呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

小酒井不木千本ノック

 

〜改造社版 小酒井夫木全集 総目次〜

 

第一巻【殺人論及毒と毒殺】目次

 

◾️殺人論

・序論

・原始人類(野蛮人)に於ける殺人

・変態なる生理的又は心理的欲望に基く殺人

・純然たる殺人と迷信による殺人

・伝染に依る殺人と無意識の殺人

・殺人者の容貌及び骨角(解剖)

・殺人者の生理及び心理

・女性殺人者の残忍性

・殺人の動機

・死に就ての考察

・殺人の方法

・共謀殺人

・屍体の現象

・屍体の隠匿

・犯跡の隠蔽

・探偵総論

・個人鑑別法

・死因の鑑定

・自殺他殺の鑑別

・血痕及び毛髪の鑑定

・心理学的鑑定法

 

◾️科学より観たる犯罪と探偵

・視覚錯覚に基く冤罪と犯罪

・推理と観察

・血液の秘密

・免疫の意義

 

◾️毒と毒殺

一 歴史的考察

二 化学的考察

三 文学的考察

 

・仮死と犯罪

・無意識行為と犯罪

・迷信と犯罪

・女性と犯罪

・変態心理と犯罪

・自白の心理

 

第二巻【犯罪文学研究及西洋探偵譚】目次

◾️犯罪文学研究

・はしがき

・日本の犯罪文学

・桜陰、鎌倉、藤陰の三比事

・探偵小説としての三比事

・三比事に書かれた探偵方法

・三比事に書かれた特種の犯罪方法

・三比事に書かれた犯罪心理

・詐欺騙盗を取り扱った文学

・両用心記の比較

・両用心記に書かれた詐欺方法

・曲亭馬琴の『青砥藤網模稜案』

・青砥藤網の裁判に対する態度

・『模稜案』の最初の物語

・暗号解読

『模稜案』に書かれた女性の犯罪心理

・犯罪文学と怪異小説

・江戸時代怪異小説

・主観的怪異を取り扱った物語

・ラフカヂオ・ハーンの翻訳

・古今奇談英草紙

・浅井了意と上田秋成

・御伽婢子と雨月物語の文章

・御伽婢子と雨月物語の内容

・近松巣林子とシエクスピア

・『マクベス』の研究

・黙阿弥の悪人

・ポオの『マリー・ロオジエー事件』

◾️西洋探偵譚

・はしがき

・プランセス街の秘密

・骸骨の身許鑑定

・バーグマン博士殺害事件

・肉片の身許鑑定

・グーフエ殺害事件

・見証による犯人探偵

・名探偵ブルツクスの功名

・写真と探偵

・探偵スウイーニーの功名

・足跡の鑑定

・遺留品による探偵

・ブリツグス殺害事件

・血痕及毛髪の鑑定

・マリー・パロー殺害事件

・犯罪者の心理を応用した探偵方法

・山中の殺人事件

・名探偵バーンス

・セント・ルイスの警官殺害事件

・近代犯罪事実談

・近代犯罪の特徴

・日本最近の犯罪

・硫酸投注

・主権者殺し

 

第三巻【探偵小説短編集】目次

・呪はれの家

・通夜の人々

・按摩

・虚実の証拠

・手術

・遺伝

・痴人の復讐

・暴風雨の夜

・難題

・恋愛曲線

・肉腫

・三つの痣

・安死術

・秘密の相似

・直接証拠

・桐の花

・死の接吻

・印象

・卒倒

・愚人の毒

・メヂユーサの首

・ある自殺者の手記

・二重人格者

・赦罪

・死体蝋燭

・見得ぬ顔

・二人の思想家

・闘争

・鼻に基く殺人

・スミルノ博士の日記

 

第四巻【探偵小説長編集】目次

・疑問の黒枠

・大雷雨夜の殺人

・恋魔怪曲

・孔雀の樹

 

第五巻【闘病術及学者気質】目次

◾️闘病術

・闘病術提案

・闘病術

・第一章 緒言

・第二章 発病当時の心

・第三章 病気の悪化する人の心

・第四章 治癒に向ふ人の心

・第五章 結核恐怖心

・第六章 治癒を妨げる各種の悩み

・第七章 性欲の問題

・第八章 食物

・第九章 嗜好物と娯楽

・第十章 日光

・第十一章 空気

・第十二章 気候

・第十三章 土地と転地療養問題

・第十四章 水

・第十五章 病院及至サナトリウム生活

・第十六章 療養費の問題

・第十七章 療養指導書

・第十八章 薬剤に対する態度

・第十九章 医師に対する態度

・第二十章 症候に対する態度

・第二十一章 霊妙なる自然治癒力

・第二十二章 健康の創造

・第二十三章 恢復期の注意

・第二十四章 病後生活と職業の選択

・第二十五章 病に打克つた人々

・第二十六章 結核を繞る諸問題

・闘病術附録 私の病歴

◾️学者気質

・学者気質

・観察力

・想像力

・探偵小説

・実験

・読書

・先入見と誤謬

・忍耐力

・偶然と幸運

・休養と娯楽

・病苦

・貧苦

・迫害

・魔法

・予言

・不可思議

・名誉

・金

・道義

・常識

・科学と文芸

・彗星放語

・科学文明の弱点

・学者と空想

・前知魔

・迷信と其除去法

・はやり・すたり

・当にならぬ知識

・伝記の興味

・幸運の為に

・虚偽と事実

・水中の屁こき学者

・知識遊戯

・医業と道徳

 

第六巻【生命神秘論及不木軒随筆】目次

◾️生命神秘論

・第一章 序論

・第二章 生命

・第三章 宇宙の観察

・第四章 生物界の観察

・第五章 人体の観察

・第六章 性と愛

・第七章 生殖と遺伝

・第八章 生と死

・第九章 結論

◾️不木軒随筆

・知識と誤謬

・青葉の陰から

・音楽と治療

・音楽を嫌う人

・夏四題

・ロムブロソーの「天才論」を読む

・非常時に起る不思議な力

・妊婦の精神感動と胎児

・くさめ

・血液の不思議

・書籍の焼失

・死の刹那の感じ

・物真似人真似

・タランチユラ踊

・言損い聞損い見損い

・古今物忘れ

・知つた振り

・探偵小説の味

・怪奇と主観

・心霊界の奇現象

・伝説と科学

・生体解剖

・不老不死霊薬ロマンス

◾️探偵雑話

・古代の裁判探偵法

・西洋中世の拷問

・青髭物語

・探偵の元祖ヴイドツク

・名探偵ピンカートン兄弟

 

