この前嫁さんと行った四国旅行で、ブライアンウィルソンのCD「ラッキーオールドサン」を買った。
これを全編ヘッドフォンで聴き終わり、感涙していたところである。
「なんでこんなしわがれた声のおっさんの音楽を紹介するの?」
と言われる方もいるかもしれない。ブライアンウィルソンはあのビーチボーイスのリーダー。若い頃は魅惑の高音、ファルセットボイスを持つ、現役の天才コンポーザーである。
- アーティスト: ブライアン・ウィルソン
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2008/09/17
- メディア: CD
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このCDを聴いて思うことは「65歳にしてなんという瑞々しさか」ということだ。
ビートルズとのヒットチャート争いで、ドラッグに逃げ「サージェントペパーズ」の前に出していたら歴史が変わっていただろう「スマイル」の未完。
それからブライアンは廃人同様となり、ドラッグのせいであんなに美しかった高音ボーカルがガラガラとなり、何人も精神科医を変え、時には精神科医にマインドコントロールをされ、かつての仲間と仲違いし、何十年も暗闇の中をさまよっていた。
そうして良識ある仲間たちが、精神科医がブライアンとコンタクトを取ることを裁判で禁止し、ようやく自分のための音楽を作ることができた。
そしてこの「ラッキーオールドサン」である。
私はこの復活に心から感動した。そして人間は何歳になってもクリエイティブでいることができる、という勇気を貰った。
新曲はとても老人が作ったとは思えない、若さと輝きに満ち溢れていた。なんでこんな心踊るメロディが出てくるのか。
皆さんにも一聴をお勧めしておこう。
Brian Wilson Good Kind Of Love
※
さて、今回は「隼の薮入り」を読んだ。
タイトルの『薮入り』とは、奉公人が暇を貰って、実家に帰ることを言うそうで、休暇・骨休めの意、らしい。
舞台は大阪である。
今回も短いもの。大阪の電車で商店の旦那から財布を抜き取り、その旦那が連れていた丁稚に、自分は遊びに行くが、店には商用だと嘘を言ってくれ、と頼み、小遣いを握らせるところを見た隼お秀。
丁稚は突然の小遣いに喜び、電車を降りてアイスクリームを食べようと繁華街を目指すのだが、別のスリ集団に財布を擦られる場面を後ろを歩いていた隼が見ており、即座に盗み返す。
その後の丁稚との小デートが面白い。アイスクリーム、プレーンソーダ(響きが良い、どんな飲み物か)、活動小屋。昔の大衆の好んだ娯楽にロマンを感じる。
最後、丁稚に旦那の財布を菓子折りに詰めて返すのだが、ここら辺、ちょっとキャラがブレているようにも感じる。
男勝りで、スリだが悪事は嫌いで、啖呵を切り、人情に厚い。ここまではそんなキャラで来たようにも思うが、盗んだ財布を丁稚に返すことで、劇的な物語の幕切れにはなるが、丁稚が旦那に叱られやしないか? と思ってしまうのだ。
1927年7月「サンデー毎日」