呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

『まゆゆ似』の彼女との一部始終。

 津山旅行記もぶった切っての緊急掲載である。

 こんなことなら、このブログのタイトルにもある通り、大好きな探偵小説を読んでストイックに感想を書く。そんな毎日を過ごせばよかったのだ。

 男子更衣室、女子更衣室から同時に出て廊下で鉢合わせしてしまったのだ。

 通路で並んで立ち尽くす格好になった。目が合ってしまったので、私は五十にもなるというのに、勇気を振り絞った。

「こんばんは」

 向こうは硬直している。アンケートも取ったので、ここで続かねばならない。

「いつもダンス上手ですね」

 

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 これはアンケート結果を無視したチキン野郎行為だったのだが、よく震えずにスッと言えたな、と思う。

 すると彼女は下を向いて小声で

「いいえ」

 と宙を彷徨う視線で返答した。

 私は「こりゃ脈ないな」と瞬時に判断した。張り裂けそうな胸の内を悟られぬよう、早足で先にジムに入った。

 私は何故か泣きそうになって、あぁ、こんな気持ち、高校三年のフラれた時を思い出すなぁ。

 と、列に並び涙を堪え周りに悟られない様に佇んでいた。

 足は震え、手も震えていた。

 色々あったのは、全部男の都合のいい妄想だったのか。今、彼女は「気持ちの悪い思いをした」と身震いしているのだろうか。

 スタジオでエアロビの列を待つ。彼女が毎回入るプログラムだ。

 私は怖くて後ろを振り返る事が出来なかった。

 辛すぎてこのまま帰っても良かったくらいだ。

 私はただ、気軽に挨拶できるジム友になりたかっただけだ。それが女性には視線が宙を彷徨うほど怖い事なのかもしれない、その温度差。

 きっと「気色悪っ」と吐き気を我慢して、そのままUターンして帰った事だろう。

 私の淡い想いは終わった。

 スタジオに入り、最後尾に並ぶ。

 すると、帰ったと思っていた彼女がスタジオに入ってきた。正面のミラーに反射して、後ろから歩いてくる姿を盗み見たのだ。

 これ以上恥の上塗りは勘弁してくれ。

 恥にまみれ、プライドを引き裂かれ、私は穴があったら入りたかった。

 今、貴方は文学の誕生を目の当たりにしている。

 すると、どうだ、先ほど小声で迷惑そうに返事をしたクセに、私の真ん前にチョコンと座ったではないか。

 今更どうしろというのだ。もう私に次の会話の手持ちは無い。

 何故前に座る。

「逆恨みされたら怖いから普段と一緒にしておこう」

 という判断なのか。

 私は辛すぎて女心がわけわからなすぎて、何故平然と私の前に座る事が出来るのか、理解が全く出来なかった。

 怖いのなら距離を取れば良いではないか。

 体操座りで前後に並ぶ。開始まで二分、私は何も喋る事が出来ない。向こうはストレッチをしている。

 途中の給水タイムでも、私の水筒の横に彼女も水筒を置いている。

 何故、そんなことをするのだ。

 刺されたりしたら怖いから、きっと先ほどの挨拶を無かったことのようにしているに違いない。

 何度も給水で並んで歩くのだが、会話など出来る精神状態ではなかった。

 情けをかけるのはやめてくれ。結局プログラム中、前後にその距離1メートル以内に並んでいたのに、私の傷付いた心はそれ以上傷を広げることなど出来なかった。

 妄想とは怖い。気軽に挨拶を返してくれる、と半分以上思っていたのに。

 ジムを辞めようか、と思っている。

 

〜完〜

津山旅行2

この記事を書いている時、先日キンドルで出した『キンドル本を出版して人生を少しだけ変えてみる本』のことなのだが

 

 

 瞬間風速とはいえ、アマゾン書籍全体ランキングで1000番台を記録しました。パチパチパチ。

 

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 もうね、この本を読んで、皆さんもぜひ本を出してください。この本は私から貴方へのラブコールです。買ってくださった方、ありがとうございました。

 先日、車上荒らしにあい、財布を盗まれて気分が落ち込んでいたのですが、この新刊にも書いてある通り、現実世界での嫌な出来事を、もう一つの世界の良い知らせが救ってくれて、精神のバランスが取れております。皆様には感謝しかございません。

