呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

本とジムの話など。

 昨日は本が届いた。木々高太郎のジュヴナイル『スペクトルD線』である。

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 六冊の『木々高太郎全集』を持ち安心していたのだが、目次を見ても『スペクトルD線』は収録されていない。慌てて注文した次第である。

@jigsawan  古本屋 ジグソーハウスさんで通販をしているので、同好の士よ、急がれよ。

 さて、およそ十日ぶりに夜のジムへいったのだが、私はビビリまくっていた。取り巻きや、男性ファンから絡まれたらどうしよう、と必要以上に警戒していたのである。

 ジムに入ると『まゆゆ似』の彼女の姿は無かった。

 肩透かし、というか残念というか、辞めてしまったのかもしれない、とその時に思った。

 しかし根性を出して挨拶をしたのだ。悔いはないではないか。

 私は清々しい気分でスタジオに入った。後五分でダンスの時間である。

 ストレッチをしていると、鏡に映るあの見慣れたウェアの彼女が入り口から入ってくる。

 来た。どうする? 私の心臓は高鳴った。だがもう会話の手持ちが無い。前回で全弾打ち尽くしたのだ。

 勇気を出して振り返り彼女の方を見る。彼女もこっちを見ていた。目が合う。困る。

 そして彼女はこっちに向かって歩いてきた。無理、もう目を合わせていられない。根性無しを笑ってくれろ。

 私はわざとらしく、下を向いた。すると彼女は一人置いて、私の右斜め前にスタンバった。他にもスペースがあるというのに。

 その距離1メートル。

 話をするにしても間に一人いるのが邪魔だ。ダンス中、向こうが振り返り、二度ほど目が合った。

 もう私は彼女と同じ時間、同じダンスでいられるだけで十分ドキドキするし、ときめいていた。

 結局プログラム中は、何の進展も無かった。

 その後、ジムから出るとき、同時になったのだ。向こうはこっちを認識していたのだが、私は彼女より先に彼女に気付き、見えていないふりをしてしまった。

 先に彼女がジムから出る。ジムから出てすぐの駐車場に彼女は車を停めていた。彼女は乗ってすぐエンジンをかけた。

 私は知らぬふりをしながら駐車場の奥に歩いた。向こうの運転席からは、横切る私の姿が見えていたはずである。

 そして私もこの前買ったアクアのエンジンを起動し、ジムの入り口の方へ車を移動させた。二分くらい経過しているのに、彼女はスモールランプを点けてまだそこにいるではないか。私は彼女の車を特定していた。

 彼女は奥から『私が何に乗っているか』興味があったのだろうか?

 向こうのフロントガラスを覗き込みながら前を横切ることなんて出来ずに、知らぬ風を装い通り過ぎてしまった。

 前のオンボロ軽四ではなくピカピカのアクアで良かった、という話だ。

『嫌いならエイジちゃんの近くに来んだろう。気味悪かったら女性は絶対に距離取るって。もう一回挨拶してみな』

 とは同僚のM君の弁である。

 それでもまた話しかけた時、俯かれて視線が宙に彷徨うあの状況になるのが、たまらなく辛いので、今日も1ミリも進展は無かったのである。