呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

彦根旅行5

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 楽しい彦根旅行の初日は、ショッカーワイングラスでファンタの乾杯をした後、コンビニで買った缶チューハイで改めて乾杯したのであった。下戸なので普段は酒を飲まないのだが、友との旅行では話は別。今回は互いの電子書籍出版のお祝いもある。

 

連載島 (ヤングキングコミックス)

連載島 (ヤングキングコミックス)

 

 

呉「夜は結局ラーメンやったな。美味しかったけど」

金平「近江牛なぁ、そこそこのコースで最低料金がお一人様3500円から、やもんなぁ」

 貧乏性の二人はベッドに腰掛けながら溜息をついた。たった一回の食事で3500円である。そんな豪華な食事、我々には完全に身分不相応だ。ジーパンの小汚いオッサンが料亭みたいなところにノコノコ出向くのも完全にアウェイであろうし。高価なスーツを身に纏った金持ち家族の冷たい視線が簡単に想像できた。我々は完全に金玉が縮み上がり、更に玉が内側にめり込んで陥没乳首みたいになってしまっていたのであった。

呉「二千円ならなぁ」

金平「今回は見送るか。この宿も素泊まり二人で5500円やもんな。夕飯一回の合計がホテル代越えるて(笑)」

呉「ワシ、チューハイ一杯で酔いが回ってきたわ。目覚ましどないしよ」

金平「九時くらいでええんとちゃう? まぁ歩きまくったし、起きるまで寝とこうや」

 そう言いながら消灯。私も9時くらいに目が覚めるだろう、と踏んでいた。この時は。

 何度か夜中目が覚め、ここはどこ? 私は誰? みたいな感じで室内、天井を見渡し、そうだ、ここは彦根であった、と安心して眠りにつき、それを何度か繰り返すうちに完全に覚醒してしまった。左腕のApplewatchに目をやると、まだ六時(笑)

 嬉しすぎて早起きしてしまう遠足の日の小学生の如くである。

「ここで起きるのはさすがに相棒には悪いか」

 カーテンの隙間から陽が射し込んでいる。天気は腫れたようだった。私はユニットバスに行き大便を済ませる。それでもまだ六時半。

「起こすのは悪いなぁ」

 カーテンをそっと開ける。なんとホテルの五階だから、彦根城は真正面から見えるではないか。私は現存木造12天守に対面できて、射精してしまいそうであった。

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呉「あうぅ。嬉しい。早く行きたい」

 隣のベッドを見る。相棒はバンザイしたままの格好で気持ちよく寝ている。声をかけて起こすのは可哀想だ。

呉「そうだ、奴の体内時計に訴えかけてみよう!」

 私はカーテンを全部開け、窓を全部開け放した。早朝の冷たい空気が容赦なく部屋に流れ込んできた。

 寝ながら相棒の眉間にシワが寄る。風はビュウビュウ吹き込んでくる。相当寒い。さすが五階の部屋だ。

金平「んーっ」

呉「あー、すまんすまん、起こすつもりはなかったんや。天気が気になってな

 私は声のボリューム二倍で相棒に話しかけた。友を叩き起こしたのでは無く、自然に目が覚めてくれたので安堵した(笑)

金平「今何時や。まだ七時やないか」

呉「いやぁ、オマエがウンコする時間とか逆算してチェックアウトのこと考えててな」

金平「その心配には及ばん。ワシ、ひどい便秘なんや。だから昨日の夜食べたラーメンセットや昼の唐揚げ定食も、出てくるのは三日後やと思うで!」

呉「女子か!

 テレビを点け、出発の身支度を始める。今の今まで気が付かなかったが、私はその時、ベッドでひっくり返りそうになったのである。

呉「か、か、金平。オマエ、ジーパンめっちゃ破れてるやんけ!」

金平「ああ、これか?」

 友は『何大きな声だして驚いてるねん』といった風である。なにこの温度差。

呉「いやいやいや、尋常じゃ無い破れかたしてるぞ。隙間から完全にパンツ見えてるやんけ」

 友の尻からはグレーのブリーフが完全にこんにちはしていた。

呉「百歩譲ってそれがダメージジーンズとしよう。それでも破れてる箇所は膝とかな、太もものところとかやな。桜木ルイがそういうの履いてたよなぁ」

金平「ダメージジーンズをイメージして桜木ルイが思い浮かぶオマエの脳細胞もどうかとは思うけどな」

呉「昨日小雨降ってたし、今から行く彦根城でベンチ座るとき、パンツに雨が染みこむやないかい」

金平「そんなもん『尻の先っちょ』だけで座ればすむことや。なんも問題あらへん」

呉「い、い、一回整理させて!」

金平「おいおいおい、またオマエ、ブログに書くつもりか? オマエのは寄り道が多いねん。読者さんは店の品揃え情報とか、城の写真とか待ってはるんちゃうか?」

呉「まず、なんで破れたジーンズ履いてるねん」

金平「気に入ってる色やさかいな」

呉「濡れたベンチに座るとき、どないすんねん」

金平「ケツの先っちょで座ればなんも問題あらへん」

呉「後ろから人に笑われたら一体どないするつもりや?」

金平「ジャンパー長いし隠れてるやろ?」

呉「オマエ今年で何歳や」

金平「50や」

呉「素材全部いただきますっ(まんまんちゃーん!)

 私は写真を撮り、手短に起こったことをツイートした。

金平「オマエなぁ、オマエのブログに登場して、ワシ、メリットいっこもあらへん」

呉「こういうのはな、読者を無理に笑わせようとして、仮にな、寝ている金平のパンツから金玉がはみ出していたのであった。とありそうな嘘を書いた所で全く面白くないねん。魂がこめられてないから。だから俺はあったことを冷静に観察する。嫁さんに怒られてる時もそうや。そうして書くときになって、バイブスを乗っけて書く。それが俺の創作スタイルや」

 そう熱く語っているうちに愛機iPhoneに通知のチャイムが鳴る。

 まだ朝の七時過ぎであるというのに、熱いリプライが数通舞い込んできた。

〜か、金平さん。く、食い込みが〜

〜呉さん、お二人がお泊まりのアパホテルの近くにあるブックオフには、古着を扱っております。どうか金平さんに新しいジーンズを買ってあげてくださいっ(号泣)〜

呉「見ろ、熱い返信が来てはるわ」

 文章で魂を撃ち抜いた瞬間であった。

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〜つづきます〜