2019年に入って色々ありまして、今年の書き下ろし作品を収録した『我が妻との闘争〜ありがとラッキーちゃん〜』を出すことになりました。
どうぞよろしく。アマゾンレビューを寄せてくだされば、作者は飛び上がって喜びます。
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出雲、松江、米子の店を全て回り終えた我々は、往生際も悪く、岡山を経由して姫路に帰るルートを選択した。
陽は落ち、辺りは急速に暗くなる。
前から行ってみたかった岡山の古本屋さん『古京文庫』さんを目指す。岡山城の近くだ。
しかし無念! 到着時間が遅すぎて閉店のあとであった。気を取り直して岡山のブックオフへ。
さすが大都市岡山、ブックオフも品揃えが違う。乱歩関連の文庫と日本推理作家協会賞受賞作全集を買う。
今回の旅で収集しているシリーズが、かなり埋まりました。
あと、この旅で唯一買ったCD。浜田省吾の『ホームバウンド』リマスター版。長く買いそびれて、この一枚だけ聞き逃していたのだが、このアルバムがまた良い! お気に入りの一枚となった。皆様にもオススメしておこう。
そうして夜の十時。岡山市内で晩飯である。
金平「オマエ、ダイエットしてる言う割には大盛りやんけ!(笑)」
呉「ダイエットは明日から頑張るわ(笑)」
そして照れ臭いので、ここまで書かずにいたが、家を出てから私の旅行鞄に見慣れない封筒が入っていることに気がついた。
見れば、長女ちゃんからの手紙であった。歯科助手として働いている長女ちゃんが、私と金平に、とご飯代三千円をポチ袋に内緒で忍ばせていたのであった。
私は現地で泣きそうであった。
そして深夜に姫路着。解散。良い旅だったな! 金平。今度は彦根城連れて行っちゃるからな!(笑)
総評だが、中古屋を巡る事情は90年代からひたすら下降線を辿っている。まず街からCDショップが消え、中型の郊外型新刊書店が消え、中古ゲームショップが消え、ブックオフ以外の古本屋が消え、といった具合だ。
配信に取って代わられた、というのが大きいのだろう。10年前から相棒の金平と地方の中古ショップ巡りを繰り返してきたが、地方は『よっぽどの掘り出し物』それも『少ない可能性』今回の旅では古い角川文庫、結城昌治の一冊のようなチャンスを狙う以外、大都市に勝るものはない。岡山より大阪、大阪より東京といった具合に。
なのでこの『だめなやつらツアー』も、今後は地方のブックオフ巡りは挨拶で、その土地の城と名物料理を食べる旅、に変わっていくことだろう。
本気の買い物なら東京を目指せ、品物はそこにしかない。ということだ。
旅を終えればいつもの現実が待っている。うるさい上司、キツイ仕事に耐え、また相棒と青空の下、何も考えずに羽根を伸ばす次回の自由しかない旅を夢想し、そして次に出すキンドル本の準備をしながら、この筆を置きたいと思います。
ありがとう山陰。素晴らしかったよ松江城 〜完〜
油屋書店さんの定休日は大打撃であった。気を緩めてバッターボックスに立ったら、ピッチャーの球が悪送球でバウンドして金玉に直撃したかのような、この旅痛恨の一撃である。
金平「オマエ、この旅の目的は油屋書店さんやったんとちゃうんか?」
呉「そうや」
金平「下調べせずか?」
呉「週の真ん中なら大丈夫、と思ってな」
金平「ワシもB型やけど、オマエの計画性も大概ユルユルやのぅ(笑)」
呉「人生のお楽しみは取っておくんや! ショートケーキのイチゴは残しておくんや!(謎理論)」
満身創痍で次の店をiPhoneでチェックする。
それにしてもだ、全国のブックオフの写真が私のハードディスクの中に大量に眠っている。訪れるたびに店舗の写真を残しているからだ。
どれも似たような外観で、後から見ても訳が分からないが(笑)、それでもじっくり見ていると稀に『あっ、ここであれを買ったな』みたいにして不意に思い出すことがある(超キショイ!)。
ここにもありましたよ。それも百均棚に!
