呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

橋本五郎「狆」を読む

 レトロゲームファンなので、ファミコンは大好物である。

 アマゾンアプリで漂っているうちに、気になる一冊を目にした。

 これは任天堂非公認の、ファミコンで動作する、いわゆる『エロゲー』の紹介本である。

 今では写真か? と思えるほど、ゲームでは発達した3D表現だが、私が子供の頃にプレイしたゲームはドット絵であった。

 そのドット絵にロマンを感じた子供の頃、子供用のゲーム機ではご禁制であった女体、からの乳首(笑)

 近いうちに買おうと思っている本である。

 さて、今回は「狆」を読み終えた。

 正直に告白すると、初読時、理解できなかったのだ。分からなかったのである。

 変に深読みをしたせいかもしれない。

 二、三度読み返して、なんとなくではあるが自分の腑に落ちた。

 爺の妾である女性と浮気をする年下の男。女性から家の腕時計や指輪を持ち出させて、金に換える男。証拠はないから犯人は挙がりっこない、と構えている。

 指紋にも気を使い、警察の目も何度か欺いている。

 爺は『男がいるなら言え、一緒にさせてやる』とは言うが、それを言えばこれまでに悪事が露見する。

 ケチの爺は、無くなるものが泥棒のせいとは思えず、探偵を雇う。

 探偵は男の下宿を訪問した時に、女の家で飼っている犬『狆』を抱きかかえて聞き込みに来た。

『長らく会っていない』という証言と食い違う、狆のなつきよう。探偵の手を離れ、男の膝に収まる。

 冷や汗をかいて必死に『大の犬好きでして』と弁明する日頃指紋まで気にしていた男だが、これだけで犯人は特定されたようなものだった。

 結局、男と女は貧しくも一緒になる。

『逢引の現場を狆に見せてたのは失敗だったなぁ』

 という言葉が漏れる。

 読み進めて、女の元を去る時、草履の片方が無くなるシーンがあるのだが、これがわからない。裏口の戸の鍵は開いており、人の気配はない。

 結局男は女ものの下駄を履いて帰るのだが、この草履がなくなったのが狆のせい、と女は言うが、探偵の仕業であったのか。

 描写がない分、推測になるのだが、完全犯罪を信じて、誰の目をも盗んで逢引できている、と思っていた男、草履を隠されたのは、狆であたりを付けていた探偵からのメッセージであった。というのが私の読みですが合ってます?(笑)

 

 1926年8月「探偵趣味」

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)