呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

甲賀三郎 古本を愛でる

 今年に入って、結構奮発した。二冊も甲賀三郎の古本を買ってしまったのだ。

『羅馬の酒器』と『音と幻想』の二冊。部屋の中で撫で回している。

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 甲賀三郎の古本は高いので、頻繁に買うことなどできない。小遣いとは別の、印税のお陰ですな。有難い話です。

 

 

 何度も呟いているが、江戸川乱歩の好敵手、と当時は言われていた甲賀三郎も、終戦直後に亡くなってしまい、現代では戦前の人気作家の面影もない。大半の人は『誰それ?』という感じだろう。

 生きている間に完全版全集が出て欲しいものだ。それは日本探偵小説界の良心だと思う。

 メモ代わりに、収録作品を書いておこう。

『羅馬の酒器』

・羅馬の酒器

・赤い壜

・殺人と白猫

富江と三人の男

・森の悲劇

・泥棒と狂人

・開いていた窓

・二度目の冤罪

・果樹園物語

 

『音と幻想』

・音と幻想

・一本のマッチ

・犯罪の手口

・法を超えるもの

・謎の女

・吹雪の夜

・マネキン綺譚

・頭の問題

・海獅子丸の真珠

・海の掟

・伯父の遺産

・夕日輝く頃

・日本人の死

 どうです? どれもそそるタイトルでしょ? いつか甲賀三郎に、大々的なスポットライトの浴びる日が来ることを願って。

禁断のカフェイン錠ブート執筆

 先日からまだか、まだこぬか、と指を咥えて待っていたのだが、海外発送品なので一向に来ない。しびれを切らせてアプリで確認したら、カートに入れたまんまであった。

 そりゃ届かんわな。駄目だこりゃ(※追悼 志村けん

 購入ボタンを再度クリックし、待つこと数日。先ほどアメリカ直輸入のカフェイン錠剤が我が家に到着した。

 

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 そうしてダイソーでミニごますりセットを購入。ストローも短く切った。

 

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 こいつを『飲む』のではなく、すりつぶして粉にし、ストローでダイレクトに鼻から吸引し、粘膜吸収させると、カフェイン成分がダイレクトに脳へ届く、ともっぱらの噂だ。

 

 ものすごくイケないことをしているの図。麻薬吸引の如くである。

 

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 結論から言おう。物凄く苦い。一気に吸い込んで、一回目は鼻から逆噴射し、テーブルが白く染まった。スロースタートが正解であった。

 掃除をしておかないと、嫁さんにしばかれる。当然、嫁さんの留守中の行為である。

「アンタ、なんや、その錠剤は」

「コーヒーにも入ってる、眠気を吹っ飛ばすカフェインの錠剤や」

「何するんや」

「これを砕いて鼻からストローで吸引する」

「何アホなことしとるんじゃ」

 こう言われるに決まっている。なので一人でやったのだ。

 心拍数は上がっている、ばっこんばっこん言うている。目もギンとなっている。プラシーボかもしれない。暗示に弱いB型の私のことだ。でも構わない。

 今、連日の残業疲れも眠気も飛んでいる。鼻の奥の苦みが喉に残る。ドラゴンボールの『せんず』か、強制ブートした今、昼寝そっちのけで執筆に打ち込めそうだ。

 あきっぽい私の驚異の集中力!

 手段は選ばない。コロナに感染して死ぬ前に、今書いている作品をなんとしてでも完成させるのだ。

 深夜まで書けそうだ。一万字くらい行きそうな勢い。

 早く皆様にお届けしたい。

 

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折羽ル子『DX円盤対猫』を読む

 現在、毎日コツコツと新作長編を絶賛執筆中なのだが、その休憩の合間、読んでいたのは折羽ル子さんの『DX円盤対猫』だった。なんと大盤振る舞いの無料ダウンロード期間中だったようで、迷わずに速攻Kindle端末へダウンロード。

 

DX円盤対猫

DX円盤対猫

 

 タイトル通りの痛快SF作品で、主人公(猫)の暮らす家に、異次元空間から敵艦隊が出現、しかし艦隊とは言っても時空の歪みか、スケールダウンして猫の暮らす家の風呂場に収まるサイズに。

