呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

久山秀子「浜のお政」を読む

 わたくし、ネット上では「呉エイジ」を名乗っておりますが、会社では写真家「篠山鬼神(ささやまきしん)」と名乗っており、みんなから「なんじゃそれ!」と言われております。

 その篠山鬼神が、今日の昼までの会議の帰り道、激写しながら駅まで歩いた作品をここにご紹介しましょう。

まず1枚目。

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 モノクロで撮ってみました。この小僧は何を考えているのでしょうか。

「このハンバーグを割ったら、チーズ出てきたらいいなぁ」みたいな感じでしょうか?

 続いて2枚目

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 これはもう昭和テイストの玄関だけでビンビンきましたね。打ち付けてある板とか、たまりませんよね。ちょっと小洒落た感じになってしまい反省。面白さが勝って欲しかった。

 反響があれば写真家「篠山鬼神」の活動を、ここでご報告させて頂きます。

 それでは今宵はこの辺で。

 さて、今回は「浜のお政」を読み終えた。

 本作、掲載誌は「新青年」とは違い「探偵趣味」である。別の雑誌にシリーズキャラクターものを出していた、ということか?

 紙面に合わせてか、枚数も短い。

 浜のお政、という隼お秀のライバルが登場する。美人局だ。そのライバルとのコンゲーム、といった趣。

 しかし、短い枚数でびっくりさせたい、とはいえ、筋は結構強引である。隼お秀の特技が「スリ」だけでなく、見た目が中性的で変装も上手い、という初期設定を頭に入れておかないと、まんまと騙されることになる。

 この当時に流行ったであろう、最後にドキッとさせる軽妙なショートストーリー。娯楽に徹しているので、嫌いではない。

 久山秀子、思っていたより楽しめる。

 

 1926年3月「探偵趣味」

久山秀子「チンピラ探偵」を読む

 この前の休み、ジムが休館日の時にも家でトレーニングが出来ないか、と思い、リサイクルショップへダンベルを探しに行った(新品を買えよ!)。

 3キロくらいのやつが欲しくて、見れば丁度棚にあった。

 だが一個!

 値段は五百円でリーズナブルであったのだが、なぜ一個か。売った奴は二個買わなかったのか? だいたいダンベルのトレーニングは、二個を両手に持ち、フンッと。フンッ、という感じで腕を曲げて持ち上げるのが基本なのではなかろうか。

 何故、一個なのか。

「とても愛着があるから売りたくない、しかし金が急に必要になった。涙を飲んで一個だけ売ろう」

 他のものを売れよ、と。右手だけ持ってトレーニングしたら、身体が傾いて気持ち悪いではないか。

 いや、売った奴はマトモだった場合どうする? ちゃんと二個売って帰ったのだ。買った奴が一個だけ買って帰ったのだとしたら。

「しまった、財布に五百円しかない! 仕方ない、一個だけ買って帰ろう」

 二つ買えるようになるまで買うなよ、と。

 いや、店も手落ちがあるだろう。こんな中途半端な形で売るなよ、と。買い取った時に、紐でくくって「二個で千円」として売るべきではないのか?

 なんでこんなフリーダムで気持ち悪い売り方をするのか。バラでオッケーにしたら、本当にバラで買って帰るフリーダムな奴が出てきてしまったではないか。

「そんなこと言ってもお客さん、こちとら商売なんです。こんな不景気な世の中で、一個だけでも売れてくれれば、こちとら万々歳なんですよ。それにウチの経営方針にケチつけないでくれますかね」

 と、店長も喧嘩腰で言い返してきたらちょっと怖いではないか。

 仕方がないから、その横の一個一キロの二個でワンセット、二百円を手に取ってみた。

 合計2キロかぁ。ちょっと物足りない。だがこちらは二個一組だ。気持ちがいい。

 私は両手に持って構えてみた。

 その時、私のサイコメトラー能力が発動した。

 前の持ち主の幻影が目の前に浮かんだのだ。オレンジのシャツを着た超肥満のデブオタである。

 毎日、これで鍛えていたようだ。しかしたった2キロ。身体は全然変わらない。デブオタは僅か半月で、これをここへ売り払ったようだ。

 気持ちの悪い汗がダンベルにべっとりと付いている。可愛い女の子なら迷いなく買ったことだろう。

 どういう理由づけがしたいのか? 一度手にとって買わない理由づけで、ここまで妄想しなければならないのか?