第七巻【医談女談】目次

◾️西洋医談

・ギリシア古代の寺院参籠

・ヒツポクラテスの誓詞

・錬金術

・学術上の詐欺と運

・文芸復興期の盛観

・ペスト小史

・デ・フオーの「倫敦疫病日誌」

・エーンズウオースの「旧セント・ポールス寺院」

・サムエル・ピープスの日誌其他

・外科手術の今昔

・ジエームス・シムプソンの苦心

・寂しいホレース・ウエルス

・英国の医風

・トーマス・シデナムの手紙

・トーマス・アヂソンの性格

・ウイリアム・ストークス

・エドワード・ジエンナーの詩

・ジエンナーとインゲンハウス

・短話三つ

・ペーリー怒る

・ラツドクリフの朗読

・ガルの警句

・英国の公衆衛生学及び医事統計学

・King'a Evil

・妖婆の鍋

◾️趣味の医学

・子を求める術

・怪物の出産

・催情薬

・降鼻造鼻術

・指切り

・髪切り

・毛髪フエチシズム

・貞操帯と延寿帯

・不老長生術

・木乃伊と古代医学

・製薬史の中から

・見世物叢談

・体臭雑話

・泰西名医奇聞

・狂気と狂人

・酒・女・煙草

・最近に於ける医学の進歩

・医学上より観たる百年後の人間

・死者の蘇生

・処女尊重心の起源

・女性血液の特殊変性

・理想的美人の条件

・男子の童貞鑑別法

◾️日常生活と変態心理

・はしがき

・日常生活と迷信

・夢と迷信

・夢はどうして起るか

・夢の正体

・物忘れ

・強迫観念

◾️女性の異常心理

・はしがき

・死の悲哀と性的興奮

・美貌を欲する心

・卑しきを慕ふ心

・性的早熟

・不満と抑制

・生むを欲せぬ心

・女性犯罪の特徴

・詐欺の心理と婦人

・犯罪心理と婦人

・迷信による婦人の犯罪

・冤罪に苦しんだ東西の女性

・泰西女賊伝

 

第八巻【病間録及日記】目次

 病間録

◾️病間随筆

・喀血

・モルヒネ

・からす

・梟と蝙蝠

・体内音

・読書

・雨

・検温器

・強心剤

・花

・猫

◾️不木軒漫筆

・予防といふこと

・拙著出版記念会その他

・読書とその害

・再び読書に就て

・さもしい心

・正岡子規

・批評といふこと

・文学と科学

・文字から起る不快な聯想

・近頃の青年

・五千円の身売り

・雑感

・誤伝

・書物の押売

・名士の容態

・誓ひのこと

・知識と道徳

・技巧

・ある医師の抗議(1)

・ある医師の抗議(2)

◾️現代の医弊と病人の心理

1序言

2科学的態度の欠乏

3如何にして科学的態度を養成すべきか

4常識の必要

5医学的知識は如何にして得られるるか

6学と術

7精神作用の肉体に及ぼす影響

8医師の人格

9医育の弊

10医師に対する患者の信頼心

11素人の医学的知識

12疫病恐怖心

13黄金万能の弊

14結論

◾️新道話

・恐しい習慣の力

・堪忍第一

・正直の得

・不撓不屈の心

・過度の弊

・勝ちの一手

・些事と大事

・我が身を知れ

・真勇と蛮勇

・努力と幸運

・労苦と快楽

・限りある身の力

・模倣と感化

・果敢なき依頼心

・逆の真理

・機会を逸すな

・殺す人たらむよりも殺さるる人たらむ

・小僧の一言

◾️不木句集

・春附新年

・夏

・秋

・冬

・短句

◾️自伝

◾️日記

・大正4年

・大正5年

・大正6年

・大正7年

・大正8年

・思ふことなど

・大正9年航海日記

・大正10年

 

第九巻【探偵小説中篇集】目次

・雪の夜の惨劇

・懐疑狂時代

・展望塔の死美人

・抱きつく瀕死者

◾️少年科学探偵小説

・虹色ダイヤ

・暗夜の格闘

・髭の謎

・頭蓋骨の秘密

◾️ドーゼ作

・夜の冒険(翻訳中編小説)

 

第十巻【趣味の探偵談】目次

◾️趣味の探偵談

・犯罪探偵の今昔

・犯罪の進歩と探偵の進歩

・窃盗方法

・詐欺方法

・殺人方法

・探偵方法の変換

・個人鑑別法の発達

・法医学の発達

・顕微鏡的検査の進歩

・殺人探偵の順序

◾️棠陰比事解説

・はしがき

・左利きの鑑定

・焼死の鑑定

・知識の鑑定

・犯行後の不安

・犯罪者の手ぬかり

・心理的欺瞞

・夢の鑑定

・首なし死体

・不審を肩に知る木割の杢平

・凶器の鑑定

・毒の鑑定

◾️犯罪探偵茶話

・犯罪探偵エピソード

・裁判とユーモア

・Forth Degreeの由来

・女性の神秘

・刑場エピソード

・犯罪本能

・永久運動

・屁理屈

・犯罪の地方色

・心理応用の詐欺

・匿名書状

・鼻と犯罪

・胃の内容

・欲の深い犯罪者

・人体の値段

・骸骨のうめき

・犯罪者の人相

・ギヨチンの話

・替玉

・ある賢者の言葉

◾️世界裁判奇談

・はしがき

・むかしの裁判

・アイデンチフィケーション

・判事物語

・検事物語

・弁護士物語

・陪審員物語

・証人物語

・被告物語

◾️趣味の犯罪探偵談

・ルパン物語

・犯さぬ罪

・神隠し物語

・恐ろしき贈物

・探偵の怪

・浴室の秘密

・死後の時間

・誤った鑑定

・状況証拠

・生きかへる髑髏

・犯罪者の人相

・宝石をめぐる犯罪と探偵

・血液による親子の鑑定

・殺人探偵

◾️近代犯罪研究

・性的犯罪

一 序言

二 嫉妬による犯罪

三 毒殺心理

四 放火心理

五 ヒステリーの本態

六 性欲倒錯

七 性的犯罪と探偵

・不具と犯罪

・一

・二

・三

・四

・犯罪者のジエーキール・ハイド性

・一

・二

・三

・四

・モリアーチー教授

・一

・二

・三

・四

・五

・六

・七

・窃盗心理

・一

・二

・三

・四

・五

・六

・死刑と死刑囚

・一

・二

・三

・四

・五

・六

 