 というのがザックリとした話の流れ。

 私がミステリ育ちの人間なので、適切なSF作品批評言語を持ち合わせていないのが、とてももどかしい所ではあるが、特筆すべきはその文体。

 講談調のハイパー饒舌体とでも言おうか、終始、ふざけた感じで書いておきながら、時折見せる強烈な印象を残す一節、ライン。警句のような一発をお見舞いするのが持ち味と見た。

〜猫を真似て隠密行動をする者の愛称であるにゃんじゃあがなまりなまってにんじゃあそしてニンジャである〜

 こういうゴキゲンな遊び心溢れるラップのような文章で酔ってみたい方に、是非オススメの一本である。

 そうして、ここからは余談だが、個人的に折羽ル子さんには、正直刺激を受けた。ツイッターで『新作、何文字書けた』みたいな報告ツイートに感化されたのだ。猛烈にカッコイイ。

 おかげで新年、我が妻との闘争2020で、やりきった症候群に飲まれ、振り返ればスランプ気味であった私にとって、強烈なカンフル剤となった。

『ネットの向こうで今日も猛烈に書いている人がいる……』

 そこから私も『書かねば、いや、書いて書いて書きまくるのだ』という意識にまで高めてもらったのだ。

 そしてこれも余談だが、作者さんは、小説の他にもグラフィック表現が素晴らしく、自作の数々の表紙や『このセルパブがすごい』のキャラデザインまでされているようで『なんで二つも才能あるの?』という感じだ。

 

 

 

 次の超弩級エンタメ長編小説の一番の恩人は、折羽ル子さんかもしれない。

 この本も無料でありがとうございました。

 

DX円盤対猫

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執筆環境

 今更? という文章書きさんからの声も聞こえてきそうだが、本日、執筆環境を向上するため、リサイクルショップへ足を運んだ。

 そうしてリストレストを本日より導入、劇的な作業効率の向上を実感している。

 

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エレコム リストレスト 疲労軽減 "COMFY" ロング(ブラック) MOH-012BK
 

 

 いやぁ、もっと道具に注目すべきであった。キーボードを置く、手を添える、手首の所が擦れる。結構痛い。

 これを手元に敷くだけで、超快適! ルンルン気分で打ち込める。

 やはり短いものなら我慢もできようが、長編制作にはある程度の作業環境の構築は、確実に質へと影響する。

 もう楽、手首の枕。寝そべって本を読むあの楽な感じが手首にも。

 本日は2500文字を突破、新作は順調に進んでいる。余り自分では大きなことを言わないでここまで来たが、今回のこの作品は、とんでもない傑作に仕上がりつつある。

 Kindleで出すつもりだが、出来る限りのプロモートをしていきたい。新生呉エイジ第一弾だ。三本の構想があるので、これを完成させたら残りの二本も休まず取りかかろう。

 このリストレストのお陰でスピードは更に上がるだろう。長編を書いている方々、こいつぁオススメですよ。

禁断のドラッグ執筆

 私のもう一つのブログ『だめなやつら』では連日告知しておりますが、現在、新作長編を制作中です。

 令和に入って、我が妻2020に続く、二作目のKindle本です。

 

 

 そうして毎日新作に取り組むうち、ツイッターで『集中力を高めたい』と弱音を吐きましたら『カフェイン剤とエナジードリンクで一発ですよ』というアドバイスを頂いた。

 これまでにカフェイン剤なるもの、使用したことが無い。コーヒーに含まれる眠気を取ってくれるアレのことであろう。

 私は早速Amazonで検索してみた。そして発見した。

 

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 海外製の錠剤である。そのレビューの中で、私の興味を激揺さぶりする記述に出会ってしまった。

 この錠剤を砕いて粉状にし、ストローで鼻から吸引し、粘膜吸収させれば一発で来ます。というもの。これにシビれた。

 昔から私は、素晴らしい芸術作品を作るためなら、ドラッグを使用しても良い、という憧れを持っていた。相棒の金平には『オマエがそんなことを言うてくれるな。犯罪やないか』と怒られたこともあるのだが。

 

 

 しかし、この錠剤はコーヒーに含まれる、ポピュラーなカフェインという代物だ。過剰摂取はマズイかもしれないが、ストローで白い粉を鼻から吸引、これにやられた。街中でやったら一発で通報の図である。

