『新青年』研究会が発行している『新青年』趣味。待ちに待った甲賀三郎が遂に特集された。
先に出た大下宇陀児特集も未だに読み返す愛蔵本であるが、この本も長く楽しめそうな一冊になりそうである。
皆さんも、ぜひ売り切れる前にお買い求め頂きたい。
さて、この甲賀三郎、戦前はたいへんな人気作家だった。膨大な数の作品を残したのだが、終戦辺りで亡くなってしまう。
そうして今はどうだ。同時代に活躍した江戸川乱歩、横溝正史に比べ(※戦前は横溝を凌ぐ仕事量だったはずだ)現代では完全に埋もれてしまっている。乱歩、正史が何度も蘇るのとは逆に。
古くさい、描写された時代、風俗が風化して読むに堪えない、国策小説など今では読む価値も無い。
果たしてそうだろうか? 昭和初期のロマン、歴史的価値も現代の読者に対して充分にアピールできる作品群。
戦後、全集はおろか、ろくに纏まった選集すら出ていない状況は疑問に感じる。陰謀論を考えたくもなる。乱歩史観にそぐわないからか?
『血液型殺人事件』『体温計殺人事件』『緑色の犯罪』『乳のない女』『虞美人の涙』『妖光殺人事件』
どうです? この堂々とした稚気溢れるタイトル。なぜ業績が纏められないのか意味が分からない。
この特集号が偉大な作家の復活の契機になることを願うばかりである。