呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

松本泰「秘められたる挿話」を読む

 ジムで目の合う「まゆゆ似」の女性。

 前回は見事に向こうの手のひらで転がされた格好になった。

 私の横のソファーで、ガリガリガリクソン似のデブ男と、仲良く談笑しているのを見せつけられた、ところまでは話したな(怒り口調!)

 今日はジムに入ると、彼女はダンベルを持ち鏡に向かってトレーニングをしていた。

 そこでバッチリ目が合ってしまった。

 私は少し離れたマシンに座り、 ドキドキしながらトレーニングをしていた。

 すると今日は、私の正面のマシンに彼女は移動してきたではないか!

 そして今日は露出度の高いシャツである。脇や、背中に空間があり、素肌が見える。

 色白の綺麗な肌が覗いている。

 私の動悸は一気に跳ね上がってしまった。恥ずかしくて正面を向くことができない。

 ワザとらしく肩で息をしながら、下を向いて苦しそうな風を装う。

 申し訳ない、せっかく距離を詰めてくれたのに。話しかける勇気がない。

 お互いがお互いの位置を意識しながら、近くのマシンへ順番に移動していく。

 今日は向こう、攻めてるな。服装からも読み取れる。

 しばらくして彼女は休憩のソファーの方へ移動した。するとどこからともなくガリガリガリクソンが現れて横へ座りに行った。

 私は壁のミラーを何段階か反射させて、隙間から其の様子を観察していた。

 連絡先を交換できたのだろうか? ガリクソンは馴れ馴れしい感じで話しかけている。

 数分喋ってガリクソンが立ち去ると、今度は私と同年代、四十代後半のおっさんが、彼女のソファーの近くに座った。

 どうやら挨拶をしているようだ。残念ながら会話まではここまで届かない。

 あのオッさん、どう見ても既婚者だろう。パワフルだなぁ。

 そして彼女、恐ろしくモテる。そりゃそうだろうなぁ、色が白くて鼻が高くて、笑顔になると、目がホニャーっとなる。

 なんだか急に全く手の届かない女性のように思えてきた。

 私はタオルやiPhoneを入れた手提げカバンを持つと、少し早いがジムから退出しようとした。何故だか虚しかったのだ。

 出口のところで顔を横に向け、彼女に怒っている顔を見せた。すると、向こうもこっちを向いていて、やはり怒ったような表情である。

 何故そっちが怒る。こっちなら分かるが。

 出会い目的の男どもが、今後もたくさん彼女に声をかけるんだろうなぁ。

 さて、今回は「秘められたる挿話」を読み終えた。

 隣の家で強盗殺人が起きた。被害者は金満家の老婆。主人公は夜中にバイオリンなどの物音を聞いたような記憶がある。子供が熱を出して夜中手当てをしていた妻との証言が食い違う。

 作中を貫く貞節な妻の謎の行動。

 ここからは真相に触れているので未読の方はご注意を。

 これ、妻が主人公の弟を犯罪を見逃している、ことを匂わせる終わり方なのだが、おそらく肉体関係があるのだろう。

 それを主人公は傍観している。妻の不貞を攻め立てようとしない。傍観者視点の泰先生、面目躍如である。

 何故怒らないのか? 松本泰の生き方なのだろうか? 私には無理だ。嫉妬深いので、とても黙ってはいられない。相手の男とも徹底的にやり合うだろう。

 達観しているのだろうか? 犯罪譚よりも、其の心持ちの方が印象に残る。

 

1926年(大正15年)10月「苦楽」

松本泰探偵小説選〈2〉 (論創ミステリ叢書)

松本泰探偵小説選〈2〉 (論創ミステリ叢書)