呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

『新・我が妻との闘争』始動! その2

 結婚25周年で色々サプライズをですね、したのですが嫁さんは憎まれ口ばかり叩くのですよ。

 旅行もですね、奮発して金沢に宿をとりましてね、出来立てホヤホヤのホテルで内装など全てにおいてゴージャスでしたね。エレベーターなんか金ですよ!

 

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 そしてホテルの備え付けのドライヤーが、なんとダイソンで、私、一発で気に入ってしまいました。

 

HD01 WSN Dyson Supersonic ホワイト/シルバー

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 未来感溢れる形状で、音も漫画、ガンツに出てくる兵器みたいにキュィィィィン、みたいな。中年男性の皆さん、普段家電量販店に行っても、ドライヤーのコーナーなんて見ないでしょう。これ、使うと一発で魅了されますよ。今、一番欲しい家電ですね。ですが、お値段おったまげの五万円! おいそれと手が出ませんね。

 前回の折りたたみテーブルがイマイチこっちが思うほど喜んでくれなかったので、今回は男を見せましたよ。

 旅行の日、運悪く台風が来たのです。そして大阪から金沢を結ぶサンダーバードが運休になってしまったのです。

 ホテルはせっかく予約してあるのに、行く足が無い。

 私は言うてやりましたね。

「助手席で寝とけ。ワシが金沢まで夜通し運転しちゃる」

 姫路のブルース・ウィルスの名は伊達ではなかったのです。あんまり考えないで言い放ったのですけどね。あとでこっそりググったら、五時間半とスマホに表示されました。

 それでも向こうでホテルは押さえてある。電車だけの問題でした。この日のために会社も休みを取っていましたし。行く気も満々でした。

 結局、北陸道を通って運転しましたよ。

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 結果、行って良かったですね。金沢は晴れてましたから。

 金沢城

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 武家屋敷も

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 東茶屋街も最高でしたね。

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 美術館も芸術を解さぬ夫婦ですが、楽しめました。

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 で、ここまで頑張って連れてきたのに、抗争勃発ですよ。

 と言いますのは、昼にグリルオーツカさんの名物、ハントンライスを食べてですね。

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 夜には金沢名物、金沢カレーを食べたのですよ。

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「私、Sにしようかなぁ」

「せっかく来たんや、M食べよ」

 と、私ががっつり食べさせたのです。そして翌日はホテルの朝食バイキング。で、問題の昼ですよ。

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 嫁さんが一番楽しみにしていた、近江町市場です。

「あ、あんたが色々食べさせるからやな、胃もたれして一番楽しみにしていた海鮮丼、食べる気が起きへん」

「な、なんでや。もうお昼やないか。ワシお腹ペコペコや」

どんな腹しとんじゃ!

 嫁さんは市場の真ん中で大激怒です。通路にあった発泡スチロールの中のズワイガニが驚いて足を伸ばしました。

「きっと美味しいから入るって、食べてみよ」

「無理や、昨日アンタがカレーMを注文したからや。アンタのせいや

「じ、じゃあモーニング抜きにしたら良かったやないか」

あの高い宿泊代は朝食込みなんじゃ!

 楽しい旅行のはずがヒートアップして何故か嫁さん激ギレです。

「な、なら歩こ、ウォーキングしてお腹減らそ」

運動と違う、胃もたれやって、さっきから言うとるやろうが!