貧乏人には百均コーナーの探究本は本当に有り難いのだ。こんな素晴らしいアンソロジーが格安で! ホクホク顔でレジを後にする。
この旅から私はブックオフの会員カードをリアルカードからスマホに移行した。会計の時にスマホのバーコードをレジにかざすのだ。
誰が頭バーコードじゃ! まだ大丈夫じゃ!(被害妄想)
ちょっとした未来感覚である。レジに立つ、うなじから色気が立ち上る小綺麗な熟女パートさんへスマホ画面を見せる。
『どうです? 使いこなしているでしょう?』
と、流し目でアピールしながら財布を出す。
その後ろで相棒の金平はゴソゴソと財布からブックオフカードを探している。無様。あいつは頑なにガラケーなのだ。
そして米子の開放倉庫へ。ブックオフと雰囲気が違うのでテンションが上がる。
玄関からお出迎えがあった。
呉「ああっ! これは!!」
呉「や、安い。それに状態も良い。この価格なら手が届く」
私の脳内コンピューターが瞬時にシュミレートを始める。
ここで買う→格安でお得→後部座席をフラットにすれば持ち帰ることは可能→嫁さんが寝てから真夜中にザイオン(屋根裏部屋)へ搬入→使うたびに屋根裏から下ろし、見つからねば嫁さんから怒られる心配もない→以前買った腹筋台の立場はどうなる?→あれはホレ、バネがないから自力やん。自力キツいやん→これはバネの力で腹筋をサポート→数週間後、きっと腹筋バキバキ→通っているジムの美魔女集団が色めき立つ→今度お茶でも? いいですよ、お茶くらい。不倫じゃあるまいし→お茶の帰りに助手席の美魔女がいきなり私にディープキス→だって腹筋が猛烈に凄いから。
呉「買おうかなぁ」
金平「やめとけ、やめとけ(笑)」
友が軽くあしらう。オマエのことや、すぐ飽きる。と冷静に私の性格を診断してくれたのだ。まぁ私も心の片隅では思っているのだ。しばらくすると部屋のオブジェになる可能性がないこともないこともない。だって現折りたたみ腹筋台は、部屋の片隅にずっと立てかけたままになっているからだ(笑)
ここの店舗はレトロゲームが充実していた。PCエンジンのDUO本体が一万円台で売っていた。だがCDドライブ不調の札が。DUOなんて大阪では39800円くらいしていた。もう手が届かない。底値の時に中古で買っておけばよかった。
ゴール地点である米子のハードオフを制覇し、これで定休日以外の予定していた店舗は走破したことになる。
呉・金平「バンザーイ! お疲れさーん」
呉「でもな、金平、この旅、不完全燃焼な気分やと思わへんか?」
金平「そうやなぁ」
呉「まだ夕方や。岡山かまして帰る?(ニヤリ)」
〜続く〜
山陰名物『牛骨ラーメン』に舌鼓を打ち、エネルギー充填完了した二人は、再びこの旅の目的である店巡りに戻るのであった。
角盤文庫さんに到着。ここは期待していたのだが、置いてあるのは漫画だけであった。勝手にハードルを上げたのはこっちのせいである。
かつては郵便局だったのだろうか? 雰囲気のある店舗であった。
ブックオフに到着。結城昌治の角川文庫は無し。日本推理作家協会賞受賞作全集も無し。肩を落として帰ろうか、と思ったその時、ありましたよ! アンソロジーの棚に!
