短編二本収録の、漫画作品集です。
あとがきに私も少し出ております。持ち上げて私のことを書いてくれてはおりますが、そして私が関係した幻のネームも、彼の望む方向性とは違うとはいえ、気に入った物を書いたのですが、思うところは色々とあります。
が、今回は本音を言いましょう。
「金平、この勝負、ワシを持ち上げてくれんでもお前の勝ちやったやないか。何度もリテイクしたミステリーマガジン掲載作、その甲斐あって読んだ方から絶賛、高評価やったやないか。選択眼は正しかったんよ」
先日の「ワガツマLINEスタンプ」といい、今回の相棒の新作といい。新しいアクションはワクワクするものです。
ツイッターで「買いましたよ」という書き込みを見ると心が踊ります。
ホームページで書いたものをマックピープル編集部さんに声をかけられ、初の単行本を出したのが何年前か。皆さん本当に義理堅い。
おい金平、ワシらはホンマ、幸せモンやなぁ。
そうして相棒が作品を出すと、私も負けじと自分の作品集を世に問いたくなるのです。次の短編集、なかなか完成しませんが、出来上がっている短編「グランドファーザーのモーションピクチャー」は、ここ数年で色々読んで蓄えたものが形になって、面白いもんに仕上がってます。
金平、ワシも負けんぞ。今にみちょれ!
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さて、今回は「白い手」を読み終えた。
ショートストーリーで「スリ」物である。探偵小説は好きだが、戦前に流行した「地下鉄サム」などのスリ物、この辺り私は不勉強でほとんど読んでいない。
電車内でのスリ行為、そこから派生するストーリー、といった様式の連作になるのだろうか。
で、松本恵子。この短編で三本目だが、感じるのは「嫌味のない、文章からふんわりと浮き上がるようなユーモアセンス」ということ。
仮に内容が大したことなくとも、文章や表現だけで惹きつける物を持っている。
本作、ちょっと強引ながら、意外な真犯人を設定している。乞食が証言する「天からがま口が降ってきたのです」というのも不可能興味を掻き立てて面白い。
ギリギリどの謎も破綻なく纏め上げている。最後にニヤリとさせてもくれる佳品。
1925年(大正14年)5月「探偵文藝」