 姫路からiPhoneのグーグルマップを使って、津山の万歩書店をセットする。

 高速道路を降り、横に川を眺めながら軽快に走る。きっと津山城はこの川を天然の堀として利用したのだろうな、と思っただけで口にしなかった。

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 口にしたところで、何度連れて行ってやっても城を好きにならない金平は

「で?」

 としか返答しないであろうことは容易に予想できた。

 テンションが高まる。古本、レトロゲーム、中古CD、雑貨。我々の世代のパラダイス。総合中古ショップ。その万歩書店も風前の灯である。看板は疲れ果てていた。

 

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呉「来てよかったな。やってるうちに」

金平「そうだな、来年は岡山のように閉店しているかもしれんもんな。やってるうちに来れてよかった」

 

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 姫路にあった中古ショップ『ブックマーケット』『キャンプ』『ブックマート』などは、数年前に全滅した。

 残っているのはブックオフとお宝倉庫だけである。お宝倉庫が残っているだけ、まだ御の字なのかもしれない。

 我々は店内を噛みしめるようにして味わった。平日の昼なので店内はガラガラ。少子化のせいで、このような『物』の流通が激減している。

 そして若い子の娯楽が物からスマホに移行したことも大きい。

 音楽も小説も映画も漫画も、全てスマホで事足りる。

 このような物にあふれた店は時代遅れなのかもしれない。私は心の奥で叫ぶ。こういう店が大好きだ! 古い雑誌『宝石』や探偵雑誌『妖奇』『幻影城』も置いてあった。

 もしここがなくなれば、街でそんな古い雑誌を目にすることもできない。

 ネットで買えばいい? なんて味気ない。若者よ、断捨離なんていいから、自分の目で娯楽品と出会ってほしい。少しでもこういう店を延命させてほしい。

 ここに掲載する写真も、数年後には貴重な一枚になっているかもしれない。消えゆく風物詩。中古ショップへの鎮魂歌。

 

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 古本は大量にあったが、今私が集めている日本推理作家協会賞受賞作全集と、雑誌『幻影城』の欠けは置いていなかった。

 それでもこの雰囲気を味わえて、本当によかった。

呉「こっちは収穫なかった。そっちは?」

金平「声優さんのCDでいいのがあった」

 相棒はご満悦でレジに向かう。

呉「万歩書店って全部で何店舗あるんですか?」

レジの女性「津山に二店と岡山に二店です。岡山は隣接しているので場所は一箇所ですけど」

呉「そうですか。減っちゃいましたね。頑張ってください」

レジ「ありがとうございます。そちらのお客さん、ポイントカードはどうされます?」

金平「いいです。姫路から来てますもんで」

 レジの女性は『まぁ』という顔をしながら驚いていた。

 駐車場に出る。雨は小雨になっていた。晴れ男の私のパワーが雨男金平の魔力を駆逐しているようだ。

呉「なんか、しんみりしてしもうたな」

金平「そうやな」

呉「じゃあ元気出るように、次は津山城へ移動すっか」

金平「ワシは更にしんみりしとるけどな!

 二人を乗せた車は津山城へと移動する。

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〜続きます〜

『キンドル本を出版して人生を少しだけ変えてみる本』発売

 

 

 作った動機は簡単です。『読むのが大好きだから、貴方の頭の中にあるストーリーを是非形にして』これだけです。今回、表紙は自作しました。素人デザインなので、ちょっとマイナーな感じですけども。

 説明するよりも、この本の『まえがき』を全文掲載する方が早いでしょう。

 以下は、この新刊の『まえがき』です。

 

■まえがき

 

 この本はマックとワードで電子書籍、アマゾンのキンドル用のデータを作る方法を解説していきます。

 これを読む貴方は運がいい。この本の代金、たった三百円を自分に投資するだけでキンドル出版ができるようになるのだから。私はキンドルで出版するまでに四苦八苦した。専門書もたくさん買った。三日三晩徹夜して(その間適度に昼寝して)後から考えれば簡単な箇所で何時間も躓いていた。

 この本は、その専門書にかかった費用を回収したい、という筆者(月の小遣い2万円)の切実な想いと『本を出してみたいなぁ』という貴方の想いの助け、となるべく作られた本なのであります。

 この本の目指すところは、アマゾンにアップロードする直前の、完成された原稿データを作るまでをアシストすることで、アマゾンのダイレクトパブリッシングへの入力、例えば貴方の銀行口座の入力等は、貴方ご自身で頑張ってもらうところであります。