 そんなもんお前の腹の調子をワシに怒ったって仕方ないやろうが! と内心怒っても嫁さんの怒りは収まらず、よく見れば半泣きで市場を早歩きで抜けていきます。

 食べ物の恨みは怖い! 通りには日本海の新鮮な海鮮丼の看板が並んでいます。こってりしたものを食べさせ過ぎて、本当に食欲がないのでしょう。

 金沢がイチオシしているらしい魚『のどぐろ』のポスターが、恨めしく私を見つめていました。

 こんな感じで金沢を二時に撤収となりました。お昼抜きで車です。もう帰らなければ、姫路に八時になるからです。私のお腹はギュルギュル鳴っています。

 嫁さんは助手席でふて寝してしまいました。

 結婚25周年、26年目からも暗雲が立ち込める我が家でありますよ。 

 

〜完〜

『新・我が妻との闘争』始動! その1

 相棒の金平による拙著『我が妻との闘争』のコミカライズ版が発売となりました。パチパチパチ。

 

 

 これはこの本に収録されている巻末にある私の解説にも書いたのですが、以前コミックチャージで連載されていた2巻分のエピソード以外の話を、順番にコミカライズしていく、というものです。作者金平によると、全話完成には軽く10年はかかるそうです(笑)

 売り上げも好調なようで、私もホッとしております。あと、このシリーズは私も全力で良いものにしていこう、と思っているので、今回早速金平に注文しました。

 iPadの一番巨大なやつならともかく、通常サイズのキンドル端末で、この本のセリフは小さく感じました。

 拡大すれば済むことですが、それでは快適性が損なわれます。この本、若者は読まんでしょう(笑)老眼の中年世代に向けて、目に優しい作りに方向転換していくよう要請しました。あとがきのフォントサイズも小さい。

 紙媒体での仕事が長かったので、雑誌の常識を一旦捨て、アイツには電子書籍、それも同世代に向けたチューニングを施していってもらいたいです。

 ご意見ありましたら、ぜひこのコメント欄かツイッターでも気軽にお申し付けください。

 さて、今年は結婚25周年というメモリアル年で、最近も色々ありました。

 まず聞いてください。結婚記念日にですね、こっそり有給を取って会社に行くフリをしてユーターンして、二階のベランダにシャンゼリゼ通り(行ったことないのに適当!)のようなムードに変える折りたたみテーブルをサプライズプレゼントしたんですよ。

 

 

 これ、使わないときは折りたためるので超オススメです。

 キャンドルグラスも買ってきてムード満点ですよ。それでですよ? 奥さん。ここまで喜ばそうとしてやったのに、嫁さんなんて言ったと思います?

 

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「たった一回こっきりの為に、こんなん買ったんかいな」

 ですよ? 我が耳を疑いましたよ。難聴になったのかな? って。

 どうして女性は彼女から嫁にメタモルフォーゼすると、こんな現実的で可愛げのないことを平気で言えるようになるのですかね。浮気するぞ。

 それでも気を取り直してメモリアルデイのお祝いです。そしてこれはこのブログで何回もオススメしているので、この会社の回し者ではないか? と思われるかもしれませんが違います。

 このテーブルの上に、必殺『炉端大将』の登場ですよ。

 

 

 この炉端大将を使うとですね、ホットプレートで焼肉をした時に出る脂が肉に浸かってしまうときありますよね。

 しかしこれを使うとですね、脂が落ち、安肉でも激ウマに激変するのです。

 

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 これのお陰で、スーパーの安い肉でもすごく美味しく食べられるようになりました。貧乏人の味方ですよ。味がワンランクアップします。フライパンやホットプレートでは絶対に無理な味ですね。

 ここまでしているのにですよ、この写真に映る食材も少ない私の小遣いからですよ。それに印税をプラスしまして買い集めてきまして。

 で言ったセリフがこれですよ。

「煙の苦情が来んか気が気じゃないわ」

 私は言うてやりましたよ。お隣は道路を挟んでいるし、風向きは裏の畑だし、そもそもここは二階で近所の一階のリビングに煙は行かないし、焼きあがる煙は二階を起点に上へ行くし、文句ばかりよく言えたもんだな、と。

 後半は食べながら喧嘩ですよ。

 どうしてこうなるのか、ちょっと回数書きます、この話題。お付き合いください。

 

〜続く〜

佐野元春ニューアルバム「或る秋の日」濃厚レビュー

 

