呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

久山秀子「どうもいいお天気ねえ」を読む

 この23日、急遽嫁さんと四国は松山、道後温泉へ旅行することになったのだが

「松山のグルメを調べとけ」

 と嫁さんが言うので、iPhoneで検索してみたのだ。

 すると「鯛めし」や「鯛そば」みたいなのがヒットする。

 どピンチである。

 鯛は苦手なのだ。

 小学生の頃、近所のおじさんが新鮮な鯛を釣ってきて、さばいて刺身を食わせてやる、と目の前で調理してくれた。

 しかし私は一口食べて吐いてしまったのだ。

 それから十数年、嫁さんのお父さんが鯛の刺身が大好物で、結納の席でそのお義父さんが釣った鯛の刺身が出た。

 一瞬ひるんだが、もう成人している。食も変化して、どうってことないだろう、と一口食べた瞬間、便所に駆け込んで戻してしまった。

 今思えば、嫁さんとの結納の席である。暗雲立ち込める未来の何事かを暗示していたのやもしれぬ(笑)

 なので鯛は私にとって、バルタン星人であるところのスペシウム。

 キカイダー、ジローにとってのギルの笛の音。

 ジャミラにとっての水、なのであった。

 鯛の店を避けるルートで行くつもりである。

 さて、本日は「どうもいいお天気ねえ」を読み終えた。

 前回がガチガチの本格テイストだったので、そっちに大きく舵を切るかと思いきや、今回は全く真逆ともいうべき、軽いユーモアタッチの掌編である。

 まぁ、この人はなんというか、目先を変えるのが好き、というか、実験精神が旺盛というか、本編の主人公は隼お秀の妹分「千代子」が主人公。

 妹分というだけあって千代子も「スリ」である。

 軽妙な会話の合間、時折社会風刺も絡めながら〜あたしが大臣になったら外国の尻を云々〜みたいな、痛快な女性の主張を入れて、でも現代では久山秀子は「男性」だ、というネタは割れているので、そういう目で見ると、男が男心をくすぐる手法が浮き彫りになって、なんだかこそばゆい。

 ホテルに間借りし、そこで犬を飼うことになった千代子、簡易電柱を作ってもらい、そこでおしっこをさせる調教をした。

 その犬をバスケットに入れて、電車に乗り、金持ちの紳士に離した犬を蹴飛ばされる。先ほどまでは全く隙が無かったのだが、犬が紳士のズボンを電柱と勘違いし、そこでおしっこをやった隙に……、というお話。

「スリ」というテーマで、さぁ、今後どこまで「あの手」「この手」が広がるか。

 

 1927年5月「文芸倶楽部」