第十一巻【三面座談及タナトプシス】目次

◾️三面座談

・はしがき

・予言

・胎児の性

・堕胎

・右と左

・動物裁判

・屍体刑罰

・盗人哲学

・盗人の迷信

・迷信に拠る殺人

・人を殺す理由

・自己殺害

・自己毀損

・苦痛を求める人

・一日熱

◾️不木軒夜話

・探偵術に応用したる最新科学

・最も新らしみのある犯罪

・西洋中世の刑罰法

・春の精神状態

・偉人天才の性的生活

・分娩奇談

・古代民族の月経観

・熱意と表情

・睡眠

・沙翁と夢遊病

・死の刹那と生前の出来事

・大学教授停年制

・頭脳明晰法

◾️タナトプシス

・タナトプシスとは

・シエル・ショック

・首斬人の歌

・サー・ウオルター・ローリー

・五右衛門と如軒

・死なんとす。又は死せんとす

・詩的死

・南無阿弥陀仏

・死にきれぬ死

・幽霊の二種類

・死の恐怖と死の予覚

・自殺

・出刃包丁の縄うらみ

・切腹仕る時之心得

・切腹の手本

・介錯可仕心得

・頸縊上人と入水上人

・古代人の自殺観

・基督教と自殺

・自殺死体の後始末

・仮死

・早計埋葬『面影の燃残』

・日本人の冥途旅行談

・支那人の冥途旅行談

・西洋人の仮死談

・断末魔は果して苦痛か

・死の刹那の感じ

・死者の幻像

・死とあきらめ

・東西『死』観

・ハーバーの唄

・始皇と除福

・『抱朴子』

・葛洪の仙薬

・人参と枸杞

・魔女メヂーアの若返り法

・サン・ゼルマン伯

・錬金術_哲学者の石

・血液に依る若返り法

・処女回生術

・ブローン・セカール氏法

・スタイナツハの若返り法

・メチニコフの自家中毒説

・ブルガリア桿菌

・消極的不老長生法

・三つのW

・西洋の長者者列伝

・長寿者研究

・長寿者と食物

・生命恐怖症_長寿者と食量

・不老長寿法は人間の空望

・東山紀行

・先ず病的神経の治療

・自己に教へる

・ヒツポクラテスの疾病観

・屍蘇

・実験医学の弊害

・当世世間用心記

・説教強盗管見

・アメリカに於ける最近の犯罪

・ペルとランドルー

 

第十二巻【文学随筆及書簡】目次

◾️文学随筆

・探偵小説管見

・科学的研究と探偵小説

・探偵小説の将来

・探偵小説の行くべき道

・探偵小説の社会的影響

・探偵小説の味

・長編探偵小説に就いて

・探偵小説の題材

・文芸と早熟

・文芸と模倣

・私の見た純文壇

・テーマを盗む

・名人に乏し

・誤謬の値段

・書物蒐集狂

・比事物叢談

・検閲官の心理

・馬琴のコント

・学位濫授とは?

・学界と拝金

・断片の価値

・外国語を学ぶ人に

・うらなひ夜話

・恋愛東西

・お正月漫談

・お伊勢さま(科学的に観た神宮の伝説と信仰)

・名古屋スケツチ

◾️身辺雑記

・自殺者の心理

・芥川氏の自殺

・沢田氏を悼む

・受験生の自殺心理

・小酒井不木は小坂井不木にして正木不如丘にあらず…

・江戸川氏と私

・貧乏の真の味を知らず

・癪にさはつた事

・三昧境

・思ひ出

・チヤツプリンの思ひ出

・アルカシヨンの思ひ出

◾️毒及母の科学

・妻の生理及心理

・母の生理及び衛生

・産殖の科学

・性病とその害毒

・遺伝の科学

◾️書簡

・明治43年

・明治44年

・明治45年

・大正4年

・大正5年

・大正6年

・大正7年

・大正8年

・大正9年

・大正10年

・大正11年

・大正12年

・大正13年

・大正14年

・大正15年

・昭和元年

・昭和2年

・昭和3年

・昭和4年

◾️年譜

◾️著者年表

◾️執筆年表

 

第十三巻【探偵小説短編集】目次

・稀有の犯罪

・犬神

・三つの証拠

・汽車の切符

・胃の中の小刀

・跳ね出す死人

・紅蜘蛛の怪異

・狂女と犬

・血の盃

・名探偵

・新案探偵法

・手紙の詭計

・外務大臣の死

・催眠術戦

・新聞紙の包

・人工心臓

・龍門党異聞(探偵劇)

◾️少年科学探偵小説

・白痴の智慧

・紫外線

・塵埃は語る

・玉振時計の秘密

 

第十四巻【探偵小説集】目次

・好色破邪顕正

・緑柱石の宝冠

・蜀江の綿

・謎の咬傷

・指紋研究家

・二十年後

・いたづら蟹

・真夏の惨劇

 

第十五巻【】目次

嵐のコンサートに行くわけでもなく嫁さんと長浜に行ってきた その2

 滋賀県というのは不思議な場所で、目の前に海のような雄大な景色が広がっているのに、潮の香りがしない。南側は京都にも近く、琵琶湖はマリンスポーツも盛んで、北側は豪雪地帯で、殆ど北陸の気候という、日本の縮図のような県である。

 

 

 その滋賀県の琵琶湖であがった小鮎の天ぷらを食べ歩き。適度な塩加減が旨さを引き立たせる。ンマーイ!

 

 

 そして水の綺麗な場所には旨い酒がある。酒造りが盛んなのか、自動販売機には地元では見かけぬ、謎のノンアル炭酸飲料が。

「なんじゃ、これ。日本酒のノンアル炭酸やって」

「飲んでみる?」

 酒豪の嫁さんの目が光った。

 

 

 開けて一口。脳がバグる味であった。味覚は日本酒なのに、アルコール感がない。なんとも不思議な味。

「日本酒を飲んでいるけど、酔わへん」

「ほんまやな、これ、何本か買って帰ろ」

 そうして缶を持ちながら食べ歩きの続き。連なる古民家ごとに何かがある。

 数メートルも歩かないうちに、名物ぬれおかき串の看板が。

「おかきにマヨかぁ」

「これ、絶対に美味しいやつやん」

 

 

 食べてばっかりの夫婦である。ンマーイ!