或る秋の日(受注生産限定盤)

或る秋の日(受注生産限定盤)

 

 

 長く佐野元春のファンを続けている。リアルタイムではヤングブラッズのリリースから。傑作アルバム『ビジターズ』は後追いの昭和44年生まれファンである。

 昨日発売の佐野元春のニューアルバム『或る秋の日』

 このアルバムは、ここ数年のアルバムの中でも傑作である。詩、メロディ、そしてボーカルの表現力など、新境地と言っていいほどで、内容はとても内省的で聴く者の感情に強く訴えかけてくる。

 既発の先行シングル4曲に新曲の4曲の全8曲構成、時間にして30分。曲数といい時間といい『ミニアルバム』の体裁だ。

 これまでに佐野元春は雑誌のインタビューで『今度のアルバムはコンセプトアルバムだ』とか『アルバムを一本のロードムービーのようにして纏めた』という発言をしてきた。

 そして実際に『ミスターアウトサイド』を後半にリプリーズで配したり、庭で始まり庭で終わる、という狙いや、コヨーテのロードムービー仕立てなど、提示されてはいるが、中にはバラエティに富む多彩なソングライティングから、その狙いがぼやけてしまうナンバーも収録されていた。

 これまでのキャリアで唯一『コンセプトアルバム』『トータルアルバム』として突出しているのは、単身ニューヨークで作り上げた『ビジターズ』である。

 ピリピリするほど統一されたサウンド。日本を離れ『訪問者』となった視点からの詩。それはとても内省的なものから発していた。

 そして、今回のこのアルバムの印象、下世話な話をすれば、ツイッターで得た又聞きだが、佐野元春が近年、離婚と再婚を経ている、ということ(佐野元春自身はそういうワイドショー的な興味でアルバムが売れる理由の一つになるのはたまらなく嫌だろう)。それを踏まえれば、この熟年離婚、失恋、喪失、失意、傷心、といった感情が、万華鏡のように展開した、真のトータルアルバムになっていること。

 それは恐らく佐野元春の本意ではないだろう。

 世間は佐野元春にどんなものを求めているか。それは『強さ』である。社会に異議申し立てをする姿勢。『警告通り計画通り』に見られるジャーナリズム性。硬派なロッカー。本人もこれまで『強い』佐野元春であろうとしてきた。

 だから、この『自分への癒し』となるサウンドの数々は、深く哲学的で恐ろしくトータルアルバムの形に仕上がっていく過程でも、強くあろうとした佐野元春は『だけどミニアルバムだけどね』と、崩れ落ちずにシャンと背筋を伸ばす。

 聴き終えた今では『この世界観をフルアルバムで聴いてみたかったよ』という気持ちがないでもないが、そこが佐野元春の強さであるし、長年信頼している音楽への誠実さでもある。

 ミニアルバムだよ、とこちらの心配をスカしてはいるが、描かれているのは、とても傷付いている佐野元春、こんなに傷付いて弱々しく心情を吐露している佐野元春はとても珍しい。これは失意と再生、それらを癒す極めて内省的なヒーリングミュージックだ。

 録音は2014年。相対化するまでに五年もかかっているのだ。傷の深さが伺えるし、収録された楽曲が生まれ落ちるのも納得できよう。

1・私の人生 傑作。佐野元春流ウォールオブサウンド。〜愛って何ていうか 空回りの理想〜という詩。そして〜このありふれた愛すべき日々の人生〜への繋がり。

〜人のことなんて誰もわかっちゃいない〜作中の相手は『妻』なのだと私は読んだ。日々深まり、感じる『齟齬』。長年連れ添っていても人のことは、自分以外の人生なのだ。だから改めて見つめ感じ直す〜日々の人生〜それは誰もわかっちゃいないが、生きている限り続いていく、ものなのだ。

