呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

小酒井不木「塵埃は語る」を読む

 本日は相棒の金平とドライブの日なのであった。

 神戸あたりへ古本メインでブラリと出かけてみた。そうして車のダッシュボードには、いつも小型ハンディカムがセットされる。

 会うときは大体録画するのだ。それはお互い、今作っているもの、作る予定があるものを話し合い、話す過程において相手の盛り上がりを加味しつつ、自分でも形を整えていく、という作業に繋がるからだ。

 そして録画した映像は半年か一年後に「全プレ」と称して相手に送りつける。

 録画は互いに「実のある話をしよう」という気持ちにさせてくれるのだ。

 元町の「うみねこ堂」さんに寄ってみる。

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 ここはミステリ本が充実している。店主さんも本業以外に色々とミステリ関連の活動をされていて、活気のある古本屋さんだ。私の甲賀や大下、幻影城関連の話にもニコニコと応対してくださった。

 シャーロックホームズのライヴァルたちの二冊をまず購入。 

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 そうしてレジ脇に陳列してあった「文藝春秋」値札の掲載作には「甲賀三郎大下宇陀児」の名が! まるで私に「買ってくれ」と言わんばかりに光り輝いていた。

 迷わず購入。

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 そうして元町でこってりラーメンを食す。ンマーイ!

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 ドライブしながら相棒金平の最新作「モノがたり」なんで最初に無料で配布したのか! とキツく叱責。

「まぁええやん(笑)」

 とは本人の弁。

 私も書きたいと思っている話を熱く語ってしまった。

 サラリーマンの同僚相手では、このような話はできない。

 私にとって、本当に至福の時間である。

 さて、今回は「塵埃は語る」を読み終えた。

 この回ではなんと、塚原俊夫くんが敵方に誘拐されてしまう。事務所へ依頼に来たのは誘拐事件の依頼であった。豊くんが誘拐されたのだ。

 三万円用意すれば無事に返す、と言っている。

 その捜査に乗り出した塚原俊夫くんを、犯人グループは逆に送迎用の車だと偽装して、そのまま拉致してしまうのだ。目隠しをされ、どこに行くのかわからないようにして、だ。

 ここで子供ながらになかなかやる、と思わせるのが、誘拐先の床の埃を、塚原俊夫くんは採取して、ポケットに忍ばせていたことだ。

 そして監禁されていたのが沿線沿い、寺の屋根が窓から見えていたこと。しかしそれだけでは場所が特定できない。

 解放された後、塚原俊夫くんは顕微鏡で埃を分析する。すると近所の工場から流れ出たものが混じっていた。

「小麦等が確認できるから製粉工場、あとセメントの原料も見える。セメント工場もだ」

 その二つの工場があり、沿線沿いで寺の近く。

 それでバッチリ敵のアジトは一網打尽。グーグル先生も真っ青の特定術だ。

「誘拐されたら僕も床の埃を取っておこう」

 これを読んだ少年少女は、きっとそう思ったことであろう。

 

 1926年(大正15年)12月「子供の科学

小酒井不木探偵小説選 (論創ミステリ叢書)

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