 私はデブオタのダンベルを、買わずにソッと元の棚へ戻した。

 さて、今回は「チンピラ探偵」を読み終えた。

 印象だけで見くびっていた。久山秀子、 なかなかの手練れである。グイグイ読ませる。本格・変格というムーブメントとは関係なく「地下鉄サム」を輸入し、女スリを主人公に「いい話」を作ろう。という気概と姿勢が見える。

 厳密な本格、というよりは女スリが向き合う犯罪譚、といった趣だ。

 今回は冒頭で色魔の男爵が帰宅途中の自動車の中で射殺される。窓ガラスは割れている。運転手は「ガラス窓の割れる音がして、怖くなり慌てて家までお送りした」と供述。

 男爵は別の筋から脅迫も受けていた。さて、犯人は、殺害方法は。

 これを主人公である女スリ、隼お秀が探偵になって解決する、という堅苦しいものではなく、関わった成り行き上、特技である「スリ」の技術で、関係者の懐から色々と抜き去り、その中には「メモ帳」もあるわけで、そこから知り得る情報からストーリーを牽引していく。

 現代ならば、ハッカーが携帯から個人の動向を知り、先手を打つ、みたいな感じになるだろう。

 このスリ技術で相手の心の内もスル。というのが大きな特色で、まだ二話目だが「金が大好きでスル」みたいには映らない。自慢の指を風呂でも自分で見惚れて、関わったからには仕方がない、正義の落とし前をつけましょう。という具合だ。

 本作は映画になったそうだ。モノクロ無声映画で、短い作品だが、展開がスピーディーだったのでナルホド映画向きだろう。

 主人公の隼お秀を、女優の栗島すみ子が演じた、とある。グーグル先生に聞いてみたら画像がヒットした。

 おぉ、イメージに近い女優さんではないか。

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1926年3月「新青年」 

久山秀子「浮かれている「隼」」を読む

 お盆休み、家にこもり単行本作業に没頭しておりました。

 我が妻との闘争2018〜昼下がりの冤罪〜8割がた完成しました。

 ここまで出来たら一ヶ月以内には完成するでしょう。予定通りに行けば、この目次通りの内容で出せそうです。

 

 もくじ

・まえがき

・オープニング

・暗黒ウォーキング

・恐るべきヒロイン

・決死のボーナス争奪戦

・迫り来る惨事

・仕組まれた罠

・昼下がりの冤罪(書き下ろし)

・エピローグ

・あとがき

・解説(佐藤あある)

・広告

・奥付

 マックピープルに掲載された、単行本未収録エピソード五本に、今年の事件である書き下ろしを加えた内容です。

 前作2017年版を、皆さんが長く支持してくださったおかげで、とても励みになりました。

 詳細はまたここで告知させていただきます。どうぞ宜しく。

 ※

 さて、今回は「浮かれている「隼」」を読み終えた。

 初久山秀子作品である。女スリである隼を主人公としたシリーズ物とのこと。

 そして面白いのは作者は女性のように思えるが、男性作家の手になるものである。本にも著者近影に女性の写真を掲載するという手の込みようであったそうだ。

  「新青年」で大いに好評を博したようで、軽い読み物をイメージしていたのだが、当時のラノベのような位置付けであったように思える。

 軽快で痛快。婦女誘拐事件の犯人の懐に滑り込んで、麻酔薬を嗅がせるシーンが見どころであろう。

 女スリだが、正義感が強く、情も深い。警察とも顔なじみで、尻尾をつかむことができないから逮捕できない、といった風。

 婦女誘拐犯を警察に突き出し、ちゃっかりとその前に財布から札は抜いている。

 オチで分け前を手紙にして送るのだが、いきなり名前が出てきてちょっと分かりにくい。冒頭で聞き込みをして仲良くなった被害者の女のところに送ったのだろう。

 楽しみながら読めそうなシリーズだ。

 

1925年4月「新青年

小酒井不木「空中殺人団」を読む

 コツコツと自分の単行本作業を続けておりまする。

 やりだすと早いのです。

 一ヶ月以内に発表できるかも。呉工房ボリューム4のKindle本。

 色々と凝ったものになりそうです。

 既刊を並べておきましょう。それではまた作業に戻ります!

