呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

浜尾四郎「正義」を読む

「日々を精神と時の部屋にしてぇ」

 いきなりの悟空調は、新しいパワーアップアイテムを購入したからである。

 パワーアンクルである。

 

トータルフィットネス(TotalFitness) アンクルリストウェイト(タオル地)  STW143

トータルフィットネス(TotalFitness) アンクルリストウェイト(タオル地) STW143

 

 

f:id:Kureage:20180620181757j:plain

 片方0.5キロ。両足で1キロ。

 これをジムのウォーキングマシンで装着しながら試してみよう、と思ったのだ。

 EMSパッド、計測はしていないのだが、わずかながらウエスト周りに効いた手応えがある。ジーパンのベルトの穴に前よりも余裕が出来たからだ。一つ奥の穴にも入るようになった。

 ジムの腹筋台で必死の形相で腹筋運動をするのがチョット恥ずかしい。

 なので、このパワーアンクルで有酸素運動をこなし、筋力を上げ

「10べえ界王拳

 を使えるように頑張りたい。

 ※

 さて、今回は「正義」を読み終えた。

 この論創ミステリ叢書を順番に読む、ことを目的に立ち上げたこのブログであるが、昭和の探偵小説好きは学生からで、この浜尾四郎も持ってはいたが、長らく読んではいなかった作家である。

 勝手な印象として「堅物」「法律に関する懐疑」みたいな先入観を持っていたのだが、なんのなんの、本作の熱量はなんだ。読ませるではないか。

 これが昭和5年の作か? と驚かされるほどだ。

 内容に踏み込んだ記述もあるので、未読の方はご注意を。

 冒頭、弁護士の主人公の家に旧友である芸術家が訪れる。聞けば裁判を傍聴していたらしい。意外な感を抱く主人公。

 最初のシーンから計算された演出で、すれっからしの探偵小説読みからすれば「先読み」を許す展開ではあるが、この作品はその読みを上回る、人生のやり切れなさを叩きつけた余韻を残す傑作、といえよう。読み進めた中、ここまでで一等である。

 考え抜かれた、でもありふれた事件。金持ちが世話になったボーイに手持ちの大金を贈呈し、その直後ピストル自殺を図る。

 遺書でも残しておけば良いのだが、ボーイは状況にためらい、その場を逃げる。ボーイには借金があり、その送られた大金は喉から手が出るくらいに欲しかった。

 だが、ここで声をあげれば「盗んだのではないか? 金をやるとは言っていないのではないか?」と疑われることを恐れ、その場から逃げ、翌日発見したフリをする。

 捜査の段階で、数日後にボーイが借金を返済したことからボーイの犯行を前提に法廷で争われる。

 ここでは「警察の過剰な尋問による陳述の捻じ曲げ」の批判も盛り込みつつ、冤罪の危機を描き、正義は守られるべきだ、と宣言する主人公の弁護士と、何かを知る芸術家の友との白熱した議論で物語は進む。本場の空気を知る著者の面目躍如である。

 有罪に問われそうなボーイに友は「証人がいる」ことを告げる。その証人が誰なのか、読んでいれば大抵の見当はつくのだが、物語の最後、その予想が当たったとしてもガッカリすることはなく、仕事、愛、結婚、友情、そして法が絡み合う、なんともやり切れない人間模様を見事に描き切っている。傑作。

 

1930年(昭和5年)4月「新青年

浜尾四郎探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

浜尾四郎探偵小説選 (論創ミステリ叢書)