 ツアーに明け暮れる日々。『子供が巣立ったので別々の道を歩みましょう』という会話を妄想する。それは仕事に明け暮れるサラリーマンにも当てはまる。家には目もくれず家族のために身を粉にして働いてきた男。いつの間にか冷え切っていた愛すべき、絶対に崩れるはずがない、と盲信してきた相手からの別れの言葉。「え?」としか言えないではないか。

2・君がいなくちゃ 色々と含みのある歌詞である。〜いつの日か二人を分かつ時が訪れるとしても〜終わりが生活の中で見え始めてきている。その中で祈りのように響く〜君がいなくちゃ〜〜心が落ち着かない〜男は全然強くなんてない。弱い生き物なのだ。女性より強いのは腕力だけ。たったそれだけ。

3・最後の手紙 個人的の本アルバムのベストトラック。男はロマンチストなのだ、と思わせる世界観。失恋は男を詩人にさせる。出会った頃の情景、思い出は美しい、そうあってほしいよ、という歌詞に、張り裂けそうな失意が伝わってくる。

 男は叫ぶ。君のために書いた唄を心に留めておいてくれ、これが君に書く最後の手紙になるだろう。そう思うと涙が止まらない。子供達にもよろしくと伝えといてくれ。

 男は感傷で心が押しつぶされそうになる。それでも精一杯立とうとする。しかし『女』という生き物は、男のそんな感情を他所に、作ってもらった唄も忘れ、新しい生活の準備や、未来のことで頭がいっぱいなのだ。感傷には決して付き合ってはくれない。関係が終わった女、という生き物は、この世で一番冷酷な生き物なのだ。終盤には伝家の宝刀「デュデュデュ」スキャットが出てくる。古くは「グッドタイムス&バットタイムス」「グッバイからはじめよう」などで聴くことのできる、無条件に郷愁感を誘う元春の武器。

4・いつもの空 これまでの佐野元春のキャリアでは、まず出てこないであろう内省的な歌詞とメロディ。しかし若い頃には『バッドガール』のような弱く女々しい一面も持つのだ。そしてこの作品は寂しさが残酷なまでに響く。カーステでツッコミが止まらなかった。〜朝、小鳥のさえずりが楽しげじゃなけりゃ、寂しくはない、君がいなくても〜さっきは君がいなくちゃって、言うてたやん。まずそこが痛々しい。それに朝は大抵小鳥は楽しくさえずるやん。さえずらん日はないやん、ならずっと寂しいやん! 曲は二番に続く。〜朝、台所がシンとしてなけりゃ 平気さ 君がいなくても〜奥さん出て行ったんやろ? なら台所は絶対にシンとしてるやん! じゃあ平気じゃないやん。寂しいやん! 三番に続く。〜朝、木漏れ日が優しくなけりゃ 平気さ 君がいなくても〜木漏れ日は絶対に優しいやん! 曇り空や雨の日はまず普通でも絶対に寂しいやん。晴れの日は確実に木漏れ日やん! じゃあオールマイティで寂しいやん! ものすごく弱い男の肖像が浮かび上がる。逆説の詩作の極致。ボーカルの表現力も素晴らしい。

5・或る秋の日 先行シングル。アナログで言えばここからがB面。これは再会してしまった唄。それも昔好きだった人と。酷い別れを経て、新たな恋の始まり。

 サウンドプロダクションが素晴らしい。メロディも〜初めて会ったあの日から〜のところなどとても力強い。再生の音楽。

6・これは少しづつ心が修復されていく過程を思わせるナンバー。まずアコギと、冒頭と最後のチャラチャラと鳴るパーカッションが元春本人の演奏。普段元春はそんなことしない。失恋の痛手、一人部屋に篭り、手癖のように触っていたギターが生み出したフレーズだろうか、何かを癒すようなパーカッション、一点を見つめ、無心で鳴らす様子を妄想する。