 

 

 さて、今回は「空中殺人団」を読み終えた。

 小酒井不木探偵小説選のボーナストラック的扱いで、前回の「不思議の煙」が本作をパクっているのではないか? という指摘の元となった作品である。

 これを収録してくれるところに、論創社さんの誠実さを感じる。

 さて、読んで驚いた。構造が丸々一緒ではないか。これならば少年読者も「パクったんじゃない?」と思っても仕方がない。

 小酒井不木本人は「読んではいなかった」と弁明し、潔く作品を中絶させたから、それは本当なのだろう。

 だが、ここまでタネが似るものであろうか?

 読んではいなかったのだろう。しかし何かの会合の席で、この作品の話題が出たのではないか? 一本だけ煙突の煙が逆方向になびいていて、飛行機事故が連発するんだ。そのトリックはゴニョゴニョで……。

 それが頭の中にあり、いつしか忘れ去る寸前に自分が思いついたような錯覚に陥り使用したとしか思えない。

 それくらい骨格は同じだ。

 しかしタネは同じでも筋は違ったはず。不木の筆での完結作を読みたかった気持ちは変わらない。

 さて、これで長らく楽しんできた「小酒井不木探偵小説選」も読み終えた。この本は予想外に楽しめた。自分用のアイデアが一つ思いついたのも収穫であった。

 大人でもオススメできる。戦前の探偵小説好きならば、ムード含めきっと気に入ってもらえる一冊だろう。

 これを機に江戸川乱歩の「怪人二十面相」もこの前読み終えた。ちょっと少年探偵小説のマイブームが訪れている。

 で、次巻は「久山秀子」である。「地下鉄サム」系のスリの話、というイメージしかない。探偵小説の範疇に入るのかどうかも未知数の作家である。

 このシリーズの全巻読破がこの日記の目的の一つでもあるので、読み進めていきましょう。

 

1925年9月「中学世界」鶴毛寧夫 訳 

小酒井不木探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

小酒井不木探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

 

小酒井不木「不思議の煙」を読む

 やっとお盆休みで、今朝はのんびりしております。

 外は超暑いです。

 嫁さんが「山陽百貨店に連れていけ」と申しておりますので、買い物している間は別行動で駅ビルのジュンク堂へ行こうか、と考えております。

 最近思うのは、創作というものは、シラフじゃダメだな、と。「もっと寝かせれば面白いものになる」とか「じっくり時間をかけて」みたいに考えていては、一向に進まない。

 自分に催眠術をかけ「己の才能を世に示さねばならぬ」とか「次に書く作品が最高傑作」などと、自分を鼓舞し、高揚させた方が良い。

 過信も大いに大事。その勢いで書き切り、反省やフィードバックは書き上げてからのこと。

 作品には作者の「凄味」が込められていなければダメなのだ。

 さて、今回は「不思議の煙」を読み終えた。

 この作品、未完の作品である。しかし未完の作品というものは、何故どれもこれも面白く映るのであろう。

 雑誌の廃刊や本人の死去など作品の未完には様々な要因があると思うが、この作品は「本人の意志」によっての中絶である。

 作者のお詫びの言葉にもある通り、中絶の理由は「ある小説と趣向が似ている」という投書を受けてのことである。 

 東京湾で海軍の式典が五日間に渡って行われる。その目玉として東京湾の低空飛行が話題になっていた。

 その初日、飛行機が原因不明の墜落死亡事故を起こしてしまう。

 新聞で事故を知る病床の塚原俊夫くん。

 事故は初日だけに止まらず、三日連続で悲惨な事故が起きてしまう。

 警察では目立つので、内偵には塚原俊夫くんに白羽の矢が立つ。

 東京湾には各国の軍艦や汽船が停泊していた。

 視察に訪れた塚原俊夫くん、ある一隻に目が止まる。三本の煙突の二本とは別に一本だけ煙が逆方向に流れる汽船を発見したのだ。

 物語はここで終わる。めちゃくちゃ面白そうな導入部ではないか。小酒井不木の筆での完結が読みたかった。

 頭の中で「続きはどう書こうか」と考えてみたが、私の貧弱な脳細胞では意外な結末は浮かび上がらず。

 惜しい一本である。

 