 焼き鯖そうめんに食べ歩き。なかなかに重たい朝食と間食で、これは歩いてカロリーを消費しなければ昼のランチが入らない。しばらくは間食をやめ、歩いて一路、今回の目的である大河ドラマ館、大通寺を目指すことにした。

 古式蒼然とした勇壮な巨大建築、まず正門に圧倒される。境内は豊臣兄弟目当ての観光客で賑わっていた。

 大通寺は、これまで見てきた寺社でも、上位に食い込む荘厳さであった。豪華な内装に感嘆した。

 

 

 ドラマ館内は出演キャストの一言メッセージボードに人だかりが出来ていた。

「あっ、お市の方や。この人はスゴかったなぁ。旦那さんを介錯したんやもん」

 嫁さんは目を輝かせながらボードに見入っている。

 

 

 こういうのがドラマの功罪である。浅井は確かに小谷城で自害したが、介錯はドラマである。ネットでも『なんじゃあの演出』という声も見かけた。

 個人的には、歴史ドラマは面白ければよし、である。で、面白かった。

 あの日、小谷城で浅井は自害し、お市は救出された。ここまでが史実。

 一緒に当日居たのなら、愛する人の苦しみを和らげるために、介錯した可能性も、ゼロではないよね? というのがドラマの余白。歴史ドラマはそうやって作るべきだ。

 ただ嫁さん、それはここだけの発言にしておいてね。それを他で言うと笑われるからね。そして私も訂正する気はない。

「アホやなぁ、女性であるお市の方に、人間の首を切り落とせる腕力があるわけないだろうが」

 みたいな事を言えば、たちまち機嫌を損ね、二度とこういった歴史がらみの食べ歩き旅行ができなくなってしまう。

 嫁さんは熱心に宮崎あおいのボードを眺めている。

 そうして私は恐怖する。もしや、嫁さんはあのドラマの、妻が夫の首を切り落とすことにカタルシスを感じているのではあるまいか。散財癖、浪費癖の私に呆れ、できれば私の首を切り落としたい、くらいに思っているのではあるまいか。

 宮崎あおいに己を重ね合わせ、代弁者として羨ましくとさえ思っているのではあるまいか。

「今年の大河はホンマ面白いな。オープニングの秀長の、最初は子供のような瞳の色が、終盤には天下人として覚醒した目で上から射るように見下ろす、あそこ最高よな」

 私は悟られぬよう、嫁さんの注意をお市の方から逸らすのであった。

 ドラマ館の横には秀吉自慢の金の茶室が再現されていた。豪華絢爛桃山時代の象徴ともいえよう。

 

 

 見終えて再び黒壁スクエアへ。ここは脇の通りにも店があり、楽しませてくれる。

 

 

「ん? 一ヶ月間煮込んだ自慢のデミグラスソース?? ここにせぇへんか?」

「ええな」

 意見が一致、昼はふわとろオムライスの店となった。

「え、なにこれ、めっちゃ濃厚」

「ンマーイ!」

 

 

 モーニングにそうめんに昼はオムライスハンバーグ。短時間に食べ過ぎである。

 しかし中年夫婦は、レジャースポーツという選択肢がないので、ここでしか食べることのできないご当地グルメ食べ歩き、を旅ではどうしても選択してしまうのである。

「最後、フィニッシュはオーガニッククレープいっとくか」

「ぶひー」

 

 

 食べなければ損、というくらいの食べっぷりである。

 そこからは駅の西側、琵琶湖のほとりに建つ、再建長浜城天守へ。

 天守から眺める琵琶湖。豊臣兄弟も同じように初めての城持ちとなった時、感慨深く同じような景色を眺めたのであろうか、と二人の喜びに思いを馳せる。

 さて、この旅行記の締めくくりは、長浜駅から姫路行きの新快速の中でのことだ。

 長浜発なので座ることが出来、満腹感と歩いた疲労でウトウトしてたその時

パシコーン!

 おでこに走る衝撃。目を開け、隣の嫁さんの顔を見れば怒り狂った顔。

「アンタ、ええかげんにしぃや。こんな混んでる電車の中でいびきかきくさって。隣の私は死ぬほど恥ずかしわ」

 人間、上下の歯を合わせたまま会話できるもんなんだなぁ、とその時知った。

 次の旅では、帰りのキオスクで、眠気覚ましガムは必ず買っておこう、と心に誓うのであった。

 

〜完〜

嵐のコンサートに行くわけでもなく嫁さんと長浜に行ってきた その1

 

 2026年6月2日、日曜日で夫婦共々これといった用事もなかったので、今嫁さんが熱中して観ている大河ドラマ『豊臣兄弟』の舞台にもなっている長浜にでも行ってみるか、ということになった。

 そして題名を見てここまで読み進め、文章を己で組み立てたり、少しでも文章に明るい人ならば、この時点で『ならこのタイトルはなんなのだ』と訝しむことであろう。

 そして文章を書いて外に向けて発表している者ならば『もしかして、嵐のコンサートを検索して引っかかった人を誘導するためのタイトルであろうか?』みたいに、作者の思惑を速攻、見抜くやもしれぬ。小癪な奴め。

 でもまぁよい。日本人の読解力は落ちてきている。作者の姑息な集客テクニックを見抜き、嫌悪感を抱く国語力の高い国民は、もう極少数であろう。

 その他大勢は、検索結果が内容と違っていても、読み始めたら当初の動機を忘れ、そのまま読み終えてしまううっかりさんばかりだ。

 その層を取り込んで閲覧数を上げましょう、そういう魂胆なのである。こんなもの悪いことをしたうちに入らない。これよりも悪いことをしている政治家なんぞいっぱいいる。

 さて、話が皮にちん毛がひっかかって、尿の軌道が便器を外すくらいに大きく逸れた。

 姫路から電車に乗り、滋賀県北部の長浜である。地図で見る琵琶湖の中心点から、右上斜め45度くらいの場所。

 朝六時の始発に乗り、九時頃に着く。新快速を使えば乗り換えなしで三時間で行けてしまうのだ。信号も渋滞もなく、これは快適だった。

 長浜駅はこじんまりとした駅で、それでも作りは新しく、駅を挟んで東西、長浜城と黒壁スクエアを案内する導線が道にも描かれており、観光客にはすこぶる優しい街であった。

 

