呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

平林初之輔「夏の夜の冒険」を読む

 姫路のジュンク堂に行って青春の一ページを思い出させてくれる本に出会った。

PCエンジンコンプリートガイド」である。

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  発売された(海賊ソフトは除く)全てのソフトのジャケットと盤面の写真が圧巻。

 そして数多くの周辺機器の写真紹介では、包装箱の写真まで掲載されている。当時のおもちゃなんて、買えば箱など捨てていた。

 これを全て掲載するのは大変なことであったろう。どこかのコレクターの力が働いているのだろうか?

 流し読みして、私が瞳孔を見開いた記事をかいつまんでご紹介しよう。

「セクシーアイドル麻雀 野球拳の詩」1995年発売、定価8500円。日本物産からの発売である。

セクシーアイドル麻雀 【PCエンジン】

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  当時のAV女優が多数出演しているそうである。それだけでも歴史的価値を踏まえ、収集の対象になるのだが、問題は次の一節である。

ミニゲームで野球拳もあり、解像度が荒いながらも乳首を拝むことができる」

 なんということだろう。子供向けのゲームマシンで乳首である。それもプレステ、サターン以前の機種でである。荒い解像度の乳首というのが(ワシはさっきから何回乳首言うとるんじゃ!)とても気になって眠れない。

 それも当時としては破格の発色数512色の表示パワー(これはスーパーファミコンの256色をも超えていた)がなせる技。

 なんとか今、相棒の金平と進めている「我が妻LINEスタンプ」が当たって、実機とともに買い求めたい一品である。

 さて、今回は「夏の夜の冒険」を読んだ。

 この作品は、ここまで読んできた他の作品と少々毛色が違う。掲載誌を見ればいつもの「新青年」ではなく「文学時代」である。

 そこのカラーに合わせたのかはわからないが、実話小説っぽい出だしでスタートする。

 残業を終え、同僚と駅へ向かう主人公、駅から見える藪に動くものを見る、調べに行けば弱っている少年が。

 こんな夜中に、こんな小さい子が。男たちは少年から事情を聞き出そうとする、が弱っていてあまり返事をしない。仕方なくカフェへ連れていきライスカレーをご馳走してやると、元気も戻ってきて、名前とかを話し出した。

 それでも親の話になると口ごもる。どうやら虐待を受けているようであった。

 ここからはネタバレになるのでご注意を。

 現代にも通じる深刻な幼児虐待問題をテーマに、その後、その父親と偶然再会した折に聞いた幼児の不審死。それは殺害だったのでは? という暗示を残す余韻で締めくくられている。

 暗いばかりではなく、腹を空かせた子供がカフェに連れて行かれて、初対面の女給らが、もらい泣きをしたり構ってやったりするシーンに、都会であるのに当時の人の温かさが伝わってくる。

 現代社会の都会で、弱った子供が草むらにいたら、果たして大人はどこまでしてやれるのだろうか。

1930年(昭和5年)9月「文学時代」

 

平林初之輔探偵小説選〈2〉 (論創ミステリ叢書)

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