1926年10月「子供の科学

小酒井不木探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

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放心

 思いの外、先日の嫁さんとの焼肉会計じゃんけん、この一件のダメージがことの外大きく

「あっ、今僕は生きているんだ」

 と、脈絡のない言葉が不意に口から出て、夕焼けを見ながら涙ぐむ、という。

 心の何処かが壊れてしまったのかもしれない。

 六千円もあれば、あの本も買えた、あのCDも買えた、と、涙で夕焼けもグニャグニャになって見え。

「あれは夢だったかな? 店でじゃんけんなんかしないよな? ましてや会計を出す、なんて夫婦間でありえないよな? 財布の中身を確認してみよう。無い

 と、心の復旧作業にまだ時間がかかるようであります。幸い世間は盆休み、それに乗じてこのブログもお盆進行で、傷心の中、読書する気も起きず、心の中を買えなかったものたちが走馬灯のように駆け抜けてい……。 

Disco K2~Kikkawa Koji Dance Remix Best~(初回限定盤)

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嫁さんの罠

 家に帰ると子供達はそれぞれの相手とデートに出払って、夕飯は嫁さんと二人だけとなった。

「二人なら外食でも行くか」

 嫁さんがそう言うので、反対する理由もない。

「じゃあ焼肉でも行くか」

 馴染みの焼肉屋へ直行した。

 

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 夏バテ気味であったので、スタミナをつけようと、私もハイペースで注文した。

「アンタ、平凡な日常にドキドキ感足さへんか?」

 食事も終わりに近付いた時に、嫁さんがいきなり切り出してきた。

「ドキドキ感ってなんやねん」

「じゃんけんで負けたら、ここの勘定奢るっていうの」

「な、なんで家族の食事を小遣いから出さなあかんねん。ワシにメリット何もないやんけ」

「アンタが勝ったら、ここの代金の金額小遣いあげるわ」

「ここお前が払って、なおかつここの代金の小遣いを今貰えるってか?」

「そうそう」

 私は悩んだ。二人で六千円は食べているだろう。ちょうど欲しい本もあった。

 

不思議なシマ氏 (銀河叢書)

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 「ええやろ、乗った」

「行くでー、一発勝負やー」

 嫁さんは店内であるというのに、手をねじって覗き込んでいる。本気のやつだ。

「じゃーんけーん」

呉「パー」

嫁「チョキ

 勝負は一瞬でカタがついた。

嫁「勝ったー! やりぃー。家計浮いたーっ!」

 店内でプロレスラーのような咆哮である。

「ま、待って、冗談やろ? ガチで? ガチでワシのこんな少ない小遣いから六千円も払わせるの? 暑い中頑張って働いてるのに? 嘘でしょ?」

「往生際の悪い男やな。私は勝負って言ったはずや。アンタ、ここ一番の勝負弱いな(笑)」

 嫁さんは上機嫌である。レジで私は死人のような顔で会計を済ませた。

 うつ病になりそうである。読書もできる気分ではない。

 こんな一日、早く終わってしまえ。おやすみなさい!

小酒井不木「墓地の殺人」を読む

 疲れておりまする。夏バテなのでしょう。

 カラータイマーは赤点滅を通り過ぎ、黒点滅でドックンドックンと脈打っております。そのうちカラータイマーにヒビが入り、隙間から大量の脂肪が流れ出てくるはずです。

 そんな弱った身体で、今年もなんとかKindle本を出そうと、作業に入りました。

 昨年出した本が、アマゾンのランキングで未だに10位にいるのが、本日、相当な励みになりました。

 

 

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 秋までにはなんとか。涼しくなれば作業も捗ると信じたい。

 この読書日記もペースを落とさず、並行してやっていきます。

2018年は……

・ワガツマ2018〜昼下がりの冤罪〜(マックピープルで発表された単行本に未収録のエピソード五本と書き下ろし一本の予定)

・オリジナル短編集(四本収録予定「グランドファーザーのモーションピクチャー(完成)」「正義の行き着く先(まだ頭の中)」「鍵(完成、noteで先行発表済み)」「隣の催眠術師(完成)」)

・少年探偵 神子丘清の受難(少年探偵小説、まだ頭の中。今一番書きたい話)

 さぁ、言ってしまったぞ(笑)目指せ有言実行!