 

 駅ビルの二階は遊歩道になっており、そのまま観光地に直結。眼前には雄大な伊吹山が望めて圧巻である。標高も千メートル以上あり、街を印象付ける景色であった。

 ちなみに最寄りのブックオフは駅から約3キロ。嫁さんの目を盗んでダッシュで行くには、少々遠すぎたので断念。

 今年の前半に会津を旅行した時も、磐梯山が深く印象に残った。若い頃は海が好きだったが、歳を重ねると山が良く思える。

 信州の奈良井宿、会津の大内宿を旅してからこっち、我々夫婦は旧街道の食べ歩きがブームとなっている。

 ここ黒壁スクエアも、豊臣兄弟が整備した城下町の色を深く残す通りだ。

 城下町通りは京都を思わせる碁盤の目のような作りをしており、駅から大寺院、大通寺までは古民家を上手くリノベし、情緒ある店舗が活気ある営業をしていた。

 明治維新から高度経済成長を経て、古民家を解体し、近代ビルに建て替えてしまった街では味わえぬ、ちょっと前までは古めかしい時代遅れの印象か強かった古民家を残した街道は、どこも古さを活かして成功している。

 見上げれば築何百年という大きな梁。そんな店内で味わうご当地グルメは、まずなによりも説得力があり、少々お高くとも目の保養が財布の紐を緩めてしまう、という算段だ。

 私は相棒の漫画家、金平と以前来たことがあるが、嫁さんは初長浜である。

 改札を抜け、駅ビル二階の喫茶店でモーニング。大きな窓から伊吹山を望める絶景ポイントである。

 ドリンク代にプラスしてモーニングが付くのだが、朝御飯抜きで電車に乗ったため、腹ぺこだった私は、スペシャルを注文しようとしたら。

「アンタ、今から食べ歩きするねんで。トーストで腹一杯にしてどないすんねん」

 という真っ当なご意見。周りに聞こえて恥ずかしいので、シンプルなトーストモーニングに変更。ンマーイ!

 

 

 そして駅から東へ、五分も歩かない内に黒壁スクエアの入り口に到着。

 古民家の通りがお出迎え。ひときわ象徴的なのが浄琳寺の望楼建築。北国街道でも特に印象に残る建物であろう。観光用に公開していないのが惜しい。

 

 

 その少し先の古民家に五組ほど並ぶ店を発見。見れば焼き鯖そうめんの有名店『よかろう』である。開店まで30分もある。確か行列でも途中で完売してしまう名店だ

「並ぼう」

「なんやねん、今モーニング食べたところやん」

「ここは一周見て回ったら激混みの店や。俺を信じて並んでくれ。今なら六番目や」

 

 

 嫁さんは通りを先に見て回りたかったようで、渋々列に加わった。それから十数分、我々夫婦の後ろにどんどん行列が続いていき、店の横幅を超えるほどになってしまった。

 それを見て嫁さんは並んで正解やったか、と認めずにはいられない顔付きであった。

 

 

 初めて食べる郷土料理の焼き鯖そうめん。ほぼ汁無しで、味が染み込んでいるタイプのそうめん。すまい近くには、揖保乃糸で有名な龍野市があるが、全く別のアプローチである。そして上に乗る焼き鯖が、甘口寄りの味付けで、身もホロホロと取れて絶品。寿司も頼んだが、こちらは炙りで焦げが絶妙なアクセントとなり、こちらも絶品。ンマーイ!

 

 

 普段、魚料理よりも肉料理をチョイスする私も、この味には脱帽である。オープン前に並ぶことをオススメしておこう。

 

〜つづく〜

姫路 ドムドム レクイエム

 2026年5月24日 姫路のメガドンキ内にあるドムドムバーガー閉店の報が、SNSを通じて飛び込んできた。

 姫路民とドムドムバーガーの縁は古い。小六の頃の思い出になるので、おおよそ50年前にもなるのか。姫路大手前通りにかつて君臨したダイエー内に、ドムドムバーガーは存在した。

 ダイエーはめちゃくちゃテンション上がった。その隣の百貨店、ヤマトヤシキはクソ面白くなかった。化粧品ばっかりで、子供はちっとも楽しめなかった。その点ダイエーには五階におもちゃ屋があった。ショーケースに並ぶ超合金は、男子の胸をときめかせた。ファミコン以前、カセットビジョン、ぴゅう太が店頭でようやくデモが始まったくらいの頃の話だ。

 相棒の金平は、勉強熱心な家庭で、私と出会って不良化するまでは優等生であった。塾に通い、そのドムドムバーガーでバターコーンを注文し、閉店まで終生愛した。

 

 まだマクドナルドがそれほどメジャーでもなく、姫路ではドムドムの方が認知されていたのではないだろうか。

 それもこれも時代の流れによって、パーキングを持たないことからダイエーの売り上げは伸び悩み、閉店、解体されるなど栄光の時を知っているだけに信じられなかった。

 星電社や格安スーパー、トポスの閉店も姫路民にはショッキングな出来事であったことを付け加えておこう。

 そしてドムドムロスから数年、イトーヨーカドー時はフードコート内はマクドナルドであったが、メガドンキに変わって登場したのがドムドムバーガーである。

 あっ、これでいつでも食べることができる。この油断が甘かった。閉店の知らせを聞くまで、ついぞ行くこともなく日々を過ごしてしまっていた。

 結局、閉店までにたった二回。全メニューを食べることはできなかった。

 それでも思い出として食べることのできたものだけでも記事にして、記録として残しておくことはできる。

 

 

 外壁を見て気が付いたのだが、テナント一覧にバーガーキングの名前が見えた。もしかしたら後任なのかもしれない。食べたことがないので、それはそれで嬉しいが(浮気者)。

 

 

 メニューを見てしばらく熟考する。その隣のハニーマスタードの看板。

 

 期間限定の文字がなんとも哀しい。期間限定て、オマエもうそんなん関係ないやんけ、と思わず心の中で呟かずにはいられなかった。

 考えた末、一回目の来訪時にチョイスしたのは、まずドムドムのスタンダードな味が知りたい、と思い、テリヤキバーガーをチョイス。もう一品は変わり種ということで、手作り厚焼きたまごバーガーを選んだ。こんな攻めたバーガーを出すのはドムドムくらいだろう。惜しいことだ。