 海外製なので、国内産とくらべ、アメリカナイズされたパワフルな含有量である。

 これを吸引しながら新作長編を書くのだ。なので次作は『ドラッグ小説』という一面を持つことになる。

 今日で二万字まで書き上げた。早く告知したい。設計図通りに完成すれば、なかなか楽しめるエンタメ小説に仕上がることと思う。

 夏を目処に頑張っています。到着したら、使用感などもここでレポートします。ではまた次回。

 

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諏訪靖彦『短編ノナグラム』を読む

 諏訪靖彦さんの最新刊『短編ノナグラム』を読んだ。引き込まれて一気読みであった。

 

 諏訪さんは最近私が知って追いかけている破滅派というグループの、佐川恭一さんとツートップのお気に入り作家さんである。破滅派二強と私は呼んでいる。

 今回はバラエティに富んだ短編集で、SFあり、ハードボイルドあり、ミステリあり、と内容盛り沢山であった。

 収録作は

・裸歩する男

・新世界が来るらしい

・私のご主人様

・祭りの終わり

・朝が焼ける前に

・オーディナリー・ワールド

・壊れた冷蔵庫

・イ=ドラによる福音書〜祈りを争い殺し合う〜

・密室バラバラちくわぶ付き死体の問題

 簡単に気に入ったものに対して感想を書き残しておこう。

『私のご主人様』は変形叙述ミステリの体でオチにかけた一発ワザ。最後の1行を読むときは背負い投げを食らった後だ。伏線は大量に蒔かれ、絵解きが終わった後は、誰もが同じ背景、情景を思い浮かべることであろう。

『朝が焼ける前に』は和製ハードボイルドのアプローチ。乾いた文体と死の匂い。結城昌治の現代版、といった香りがする。

『オーディナリー・ワールド』これも強烈な因果応報ハードボイルド譚。主人公が殺意を駆り立てる動機と背景が激烈に歪んでおり、それにそって極当たり前に物語は終焉を迎える。変格ハードボイルドといった、読んだ後に鮮烈な映像的印象を残す短編。

『イ=ドラによる福音書〜祈りを争い殺し合う〜』実は今回、一番楽しめたのが本作。諏訪さんはやっぱSFの人だなあ、伸び伸び楽しそうに書いてるなぁと再確認。異星人の目で異文化を解説するお得意の筆致が楽しくて目眩しそうであった。

『密室バラバラちくわぶ付き死体の問題』探偵小説日記を名乗るこのブログで、取り上げないわけにはいかない一本。読者への挑戦のついた作者曰く『バカミス』らしいが、なんのなんの、真相を見抜けませんでしたよ。で、解決篇も納得の作品。ホテルの一室でバラバラにされた白人の死体。股間には陰茎の代わりにちくわぶが。これは見立て殺人なのか、何なのか。謙遜な読者への挑戦に騙されてはいけません。骨太の一本だと思いますよ。ユーモアーも鮮烈。

 こういう商業出版では得られない読書体験が、Kindleのセルパブ本の良さだと思います。私は基本、探偵小説が好きですが、自分でも書くので、最近はセルパブの世界の楽しさに心を奪われています。

 ちょっとブログのタイトルと方向性も違いますが、今後、探偵小説の読書感想と、セルパブ本の感想は交互に出てくることになると思います。

 今後も面白いセルパブ本を見つけだし、ここで皆さんにオススメしていこうと思っております。

 

舞城王太郎『熊の場所』を読む

 昨夜、仕事帰りにブックオフへ寄り道して、というのも、これを書いている現時点、世間ではコロナウイルスで大騒ぎであり、外出はなるべく避けましょう、といった自粛ムードに包まれ、会社に対しても感染リスクを避けるため、大好きなスポーツジムをお休みしているのでありますよ。

 春になればウイルス、消えてくれるでしょうか。学校は異例の長期休みに入りました。こんなこと、今までになかったことです。

 ここは日記の役割も果たしておりますので、晩年、このブログを読み返し『あぁ、あの時は大変だったな』と、よれよれの老人となった私は机から立ち上がる時、ワザとふらついて、デイサービスのお姉さんの胸へ寄りかかるようにして立ち上がるのです。それだけが唯一の楽しみ、って誰が唯一じゃ。

 老後は積ん読本をせっせと消化する日々なことでしょう。

 で、ジムを休んだので読書です。舞城王太郎熊の場所』を買ってきました。

 

熊の場所 (講談社文庫)

熊の場所 (講談社文庫)

 

 

