前日から「朝の八時半に行くど」と金平にメールをし、相棒の金平は職業上夜型人間なので、朝が弱いのだ。時間カッキリにチャイムを押す。
「かーねひらくーん」
これは中学校からイントネーション等全く変わらぬ不変の呼び出しである。
不安そうに金平が出てくる。おばちゃんも見送りに玄関まで出てくれた。
「今日はどこドライブ行くん?」
「倉敷の上の方まで行ってみます」
「気を付けていきや」
不安げな表情のまま、金平は助手席に乗る。
「もしかして、お城か?」
「お城や」
「どんな城や?」
「知らんがな」
相棒は重要文化財が拝める、というのに非常にナーバスであった。
「山城ということは徒歩で登るんやな?」
「当たり前やがな、行くど」
友は半泣きのまま助手席に乗る。
そしてそのまま有無を言わせず、山陽自動車道をノンストップでブッ飛ばし(笑)拉致&軟禁である。
城下の高梁という街、川と山に挟まれて、まだ昭和が色濃く残る風情ある商店街が残っていた。
私は運転手だったので、その画像が無いのが惜しいところ。
備中松山城は山の8割くらいまで車で登れる。そこから山道を歩いて山頂の天守を目指すのだ。
車一台通れる山道を車で登り(無線で山の上と下で連絡を取り、交互に行き来させている)10台くらい停められる駐車場を発見。平日なのに結構埋まっていた。
年配のご夫婦が杖を持ってトライしている姿を多く見かけた。
野郎二人で山城(笑)
自然の岩肌に人工の石垣をミックスさせたハーモニー。土塀も素晴らしい。
友はうな垂れたまま付いてくる。
山道は結構キツイ。
それにしても、こんな山頂にここまで立派な石垣群。驚嘆する。石一個ですらこんな山頂まで下から持って上がれる気がしない。
「ホレ、見てみぃ金平。見事な石垣と土塀やろ。目に焼き付けとけ」
「喉乾いたな」
友は疲れすぎて、声が一オクターブ上がっていた。
「まだ階段あるんかい」
「頑張れ金平、昔の人はここをクソ重い鎧着て登ってたんや。それに比べれば、ワシらTシャツにジーパンやん」
「それ喩えられても今江戸時代ちゃうし」
「ほれ、見えてきたぞ、もう一息や、頑張れ」
「素晴らしい、なんて美しい山城なんや。どうや金平」
「お前なぁ、今わしの足、小鹿のようにプルプル震えてもうとるがな!」
震える足でようやく建築群へ。
〜続く〜