 あぁ、食べ納めかぁ、熱いものが込み上げてくる。もっと定期的に通っておけばよかった。

 おおっ、タレが甘めでンマーイ! 野菜も某国民的ショップよりもシャキシャキ野菜が多めではないか。

 そして続いては

 なんじゃこりゃあ! 松田優作ばりの心の声。パン、たまご、パンである。異形のバーガーではないか。こんなもん絶対に他店ではレギュラーメニューにしない。が、そこが面白ポイントなのだ。食べてみるとたまごの中から辛子マヨネーズ? それが湧いて出てくる。ンマーイ! 卵にマヨ。絶対美味いやつやん。三ヶ月に一度は食べたくなる中毒性あるバーガーであった。

 そして第二ラウンドの本日。前回は『閉店ですね』とバイトのかわい子ちゃんに声をかけたら『最後まで来てくださいね』と胸の前で見にガッツポーズをされ、萌死にしそうになったが、今日『食べ納めに来ました』と告げたら『そうですか』と冷たい反応。

 ちょっとガッカリしたが、閉店である。職を失い、明日から仕事が無くなるかもしれないのだ。私の声かけにデリカシーがなかった。

 さて、本当のラストオーダーである。

 

 相棒、金平がこよなく愛したバターコーンは外せない。関東に住む彼奴に思いを馳せる。シンプルで激うま。

 某国民的ショップの看板メニューに対抗した商品であろう。ビックドムをチョイス。コンスコン隊のリックドムのような語呂である。こいつはパティにケチャップというシンプルな王道バーガーであった。ハンバーガーはこうでなくては。

 そして最後は期間限定商品。

 パリッパリのチキンに甘辛のマスタードソースが絶妙で、これは美味かった。奥にはトマトも挟んである。残念、これでもう簡単に食べることができないというわけだ。

 Googleで検索してみる。一番近くのドムドムバーガーは神戸で50数キロ先だそうだ。

 コロッケバーガーも食べたかったけど、ウエストがやばいので諦めたよ。どれも美味しかった。ありがとう。姫路のドムドムバーガー! お疲れ様。

つまらない老害にはなりたくない

 日記。今日は、どの店かは書かずにおこう。順番待ちで並んで腰掛けていると、隣の中年男性がスマホを見ながらずっと、休むことなく足を交互に高速で上下させながら貧乏ゆすりをしている。

 真横に座る私に当たっているわけではないのだが、それはもう上下五センチ以上は動かしている貧乏ゆすりで、嫌でも視界に入り気になって仕方がない。

 チラと手元を盗みみたら、どうやらスマホのゲームをプレイしているようで、手前の主人公が、奥から迫ってくる大群に銃で応戦しているようなゲームであった。

 いい歳こいてゲームに熱中し、それも白熱しすぎて大の大人が貧乏ゆすりをやめない。私は相手の顔とスマホを交互に見たのだが、相手は画面に集中していて全く気が付かない。

「貧乏ゆすり、やめてもらえませんか?」

 という権利は私には無い。いい歳こいてみっともない、とも言える立場ではない。ここは我慢するしかないだろう。ここで一言、苦言を呈し始めたら、そこが老害の入り口のような気がしたからだ。

 佐野元春の『ガラスのジェネレーション』を今でも胸に生きる私には〜つまらない大人にはなりたくない〜を金科玉条の如く掲げ、それはアップデートされ〜つまらない老害にはなりたくない〜として心に刻んでいるのだ。

 若い頃は先輩に〜指摘されたら素直に認めろ、そして改めるよう考えるべきだ〜と教えられた。昭和の時代感覚だ。

 だが、今はもう他人に注意なんかしたら、背後からブスリと刺されてもおかしくない時代である。できるだけ見知らぬ人とは関わりにならないほうが良い、みたいな考えに落ち着いた。

 そしてその後、姫路のジュンク堂へ。紙の本はできるだけリアル書店で買うようにしている。姫路からジュンク堂がなくなれば、それは文化的に大きな損失だ。ちょっと品揃えも以前より弱まっているのが気にかかる。買い支えねばならない。

 ハウツー本を買って帰る。

 

 

 この手の文章読本は大好物なのだ。

 そして先ほど、私の無駄毛を処理する電気機器が見当たらない。聞けば嫁さんが勝手に関東からの三ヶ月研修から帰ってきた次男ちゃんに手渡し、持ち帰らせたそう。

「あれは、俺の持ち物だろ? なんで勝手に与えたんや」

「あんた、使ってたんか? 使ってないやろ?」

「使ってないにしても、あれは俺の持ち物だろ? 今日するつもりやったのに」

「孫までおるあんたが、無駄毛なんて気にする必要ないやんか」

「過保護、子離れせんのぅ」

 いくら問い詰めても嫁さんは謝らない。頑固になったものだ。そのまま会話を交わさず私は二階の自室へ。iPadを広げてこの文章を書く。イライラは治らない。近日中に取り返してこい、まで言っておけばよかった。

 

次男ちゃんの引っ越し準備

 日記。今、関東で三ヶ月の間、会社の寮に住み研修中の次男ちゃん。彼女は健気に姫路で帰りを待っているのだが、それもあと一ヶ月。今月末には帰ってきて、何もなければ彼女ちゃんとの同棲がスタートする。

 姫路の東隣町、高砂に新し目のハイツを先に借りた。家賃は一ヶ月分無駄になるが、良い物件なので、すぐに決まってしまうだろう、という判断からである。

 彼女ちゃんは家庭の事情で、おばあちゃんと二人で暮らしている。両親は離婚し、結構虐待もあったようだ。老人介護の仕事をしており、気立は優しい。老人と日頃から話し慣れているせいか、我々夫婦とも一緒にいて会話が尽きない。

 今日は二人の荷物をある程度先に運んでおこう、ということで軽四バンの後ろをフラットにし、詰め込むだけ詰め込んだ。

 その前に三人で昼食を取ろう、となり、リクエストを聞くと『CoCo壱がいい』とのこと。

 私は何回か行ったことがあるが、嫁さんは初CoCo壱である。

「カレーは家で作って食べるもんやろ」

 そんな嫁さんに対して彼女ちゃんは

「むちゃくちゃ美味しいですよ」

 店に着くと彼女ちゃんは

「私はいつも決まっているんです」

 と先に端末を取り入力を始めた。甘口ポークカレーの200gでパリパリチキン、タルタルソースを付けて半熟卵もチョイスした。

 嫁さんは初めてで右も左も分からないから、彼女ちゃんに聞きながらの選択で、辛さ普通のポークカレー250g、トッピングは同じくパリパリチキンにナス、更にプチエビフライをチョイスした。