 『熊の場所』『バット男』『ピコーン!』の三本入り短編集です。

 昨日は『熊の場所』を読んだのですが、舞城作品、ちゃんと読んだのは初めてでして(屋根裏部屋に本はあるが)中編だったのですが一気読みでした。

 ちょっと新しい刺激を受けましたね。まず文体。これが独特で一番の魅力でしょう。スピーディーで饒舌。で、切羽詰まった観念が時折ユーモラスにも映る。

 これは多大な影響を与えていることでしょう。到達できるかは置いといて、真似したくなりますもんね。

 メフィスト賞作家なので、ミステリの要素もありました。厳密にはミステリではないですが、この方は、もうそういう次元の小説ではないでしょう。

 謎のクラスメート、秘密を知ってしまった少年、その子の家の庭には缶ケースに切り取った大量の猫の尻尾が。

 少年は恐れおののく。しかし逃げない。恐怖と対峙する。そこで逃げれば、二度とその恐怖を克服出来ないからだ。

 ちょっと、どういうジャンルの話になるのだろう。私の読んできた小説では、適切に言い表せない。文脈が全く違うのだ。

 で、面白くないのか? と聞かれたら『いいや、面白い』と間違いなく返事をする一本。

 気が、熱い気が連続して持続する文体。こういう文体に出会うと『読んでいる途中で温度の変わる人は下手だと思っちゃうんだよなー』とプロ、アマ問わず知らしめてくれる。

 残りの二本も楽しみである。オススメしちゃうよん!

 

熊の場所 (講談社文庫)

熊の場所 (講談社文庫)

 

倉知淳『皇帝と拳銃と』を読む

 創元推理文庫倉知淳『皇帝と拳銃と』を読んだ。四本入りの短編集である。

 

皇帝と拳銃と (創元推理文庫)

皇帝と拳銃と (創元推理文庫)

  • 作者:倉知 淳
  • 発売日: 2019/11/11
  • メディア: 文庫
 

 この作品は倒叙ものと呼ばれる形式で、刑事コロンボでお馴染みの、先に犯人の犯行シーンを見せ、警察や探偵がどのようにして真相にたどり着いたか、が見せ所の作品。

 犯人は犯行がバレないよう、必死になって偽装するし、隠し通そうとする。犯罪を犯した奴など罰せられれば痛快なはずなのに、この倒叙形式という奴は、犯人に感情移入してしまうところがあり、有能な刑事、ここでは死に神のような風貌の乙姫警部(名前のギャップも面白い)とイケメンの若い刑事、鈴木刑事が犯人に対して、何度も、しつこく、自宅や職場を尋ねてきて、チクリチクリと痛いところを質問してくる度に、読む方もドキドキしてくる、そういう面白さがあるのだ。

 犯人が最初に『完璧だ!』と思いながら犯行を犯しているので、その経過も一緒に読者は見て理解している。どう考えたって見破られるはずが無い。だのに『そんなこと気になるの??』『そこを更に気になられたら困る』『ヤバい』と、警察の追求が重なるにつれて、読む方が『捕まりたくない』と思いだすのだ。

 ここから先はネタバレを含むので、未読の方や読む予定があればスルーでお願いします。

 まず個人的に好みの作品は『運命の銀輪』物理トリックよりも、心理的に納得できる追求が好みなのだ。

 この作品の決め台詞に毎回ではないが『最初から疑っていました』というのがある。私に置き換えて説明しよう。私が共作者である相棒の金平を、完璧な方法とアリバイで殺害した。自分で殺したので、相棒の死は当然知っている。警察が最初に訪れた時、カマをかけて『金平さんが亡くなられまして』と振ってきても、内心の私は『誰に殺されたんですか? と聞き返すものか』と思いながら警察と対峙している。

 しかし、だ。編集部からの第一報で『金平さんが亡くなった、それも他殺らしい』という電話を貰い、それが警察の来る前だったので『尋問より先に知っていた』と私は警察に説明した。

 しかしこの作品の乙姫警部は、私の携帯電話の利用履歴を調べ、一度も金平に電話をかけた形跡がないことに不審を抱く。

 そこまで仲の良い相棒ならば、編集部から亡くなった、という報を受けたら、確認するために電話をするはずだ。なんだ誤報か、良かった。という確認の電話を金平にするはずだ。それをしないのは、自分が殺してその情報が正しいことを既に知っているからだ。という指摘。なるほどな、と。偽装が完璧すぎて、人間の心理を見落としてしまい、そこを突かれ瓦解していく。そういうところが面白いのだ。倒叙推理は。

