呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

平林初之輔「私はかうして死んだ!」を読む

 ツイッターをやっていて「ヨカッタ!」と思うのは、自分のアンテナに引っかからなかった情報を得られること。これに尽きる。

 ミステリ本、CD、ゲーム。この中で今回はゲーム本「PCエンジンコンプリートガイド」である。

PCエンジンコンプリートガイド

PCエンジンコンプリートガイド

 

  ファミコンメガドラには、この手のガイドブックはあるのだが、PCエンジンは冷遇されていたように思う。

 私はセガ派だが、はっきり言おう。メガドラPCエンジンに負けていた。

 移植度も凄かった。価格も凄かったが。CDーロムの初期型など、とても子供の小遣いで買える代物ではなかった。

 スペースハリヤー、アフターバーナーアウトランファンタジーゾーンR-TYPEなど、スーファミでも敬遠され見送られた処理の早いゲームも、遜色なく再現できていた。

 そして生声が流れるCDロム。高価だったパソコンゲームさえ一気に飛び越えてしまった。

 この本はこれから買うつもりのガイドブックで、まだ感想を書くことはできない。姫路のジュンク堂に置いてあるか見に行くつもり。ツイッターを見ていなければ、知らぬまま絶版になっていたことだろう。多謝。

 さて「平林初之輔探偵小説選1」より「私はかうして死んだ!」を読み終えた。

 ここまで平林初之輔を読み進めて、この短編が個人的ベスト。いやぁ、いいですね。

 牧歌的で、話のコアとなる「種」が良くて、あぁ、いい探偵小説を読んだなぁ、と思える。そんな一本。

 私は変格探偵小説好きだが、こういう「ネタ勝負」の話も大好物なのだ。

 話は男の手記から始まる。選挙で立候補することになった船井三郎は、天涯孤独の身で、田舎から東京に出て鉄工所に勤めていた。

 選挙の手続き上、戸籍謄本を取り寄せる必要があり、郷里に問い合わせると「その人物は三日前に死んでおり火葬もしている」と返事が。

 ここまでの発端がまず良い。いかにも「探偵小説的」で心地よい?マークが頭の上に浮かぶ。

 埒があかないので急行で郷里に帰ると、役所で死亡届も医師の死亡診断書も届けられている、という。

 ますます「なんで??」となる。医者の名前を調べ、東京にとって返し、その医者、医者に見せた付き添いの謎の人物を、死んだことになっている船井三郎は地道に足で調べ上げて行く。

 この過程が無理なく、そして自然と「探偵」になっている。

 そしてこの話の背景が、それほど「邪悪」なものでないのも良い。そして死んだことになったままにしている船井三郎のエピローグは、色々なことに突っ込みながら、上質のユーモアーを醸し出している。

 嗚呼、やっぱり昭和の探偵小説は良いね。この空気感も心地よい。

1929年(昭和4年)6月「新青年」