呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

メフィスト賞を読んだ

 メフィスト賞を読んだ。名倉編先生の「異セカイ系」だ。この遅読な私が、長編小説をたったの二日で! 私の読書スピードは、面白さに比例するのだ。

 

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)

 

 色々と初体験でしたわ(リスペクトを込めて私も日頃の播州弁で)。まず「転生」モノ、に拒否反応といいますか、読まず嫌いといいますか、まぁSFですやん?

 それもものすごく自分に甘そうな。確かに「小説」は娯楽ですわ。私も日々の激務を終え、小説を読むことで楽しんでる、っちゅうのは確かです。

 で、普通の人が気付いたら異世界に行って英雄になっていた、とか、もう、ちょっとそういうの読むの恥ずい年齢なんですわ。

 で、この作品、第1章を読み終えて「意外と楽しめてる自分」に気付いたんですわ。でも、頭の片隅で囁かれます。

「この作者の文体やからやぞ、他の転生ものならどうかな?」と。

「作者への挑戦状」みたいなミステロイドな試みや、伏線回収もありますが、この作品はミステリの体裁を取った「ザッツ・エンターテインメント明朗ポップ哲学」みたいな趣ですわな。

 まず、現実世界と小説世界を行き来する。という世界。

 そこでドキドキしたり、ときめいたりする。色々と仕掛けも間に差し込んできよります。

 メッセージ性も込められており、もうそれは私のようなすれっからしの読者からすると、眩しすぎて斜に構えてしまうんですな。

 いや、否定はしまへん。いいことやと思いますから。それぞれの世代のそれぞれの「イマジン」は声高らかに唄うてもろうたらええ思います。

 上司に怒られ、仕事でミスして、客に頭下げて、嫁さんに怒られて、歳取りますとな、真っ当な光り輝く提言でも没入できなかったりするもんですわ。

 若さに対しての嫉妬かもしれまへん。

 ええ、分かってます。私が汚れておるんです。そういう提言に無条件で諸手を挙げて賛同する自分が恥ずかしゅうなってしもうとるんです。自分が悪いんです。

 この小説は小説内のキャラクターと愛し合えるか、と聞いておきながら、読むものの現実問題や意識にまで乗り出してきよります。

 よくわからない時代だからこそ、こういうまっすぐなモノが支持されるのでしょう。

「甘さ」を「塩」で表現する「ブルボン ピッカラ」ではなく「上質な砂糖」が下地の作品とでも言いましょうか。

 それでも、なんやろう。この読後感は。小説っちゅうか熱い手紙を読んだ感じ、やろかな。

 

異セカイ系 (講談社タイガ)

異セカイ系 (講談社タイガ)