甲賀三郎の単行本『羅馬の酒器』を落札した。水害にでもあったかのようなダメージ本であるが、本来なら五桁の古本である。百円スタートから四桁で競り落とした。
触る度にポロポロと崩れていく。箱は仕方ないが、本はなんとか原形を保ち、丁寧に扱えば分解せずに読めそうである。
短編集だ。まー、甲賀三郎の不遇さったらない。戦前は江戸川乱歩と肩を並べる好敵手であったのに、乱歩と比べると復刻状況は悲惨なものだ。戦前の三羽がらすの一人、大下宇陀児にもそれは言える。
同時代作家である夢野久作、久生十蘭、小栗虫太郎、海野十三、など、ほぼ全容が掴める全集が出ているというのに。
本屋の減少、出版不況、日本の貧困化(文化含め)等を眺めていると、私も今年五十だが、生きているうちに完全版全集が出る望みも薄くなってきた。
頼りは論創ミステリ叢書シリーズと、盛林堂ミステリアス文庫だけである。河出文庫が『蟇屋敷の秘密』を出してくれた時は小躍りしたものだが、後が続かなかった。あのシリーズも新刊は止まっている。売り上げがよろしくなかったのであろうか?
まぁ私が定期的に甲賀三郎と呟き続ければ、誰かの耳に残り、それはやがて呪いや怨念となって、誰かに憑依し、私の死後、復刊を気に掛けてくれる後継者が、この広いネット、一人くらいは現れてくれるであろう。
そうして、このブログの方向も、少し変更を加えることにした。
買ったまま積ん読になっている論創ミステリ叢書シリーズを、頭から読んで感想を残す&日記、という体裁であったが、レールに縛られることを嫌い飽きっぽいB型の私には無理であった。その日の気分で読みたい作家が変わるのだから仕方がない。
なので、論創ミステリは大きな目標として残し、ランダムに読んだ作品の備忘録と、自身がセルパブ作家なので、AmazonのKindle本の紹介、最新の動向、私の本にまつわる話題はこっち。CDに関する話題と裏呉エイジは(笑)『だめなやつら』と棲み分けていこうかと思っている。
セルパブ関連ではこれを紹介しておこう。
最新の動向をチェックすべく、読んでみたら思いがけず自分の名前にぶつかった。投票してくれた方々は知っているセルパブ作家さんである。こっちは投票の仕方とか知らなかった。義理を欠いてしまった。
こういう本で紹介されて、自分の本の売り上げに繋がってくれたらなー、と思う。私にお金が入れば、古い探偵小説を買うだけのことだ。本を書いて本を買う。至って健全な使い道である。
しかし、こういうランキング本で一位を取るのは大変だろうな。芥川賞を懇願する太宰のように、主催者側に泣きついてみようかな。いやいや、そんな政治的なことをせず、腕を磨け、ということだ。