松江に入り、その日に回る店舗を全て制覇し、壷焼きカレーに舌鼓を打った我々は、今宵の宿である『松江アーバンホテル』へと向かう。
小泉八雲も出雲大社も宍道湖もすっ飛ばし、ブックオフだけ巡る狂ったツアー、疲れ果てた我々は、近くのコンビニで酒とおつまみを買い、チェックインする。
呉「金平、宿やけどな、スマホで予約してな、松江でも色々あるんや。素泊まりで8千円とかな」
金平「ほぅほぅ。結構するな」
呉「ワシ、粘って夜なべして探したがな。一人三千円や!」
金平「ブラボー!」
呉「それがな、ラブラブカップルコースっちゅうてな。密着して眠れます、やって」
金平「それは別にいらんけどな(笑)まぁ安けりゃそれに越したことはない。以前の名古屋縦断ブックオフツアーで、パーキングエリアでワンボックスの後ろに布団敷いて車中泊したやろ? あの時腰痛がひどくなってな、あれから車中泊はコリゴリやったんや」
(※この写真は翌朝の撮影)
呉「ホテルの三階にな、宍道湖を見渡せる展望大浴場があるねん」
金平「それも嬉しい。ユニットバス、交代で入るの面倒臭いもんな」
フロントでカードキーを受け取り、疲れた身体を引きずって8階へ。
金平「やっとゆっくりできるな」
呉「歩き疲れたな。展望風呂入って乾杯しようや」
呉「えーっと、通路の奥は、っと」
呉・金平「密着部屋!」
さすがラブラブカップルコースの部屋である。これは野郎二人の泊まる部屋ではなかった。愛を語らう部屋であった。
呉『(あぁ、こんな部屋でジムで出会う『まゆゆ似』の彼女とアバンチュール泊出来たなら……。悪魔に魂、五年売ってもいい)』
目の前にモヤが広がる。ベッドに並んで寝転がる私とまゆゆ似の彼女。熱いキスを交わす。
呉「君は悪女だ」
まゆゆ似の彼女「なんで?」
素直にキスに応じたのに、まゆゆ似の彼女は解せない。
呉「だって僕は既婚者、君は独身、初めての、それも泊まり旅行で、いきなりベッドに押し倒してキスしたら」
まゆゆ似の彼女「キスしたら?」
呉「まともな女の子なら、すぐさまほっぺたをひっぱたくだろう。でも君はそうしない。なんなら舌を絡めてくる。どんどん男を好きにさせていく。君は天然の悪女だ」
まゆゆ似の彼女「ばか……」
金平「おい、呉、何ベッド凝視しとるねん」
呉「あっ、いや、明日の予定をこのスーパーコンピューターで組み立ててな」
私は妄想を悟られぬよう、慌てて自分のこめかみを指差した。
金平「何がスーパーコンピューターや、店定休日だらけで欠陥品やんけ!(笑)」
展望風呂は宍道湖の夜景が一望できて絶景であった。二人並んで夜景を眺める。
呉・金平「あー、ええ湯やなぁ」
湯の温度も丁度よく、風呂がそれほど好きではない私も、つい長湯をしてしまった。
そして部屋に戻り乾杯。下戸の私は疲れも手伝い当然速攻で酔っ払う。
ダイエットで『いびき』を卒業した、と宣言したのだが、翌朝金平から『眠れなんだ!』と、こっぴどく怒られた。
どうやら酔っ払うと『いびき』は復活するらしかった(笑)
〜続く〜