 さて、今回は「墓地の殺人」を読み終えた。

 「読者への挑戦」形式を取る。恥ずかしながら私、全く解りませんでした。

 寺の境内で男が死んでいる。しかし身元がわからない。塚原俊夫くんは爪の垢を採取して顕微鏡で調べる。科学探偵の面目躍如だ。

 読者への挑戦ではあるが、色々情報が後出しジャンケンっぽくて、特に犯人、流浪していたのに、寺の◯◯へ、そう簡単に収まり、なおかつ人を雇えて短期間で運営できるものか? とも思う。

 大半のチビッコ読者は、置いてけぼりを喰らったのではないだろうか。

「最大の事件」を謳ってはいるが、どうやらこの作がシリーズの最終作のようだ。作中で特にフィナーレや大団円を書いているわけでもない。

 作者には書き継ぐ気があったのかもしれない。

 

 1928年7月「子供の科学

小酒井不木探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

小酒井不木探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

 

BGM

 本日は残業で帰るのがすっかり遅くなってしまった。

 それでもジムは寄って帰る。筋トレと己に課した3キロジョギングを毎日続けるためだ。

 今にみちょれ! 来月までには贅肉の何割かを落としてみせる。

 さて、寝る前に軽いトークなどを。クーラーのない部屋でこの日記を書く時、階下の嫁さんから「じゃかましい!」と怒鳴られない程度の音量でBGMを毎回鳴らしている。

 本日は尾崎豊の「壊れた扉から

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 この閉塞感がいいのですよ。「17歳の地図」「回帰線」というモンスターアルバムを出し、想像を絶するプレッシャーの中で作り上げた一枚。

 

壊れた扉から

壊れた扉から

 

 尾崎豊はこの後、薬物に手を出してしまい、失速します。次のアルバム「街路樹」では仮初めの復活でしたが、クリエイティブな真の復活「誕生」二枚組。ここまでの経緯には鳥肌が立ちます。

 

誕生

誕生

 

 プレッシャーの中で生み出されるもの、に惹かれているところがあります。

 大ファンの佐野元春も「スランプ作」はあります。これです。

 

The Essential Cafe Bohemia

The Essential Cafe Bohemia

 

「カフェボヘミア」です。「何を言うか。ヒットシングル満載でヤングブラッズなどトップ10に入っているのにどこがスランプ作か、素人が」という声も聞こえてきそうですが。

 いえいえ、このアルバムには「余裕」がないのです。全力の総力戦。

 しかし、このスランプを経て名盤「ナポレオンフィッシュ」アルバムを作るのですから、クリエイティブの世界って素晴らしい。

 そう思うと「ラバーソウル」以降のビートルズの革新的リリースは、やはり化け物ですね。

 それでは本日はこの辺で。

小酒井不木「深夜の電話」を読む

 私はジュンク堂から買って帰った「ブツ」を、嫁さんに見つかる前にザイオン(屋根裏部屋)に搬入しようと家族の留守の時間を狙って帰宅した。

「これでよし、と」

「待たんかい!」

 私の背後に心の中の管理人であるドッペルゲンガー(もう一人の私)が立ちはだかる。

「また買い物したんかい」

「はぁ」

「お前なぁ、アリとキリギリスの話知ってるやろ。好き放題買ってたらなぁ、それが癖になって、老後苦しむことになるんやど」

「はい、わかってます」

「口だけやないけ、最近河出書房の「レトロ図書館シリーズ」確か買ったよな」

「はぁ」

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「ほんで、ジムでジョギングのBGMいうて、吉川晃司の初期アルバム七千円強も出して買ったよな」

「はぁ」

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「それから何日経ってるんや」

「連日です」

「それでエエと、人生そんな感じでエエと君は思ってるんか?」

「いいえ」

「君の小遣いは無尽蔵か?」

「いいえ」

お前はアラブの石油王か?

「んなアホな」

「誰に向かって口聞いてるねん!」

「この前見たときに売り切れでしたから。今日見たら入荷されてまして、逃したら本屋から消える、思いまして」

「自分、しょっちゅうそんなこと言うてるがな。なら本屋の棚、全部買わんと気が済まんのか?」

「いいえ」

「君は何か? 強迫観念か何かか?

