呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

橋本五郎「脣花No.1」を読む

 近いうちにまた、電子書籍で短編集を出しまーす。現在、相棒の金平に表紙を依頼しております。

 4本入り。そこそこ面白い、のではないかと(笑)

『もしも宝くじが当たったら』『鍵』『グランドファーザーのモーションピクチャー』『続もしも宝くじが当たったら』の4本を収録。

 ノートで出したやつもありますが、加筆訂正しております。

 50になってですね、体力の衰えを如実に感じますね。仕事から帰って、食事中に寝そうですもんね。3歳児か! と。

 前から告知していた短編集なので、これを出したらいよいよ懸案の長編に取り掛かりたい、と。

 皆さま、どうぞよろしゅうに。

 さて、今回は「脣花(しんか)No.1」を読み終えた。長らくの読書スランプであったため(笑)リハビリ再開である。内容に踏み込みますので、未読の方はご注意を。

『女性思潮』で働く喜久田(秘密にしているのに)宛に郵便が届いた。そこには『恋愛に関する変わった物語がある。待っているから是非おいでにならなくてはならない』と、結構強引な文面で書かれてある。

 内容から察すると女性から送られてきたもののようだ。喜久田は差出人に全く心当たりがない。

 散々迷って指定場所へ出向くことを決める。それほど立派ではない家に入ると、青い顔をした青年が出迎えた。

 聞けば手紙の差出人の兄らしい。

 部屋に向かうまで、青年は喜久田に質問をする。

「沢山の唇の中から『汝の妻を求めよ』と問われたら、貴方は捜し出せますか?」

 部屋で見せられたスクラップブックには、大量の唇がひしめき合っていた。様々な口紅の色と形。

 この辺りの過剰な書き込みが『変格寄りの探偵趣味』のタネとミソだ。

『研究のため』と言えば、大半の女性は協力する、と男は言う。

 なんのために? 男のコレクションは引き継がれたもの、だという。

 一枚の美しい形をした唇、前任者はこの唇の主に恋をした。恋愛は幸福に見えたが、女の一方的な心変わりにで、交際は終わりを告げる。復讐を考える男。暴力ではない復讐を懸命に考える。

 文章の上手い橋本五郎だが、この短編はオチがちょっとわかりにくい。写真に写った唇を、薬品の力を借りて別の紙に転写した、のもどうなのかと思うし。

 新婚の妻の過去を詮索したくなる男の気持ち、というのは、現代でも通じるテーマ、だと思う。

 

1928年4月『探偵趣味』

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

橋本五郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)