 二本目の『皇帝と拳銃と』は、これも犯人の追い詰められる過程での心理の声が読みどころとして面白い。

 三本目の『恋人たちの』は、逃げ切れると思えた犯行を、警部の執念深い徹底トンデモ科学捜査でひっくり返る様が重厚。

 四本目の『吊られた男と語らぬ女』は、ここにきての変化球。動機がぶっ飛んでいるが、そういう心の症例なら、ありなのかな、とも思う。意外性からの逆の組み立てな作話で、ミステリ作品だから、多少はね、人間性をねじ曲げても。パズル小説ですから。

 以上四本、どれも楽しめた。『えっ? これ完全犯罪でしょ、これ覆せる?』と思いながら読み進めて、警部の質問に金玉が縮み上がる、そういう楽しみ方ができる一冊。オススメしておきましょう。

 

皇帝と拳銃と (創元推理文庫)

皇帝と拳銃と (創元推理文庫)

  • 作者:倉知 淳
  • 発売日: 2019/11/11
  • メディア: 文庫
 

甲賀三郎『羅馬の酒器』購入

 甲賀三郎の単行本『羅馬の酒器』を落札した。水害にでもあったかのようなダメージ本であるが、本来なら五桁の古本である。百円スタートから四桁で競り落とした。

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 触る度にポロポロと崩れていく。箱は仕方ないが、本はなんとか原形を保ち、丁寧に扱えば分解せずに読めそうである。

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 短編集だ。まー、甲賀三郎の不遇さったらない。戦前は江戸川乱歩と肩を並べる好敵手であったのに、乱歩と比べると復刻状況は悲惨なものだ。戦前の三羽がらすの一人、大下宇陀児にもそれは言える。

 同時代作家である夢野久作久生十蘭小栗虫太郎海野十三、など、ほぼ全容が掴める全集が出ているというのに。

 本屋の減少、出版不況、日本の貧困化(文化含め)等を眺めていると、私も今年五十だが、生きているうちに完全版全集が出る望みも薄くなってきた。

 頼りは論創ミステリ叢書シリーズと、盛林堂ミステリアス文庫だけである。河出文庫が『蟇屋敷の秘密』を出してくれた時は小躍りしたものだが、後が続かなかった。あのシリーズも新刊は止まっている。売り上げがよろしくなかったのであろうか?

 まぁ私が定期的に甲賀三郎と呟き続ければ、誰かの耳に残り、それはやがて呪いや怨念となって、誰かに憑依し、私の死後、復刊を気に掛けてくれる後継者が、この広いネット、一人くらいは現れてくれるであろう。

 そうして、このブログの方向も、少し変更を加えることにした。

 買ったまま積ん読になっている論創ミステリ叢書シリーズを、頭から読んで感想を残す&日記、という体裁であったが、レールに縛られることを嫌い飽きっぽいB型の私には無理であった。その日の気分で読みたい作家が変わるのだから仕方がない。

 なので、論創ミステリは大きな目標として残し、ランダムに読んだ作品の備忘録と、自身がセルパブ作家なので、AmazonKindle本の紹介、最新の動向、私の本にまつわる話題はこっち。CDに関する話題と裏呉エイジは(笑)『だめなやつら』と棲み分けていこうかと思っている。

 セルパブ関連ではこれを紹介しておこう。

 

 最新の動向をチェックすべく、読んでみたら思いがけず自分の名前にぶつかった。投票してくれた方々は知っているセルパブ作家さんである。こっちは投票の仕方とか知らなかった。義理を欠いてしまった。

 こういう本で紹介されて、自分の本の売り上げに繋がってくれたらなー、と思う。私にお金が入れば、古い探偵小説を買うだけのことだ。本を書いて本を買う。至って健全な使い道である。

 しかし、こういうランキング本で一位を取るのは大変だろうな。芥川賞を懇願する太宰のように、主催者側に泣きついてみようかな。いやいや、そんな政治的なことをせず、腕を磨け、ということだ。

山田佳江『感情買取ドットコム』を読む

 

感情買取ドットコム

感情買取ドットコム

  • 作者:山田佳江
  • 出版社/メーカー: オルタニアノベルス
  • 発売日: 2018/05/10
  • メディア: Kindle
 

 

