一軒目のハードオフ、ブックオフの攻略を終え、旅のしおりに従ってiPhoneにグーグルマップの行き先を設定する。次はブックオフではなく個人経営の古書店だ。
車で移動すると雄大な琵琶湖がお出迎え。海のようだけど潮風ではない不思議な感覚。街はこじんまりしていて商店街もシャッターだらけではなく機能しているのが良い感じ。路面電車も趣がある。
時間があれば、こういう商店街も端から端まで歩きたいのだが、いかんせん時間が無い。泣く泣くスルー。
ここは学術書が多かった。山岳関係の書籍が多かったのも印象的。破格値のワゴンに文庫が並ぶ。古き良き古書店である。店内に入った瞬間の古本の匂いもたまらない。
そして次へ。マップによれば高校の近くにあるチェーン店ではない古本屋である。
呉「ああっ、嗚呼ッ!!」(涙)
入り口にはカーテン、そして無常にも『火曜定休日』のお知らせが。
金平「オマエなぁ、また定休日確認せんと旅のプラン立てたんか?」
とてつもない衝撃が私を襲う。ホセ・メンドーサに打ち砕かれたカーロス・リベラのテンプルかの如く。
金平「日頃の行いで神様云々とか言うてたが、日頃の行い、オマエ悪いんかもな。浮気性やしな(笑)」
呉「あぁー、サンバルカンのポスターとか貼ってる。絶対に俺好みの古本屋さんやわ」
金平「気を取り直して次行くか。天罰もここまでやろう。オマエの不運を俺の幸運でひっくり返したるわ」
後ろ髪を引かれる思いで、その際、頭頂部から数本抜け落ちて、って誰が『頭頂部少なくなりましたね』じゃゴラァ!
時間は13時33分。お宝倉庫と向かいにはまんが古本屋が見えた。
呉「何がワシの幸運じゃ! まんがひろば定休日やんけ! オマエの幸運も大概やのぅ! 幸薄人生やのぅ!」
金平「オマエの旅のプランがいつもアバウトやから、こうなるんやろうがい!」
店の前で一触即発である。悪態をつきながら金平は、先ほど買ったコンデジで店を撮影し始める。
金平「あれっ? あれれっ?」
移動中、シガレットソケットから充電して満タンにしていたのに、数枚撮影しただけでバッテリー切れとなったようだ。そりゃ十年前のバッテリー、へたっていて当然であろう。結局この旅では、五分ごとに充電せねば撮影できないという、ウルトラマンに毛の生えた程度の活動時間なのであった。私に悪態をついた天罰であろう。
お宝広場で店内を物色。
呉「お、おい金平。お揃いでこれ買おうや」
ショッカーのロゴが入ったワイングラスである。見たことがない。何かのイベントの時の記念品であろうか? 纏まった数が出ている。激レア入手困難は誇大広告ではなさそうだ。
金平「ええな、これで世界征服、読書界の席巻を願って乾杯や」
呉「赤ワイン注いで乾杯の写真、夜にツイートしよう!」
激レア品をお揃いで買って仲直りである。店を出たら腹が鳴った。
呉「近くに唐揚げ屋さんが見えるぞ」
金平「もう腹ぺこや、そこ行こう」
呉「おい金平、この普通の唐揚げと味噌唐揚げのセット定食が二つの味を味わえてグーとちゃうか?」
金平「ええな、じゃあそれで」
呉「僕は二個増量の大盛りで」
金平「よう食うやっちゃな」
可愛い店員さんが苦笑しながら厨房に戻る。
運ばれてきたのは絶対にオイシイビジュアルの、たっぷり味噌に漬かった唐揚げであった。
呉・金平「ンマーイ!」
舌鼓。頭振り回しながらの乱れ打ちの舞、である。
呉「味噌味が最高」
金平「この普通の唐揚げも、柔らかくってタレが美味いわ」
呉「毎度お馴染みのご当地グルメの件やけど、滋賀県は近江牛が美味いらしいから、この旅で一度は食べような」
金平「検索せなな」
腹ごしらえを終えて次の店に向かう。
呉「でっかいイオンやなぁ、マップではここにブックオフがあるらしいんやけど」
金平「姫路のリバーシティよりデカいな」
呉「よっしゃ、店内散策や」
そうして我々は巨大なショッピングモールに突入したのだが、まず二階の端から端まで、そうして一階の端から端までをゆっくり歩きながら探したのだが、全く見つからない。
金平「おい呉、ホンマにここか?」
相棒の眉間にシワが走る。
呉「間違いないわい。下調べはちゃんとしたんじゃ。オマエこそホゲーッとしとらんと探せや」
美味い物を食って仲直りしたのに、速攻で険悪なムードである。
呉「ないなぁ、三階に上がって端から端まで歩こうか」
金平「足が棒じゃ! 既に1キロくらい歩いてるんとちゃうか?」
巨大ショッピングモールで、泣きそうな顔になった五十のオッサン二人が迷子のお知らせである。
呉「あっ、あそこにサービスカウンターが見える。ギブや。悔しいけど聞いてみよう」
私はプライドを捨てて、巨乳でフェロモンムンムンなサービスカウンターの厚化粧熟女に声をかけた。
呉「あのぅ、ブックオフは何階ですか?」
熟女「ブックオフはこの建物を出て、道を挟んで向こうに建っている別館内にございます」
呉・金平「別館!」
金平が無駄な運動をしたため、恨めしそうな目で私を見る。
呉「ま、まぁええやないか。食後の運動や。それよりもブックオフ、もっと主張せいよ!」
結局2キロくらいウォーキング彷徨いになった格好で、我々は遂に店を発見した。
今回の旅では90年代のよくわからない女性のCD、設楽りさ子、三井ゆり、杉本彩、東京パフォーマンスドールなどを確保する目標を立てた。
そうして本ではミステリ関連と、最近イチオシの佐川恭一さんの本がターゲットであった。京大のお膝元、京都からも近い。もしかしたら出会えるかもしれない。
マケプレでは阿波しらさぎ文学賞受賞後、プレミアが付き、値段が高騰していた。
これといった手応えのないまま数軒、通過する。陽は沈みかけていた。
ここに至ってようやく持っていないCDを確保。広末涼子である。デビューアルバムで、発売当時は相当話題になった。
竹内まりやなど、豪華作曲陣で作られたポップなアルバムである。
ショートカット美少女はたまらない。
〜つづきます〜