このシリーズ、コンプリートがすぐ先に見えてまいりましたよ。ウキウキしながら店を出る時、ちょっと前に読者の方に言われた言葉が突如頭の中でリフレインする。
「呉さんは本当は探偵小説を読むのが好き、なのではなく揃えるのが好き、なんじゃないですか? ないですか? ないですか? ないですか?」
呉「いやっ、読むのも好きなはずなんです。だって僕は中学から横溝、乱歩、久作を読んでいたし、沢山読んでいたからこそ、ちょっとだけ文章を書けるようになったんだし、本も出してもらえるようになったんだし」
金平「オマエ駐車場で一人で何言うてるねん」
呉「わぁっ、出てきてたんかい。脅かすなや」
金平「独り言言う奴は妄想が酷い証拠やな」
呉「妄想が酷いのは否定できへんわ(笑)」
そして次の店をチェックする。『古書の店ギャラリー』さんだ。ブックオフ以外の昔ながらの古本屋さんだ。
ここは素晴らしかった。店内に本がビッシリと積まれ、通路にも本棚の上にも至る所に並べられていた。
文庫をチェックしても、バーコードの無い古い文庫がたくさん置いてある。私は気持ちを高ぶらせながら『ゆ』の棚へ向かう。
呉「ああっ!」
この旅で最高のエクスタシーが訪れた瞬間であった。まさか米子で巡り会えるとは。バーコードの無い旧角川文庫の結城昌治は三冊あった。
その中に丁度持っていなかった「夜の終わる時」が。絶滅危惧種の結城昌治文庫。
無いから。本当に無いから。貴方も近所のブックオフに行って『ゆ』の棚を見てごらんなさい。まぁ無いですから。
本棚から抜き取る至福の瞬間。私は嬉しさの余り卒倒しそうであった。
よかった、山陰に来て良かった。逆にこのタイミングで山陰じゃなかったら、この文庫に出会えてなかったかもしれない。この一冊だけでこの旅は意義あるものとなった。
駆け足でチェックするだけなのが本当に惜しい。半日くらい物色したいお店であった。ありがとう古書の店ギャラリー。
金平「探してた本、あったんやな」
呉「あった。最高やわ」
金平「次は?」
呉「次もチェーン店じゃなく昔ながらの古本屋さんや。油屋書店ってお店」
金平「で、臨時休業、ってオチが付くとかか?(笑)」
呉「まさか(笑)一応iPhoneで見とこか?」
呉「金平、アドバイスありがとう。木曜日定休日やった(号泣)」
金平「オマエなぁ(笑)幹事失格やで、ホンマ」
やはり出雲大社にお参りしてから旅をスタートさせるべきであったのかもしれない。
〜続きます〜
バレリーナ立ちで凍傷寸前の足の裏を庇いながら、それでも私は綺麗な熟女受付嬢のマダム二人にウケて『ちょっと美味しかったな』と不謹慎なことを考えながら(失敗をもろともせぬ懲りない男)、国宝松江城を後にするのであった。
時間は11時。そろそろチェックアウトの準備をして古本屋巡りを再開させなければならない。
ラブラブカップルコースで選択した狭い密着部屋に戻り、チェックアウトの準備に取り掛かる。朝風呂、朝の城攻め、熟女との軽快トークを経て、ここまでは最初に定休日地獄を味わった不運を忘れつつある二人であった。
呉「おっ、アンケート用紙があるぞ」
金平「三千円の格安で泊めてもらったんや。オマエ書いとけ。ワシはアーバンホテルのマークからゆるキャラを書き残しておくわ」
そうして私は正直にアンケート用紙を埋める。
全部『満足』である。松江城観光にオススメのホテルだ。そして相棒の金平はロゴマークから訳のわからないゆるキャラを生み出していた。
アバーンちゃんの誕生である。
金平「どういうルートで行く?」
呉「昨日行った出雲の開放倉庫、あそこが定休日ってのは無念だとは思わんか?」
金平「そうやな。もしかしたら二度と来れんかも知れんもんな」
呉「だから松江から一旦出雲に戻る。そして出雲から米子へ飛んでフィニッシュや」
金平「下道で行くんか?」
呉「時は金なり、や。高速を使おう」
そうして車は小一時間かけて進路を西に。ここで我々は名所、出雲大社をすっ飛ばしてブックオフ巡りに明け暮れる旅スタイルの天罰を受けるのである。