 それでも私が躓いてきた場面は、キンドル用の書籍データを作るところまでであったので、それさえ完成すれば、あとは簡単に出版までたどり着けることでしょう。

 そして身も蓋もない言い方をしてしまえば、キンドル用の最終データを作るまでの過程は、詰め込めば数ページで書き切れてしまいます。でもそれではあまりにも味気ない。

 この本の特色としては

・中高年に届く声(筆者は執筆時アラフィフ目前です)で書こう。

・くすぶっている貴方のやる気を盛り上げていこう。

・私はパソコンの専門職ではない普通のサラリーマンなので、専門用語ではなく日常会話形式で進んでいこう。

・解説書だが読み物的な要素も入れていこう

 と思っております。

 キンドルのお陰で出版は非常に身近なものとなりました。パソコンとネット環境があれば、誰だって出版できる世の中になったのです。

 自分の本を世の中に出す。という行為はドキドキ、ワクワクがいっぱいです。そして自分の本が大勢の人にアピールする本であれば、それは『金銭』という形で作者に還元されます。

 私も印税のお陰で、嫁さんに内緒で欲しい本を沢山買っています。

 政府や政治は決して貴方個人を助けてはくれません。そして結婚をすれば『小遣い制』という方が大多数でしょう。キンドル出版はそんな貴方に『秘密のへそくり』を与えてくれます。

 出さない理由は? ないでしょ(『今でしょ』みたいに流行らそうとしているのか?)

 日々の仕事に追われ、夢を追う年齢でもないか、と肩を落としているだけの貴方。この本を読んで是非行動に移してください。

 貴方がこの本を読んで貴重な休日を費やし、その先に待っている『楽しいこと』を掴める可能性は、宝くじで当選する確率より何万倍も高いことでしょう。

 私も貴方の出す本を楽しみに待っています。

 

 2019年2月 積読本に囲まれた狭い自室にて

津山旅行1

 相棒の金平が姫路に帰ってきているので、ちょっと無理してでも行っておこう、という話になったのだ。

 前回の松江旅行で感じた『消えゆく中古ショップ』

 行く度にテンションが高まった岡山の万歩書店が、本店だけを残して閉店。昔は岡山だけで7、8店舗はあったと思う。

 後は津山に二店舗を残すのみとなった。大都市岡山ですら維持が難しいのだ。津山もあと何年持つか、というのは的外れな予測ではあるまい。

 いつまでも続いて欲しい。古本、中古CD、レトロゲーム、色々な雑貨。

 行く約束をしてから二週間、天気は晴天が続いていた。それが肝心要の攻略日当日。

 

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呉「オマエ大概にせいよ! どんだけ雨男やねん!」

金平「それはこっちのセリフや。日頃のオマエの行いが悪すぎるんとちゃうか?」

 行きの道中から口論である。

呉「土砂降りやないけ! 楽しみにしてたのに、どないしてくれるんじゃ!」

金平「おどれ、二度と表紙書かへんぞ!」

 

(※二人の結晶、キンドルシリーズ(笑)

呉「それは困る」

金平「イライラせんと安全運転で頼むぞ。まぁ、この雨はな、オマエの日頃の行いのせいや

呉「どういうことや」

金平「嫁さんもおるのによ。ツイッター見てたらなんどいや、あれ。ジムで女の尻ばっか追いかけて」

 

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呉「嫁さんもやな、ジムで男性に声かけられまくってるし、それで嫌味いうたらな『アンタがジムの女性と仲良くなっても、私怒らへんで』言うからやなぁ」

金平「昔っからオマエは女好きやのぅ。そんな暇があったら作品書け」

呉「オマエが異性に興味なさすぎなんじゃ。AVと二次元専門で」

金平「おいおいおい、ちょっと待て。オマエここでワシのこと結構悪く書いてるやろ。あんまり暴露とかやめてくれな。結構ダメージきてるんやぞ」

呉「聖人君子やあるまいし。オイシイやんけ。作者に興味持ってもらったら作品購入に繋がるし」

金平「オマエみたいに神経図太くないねん。で、ワシもアンケート、三番にしたぞ。絶対に言えよな」

呉「結婚しとるのに、女性と、それもタイプの女性を目の前にすると、緊張して言葉が出てこんのよ。こんな調子でワシよぅ結婚できてるなぁ、思ってな。どうやって話しかけよ」