7・永遠の迷宮 これは再スタートを妄想させる。新しいパートナー。それは過去に想いを寄せた人。〜今までの隙間を 全て埋めたい〜に現れている。男は別れたとしても『自分の愛は正しかった』と思いたい。だから引きずる。次になかなか行けない。次に行くには新しい『恋』しかないのだ。『愛』はズタズタに破れているのだから。

8・みんなの願いかなう日まで 離婚しても失恋しても祝う日や祭りは関係なく訪れる。今日はクリスマス。みんなここにいる。大事な人は今ここにはいないけど、今日はクリスマス。詩を写しながら涙が出そうになる。なんというセンチメンタリズム。離婚しても新しくやり直せばいいんだ。新しい恋は前の愛を否定するものではない。それは日々、人生は続いていくものなのだから。そして人生は『楽しく』なければならない。人は一人で死んでいく。それは分かってはいても寂しすぎる。欲しいものなんて何もない。ただ君がいてくれるだけでいい。いろんなサヨナラがあって、みんな今ここにいる。今日はクリスマス。昨日まで互いに辛い日々だったかもしれない。でも祝おう。だって今日はクリスマスじゃないか。そして私は天を仰いで祈る。みんなの願いがかなう日まで。

 こんなトータルアルバムを私は知らない。これこそ一人の傷付いた男のロードムービーではないか。

 離婚、喪失、失意、傷心、再会、再生、希望。そんな魂の流れが『秋』という季節を背景に流れていく。

 これは『外』に向けて力強く放たれる、世間が求める佐野元春の『ロック』ではない。傷付き、そこから再生していく姿を描いた、哲学的な作品集だ。

 だから本作は『トータルアルバム』となった。ミニアルバムだよ、と本意ではないような強がりも含めて。

 

或る秋の日(受注生産限定盤)

或る秋の日(受注生産限定盤)

 

 

2019・9 だめなやつら福山旅行6

 汗だくになりながらカメラを手に福山城天守をぐるりと歩く。

「痛っ!」

 相棒の奇声。振り返ればきゃつは松の葉に頭をぶっ刺していた。おもろすぎて爆笑。

 収集しているお城メダルも買えた。ホテルで販売していた城郭復元写真集も買えた。ホクホク顔で城を後にする。

 そして商店街へ足を伸ばす。調べておいた児島書店さんへと向かう。

 

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 ここは素晴らしかった。角川の絶版文庫も多く、横溝正史の棚もあった。最近の私はブックオフでは刺激が弱い。やはり老舗の古本屋さんは血がたぎる。

「ああっ、あああっ!」

 

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 日頃から甲賀三郎、と呟いているので、神が引き合わせてくださったとしか思えなかった。改造社版の日本探偵小説全集二冊組みの箱付である。

 ちょっと値が張ったが、なかなか出会える本ではない。思い切って購入。私の顔が貧相で貧乏臭いオーラを醸し出していたのであろう。ご主人がオマケで春陽文庫を付けてくれたのが有難かった。

 ここの店主さんが気さくな方で、街のことを色々と教えてくれた(気付いたら一時間も話し込んでいた!)。

「福山ってグルメってなんですかね?」

「福山はこれ、といって無いんですよ」

「広島風お好み焼き、みたいに、広島県に吸収されるんでしょうか?」

「まぁ、昔の話、お役人の目を誤魔化すために、お弁当箱の上下ご飯とご飯の間におかずを挾む、というのがあるんですけどね」

 この前行った津山は『ホルモンうどん』を街で売り出し、これはもう結構広まっているB級グルメだろう。津山城の近くにホルモンうどんの店もあった。

 福山はその歴史を尊重して、ご飯とご飯の間に和牛のステーキか焼肉を挾む、というのはどうだろう。ギャルがインスタ映えを狙って、その福山の風習が脚光をあびる可能性もゼロでは無いはずだ。

 三人で長く話し込んでしまった。雨も降り出してきたので礼を言って次に向かう。

 お世話になった福山ステーションインをチェックアウトし、次の目的地へ。と言っても観光地ではなくブックオフだが(笑)