目的地は出雲の開放倉庫のみ。昨日は店の定休日。そして翌日の営業時間、我々は店の前で呆然と立ち尽くすのであった。
金平「社員研修で臨時休業??」
呉「こんな不運ってある??(号泣)」
今更ではあるが、定休日の開放倉庫駐車場で二人は出雲大社の方向を向いて頭を下げるのであった。
気を取り直して米子入り。時間は昼を回っている。
この店舗ではお目当の本を見つけることができなかった。
呉「金平、そろそろ腹減ってきてない?」
金平「そうやな、そろそろ食う?」
そこで私はツイッターのフォロワーさんから教えてもらった、山陰ではポピュラーな『牛骨ラーメン』を食べてみることにした。とんこつラーメンはどこでも食べられるが、牛骨ラーメンは初めてである。
二人揃ってスタンダードな牛骨醤油ラーメンを注文する。
呉「おっ、来た」
金平「おい呉、いきなりコショーをかけるのは止せ。まず本来のスープの旨味を愉しもうや」
呉「そうやな、味が変わるもんな。それじゃあスープからいくか」
呉・金平「ンマーイ!」
日頃、ドロドロスープや、山盛りニンニク、パンチの効いたどキツい味ばかり求めていたせいもあり、このシンプルなほどの素直な醤油ラーメンは、単なる中華そばとも趣が異なる上品な味である。疲れた身体に優しい味が染み込んでいくようであった。
店内を見渡せば、若い女性や、女学生、綺麗なOLさんなど女性客が目立つ。美容にも良さそうなことが客層からも伺える。女性は食に厳しいのだ。
腹ごしらえも終えて探索の準備は再び整った。
〜続く〜
金平「お前なぁ」
相棒の金平の苦言で10日は幕を開けた。
呉「ワシも言うことあるぞ、オマエ、いびきかいてたな(笑)」
金平「何いうとるねん。オマエが先やがな。速攻で酔っ払って、そのまま大いびきや!」
呉「その耳、オマエ耳栓持ってきてたんか?」
金平「持ってきてよかったわ」
朝食はホテルの一階にコンビニがあったので、後でサンドイッチでも買うこととして。
金平「呉、もっかい展望風呂入らへん?」
呉「朝風呂か。ええな」
ウキャウキャ言いながらタオルを持って展望露天風呂へ。早朝なので誰もいない。湯気の中を並んでフリチンで歩く二人。そのままザブン。
金平はそれほどお城を見たくはなさそうなのであるが、そんなこと知ったこっちゃねぇ(笑)日本の城をこの先も延々連れ回して城好きにしてやるのだ。
ホテルから国宝松江城までは歩いて行ける距離であった。私は一眼レフカメラを構えてテンションマックス。
黒く無骨な天守がお出迎え。手前の三基の櫓は近年復元されたものである。それは明治に撮影された古写真のお陰なのだ。
明治に輸入された写真術のおかげで、廃城令前の写真が残った。当時は高価なものであったことだろう。
昭和にバンバン作られた史実を無視したコンクリート天守は反対だが、こういう古写真が残っていれば復元しても良いと思う。
今はどこの庁か知らないが、復元には高いハードルがある。特に天守の復元は二方向の古写真、雛形の模型と図面が必要だと聞いたことがある。うろ覚えだが。
そこまで必要だろうか? 仮にその三つが揃っていたとしても、建築当時と寸分同じか? となれば『否』だろう。どうしたって現代の建築になるのだ。
無茶苦茶な復元は反対だが、こういう古写真一枚あれば規制を緩めてもいいと思うのだ。城は観光客を呼ぶ。地元姫路城も外国人観光客が増えた。
前回に金平と行った旅で寄った大洲城。あれは見事な復元であった。
この大洲城は当時、高価であった写真だが、奇跡的にアングルの違う写真が残っていたおかげで復元に繋がった。
木製の雛形も残っていたので、こういうケースは本当に稀であろう。ここまで揃えなくても古写真一枚あれば、写り込んだ樹木からコンピューター計測して、おおよその寸法は割り出せるだろう。
近年、天守台を整備し直し、あとは工事だけなのにゴーサインが出ない四国の高松城。
ここまで鮮明な古写真が残っているというのに、他の方向からの写真がない、雛形がない、の理由で復元できないのだ。阿保か、と。