金平「ワシに聞くな。一番聞いても無駄な人間の部類やぞ」

呉「まぁ、この問題はもうええか。ネタとして昇華してな、自爆してもおもろかったらええやん、って思ってるんや。だから題して『妄想ジム日記』をキンドルで出す前提で、振られ覚悟で話しかけるのもありかな、と」

金平「ええぞ、そうや。そうやって人生切り売りしたらええねん。友達になったらオマエがドキドキする。振られたら本のオチとして最高。どっち転んでもええパターンやんけ」

呉「さぁ、あともう少しで津山や。津山にはな、万歩書店が二店舗、ブックオフが一店舗あるぞ。そしてサプライズや。津山城も入ろうや」

金平「何がサプライズじゃ。拷問じゃ。何が楽しゅうて雨の日に城行かなあかんねん」

呉「巨大な石垣にな、近年櫓も復元されてるんや」

金平「知らんがな

 この珍道中、また何回か続きます。お付き合いください。

 

〜続く〜

橋本治『ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件』を読んだ。

 橋本治『ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件』を読んだ。私はもう決定的に読むのが遅くて、一週間もかかってしまった。文章は読みやすく、個性的な一人語りなので、普通の方なら数日で読めてしまうだろう。

ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件

ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件

 

『異形の作品』を読んでしまった。というのが読後の感想。全編を覆う『昭和軽薄体』という独特の文体。これが目新しく映った。四大奇書への言及もあり、かなり接近した部分もあるが、私小説的要素の方が強く感じられる。

 60年代のクレージーキャッツを代表とする『モーレツサラリーマン』『テキトー』『無責任』とは違う、80年代の『シラケムード』この昭和の終わり、80年代の感覚を切り取った、そしてその時代での問題提起を孕んだミステリー仕立ての文学作品、といった趣。

 私は今年で50ですからね、小学生の頃の世間を騒がせた『金属バット事件』や『女子大生ブーム』『ケーハク』といった単語から、なんとなく当時の世相は理解できます、が、今の若い人がこの作品を読んだら、当時限定の流行語や芸能人が散りばめられているので、ちょっとその部分だけで敬遠されてしまうかもしれない。

 そういう世相を(作者も作品を延命させる気は無かったのか? という書き方だが)取り敢えず横に置いて、章の頭に引用される思わせぶりな名作推理小説からの引用、冗談交じりの推理合戦、というミステリーの道具立ても、作者の狙いは『そこ』ではなく、一人の人間が何故殺人を犯してしまったのか。という問いと、自分探しという言葉を超えた赤裸々な自分語りがテーマに密着して、読後色々と考えさせられた。

・昭和軽薄体という独特な文体が面白く、それを味わうだけでも価値がある。

横溝正史の作中人物と、依頼人の家族の名前が『被る』ので、きっと不吉なことが起こるはず、と騒ぎ出す依頼人の婆さん。そしてガールフレンドから適当に頼まれて適当に探偵になり、そのまま事件に飲み込まれていく主人公。

・終盤、発狂する犯人、それも探偵が事件の全容を二人きりで説明している途中で(これは相当怖い)温和な言葉遣いが、段々と方言交じりになっていく壊れ方の演出(個人的にポイント高し)

 文学的要素も高い。主人公の両親が離婚し、母親に気に入られようと『良い息子』を演じて、そのまま東大まで行った主人公の心の空洞。

 その人に合わせて、本来の自分は違うのに、その人に気に入られようと、頑張ってその役を演じる、というのは形を変え、誰にでもある心理だと思う。そういう掘り下げがチクチクと胸を突く。

 そして作品でも重要な要素の『都市論』とその犠牲。身近でもある話だ。昔ながらの国道沿いにあった喫茶店、しかしその道を迂回する大きな幹線道路ができれば、その沿線は一気に死ぬ。

 事件の舞台もそれに近い閉塞感に包まれているのだ。

 そして未読の方はこの先読まないでね。

 厳格な解決とは決して言えない、自供と状況証拠からの事件解決。

 犯人の動機が

「色々とやんなっちゃったから」

 という一見軽薄の極みのように見える、誠にリアルな心情。

 今だって変わらない。状況は当時より悪化しているだろう。抜け出せない貧困。富裕層との二極化。真面目に働いても明るい未来が待っている、とは決して思えない社会制度。貧乏人は死ね、とでも言っているかのような世の中。

 親の葬式が出せなくて、いい歳した大人が親の死体を放置したままニュースになる、その『仕方なさ』モロに我々の世代だ。

 この作品当時の『シラケムード』よりも(まだ日本は豊かで逆転のチャンスはあった)絶望が蔓延している現代。

「色々とやんなっちゃったから」

 という動機、未来を先取りした作品、とは言えないだろうか?

