呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

2019・9 だめなやつら福山旅行5

 前日、下戸であるにも関わらず、ちょっと小洒落た店でキンキンハイボールを調子に乗って二杯も飲んでしまったので、その夜の記憶は曖昧であった。

「なぁ金平、ワシいびきかいてたか?」

爆音じゃ!

 友の目はマジでイカリング(怒りの最上級)であった。

「まぁそんなに怒るな。気を取り直して福山城行こか」

「みんなが城に行くの嬉しいと思うなよ」

 腰痛持ちの友はブツブツ言いながら付いてくる。気温は高く、少し歩いただけで汗が吹き出した。

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「おお!見えた見えた。素晴らしい」

「今回は山城じゃなくてホンマに良かったわ。ホテルから歩いて五分も最高やし」

 福山城天守こそコンクリート再建であるが、入り口に当たる伏見櫓、門は当時のまま残る貴重な遺構だ。

 本丸をぐるりと見渡す。そして城撮影の為に導入したニコンの一眼レフでバシバシ撮りまくる。

 じっくり味わいながら天守に向かう。そこで我々は信じられない看板を目にした。

ああっ!

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 なんと工事中であった。はるばる姫路からやってきて、この仕打ち。神よ、貴方は我々にどれだけの苦難を与えれば気がすむのですか。

「なんてこった。最上階から街を見わたそうと思ってたのに、なぁ」

「ん?」

 私は友の表情を見逃さなかった。振り向いた瞬間、きゃつは能面のような表情に戻したが、それまでは確かに微笑んでいたのである。

「お前、今喜んでなかったか?」

「暑いからな、5階まで階段で上がらんでもええやん」

「なんちゅう消極的なことを。頂上からの眺めが最高なんやないか」

「まぁ下調べしてないプロヂューサーさんのせいやな(笑)」

 ぐうの音も出ない。まさかこのタイミングで工事とは。がっくりしながら建物の奥を見ると

あ、ああっ!

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 私が集めている城メダル販売機があるではないか! ここでなんとか精神の均衡は保たれたのであった。

 私はホクホク顔で打刻機にメダルをセットする。これだけでも収穫であった。

 ここで福山城の感想を書き残しておこう。決して悪意でディスる訳ではない。愛のある意見だと思っていただきたい。

 これは街で何人かと話をしたことを含めて、のことだが。まず福山は駅前の真ん前にあるモールのビルが閉店したままになっている。

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 これがとても惜しいし、寂れた印象を旅人へ強烈に残す。そして市民はこの先に控える福山城400年祭に対しても『城ばかりにお金を使って』という意見が案外多いそうである。

 税金を城ではなく、駅前の活性化に使って欲しい、という意見が多いのだろう。

 市民が福山城にそれほど思い入れがない印象を受けた。それは朝の本丸でも感じた。天守に近づいて見ると、天守の真ん前に職員か業者かの軽四が駐車してあるのだ。

 仕方なく一枚撮ったが、絶好の角度に異質な軽四。歴史散策に来ているのに、福山城関係者はその辺の意識が薄いのだろうか。一般車は乗り入れできないはずだ。

 江戸時代の建物を写真に収めたいのに、その前に車を止める。姫路城、金沢城、熊本城ではまずそんなことはなかった。

『どうせコンクリートの再建だし』

 くらいの温度なのであろうか。それでも豪壮な伏見櫓、本丸門は貴重な建物である。

 地方創生に城は有効である。相棒と行った愛媛の松山城は賑わっていた(逆に宇和島城の市民の城に対する温度の低さは観光客数に如実に現れ、感じ取れた)。城を中心として街が盛り上げているところは活気があった。

 城ばかりに金を使って、という意見も否定はしない。だが平成を終え、令和の今の日本はどうか。

 どの街に行っても同じ牛丼屋、同じ眼鏡屋、同じ看板のコンビニ。同じ風景である。何が街の差を生むのか。それはその街特有の城、である。

 福山城内の寂れた感じ、30数年前に母親に連れられて行ったが、展示物は恐らく変わらぬままであろう。

 本丸には広場があるのだ。日曜には市民フリマなどを毎週開催すれば良い。城を動線とするのだ。このメルカリ時代、売りたい人はたくさんいるし、安く買いたい人もこの不景気時代にはもってこいだ。

『城に行けばなんか楽しいことがある!』

 と思わせるのだ。露天も出せば良い。そして福山城の建物はコンクリート再建だ。中央にある復元櫓、湯殿も閑散としている。

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 これも暑い日には建物前にミスト扇風機などを置き、湯殿の湯煙を演出する、とか。

 西端にはこれも寂れた鐘櫓が寂しく建っている。

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 これもどうせコンクリートなら解放して、二階に鐘を吊るすのだ。そして『愛の鐘』みたいな張り紙を添え、訪れる夫婦、カップルが二人で鐘をつき盛り上がる。みたいなことも楽しいではないか。少なくとも閉鎖したまま何もしないよりは。

 私の印象は『色々勿体ない』そして『城に力を入れていない』であった。

 なんか今宵は色々語ってしまったな。真面目か!

〜続く〜