この写真一枚で可能ではないか。どこの偉いさんがストップをかけるのか。なんという勿体無い話か。建物は人を呼ぶ。地域活性化に必ず繋がるのだ。
こういう話を松江城に向かう道すがら、怒り狂って金平にまくし立てていたのである。いい加減聞き飽きたのであろう。金平が最後に行った言葉がこれだ。
金平「俺に言うなや!」
姫路城に負けず劣らずの巨大天守。よくぞ残してくださった、明治の方々。
国宝を訪れて大満足であったのだが、天守内で我々はミスを犯してしまった。
この日、雪こそ降らなかったが、気温は低かった。厚手の靴下を履いてはいたが、5階まで上がる頃には足の裏が凍傷になりそうなくらい冷たかった。
最上階からの展望が絶景であったが、足の裏を意識しながら眺めていたのだ。
一階では入場券を受け取る綺麗な熟女の受付嬢がお二人。私は頬を赤らめ、隣で相棒の金平は内心「無類の熟女好きがっ!」と私のことを罵りながら。
私は綺麗な受付嬢に話しかけた。平日の早朝なので客は我々だけなのだ。
呉「いやぁ、満喫してきました。素晴らしい天守でした」
受付嬢「それはよかったですね(ニッコリ)」
呉「でも冬場は足元が冷えますね。足の裏が凍りそうでして」
受付嬢「お客様、もしかして靴下だけで登られたのですか? その端にスリッパがございましたのに」
金平と慌てて見てみると、端っこにスリッパ置き場が! 勢い勇んでスキップしながら私が早足で入って行ったので、金平も仕方なく付いてきたのであった。
受付嬢に見えない角度で、私の脇腹に綺麗に入った金平のボディブロー。
冗談抜きで凍傷になりそうだった我々二人は、この会話の時バレリーナ立ちだったのである!
城へ行くたびに集めているメダルもしっかりゲットして帰りました。
あっ、CMを入れておきます。この番組の提供は呉工房がお送りいたします。いたしまーす(幼児の声の追っかけエコー風)(※高速代、ガソリン代、飯代が印税で賄われております。ありがたいことです)
〜続く〜
松江に入り、その日に回る店舗を全て制覇し、壷焼きカレーに舌鼓を打った我々は、今宵の宿である『松江アーバンホテル』へと向かう。
小泉八雲も出雲大社も宍道湖もすっ飛ばし、ブックオフだけ巡る狂ったツアー、疲れ果てた我々は、近くのコンビニで酒とおつまみを買い、チェックインする。
呉「金平、宿やけどな、スマホで予約してな、松江でも色々あるんや。素泊まりで8千円とかな」
金平「ほぅほぅ。結構するな」
呉「ワシ、粘って夜なべして探したがな。一人三千円や!」
金平「ブラボー!」
呉「それがな、ラブラブカップルコースっちゅうてな。密着して眠れます、やって」
金平「それは別にいらんけどな(笑)まぁ安けりゃそれに越したことはない。以前の名古屋縦断ブックオフツアーで、パーキングエリアでワンボックスの後ろに布団敷いて車中泊したやろ? あの時腰痛がひどくなってな、あれから車中泊はコリゴリやったんや」
(※この写真は翌朝の撮影)
呉「ホテルの三階にな、宍道湖を見渡せる展望大浴場があるねん」
金平「それも嬉しい。ユニットバス、交代で入るの面倒臭いもんな」
フロントでカードキーを受け取り、疲れた身体を引きずって8階へ。
金平「やっとゆっくりできるな」
呉「歩き疲れたな。展望風呂入って乾杯しようや」
呉「えーっと、通路の奥は、っと」
呉・金平「密着部屋!」
さすがラブラブカップルコースの部屋である。これは野郎二人の泊まる部屋ではなかった。愛を語らう部屋であった。
呉『(あぁ、こんな部屋でジムで出会う『まゆゆ似』の彼女とアバンチュール泊出来たなら……。悪魔に魂、五年売ってもいい)』
目の前にモヤが広がる。ベッドに並んで寝転がる私とまゆゆ似の彼女。熱いキスを交わす。
呉「君は悪女だ」
まゆゆ似の彼女「なんで?」
素直にキスに応じたのに、まゆゆ似の彼女は解せない。
呉「だって僕は既婚者、君は独身、初めての、それも泊まり旅行で、いきなりベッドに押し倒してキスしたら」
まゆゆ似の彼女「キスしたら?」
呉「まともな女の子なら、すぐさまほっぺたをひっぱたくだろう。でも君はそうしない。なんなら舌を絡めてくる。どんどん男を好きにさせていく。君は天然の悪女だ」