我が妻との闘争2019〜ありがとラッキーちゃん〜二位達成!

 このブログは私の日記と、読書感想と、活動報告の場ですので、もう少し新刊の話題でお付き合いください。

 

 1月に出しました新刊、おかげさまでジャンルで二位を達成いたしました。パチパチパチ。

 

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 これもひとえに読者様、フォロワー様のおかげであります。

 会社ではダメ社員ですがね、ネットではそこそこ結果出すのですよ(笑)

 出すまで散々悩みましたが、というのも今回の新刊、前作と同じペースで数は出ているのですが、反響や感想が掴めない、といいますか。

 

我が妻との闘争2018〜昼下がりの冤罪編〜 (呉工房)
 

 今年の新刊は『心情を吐露しすぎたかな』という思いや、いつもの感じを求めて来られた方が『真面目な話をしだして急にどうしちゃったの? 呉さん』みたいなことになってるのかな? と分析してみたり。戯作者に徹するべきであったか、という出した後での煩悶の小さな渦が回っている、といいますか。

 でもまぁそれも私の出す物の一つの形。これからも毎年出すのですから、人生山あり谷ありを書き記していけばいいか、と分析なり今後の指針なりとし、次回も頑張りますので、どうぞ皆様今後ともご贔屓に。

 個人出版でジャンル二位は大健闘でしょう。どうもありがとうございました。

 さて、今年の目標ですが、ノンジャンルの短編集を出せればと(もう一本強い話を入れたい)あと、数年前から練っている少年探偵物(ものすごく不謹慎)これを形にしたいのと、もう一本、これも長編なのですが、小栗虫太郎黒死館殺人事件』へのオマージュ的なもの、これが形になれば最高なのですが。

 ここで宣言したものは、ゆっくりでも形になっているので、今のところ有言実行は守られております。

 さて、もうしばらくツイッターで新刊の告知をしたら、また日記と探偵小説読書日記といういつもの日常&ペースに戻っていきたいと思っております。それでは今宵はこの辺で。

我が妻との闘争2019〜ありがとラッキーちゃん〜

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 2019年に入って色々ありまして、今年の書き下ろし作品を収録した『我が妻との闘争〜ありがとラッキーちゃん〜』を出すことになりました。

 どうぞよろしく。アマゾンレビューを寄せてくだされば、作者は飛び上がって喜びます。

 

松江旅行完結編

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 出雲、松江、米子の店を全て回り終えた我々は、往生際も悪く、岡山を経由して姫路に帰るルートを選択した。

 陽は落ち、辺りは急速に暗くなる。

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 前から行ってみたかった岡山の古本屋さん『古京文庫』さんを目指す。岡山城の近くだ。

 しかし無念! 到着時間が遅すぎて閉店のあとであった。気を取り直して岡山のブックオフへ。

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 さすが大都市岡山、ブックオフも品揃えが違う。乱歩関連の文庫と日本推理作家協会賞受賞作全集を買う。

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 今回の旅で収集しているシリーズが、かなり埋まりました。

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 あと、この旅で唯一買ったCD。浜田省吾の『ホームバウンド』リマスター版。長く買いそびれて、この一枚だけ聞き逃していたのだが、このアルバムがまた良い! お気に入りの一枚となった。皆様にもオススメしておこう。

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Home Bound

Home Bound

 

 そうして夜の十時。岡山市内で晩飯である。

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金平「オマエ、ダイエットしてる言う割には大盛りやんけ!(笑)」

呉「ダイエットは明日から頑張るわ(笑)」

 そして照れ臭いので、ここまで書かずにいたが、家を出てから私の旅行鞄に見慣れない封筒が入っていることに気がついた。

 見れば、長女ちゃんからの手紙であった。歯科助手として働いている長女ちゃんが、私と金平に、とご飯代三千円をポチ袋に内緒で忍ばせていたのであった。

 私は現地で泣きそうであった。

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 そして深夜に姫路着。解散。良い旅だったな! 金平。今度は彦根城連れて行っちゃるからな!(笑)