 月の小遣いから嫁さんは容赦なく千円引いていく。それはクレジットカードでAmazonのアンリミの請求があるからだ。実際は千円未満だから年間数百円の損をしている。それを言えばきっと

『またアンタはケツの穴の小さいこと言うて』

 と、現代の放送コードでは色々と問題のある発言をすることは容易に想像できた。

 なので黙っておくことにした。

 そのモヤモヤした気持ちをこうやってブログにぶつけることにする。ブログタイトルは探偵小説だが、右に表示されるカテゴリ欄にKindleの項目も作ってある。

 基本は探偵小説好きだが(それも物故作家ばかり)、五十になって視野も広がった。年間数百円の損を、同時代で創作する人との出会いに繋げようではないか。こういう動きで、また残りの人生、楽しくなるかも知れない。

 今回読んだ本は山田佳江さんの本。もう一つのブログ『だめなやつら』で書いた『#精神のなんとか』の主催者さんだ。イベントの告知ツイートを見てハッシュタグ付きツイートをしたら、私の作品も掲載してもらえた。利害関係は全く無い。この記事は純粋な読書レポートである。

 今回読んだ『感情買取ドットコム』ほとんど一気読みだった。これは重要で、私は乱読するが集中力が続かない。典型的なB型人間である。

 面白くないと途中でも平気で投げ出してしまう。

 本作は文章もそうだが、読み手を引きつける、興味を持続させる技が巧みで、色々と女流作家の方程式を考えさせられる、よい読書経験となった。

 まずタイトルにある感情買取、この設定が面白い。SFほどハードなものではなく、スマホのアプリで人間の感情を売り買いできるのだ。インカメラの眼球スキャンによって。

 これがメルカリ的で実にありそうなものとして描かれる。科学的には無理もあろうが、全然そんなことを感じさせない。

 主人公の中年男性は今でも愛してる妻と別居五年目を迎えている。愛が強すぎて、上手くいかない感じの夫婦生活であったのだ。

 その別居する妻は不定期に男を部屋に呼び出す。ワインを一緒に飲む口実をつけて。そうしてセックスもする。読んでいて『なら復縁したらいいじゃん!』と思うのだが、様々な要因が重なって元の鞘には収まらない。

 この辺りの『焦らし』が実にイイ。

 中年男性に恋する部署の後輩女性は、明るく気持ちを伝えてくる。感情買取のアプリを教えてきたのも彼女だ。

 未練を買い取らせれば、自分に振り向いてくれるのではないか? そういう打算も働いている。

 生殺しの男は(そりゃそうだろう)妻への未練の気持ちをアプリで査定してみる。すると、桁違いの買い取り価格二百万円の表示が出てきた。

 男は『この苦しい気持ちが消えれば、新しい恋、新しい一歩が踏み出せるのではないか』と思うようになる。

 そうして一大決心をして気持ちを売り払ってしまう。嘘のように心の中の霧が晴れる。会う度にドキドキしていたのに、玄関先で見る妻は普通に年齢を重ねた中年女性であった。

 気持ちも晴れて男は離婚の手続きもスムースに行えるまでになっていた。

 そこで目にした感情のオークション。三百万円まで高騰している。妻の感情が売りに出されていたのだ。

 妻は何を思っていたのか。俺は愛されていたのか。様々な想いが高まって……。

 というお話。よいお話は粗筋を書くだけでも引き込まれる。

 今回読みながら思ったのは、男である自分が同じ素材を扱うのなら、感情買取は、その設定でもっと笑かしにかかるだろうな、と。終始物語はリアルな男女の感情で進行していく。そこに女流作家の凄みを感じる。

 あと、セックスしてるのに、食事もするのに、定期的に会うのに、復縁しない。という話の流れに『女性のセックス』を感じた。なかなか到達させない。男ならすぐ射精したがる所を、こんなにネタてんこ盛りなのに、ゆっくりと筆を進める。ちょっと下品な形容だが、ここはいただきポイントである。

 物語に成長と希望が見えるのも良い。高いリーダビリティ、オススメの一本である。

 

感情買取ドットコム

感情買取ドットコム

  • 作者:山田佳江
  • 出版社/メーカー: オルタニアノベルス
  • 発売日: 2018/05/10
  • メディア: Kindle