呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

松本泰「タバコ」を読む

 プロテインが届いた。アマゾンさんからの海外便だ。

 

ヘビーウェイトゲイナー 900 チョコレートブラウニー 3.2kg [並行輸入品]
 

  これは3.2キロもある。結構な大きさだ。

 やはり輸入物は安い。国内産は結構高い。向こうは需要が多いから、それだけ多く流通し、消費されているということだろう。

 色々調べたが、これが量と価格のお得感が一番良い。

 筋トレのおかげで私の胸もBカップからCカップくらいになった松本伊代から小泉今日子ぐらいになった。いや、訳の分からない比喩はやめておこう。

 味はチョコ味である。ミルクで割るとミルクココアのような味になって美味い。

 嫁さんは中身を一目見るなり

「死んでもこぼすな! 絶対にアリさん来るからな!」

 と台所で吠えた。

「こぼさへんがな、子供やあるまいし」

 と私が適当に返事をすると、嫁さんは台所の床に顔を近づけ、

「ここ、こぼしてるやないかい!」

 と私の胸ぐらを掴む勢いで詰め寄ってきたのであった。

 まー、さっき適当にスプーンでコップに移したしなー。困った顔をしていると

「バレる嘘をつくな」

 と一喝。今、世間を騒がせている監督やコーチに向けての、タイムリーなセリフだなぁ、と。

 通常メンタルが潰れそうになる家庭人とは違い、私はこうやってブログに書いてネタとして昇華するので、鬱にならないのです。

 ※

 さて今回は「タバコ」を読み終えた。

 キタ! 遂に泰先生の本気を見た。眠れる獅子が起き上がったのだ。

 今までの解説で書かれていた「傍観者視点」スタイルを捨て、本作はガッチリとした骨格を持った本格短編である。

 ここから先は真相に踏み込んでいるので未読の方はご注意を。

 電話売買その他の金融を扱う事務所が舞台。主人公が買い物を頼まれて、寄り道しながら郵便局とバット(タバコの銘柄)を買いに行く。

 ここでフリとしてタバコ屋で釣り銭が切れている、と言われ、被害者は割高な巻きタバコ、エアーシップを吸っていた場面が入る。バットと比べたら年間これだけ違う、とエアーシップの箱にペンで差額を書き込んでいるのを主人公は見ていた。

 主人公が帰って来たら買い物を頼んだ男は殺されており、引き出しの中の現金も盗まれていた。

 泰先生、今回は頑張った。探偵の推理の道順として、こめかみを左手で撃った自殺、と見せかけた殺人で、机に張り付いていた死体のズボンにこめかみからの血痕が付着している、という指摘。

 殺害した後、引き出しの三千円を盗んだ時にこめかみから落ちた血がズボンに付着したのだ。

 そして被害者が左利きということを知っている見知った犯行。

 更に犯人が被害者と同じエアーシップを吸っていて、犯行後、机の上のエアーシップを自分のものと勘違いして持ち去り、あとで気づいてすぐに戻したのだが、ポケットから出す時、自分の方を返してしまった。主人公が見た、タバコの箱の落書きがここで効いた!!

 この上更に返り血を浴びた時のために、と裏口に隠してあった犯人のレインコートが物取りに取られ紛失しており、外出から帰った時に新調されていたのも決め手となった。

 色々、痛快に決まった泰先生渾身の一作! ここまで読んでベスト。

 ただ、最後のエピソードは本当に蛇足。冒頭で意味ありげに二階で話をしていた社長、贋造事件を企んでおり捕まった。というのだが、本編となんら関係ない。

 なくても良かったのだが、探偵趣味を横溢させましょう、という、日頃薄味なのでここは一発という気持ちと、本格短編が小気味好く纏まって嬉しくなったか、泰先生サービス過剰になった感じです。

 

1925年(大正14年)4月「探偵文藝」

松本泰探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)

松本泰探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)