 総評だが、中古屋を巡る事情は90年代からひたすら下降線を辿っている。まず街からCDショップが消え、中型の郊外型新刊書店が消え、中古ゲームショップが消え、ブックオフ以外の古本屋が消え、といった具合だ。

 配信に取って代わられた、というのが大きいのだろう。10年前から相棒の金平と地方の中古ショップ巡りを繰り返してきたが、地方は『よっぽどの掘り出し物』それも『少ない可能性』今回の旅では古い角川文庫、結城昌治の一冊のようなチャンスを狙う以外、大都市に勝るものはない。岡山より大阪、大阪より東京といった具合に。

 なのでこの『だめなやつらツアー』も、今後は地方のブックオフ巡りは挨拶で、その土地の城と名物料理を食べる旅、に変わっていくことだろう。

 本気の買い物なら東京を目指せ、品物はそこにしかない。ということだ。

 旅を終えればいつもの現実が待っている。うるさい上司、キツイ仕事に耐え、また相棒と青空の下、何も考えずに羽根を伸ばす次回の自由しかない旅を夢想し、そして次に出すキンドル本の準備をしながら、この筆を置きたいと思います。

 ありがとう山陰。素晴らしかったよ松江城 〜完〜

松江旅行8

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 油屋書店さんの定休日は大打撃であった。気を緩めてバッターボックスに立ったら、ピッチャーの球が悪送球でバウンドして金玉に直撃したかのような、この旅痛恨の一撃である。

金平「オマエ、この旅の目的は油屋書店さんやったんとちゃうんか?」

呉「そうや」

金平「下調べせずか?」

呉「週の真ん中なら大丈夫、と思ってな」

金平「ワシもB型やけど、オマエの計画性も大概ユルユルやのぅ(笑)」

呉「人生のお楽しみは取っておくんや! ショートケーキのイチゴは残しておくんや!(謎理論)」

 満身創痍で次の店をiPhoneでチェックする。

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 それにしてもだ、全国のブックオフの写真が私のハードディスクの中に大量に眠っている。訪れるたびに店舗の写真を残しているからだ。

 どれも似たような外観で、後から見ても訳が分からないが(笑)、それでもじっくり見ていると稀に『あっ、ここであれを買ったな』みたいにして不意に思い出すことがある(超キショイ!)。

 ここにもありましたよ。それも百均棚に!

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 貧乏人には百均コーナーの探究本は本当に有り難いのだ。こんな素晴らしいアンソロジーが格安で! ホクホク顔でレジを後にする。

 この旅から私はブックオフの会員カードをリアルカードからスマホに移行した。会計の時にスマホのバーコードをレジにかざすのだ。

 誰が頭バーコードじゃ! まだ大丈夫じゃ!(被害妄想)

 ちょっとした未来感覚である。レジに立つ、うなじから色気が立ち上る小綺麗な熟女パートさんへスマホ画面を見せる。

『どうです? 使いこなしているでしょう?』

 と、流し目でアピールしながら財布を出す。

 その後ろで相棒の金平はゴソゴソと財布からブックオフカードを探している。無様。あいつは頑なにガラケーなのだ。

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 そして米子の開放倉庫へ。ブックオフと雰囲気が違うのでテンションが上がる。

 玄関からお出迎えがあった。

呉「ああっ! これは!!」


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呉「や、安い。それに状態も良い。この価格なら手が届く」

 私の脳内コンピューターが瞬時にシュミレートを始める。

 ここで買う→格安でお得→後部座席をフラットにすれば持ち帰ることは可能→嫁さんが寝てから真夜中にザイオン(屋根裏部屋)へ搬入→使うたびに屋根裏から下ろし、見つからねば嫁さんから怒られる心配もない→以前買った腹筋台の立場はどうなる?→あれはホレ、バネがないから自力やん。自力キツいやん→これはバネの力で腹筋をサポート→数週間後、きっと腹筋バキバキ→通っているジムの美魔女集団が色めき立つ→今度お茶でも? いいですよ、お茶くらい。不倫じゃあるまいし→お茶の帰りに助手席の美魔女がいきなり私にディープキス→だって腹筋が猛烈に凄いから。