まゆゆ似の彼女「ばか……」
金平「おい、呉、何ベッド凝視しとるねん」
呉「あっ、いや、明日の予定をこのスーパーコンピューターで組み立ててな」
私は妄想を悟られぬよう、慌てて自分のこめかみを指差した。
金平「何がスーパーコンピューターや、店定休日だらけで欠陥品やんけ!(笑)」
展望風呂は宍道湖の夜景が一望できて絶景であった。二人並んで夜景を眺める。
呉・金平「あー、ええ湯やなぁ」
湯の温度も丁度よく、風呂がそれほど好きではない私も、つい長湯をしてしまった。
そして部屋に戻り乾杯。下戸の私は疲れも手伝い当然速攻で酔っ払う。
ダイエットで『いびき』を卒業した、と宣言したのだが、翌朝金平から『眠れなんだ!』と、こっぴどく怒られた。
どうやら酔っ払うと『いびき』は復活するらしかった(笑)
〜続く〜
9日の朝からスタートした旅も、楽しい時間はあっという間。下準備で調べておいた店を時間切れで寄らぬまま帰った、という事態が一番辛いので、休憩を挟まずバンバン店舗を巡る。
街の小さな古本屋さん。ここではミステリ本に出会えなかった。昔ながらの古本屋さん、頑張って!
移動中に現存12天守、松江城の勇姿が! 待ってろよ、明日行くからな。
次のブックオフへ移動。営業時間中は全て探索時間に充てるのだ。ここでも出会いがあった。
山陰に来て初めての日本推理作家協会賞受賞作全集に出会えた。そして本格推理シリーズも欠けが埋まる。
金田一耕助の新冒険はハードカバーを持っていたのでスルーしていたのだが、目に入った記念でついでに購入。
この受賞作全集、こいつにもなかなか出会えない。昨年から発作的に集めだしたのだが、リアル店舗でも一店に2、3冊の割合でしか出会えない。
そしてよく見れば51巻は『上巻』!!。松江の人、売るときは上下巻同時に売ってくださいよ!(泣)蛇の生殺しですやん。それとも手持ちのお金では上巻だけしか買うことができなかった、我が家のように財布をガッチガチに握られている同じ境遇の方でしょうか?(もらい泣き)
ホクホク顔で移動、山陰は姫路と比べてやはり寒い。夕方の風が冷たい。
我らのオアシス『開放倉庫』である。そして地元の店舗とは一部、決定的に違うことに気付いてしまった。
お分りいただけただろうか?(心霊番組風に)写真の右側に写っているものを。
土地柄なのか、中古のトラクターが売っているのだ。なんでも売っている、とはいえ、この系列の店舗でトラクターを売っているのは初めてみた。それも多くが真紅のトラクターである。ちょっと尋常ではない台数だ。
入り口から圧倒される。小林旭も裸足で逃げ出すことであろう(何人が分かるというのか!)。
開放倉庫もスタート時、10年くらい前になるだろうか、広島、山口を巡った時には、結構安価にレトロゲームが大量に展示されていたのが、ここ五年くらいでそれだけでは維持できないのであろう。金プラ、古着、中古ブランド物などで雰囲気が大きく変わってしまった。
この松江ではかろうじて昔ながらの品揃えで、我々の飢えを癒してくれる店舗であった。
サターンも我々には現役のハードである。特に私はセガサターンの『プラドル』シリーズを10年間、リアル店舗で買い集め続け、リーチまで来ている状態である。
まー、ありませんから。誇張なく見つかりませんから。貴方がサターンコンプリートを発作的に思い立ったとしたら、必ず鬼門となり貴方の前に立ちふさがるであろう、難関・難問のシリーズである。
いい加減私もリアル店舗で出会うことを諦め、最後の一枚を通販で揃えてもいいんですけどね。でもまぁもうちょっとだけ旅の楽しみとして残しておくことにします。
定休日の悪夢もあったが、なんとか予定していた出雲、松江の回るべき店舗は制覇することができた。
「流石に腹減ったな。駅前でも出てみるか」
金平と初松江駅をぶらぶらと歩く。
これ、といった飲食店が目に入らない。
呉「何食べたい?」
金平「また『せーの』で決める? せーの」
呉「焼肉」金平「ラーメン以外」