「そうではないと思います」

「何を買ったか見せてみぃ」

「はぁ」

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小倉優香ファースト写真集 ぐらでーしょん

小倉優香ファースト写真集 ぐらでーしょん

 

「な! 結局買ったんかいな、小倉優香ちゃんの写真集」

「はい。奥付見たら3刷でした。新人のグラビア写真集なんて大半が初版で消えていくと思いません? この娘、デビュー写真集で短期間のうちに3刷ですよ? 私の目に狂いはありませんでした。本物です」

「裏表紙も見せてみぃ」

「はぁ」

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「めちゃくちゃ可愛いがな」

「だしょ? だしょ?」

「何調子に乗ってるねん。散財が過ぎるんとちゃうか?」

「大体この手の「くしゃっとした笑顔の娘」「三日月のような笑顔の目」の娘は経験上大多数が貧乳なのですが」

「何の経験上や」

「人生の、です。この娘はこんな「ホニャーッとした笑顔」なのに暴力的な巨乳なのです」

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「確かにロリータフェイスなのにやな」

「何十年もグラビア写真集を買ったことのない伯父様に買わせてしまう。そんなパワーがこの娘にはあるのです」

「最後に買った写真集は何や?」

「多分、河合その子かと思います」

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※(ザイオンの本棚より中継)

「よく財布にお金残ってたな」

「秘密の印税カードを使いました。何故か最近また、これが売れてまして」

「真面目な就活生が参考にしようと間違って買ってはるんやな」

「ちょっと申し訳ないですけど、就活の息抜きにはなるかと」

「ええタイトルつけて、毎年エエ思いしてるっちゅうわけやな」

「それにですね、ジュンク堂がポンタカードの併用をはじめまして、八月からかな? 会計の時に出してみたんですわ」

「ほうほう」

「そしたらポイント800円もありまして、この写真集、二千円以下で買えたんですよ」

でかした!

「会社帰りのツタヤで買ってたら定価で買うところでした」

「なかなかやるやん! 賢い買い物できたな」

「機嫌直して頂けましたか?」

「安く買えたな。気分ええわ。なぁ、自分、これからその写真集、よかったら一緒に見ぃひん?」

「いいですとも」

「おおーっ、この娘、胸もすごいけど」

「ウエストとお尻がすごいことになってますでしょ?」

「次のページ、めくっていい?」

 夏の夜は過ぎていく……。

 さて、今回は「深夜の電話」を読み終えた。

 今回は趣向を変えて、小酒井先生、塚原俊夫くんに悪漢から「挑戦の電話」がかかって来る、というお話。

 内容に踏み込んでいるので未読の方はご注意を。

 海外の悪党団が日本に来て、映画女優を誘拐し、そのフィルムを本国で高く売りつけよう、というのが根底にある。

 そこに塚原俊夫くんを絡めようと、それも「君に犯人が分かるかね?」みたいに挑発してくるものだから、なかなか風呂敷を広げすぎの感がある。

 結果、体裁はグダグダ。どうしたの小酒井先生、となる。

 出来は「凡作」という感じだ。

 まず、相手の電話を交換手に確認すると、近藤美容室に繋がり、そこへ電話をかけ続けると、睡眠薬を盗賊に嗅がされ、昏睡していた店主が電話口に出る。

 犯人は「有名人を殺した」という電話をかけてきている。

 間も無く女優「川上糸子」が殺されている。という報がPの叔父さん経由で入ってくる。

 現場へ急行すると、川上糸子の死体を監視していた警官が猿ぐつわ。死体は消えていた。

 ここまでは結構盛り上がる。サービス精神旺盛だ。

 近藤美容室の店主は川上糸子を担当しており、絵葉書が来たから今は「温泉地にいる」という。

 なら死体は偽物か? 温泉地にいるのは誰か?

 塚原俊夫くんは温泉地に急行する。案の定、旅館から川上糸子は消えていた。

 部屋には「暗号のメモ」が。これも強引。

 俊夫くんは温泉に打たれ、暗号を解読する。そこには敵のアジトの住所が。

 これを残す意味があまり感じられない。そこで悪党どもが落ち合うのなら口頭で済ませば良いし、暗号にしてそこに忘れていくリアリティも薄い。

 その暗号を元に、警察が踏み込み一網打尽。仮死状態だった川上糸子を一旦空き家で警官に見せたのは、犯罪が完遂する「迷信」のため、という甲賀三郎ばりの無茶動機。

 真面目に犯行の経緯を説明されながら「若い頃はここで怒っていたが、今はニヤニヤして読めるなぁ」となっている自分に気付くのであった。

 

 1928年(昭和3年)1月「子供の科学

小酒井不木探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

小酒井不木探偵小説選 (論創ミステリ叢書)