呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

久山秀子「刑事ふんづかまる」を読む

 相棒金平の新刊「コレハラ?」を読んだ。

 

コレハラ? (ヤングキングコミックス)

コレハラ? (ヤングキングコミックス)

 

 

 私はギャグ漫画に厳格である。笑いの構造を分析して吸収したい一心から、ギャグ漫画であるにも関わらず、最後まで眉間にシワを寄せたまま読了、みたいなこともしょっちゅうある。

 楽しんで読んではいるが、笑っていないことに気付くのである。

 なので、私がギャグ漫画を読んで声を出して笑うのは、無心になった時と、作家に笑いのツボを突かれた時、である。

 この「コレハラ?」はどうか。

 身内の贔屓目を抜きにして、プッと吹いたぞ、金平、このシーンで。

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 ちょっと大友入ってないか?(笑)

 あと、スメルハラスメントのこのシーン。

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 これ鉄男入ってないか?(笑)

 まぁ、声を出して笑ってしまったので、この勝負、お前の勝ちだ。

 担当さんの意見が入ったかどうかは聞いていないが、後半、今までにない金平の境地が垣間見える。

 神様の使いの出現とか、百合っぽい自問自答とか、リドルストーリーで一旦ぶち切ってからの、哲学者の一言とか、それにビジュアルが伴って、作者の高揚感が伝わってくる。

 小説を読んでいないのに、自己培養でマイ哲学を作り上げおった。

 キャリアの中でも傑作の部類だろう。

 多くの人の目に触れて欲しい一冊である。

 さて、今回は「刑事ふんづかまる」を読み終えた。

 短いものだが、良かった。連続で読み進めているが、その中でも気が利いていて面白い。

 高山刑事に付け回される隼お秀。警察がスリの一斉検挙で、部下や仲間たちが検挙されてはじめていた。

 現行犯逮捕でもないのに、どうして検挙できるのか? どうやら警察は証拠を握っているらしいが、それは一体何なのか?

 隼を逮捕しようと追い続ける高山刑事、お秀は映画館で高山刑事の財布を盗む。ここで計略を仕掛ける。

 映画館を出て高山刑事が「お茶を奢れ」と声をかける。ここが向こうの作戦なのだ。

 スリの現行犯ではなく、偽造紙幣の不正使用の現行犯で仲間は検挙されていったのだ。

 それを見抜いた隼お秀は、高山刑事に偽札を忍び込ませ、会計時に大恥をかかせる。隼お秀の痛快な啖呵切りもキャラクターにマッチしており、悪人の勝利なのに嫌味がない。

 

 1927年7月「探偵趣味」