呉「割れたなぁ」
金平「焼肉? 勘弁してくれよ(笑)オマエ本当によく食うよなぁ(笑)」
呉「オマエ助手席で車酔い? 胃腸弱すぎなんじゃ!(笑)」
金平「昼に出雲そば食べたやん? だから麺類は外そうや」
呉「それは一理あるな。じゃあ間とってカレーなんかどうや?」
金平「おっ、カレーか。ええな! どう間を取ったのか意味は分からんが」
意見が一致したのでカレー屋さんを検索、壷焼きカレーの店に決めた。
落ち着いた店内、メニューを眺めてセットを決める。サラダも個人店らしく手の込んだサラダ。
金平「辛さは普通、量も普通で」
呉「辛さは普通、量は大盛りで」
金平「ダイエットしてる言うてたのに大盛りかい!」
バイトの大人しそうな学生の女の子の小さな笑いが、鼻から漏れていた。
熱々の小さな鉄鍋に入ったカレーがいい匂いで運ばれてきた。
二人「ンマーイ!」
朝から動きっぱなしの49歳、野郎二人旅。ようやく年齢に見合った旅レポートをお送りすることができた。
物凄いスピードで完食してしまった。美味しいカレー屋さんである。
〜続く〜
『國美喜書店』さんが週の真ん中でお休みだったため、いきなり出鼻をくじかれた二人。
出雲そばで機嫌が持ち直すも、次の『開放倉庫出雲店』も水曜日が定休日。これには正直参った。旅の下調べは大事である。助手席の金平が私の計画の杜撰さに「ホゲーっ」とした顔をしておるので、置き逃げしてやろうかと思ったくらいである。
その点ブックオフは週の真ん中に休まないから強い。
朝の八時出発でそろそろ二時になろうとしていた。
『出雲渡橋店』が待望の第1軒目となった。なかなか広い店内。
私は文庫のコーナーへ行き角川文庫の結城昌治、日本推理作家協会賞受賞作全集を物色する。
相棒の金平はゲームサントラを物色。集めているらしい。
1軒目は空振りに終わる。
黙々と次の店へ向かう。
2軒目の『ブックオフ出雲店』で山陰一発目のお買い物! これも集めている光文社文庫の『本格推理シリーズ』の一冊が埋まる。これもありそうで今回の旅ではなかなか手こずった。
地元の方なら大体のルートはお分かりだろう。宍道湖を左手に見ながら次の店へ。
「く、呉、あれを見ろっ!」
「なんだ! あれは?!」
某進撃の○人のような、要塞風のラブホテ……、もといビジネスホテルである。
「金平、今回宿泊はあそこでも良かったな、ネタ的に」
「あぁ、美味しかったな、あそこなら。最近ワシら牙抜けてるな」
数年前の旅行から『せめてご当地の美味しいものを食おう』『車中泊はやめよう』『なるべくホテルに泊まろう』と決めて、ストイックな中古屋ひたすら巡りツアーに変化が生じた。それでも出雲に旅行に行けば必ず行くであろう出雲大社はすっ飛ばしている。観光名所も『城』以外飛ばすのだ。
『出雲大社を最初にすっ飛ばしたから、定休日の災難に見舞われているのだろうか』
この後二人は、出雲大社すっ飛ばしの罰当たりの恐ろしさに、金タマが縮み上がることになろうとは考えてもみなかったのである。
結局、出雲では老舗の古本屋と開放倉庫が空振りに終わったので、予定を早めて宿泊予定の松江へ移動。
ハードオフもお宝が眠っているから、二人の旅では飛ばすことなくルートに組み込むのだった。
私はレーザーディスクが現役である。レーザーディスクも収集対象で、エロレーザーディスクのコンプをリアル店舗で達成、という無茶な縛りを己に課している。
『ファック トゥ ザ ティーチャー』の2を持っていて、1を探す、という天竺級の無茶な旅である。三蔵並みに禿げ上がりそうな過酷な試練だ。
タイトルはモロ有名映画のパロディで、女優さんも古き良き80年代の女性、太い眉、赤いルージュ、肩パット、ジュリアナ服、という一部の好事家にはたまらないでお馴染みの、まぁ興味ある方はググってみてください。
レーザーディスクやレコードを売っている店は、その街に中古レコードショップがなければハードオフに頼るしかない。
私はアナログレコードも現役なので、いいのがあればついでに買うのだ。
棚を物色中、お宝が!