呉「買おうかなぁ」

金平「やめとけ、やめとけ(笑)」

 友が軽くあしらう。オマエのことや、すぐ飽きる。と冷静に私の性格を診断してくれたのだ。まぁ私も心の片隅では思っているのだ。しばらくすると部屋のオブジェになる可能性がないこともないこともない。だって現折りたたみ腹筋台は、部屋の片隅にずっと立てかけたままになっているからだ(笑)

 ここの店舗はレトロゲームが充実していた。PCエンジンのDUO本体が一万円台で売っていた。だがCDドライブ不調の札が。DUOなんて大阪では39800円くらいしていた。もう手が届かない。底値の時に中古で買っておけばよかった。

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 ゴール地点である米子のハードオフを制覇し、これで定休日以外の予定していた店舗は走破したことになる。

呉・金平「バンザーイ! お疲れさーん」

呉「でもな、金平、この旅、不完全燃焼な気分やと思わへんか?」

金平「そうやなぁ」

呉「まだ夕方や。岡山かまして帰る?(ニヤリ)」

 

〜続く〜

松江旅行7

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 山陰名物『牛骨ラーメン』に舌鼓を打ち、エネルギー充填完了した二人は、再びこの旅の目的である店巡りに戻るのであった。

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 角盤文庫さんに到着。ここは期待していたのだが、置いてあるのは漫画だけであった。勝手にハードルを上げたのはこっちのせいである。

 かつては郵便局だったのだろうか? 雰囲気のある店舗であった。

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 ブックオフに到着。結城昌治の角川文庫は無し。日本推理作家協会賞受賞作全集も無し。肩を落として帰ろうか、と思ったその時、ありましたよ! アンソロジーの棚に!

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 このシリーズ、コンプリートがすぐ先に見えてまいりましたよ。ウキウキしながら店を出る時、ちょっと前に読者の方に言われた言葉が突如頭の中でリフレインする。

呉さんは本当は探偵小説を読むのが好き、なのではなく揃えるのが好き、なんじゃないですか? ないですか? ないですか? ないですか?

呉「いやっ、読むのも好きなはずなんです。だって僕は中学から横溝、乱歩、久作を読んでいたし、沢山読んでいたからこそ、ちょっとだけ文章を書けるようになったんだし、本も出してもらえるようになったんだし」

金平「オマエ駐車場で一人で何言うてるねん」

呉「わぁっ、出てきてたんかい。脅かすなや」

金平「独り言言う奴は妄想が酷い証拠やな」

呉「妄想が酷いのは否定できへんわ(笑)」

 そして次の店をチェックする。『古書の店ギャラリー』さんだ。ブックオフ以外の昔ながらの古本屋さんだ。

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 ここは素晴らしかった。店内に本がビッシリと積まれ、通路にも本棚の上にも至る所に並べられていた。

 文庫をチェックしても、バーコードの無い古い文庫がたくさん置いてある。私は気持ちを高ぶらせながら『ゆ』の棚へ向かう。

呉「ああっ!」

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 この旅で最高のエクスタシーが訪れた瞬間であった。まさか米子で巡り会えるとは。バーコードの無い旧角川文庫の結城昌治は三冊あった。

 その中に丁度持っていなかった「夜の終わる時」が。絶滅危惧種結城昌治文庫。

 無いから。本当に無いから。貴方も近所のブックオフに行って『ゆ』の棚を見てごらんなさい。まぁ無いですから。

 本棚から抜き取る至福の瞬間。私は嬉しさの余り卒倒しそうであった。

 よかった、山陰に来て良かった。逆にこのタイミングで山陰じゃなかったら、この文庫に出会えてなかったかもしれない。この一冊だけでこの旅は意義あるものとなった。

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 駆け足でチェックするだけなのが本当に惜しい。半日くらい物色したいお店であった。ありがとう古書の店ギャラリー。

金平「探してた本、あったんやな」

呉「あった。最高やわ」

金平「次は?」

呉「次もチェーン店じゃなく昔ながらの古本屋さんや。油屋書店ってお店」

金平「で、臨時休業、ってオチが付くとかか?(笑)」

呉「まさか(笑)一応iPhoneで見とこか?」

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呉「金平、アドバイスありがとう。木曜日定休日やった(号泣)」

金平「オマエなぁ(笑)幹事失格やで、ホンマ」

 やはり出雲大社にお参りしてから旅をスタートさせるべきであったのかもしれない。

 

〜続きます〜