「私の夢は本当のことになる」という伏線の回収っぽいことをやっていることぐらいなのだが、その挿話とて、前段の主人公が人殺しをしてしまって、大勢の人から追われる、という悪夢となんらリンクはしていない。

 英国暮らしの本場の雰囲気をお伝えする、探偵小説風味の紹介者。これが現時点で私の感じている松本泰像だ。

 

1925年(大正14年)3月「探偵文藝」

松本泰探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

松本泰探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)