 私は腕を組んで熟考し、ポークカレーの辛口5辛、ささみカツ、ナス、ハーフチーズに旨辛にんにくをチョイスした。

「お父さん、5辛なんて大丈夫ですか?」

「はっはっは。日頃からリーの三十倍を食べているから、辛いのは好きなんや」

 父親の威厳を見せておかねばならない。

 そして運ばれてきての嫁さん初CoCo壱。

「え、美味しい。なんか勝手にサラサラなスープカレーみたいなイメージだったけど、美味しい。辛さもちょうどいい」

「でしょー」

 彼女ちゃんはパリパリチキンにタルタルソースとカレールーを適度にミックスさせて食べていた。

「この食べ方、友達がCoCo壱でバイトしてる子がいて、おすすめされたんですよ」

 むむ、確かに美味しそう。これは真似して同じものを注文すればよかった、と思えるくらいの後悔であった。

 私はCoCo壱の初5辛にトライである。

『美味しい、だがこれはギリギリの辛さだったかも。後から押し寄せてくる!』

 旨辛にんにくも凄く美味しい。食べていると汗が噴き出てきた。そしてそれと同時に鼻水も出てきてしまった。

 それを嫁さんが見つける。目を見開く。凄まじい波動のアイコンタクトが叩きつけられてくる。

『アンタ、鼻水どないかしな』

 私は紙ナプキンで口元を拭くフリをしながら、さりげなく鼻水も拭き取った。危機一髪であった。

 鼻水が垂れ落ちてくるくらいの辛さの刺激! それなのに美味しくてスプーンの動きが止まらない。これなら6辛もいけそうな感じだ。

 初の三人での食事を終え、新居へ。最近できたハイツなので、トイレやお風呂の装備も我が家より数段オシャレ。壁も通路もつや消しブラックの渋いハイツである。

 彼女ちゃんは運んだ食器を収納に片付け、私はひたすら駐車場から2階の部屋まで往復のムーバーである。

 ある程度まで片付けて解散。その後は嫁さんと私の実家へ。

 父にプレゼントした補聴器がわりのAirPodsPro2の充電コードを持って行く。

 

 この機能、かなり優秀で、装着して出迎えてくれた父は、嫁さんと遅延なく会話ができていた。これまでは何度も聞き直し、適当に返事をしている風であったが、このPro2以降の機種であれば、ちゃんと聞こえて会話も成り立っている。設定にアイフォンかアイパッドは必須だが、補聴器は高額なので、今後は難聴の人に広まっていくと思う。

 ここで注意なのは初代AirPodsPro、これには第二世代がある。中古で売る側も、2っぽい書き方をして掲載していることが多いので、間違えて買わないように。AirPods Pro第二世代には補聴器機能は搭載されていない。

 まだまだ手のかかる息子の手伝いと、ちょっとした親孝行ができた一日であった。

新・我が妻との闘争第三巻 コミカライズ版発表

 

 相棒、金平守人の手による拙著『我が妻との闘争』コミカライズ版の第三弾が発表となった。

 原作版はこちら。

 

 この第一巻を中心に、かつて角川から出ていた漫画雑誌『コミックチャージ』誌上にて、漫画版が連載され、単行本は二巻まで刊行された。

 その時に、発表順に選出された訳ではなく、それはもう、当時の担当さんの好みに合うもの。言い方に語弊があるかもしれないが、大げんか、やドキツイやり取りの多い回が選ばれていた感触があり、それは派手さを求めた一流紙の方針であろうが、漏れた回が大幅に劣っていたわけではなかった。

 その初期作の選考漏れ作品群を、順番に落ち葉拾い的にコミカライズしてきた第三弾である。

 もう金平とは脳がケーブルで繋がれているかの如く阿吽の呼吸で、私の脳内ビジュアルがそのまま具現化されていると言っても過言ではない。

 ちょっとコンプラが昭和で、しかしそこを攻めてはいけない。なんせ26年前の作品群なのだから。似たような例で言えば、当時は普通に流れていたホモ小田ホモ男が、令和に再現されて猛炎上した例に似てしまうかもしれない。

 今後、このシリーズの方針は二つあって

・順番に全作コミカライズしていく

・コミカライズに不向きな回は見送る

 の二つ。最初は前者を支持していたが、漫画に不向きな回も確かにある。そこは飛ばしても、上の赤い小説版を漏れた回読みたさ目当て購入してもらえるチャンスもあるので、それはそれでありかな、とも。

 何はともあれ、新刊発表は何度やってもワクワクするものだ。一人でも多くの方の目に触れて欲しい。

フリマサイト悲喜交々

 日記。通勤中、フリマサイトで売れたCDの受け取り評価があった。よく見ずに、こちらは相手を良い評価で終えてしまったが、よく見ると向こうはこちらに悪い評価をつけやがっている。

 怒髪天。サナギマン爆発。ぬんで? ぬんで悪い評価をつけられねばならぬ謂れがあるか。元々1200円で出していたCDであった。それをコメントで『900円になりませんか?』と問い合わせが来たので、そのCDに、そこまで執着がなかったこともあり、値下げして取引をした。

 対面配達ではなく、ポスト投函便を選んだ。

 向こうの言い分はこうだ。

〜開けてびっくりしました。CDなのにプチプチにもくるまず、封筒にCDが直に入っていました。割れるのではないか? と思いヒヤヒヤしました。よって悪い評価とさせていただきます〜

 これ、皆さんはどう思われるだろうか。ここで私が怒り狂うのは、間違いである、とお思いか? 向こうの言い分がごもっとも、だと思われるだろうか?

 こっちは値引きをしてやっているのである。

 向こうは世直しのつもりであろうか? フリマ初心者ならば、俺が教えておいてやろう。CDを送る時はだな、プチプチに包むもんなんだよ。

 てなもんであろうか?

