呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

古畑任三郎DVDコレクション2『殺しのファックス』

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 刊行された順に試聴を続けている古畑任三郎のデアゴスシリーズ。毎回、私の天才的洞察が鋭すぎるので(自分で言う)(笑)このまま記事を纏めていったら『金田一耕助さん、あなたの推理は間違いだらけ』的なKindle本が編めるのではないか? みたいなことも考えたが(ひらめきが持続したら加筆して出します)今回のエピソードを観て、その計画もちょっと小休止、である。

 

 個人的に古畑任三郎シリーズをこき下ろす気は全くないので、むしろ楽しみまくって試聴しているので(今泉の扱いとか)今回も感想を書き留めておこう。

 

 観終わった方に向けた文章なので、ご注意を。

 このエピソードは相当無理があった。世間ではどういう評価なのだろう、と気になって検索してみたら、作者は結構叩かれたようである。ミステリ好きをやめよう、と思ったくらい思い詰めたそうだ。

 まず、令和の今、ファックス全盛の当たり前が風化しており、私も仕事の上でそんなにファックスを使ってこなかったので、古畑の推理する『全送信が終わったことを告げるピー音が鳴る前に立ち去った。何枚届くか彼は知っていたんです』という洞察も『え? ファックスってそうなの?』みたいなポカーン状態であった。

 そしてパソコンを使ったファックスタイマー。これも犯人が警察と一緒にいる時に送信されてきているので、確固たるアリバイ、とは言い難い弱さ、である。

 犯人の作家(笑福亭鶴瓶)が仕事場としているホテルで受信し、警察もいて逆探知などを行うのだが、誘拐された(既に殺害されている)妻は、自宅付近で買い物帰りの姿を近所の人に目撃されているのである。それならば捜査の中心は自宅(犯行用ファックスが設置されている)になるはずで、そうでないにしても、失踪の痕跡を探すために自宅へ警察は入るはずである。

 そういうところに気付かない警察世界、というファンタジー目を持っても、決定打となる一分以内にワープロで出力してファックス送信できない、というのは『パソコンのソフトでテキスト入力して即送信できるのあったよな』と思っていたら、これも案の定、ネットでは散々指摘されているようである。

 最後の今泉を使った衣装のひっかけ、妻が誘拐されているのにホテルのレストランであんかけのトンカツを食べる犯人の図太さを指摘されるシーン、そして幕切としては最高な、ファックスで送られてくるある物。

 ミステリ、としては穴もあったが、ショーとしてはこれまで見た中で一番楽しめた。

 犯人の名前。幡随院大がヴァン・ダインのもじりなのも個人的に評価が高いポイントである(ヴァン・ダインラブ)