ジムのまゆゆ似の彼女が12月に入ってから来なくなった。
11月で退会してしまったのだろうか。誰かが、かっさらっていったのだろうか。
単に仕事が忙しく、ジムに来る時間が無い、ことを祈りたい。
世間には12月、嘘みたいに忙しくなる会社あるもんね。
そのせいもあって、文章に身が入らない。
それにしても同じ中年男性なのに、ジムでフランクに女性と話をしているオッサンは凄いなぁ、と思う。
私は相手に『この人本気になりそう』とか『足の裏を舐めたそう』みたいに、変に勘ぐられてしまうのだろうか。(見抜くのだろうか、とは書かない)
女性に対してサラリと話しかける、これも一種の才能だと思いますね。
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さて、今回は「隼の万引き見学」を読んだ。
ちょっと隼シリーズに物足りなさを感じていたのだが、今回は楽しめた一編。内容に踏み込んでいるので未読の方はご注意を。
銀座を歩く隼お秀、そこへ顔見知りの新聞社部長、津崎と出くわす。お互いに軽口を叩きながら銀座を並んで歩く二人。ここで街を歩く人や服装をスケッチするような描写が続く。
こういうところが当時の風俗小説として貴重であり楽しめるところ。
さて、面白いのが二人、前を歩く婦人に目がいく。この婦人、代議士の妻なのだが、盗癖がある、という。が、代議士の妻なので事件は公にはならず、いつももみ消されているらしい。
万引きするシーンを見物できるか? 二人は興味本位で尾行する。
ここまでの流れは探偵小説的でとてもよろしい。
ここから先は好みの問題になるだろう。
デパートの中には私服警官が巡回している。この私服警官は以前、代議士の妻の犯行を目撃したのだ。
宝石ケースに近づく婦人、そこで婦人は店員に告げる。
「あの刑事が宝石を盗むところを見た」と。
その騒動の中、隼は野次馬根性で聞き耳を立てに近づいて向こうに気づかれて顰蹙を買い赤面で離れる。
宝石は実際に無くなっている。婦人はかつての密告を根に持ち、罪を刑事に着せようと思っての犯行か? 代議士の妻なので身体検査はできない。
なら刑事の犯行か? 刑事は身体検査をされ、身体から宝石は出なかった。
じゃあどういうこと? という探偵小説である。
ここで聞き耳を立てて接近した伏線が活きてくる。ここで隼は宝石を失敬していたのだ。
犯人は刑事の方だったのだ。刑事のポケットから宝石をスリ、その宝石を隼は津崎のポケットに入れておいた。
というのが真相。
読んでいる方は、盗癖のあるワガママな代議士の妻をギャフンと言わせて欲しかったが、そうはならない。作者は一回ひっくり返している。
出来心で宝石を盗んでしまった刑事、この言いがかりだけでも免職になるのだが、罪人になるのは忍びない、と感じた隼お秀が、証拠品を得意技のスリで抜き取って、逮捕を免れるようにした、という『イイ話』に仕立てているのだ。
1929年6月「新青年」