 こちらの言い分は、こうだ。今回、割れて到着したのなら、悪い評価を甘んじて受け入れよう。しかし、日本郵政の力量で、プラスチックのCDケースは、割れずに配送された。

 向こうにとっては、値引きはしてもらった。割れずに届いた。損は何一つない。得はあれど。

 血の巡りの悪いオマエに、取引が終了してしまったから、この文句を届ける術がない。

 オマエの言ってることはだな、風俗で若い女性と散々やることやりまくった後で『こんなことしてると、両親泣くぞ』と説教するオッサンと一緒やぞ、オマエ。そういうとこやぞ。

 ハァハァ。ここまで書いてもまだ気持ちが昂ったままだ。あたおかとのやり取りは消耗する。

姫路のジュンク堂へ行くなど

 日記。休みを取り駅前のプラージュにて散髪と毛染め。来月より料金が上がるという。こちらの小遣いが上がるわけでもなし、それでもテレビニュースのイラン情勢、街の高騰するガソリンスタンドを眺めてみれば、それもやむなしか、とも。

 シャンプーは女性に当たる。ラッキー也。おっさん、女性、二人体制で交互に呼ばれる。シャンプーロシアン。祈りが通じ、女性のきめ細かいシャンプーで気分も爽快。女性は男の力強い指先の力に負けぬよう、丁寧なシャンプー技術で応戦しているのであろう。

 その後、姫路駅名物『駅そば』にて、ごぼうの磯辺揚げそばを食す。美味なり。資さんうどんのごぼう天より好みかもしれぬ。

 その時、ショルダーバックを座席に置いたまま立ち去り、五分後、思い出して慌てて駆け戻るも、カバンはまだそこへそのままにあった。なんという日本の治安の良さよ。見た人たちは、席を確保しているためのカバンであろう、という認識であったのだろう。財布、免許が入っていたので、血の気が引いた。

 そしてそのまま駅ビルの2階、ジュンク堂へ。以前から気になっていた一冊を購入。B級、マイナー、アングラ、変格、奇書、そんなフレーズにアンテナが反応する貴兄ならば、必携の一冊であろう。

 

 最近は老眼で、メガネのピントも合わず、読書に苦労しているが、これは読むのが楽しみな一冊。

 帰宅後、コミカライズ版、新・我が妻との闘争三巻用の三話分の解説をiPadで執筆。当時の掲載誌を屋根裏部屋(ザイオン)で探し出し、スマホではなくスキャナーで表紙の取り込みを行う。電子書籍に掲載されても綺麗に映えるはずだ。そういうところにもこだわりたい。

 どれも26年前の作品で、時の流れの速さに驚く。内容は若書きすぎて、恥ずかしいところも多々あるが、相棒金平のポップな絵柄によって、どうにか令和でもお見せできる物にアップデートされていると思える仕上がりだ。

 夜は嫁さんと二人、姫路名物辛々鍋をカセットコンロにてつつく。甘辛な味付けで肉、野菜の他、麺も入っていたのに、出汁がうますぎて、最後は白米も投入。冬場は食べ過ぎて体重が増加傾向にある。また16時間断食を実行せねば。

 コミカライズ版が出て、小説版にもまた動きが出れば、これ幸い。

 

 

西村賢太殺人事件 小林麻衣子 を読む

 

 西村賢太ファンならば、きっと気になっている一冊であろう。問題作である。本書、ネットで検索してみると、西村健太ファンなら読むべき、と読む必要などない、という意見に分かれている。

 そうして文章にも批判的な意見が散見された。個人的にはどうしてそこまで叩かれないといけないのか? とまで思った。文章には躍動感もあり充分に上手い。

 ネタバレ、というか根拠を示すので、本書の読み方を偏らせてしまう恐れがある。まずは一読してから、この先へと進んでいただきたい。

 さて、本書は西村賢太の元彼女の手記である。そのこと自体についても『妄想ではないのか?』といったレビューも見受けられたが、さすがにそれは言い過ぎであろう。

 探偵小説好きとしては、文中に西村賢太が橋本五郎について言及したりする箇所などが嬉しかった。あの辺りがやはり好きなのだなぁ、と。

 岡山での同棲生活が、詳細に綴られている。会話も目に浮かぶようで、これは貴重な記録であると言えるだろう。

 問題は最終章である。この展開、持ち続けた妄執のおかげで、おそらく著者は葬儀後の集まりやイベントでも敬遠されるようになってしまったのではないだろうか。

 本人も自分のことを『あたおか』やら『キ印』と言い放っているので、精神が参っている、という自覚は充分にあった。

 部屋を盗聴されているはずだ、という焦燥感が最終章を占める。この文章は残念ながら精神疾患の完全にソレだ。ここまで理知的で聡明な文章を綴ってきたのに何故? という思いが消えない。

 しかし、この時の著者の抱えた生活における違和感、これを原動力にしなければ、本書を書き切ることが出来なかったのだろう。

 西村賢太という名前を出して、売れればいいのか、という売名行為に出版社を非難する言葉も見かけた。

 これは半々であろう。9章までの西村賢太の私生活の描写は、歴史的価値があるもので、これを『著者がどうやらノイローゼだから』という理由で闇に葬るには余りにも惜しすぎる。出版社も苦渋の決断であったことだろう。

 著者の精神の浮き沈みは読んでいてひしひしと伝わってくる。決定打となったのは次のエピソードだ。ここまで散々帰宅すると物の位置が変わっている、だの西村賢太のサインした箇所が破り取られていて泣いた、だの侵入者を想像させる書き方をしておいて、この一節を書いたときは精神が復調したのか、まともな記述をしている。

 侵入者による恐怖を、別れて数年経た元カレ、西村賢太に相談したところ『あれは俺が一緒の時に引きちぎったじゃないか』

 記憶はごっそりと抜け落ち、事実を誤認している精神状態であることが示され、ここで一気に『信用の置けない語り手』となってしまうのである。

 残念ながら、この一行から、ここまでの『家に帰ると身に覚えのないトイレの大が流されずに放置されていた』みたいな侵入者疑惑も、軒並み怪しくなってくる。

 この記述を単純に『精神に異常をきたした者の手記』で終わらせてしまうには余りにも残酷だ。そこで切り捨ててしまっている読み手は多い。

 彼女にとって、西村賢太への愛は真実だった。その喪失は、天命による寿命を、何かのせいにしなければ、とてもやりきれないものだったに違いない。愛の大きさゆえの変調、という受け止め方はできないであろうか。最終章が異様に映れば映るほど、私は愛の深さ、傷の深さを察してしまうのだ。