呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

2019・9 だめなやつら福山旅行6

 汗だくになりながらカメラを手に福山城天守をぐるりと歩く。

「痛っ!」

 相棒の奇声。振り返ればきゃつは松の葉に頭をぶっ刺していた。おもろすぎて爆笑。

 収集しているお城メダルも買えた。ホテルで販売していた城郭復元写真集も買えた。ホクホク顔で城を後にする。

 そして商店街へ足を伸ばす。調べておいた児島書店さんへと向かう。

 

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 ここは素晴らしかった。角川の絶版文庫も多く、横溝正史の棚もあった。最近の私はブックオフでは刺激が弱い。やはり老舗の古本屋さんは血がたぎる。

「ああっ、あああっ!」

 

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 日頃から甲賀三郎、と呟いているので、神が引き合わせてくださったとしか思えなかった。改造社版の日本探偵小説全集二冊組みの箱付である。

 ちょっと値が張ったが、なかなか出会える本ではない。思い切って購入。私の顔が貧相で貧乏臭いオーラを醸し出していたのであろう。ご主人がオマケで春陽文庫を付けてくれたのが有難かった。

 ここの店主さんが気さくな方で、街のことを色々と教えてくれた(気付いたら一時間も話し込んでいた!)。

「福山ってグルメってなんですかね?」

「福山はこれ、といって無いんですよ」

「広島風お好み焼き、みたいに、広島県に吸収されるんでしょうか?」

「まぁ、昔の話、お役人の目を誤魔化すために、お弁当箱の上下ご飯とご飯の間におかずを挾む、というのがあるんですけどね」

 この前行った津山は『ホルモンうどん』を街で売り出し、これはもう結構広まっているB級グルメだろう。津山城の近くにホルモンうどんの店もあった。

 福山はその歴史を尊重して、ご飯とご飯の間に和牛のステーキか焼肉を挾む、というのはどうだろう。ギャルがインスタ映えを狙って、その福山の風習が脚光をあびる可能性もゼロでは無いはずだ。

 三人で長く話し込んでしまった。雨も降り出してきたので礼を言って次に向かう。

 お世話になった福山ステーションインをチェックアウトし、次の目的地へ。と言っても観光地ではなくブックオフだが(笑)

 

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 ここでは二冊購入。

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 出版芸術者の『ふしぎ文学館』シリーズは、私にどストライクなシリーズで、未読作家、吉行淳之介を買う。これはコンプリートしたい病がフツフツと(結構な巻数があるはず)

 そして吉村萬壱先生の『ボラード病』もタイトルに惹かれて買う。どんな話か想像もつかない。

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  そして次の古本市場へ。もう現代、この令和。ブックオフ古本市場しかチェーン店は無くなってしまった。

 十年前、街がこんなことになるなんて思ってもみなかった。配信の時代、断捨離の時代、そして一億総貧困の時代。

 この写真も十年後にはどうなっていることやら。介護施設に変わっているかもしれない。

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 そうして福山では最果てのブックオフへ。海が近いのか潮風が心地よい。思えば遠くへ来たもんだ。

 ここでは私のもう一つの秘密の趣味である専門書が格安で三冊ほど買えたので、本当に来た甲斐があった。

 そして二時。ようやく昼食。インターで尾道ラーメンを食す。ワシら、ラーメンばっかりかい!

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ンマーイ!(合唱)

 岡山まで帰ってきた。夕暮れ時、ここで私は相棒に提案する。

「金平、悪りぃ、岡山で途中下車してもかまへんか?」

「どこ行くねん」

「前から行ってみたかった古京文庫さんに行ってみたいんや」

「おお、ついでや。付き合うぞ」

 そうして行ってはみたものの。

「外出中!」

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 どこまでツイテいないのか我々は。前世で極悪人か何かだったのであろうか。

 しかしここまで来て帰るのも勿体ない。我々は少し離れた場所に停めてハザードを点灯させた。

 待つこと30分。

「なぁ、呉。こりゃ古本の買取か何かで時間かかってるんやろう。もうすぐ一時間になるぞ。諦めて帰ろうや」

「それもそうやな、残念やけど」

 私は名残惜しげに両手で目の横を覆って店内を恨めしそうに見る。絶対に良い古書店だ。ムードでわかる。

 私は駄目モトで横の自宅のインターホンを最後に押してみた。悪あがきもいいとこである。

ピンポーン

『はぁーい』

『外出してないやんっ!(寝てたんかい!)』

 店主は慌てて店の電気を点ける。

「いらっしゃい」

 まぁ結果オーライ。入れてよかった。

「はぅあ!」

 そこは桃源郷であった。探偵小説好きならもうメロメロのラインナップである。

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「あかん、軍資金が足りん。今度五万くらい用意して出直そ」

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 甲賀三郎掲載の雑誌『キング』などを購入。良い買い物ができた。

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 そうして岡山姫路間で最後の岡山のブックオフへ。ここまでくるともう互いに眠たくでヘトヘトであった。

 さぁ、この旅の途中、何度か話をした『我が妻との闘争』のコミカライズ版が進行中であります。

 年内には発表できる予定ですので、どうぞ皆様よしなに。

 そして私もノートに『タイムリミット』というお話を載せました。また、この手の短編が集まったら、短編集として一冊に纏めたいですね。

 ここで福山旅行編、堂々の完結。50を迎え、体力の減退を如実に感じました。次は途中に赤まむしをチャージした方がいいかもしれません。

 あくまで予定ですが、来年は相棒を『彦根城』に引き回してやろうか、と画策しております(笑)

 それでは皆様、次の活動報告までしばしのお別れです。皆様が健やかでありますように。

〜完〜

 当日最後の動画。

 


だめなやつら福山旅行3