山陰名物『牛骨ラーメン』に舌鼓を打ち、エネルギー充填完了した二人は、再びこの旅の目的である店巡りに戻るのであった。
角盤文庫さんに到着。ここは期待していたのだが、置いてあるのは漫画だけであった。勝手にハードルを上げたのはこっちのせいである。
かつては郵便局だったのだろうか? 雰囲気のある店舗であった。
ブックオフに到着。結城昌治の角川文庫は無し。日本推理作家協会賞受賞作全集も無し。肩を落として帰ろうか、と思ったその時、ありましたよ! アンソロジーの棚に!
このシリーズ、コンプリートがすぐ先に見えてまいりましたよ。ウキウキしながら店を出る時、ちょっと前に読者の方に言われた言葉が突如頭の中でリフレインする。
「呉さんは本当は探偵小説を読むのが好き、なのではなく揃えるのが好き、なんじゃないですか? ないですか? ないですか? ないですか?」
呉「いやっ、読むのも好きなはずなんです。だって僕は中学から横溝、乱歩、久作を読んでいたし、沢山読んでいたからこそ、ちょっとだけ文章を書けるようになったんだし、本も出してもらえるようになったんだし」
金平「オマエ駐車場で一人で何言うてるねん」
呉「わぁっ、出てきてたんかい。脅かすなや」
金平「独り言言う奴は妄想が酷い証拠やな」
呉「妄想が酷いのは否定できへんわ(笑)」
そして次の店をチェックする。『古書の店ギャラリー』さんだ。ブックオフ以外の昔ながらの古本屋さんだ。
ここは素晴らしかった。店内に本がビッシリと積まれ、通路にも本棚の上にも至る所に並べられていた。
文庫をチェックしても、バーコードの無い古い文庫がたくさん置いてある。私は気持ちを高ぶらせながら『ゆ』の棚へ向かう。
呉「ああっ!」
この旅で最高のエクスタシーが訪れた瞬間であった。まさか米子で巡り会えるとは。バーコードの無い旧角川文庫の結城昌治は三冊あった。
その中に丁度持っていなかった「夜の終わる時」が。絶滅危惧種の結城昌治文庫。
無いから。本当に無いから。貴方も近所のブックオフに行って『ゆ』の棚を見てごらんなさい。まぁ無いですから。
本棚から抜き取る至福の瞬間。私は嬉しさの余り卒倒しそうであった。
よかった、山陰に来て良かった。逆にこのタイミングで山陰じゃなかったら、この文庫に出会えてなかったかもしれない。この一冊だけでこの旅は意義あるものとなった。
駆け足でチェックするだけなのが本当に惜しい。半日くらい物色したいお店であった。ありがとう古書の店ギャラリー。
金平「探してた本、あったんやな」
呉「あった。最高やわ」
金平「次は?」
呉「次もチェーン店じゃなく昔ながらの古本屋さんや。油屋書店ってお店」
金平「で、臨時休業、ってオチが付くとかか?(笑)」
呉「まさか(笑)一応iPhoneで見とこか?」
呉「金平、アドバイスありがとう。木曜日定休日やった(号泣)」
金平「オマエなぁ(笑)幹事失格やで、ホンマ」
やはり出雲大社にお参りしてから旅をスタートさせるべきであったのかもしれない。
〜続きます〜