「見ろ、金平、当時物や!」
「なんじゃ、この価格!」
ロボコンシリーズの超合金がプレミア価格になっていた。二人の旅費の合計を軽々と飛び越えていく額である(笑)
店舗を出るとブックオフが近くに見えた。
この店も集めているタイトルは手に入らなかった。
朝の8時から姫路を出発してまだ数件、日が暮れかけてきた。
いろんな土地のブックオフ縦断ツアーを実施してきたが、移動と店内物色は時間がかかる。5軒、6軒くらいが一日の限界である。
飲まず食わずでここまで店巡り。
まだお話は続きます。
1月の9、10日で、出雲、松江、米子ブックオフ&開放倉庫巡りツアーに行ってまいりました。
相棒の漫画家、金平とともに、結果から言いますと不完全燃焼でしたが(笑)
それもこれも、私の計画が杜撰であったからであります。猛省しております。我がケツにスパンキングです。
「週の真ん中に旅行を設定しときゃ、平日だし、全部開いてるだろう」
というユルイ計画で臨んだのが裏目に出ました。裏目裏目の 浦辺粂子です。
姫路から山陽自動車道に乗り、一路西へ。途中から雲行きが怪しくなり、パーキングエリアでは雪!
米子道を途中で降ろされ、ヨチヨチ運転で峠を越えました。
嫁さんが前日に『こんなにあったかいんじゃ、タイヤ履き替えんでもエエやろ』と、タイヤ交換代をケチったのであります。信じられません。私の命より節約を取るのですから。
金平も『マジか?!』と驚愕しておりましたよ。
そしてようやく出雲にたどり着き、まずは腹ごしらえ。
出雲そばを食べました。「ンマーイ!」
色々と細かい作法を知らないので、例えば蕎麦湯の正しい飲み方、とか。
個室で他に客がいなかったので、蕎麦湯に残りのそばつゆをぶっ込んで、グビグビいきましたよ。
で、この旅の目的である1件目の古本屋に行きます。商店街にあるのですが、ナビでは通り過ぎてしまい分かりません。路上に止めて電話しました。すると
「えーはい、そのう、申し訳ありません。今日と明日、お休みを頂いておりまして、はい」
と、物凄く低姿勢な店主の電話応対。
『マジか?!』
出鼻から暗雲立ち込めます。なんで週のど真ん中に連休するのだ。
そう簡単には行けない距離だ。姫路から出雲である。旅行の半月前にでも、電話で確認しておけば良かった。
二泊できれば良かったのだが、相棒の金平が締め切りで、一泊が限界なのであった。
この落胆。これを読む方々は『出雲大社とかあるじゃん』と思われるかもしれませぬが、我々の旅はその土地の名所に行く旅ではないのです。その土地のブックオフと開放倉庫を漏れなく回る、という狂ったツアーなのであります。
『男ふたり旅なら風俗とかそういうことでしょ?』
みたいな声も上がるやもしれぬ。包み隠さず言いますと、そういう助平なオプションは全く組み込まれていないのです。ストイックな旅なのです。
私は『あればストリップくらい行くべ?』と金平に言うのですが、金平は首を縦に振りません。
ひたすらブックオフと開放倉庫を回っていくのです。
ということで何回か続きます。今日はこの辺で。