 

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 ここでは二冊購入。

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 出版芸術者の『ふしぎ文学館』シリーズは、私にどストライクなシリーズで、未読作家、吉行淳之介を買う。これはコンプリートしたい病がフツフツと(結構な巻数があるはず)

 そして吉村萬壱先生の『ボラード病』もタイトルに惹かれて買う。どんな話か想像もつかない。

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  そして次の古本市場へ。もう現代、この令和。ブックオフ古本市場しかチェーン店は無くなってしまった。

 十年前、街がこんなことになるなんて思ってもみなかった。配信の時代、断捨離の時代、そして一億総貧困の時代。

 この写真も十年後にはどうなっていることやら。介護施設に変わっているかもしれない。

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 そうして福山では最果てのブックオフへ。海が近いのか潮風が心地よい。思えば遠くへ来たもんだ。

 ここでは私のもう一つの秘密の趣味である専門書が格安で三冊ほど買えたので、本当に来た甲斐があった。

 そして二時。ようやく昼食。インターで尾道ラーメンを食す。ワシら、ラーメンばっかりかい!

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ンマーイ!(合唱)

 岡山まで帰ってきた。夕暮れ時、ここで私は相棒に提案する。

「金平、悪りぃ、岡山で途中下車してもかまへんか?」

「どこ行くねん」

「前から行ってみたかった古京文庫さんに行ってみたいんや」

「おお、ついでや。付き合うぞ」

 そうして行ってはみたものの。

「外出中!」

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 どこまでツイテいないのか我々は。前世で極悪人か何かだったのであろうか。

 しかしここまで来て帰るのも勿体ない。我々は少し離れた場所に停めてハザードを点灯させた。

 待つこと30分。

「なぁ、呉。こりゃ古本の買取か何かで時間かかってるんやろう。もうすぐ一時間になるぞ。諦めて帰ろうや」

「それもそうやな、残念やけど」

 私は名残惜しげに両手で目の横を覆って店内を恨めしそうに見る。絶対に良い古書店だ。ムードでわかる。

 私は駄目モトで横の自宅のインターホンを最後に押してみた。悪あがきもいいとこである。

ピンポーン

『はぁーい』

『外出してないやんっ!(寝てたんかい!)』

 店主は慌てて店の電気を点ける。

「いらっしゃい」

 まぁ結果オーライ。入れてよかった。

「はぅあ!」

 そこは桃源郷であった。探偵小説好きならもうメロメロのラインナップである。

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「あかん、軍資金が足りん。今度五万くらい用意して出直そ」

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 甲賀三郎掲載の雑誌『キング』などを購入。良い買い物ができた。

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 そうして岡山姫路間で最後の岡山のブックオフへ。ここまでくるともう互いに眠たくでヘトヘトであった。

 さぁ、この旅の途中、何度か話をした『我が妻との闘争』のコミカライズ版が進行中であります。

 年内には発表できる予定ですので、どうぞ皆様よしなに。

 そして私もノートに『タイムリミット』というお話を載せました。また、この手の短編が集まったら、短編集として一冊に纏めたいですね。

 ここで福山旅行編、堂々の完結。50を迎え、体力の減退を如実に感じました。次は途中に赤まむしをチャージした方がいいかもしれません。

 あくまで予定ですが、来年は相棒を『彦根城』に引き回してやろうか、と画策しております(笑)

 それでは皆様、次の活動報告までしばしのお別れです。皆様が健やかでありますように。

〜完〜

 当日最後の動画。

 


だめなやつら福山旅行3

2019・9 だめなやつら福山旅行5

 前日、下戸であるにも関わらず、ちょっと小洒落た店でキンキンハイボールを調子に乗って二杯も飲んでしまったので、その夜の記憶は曖昧であった。

「なぁ金平、ワシいびきかいてたか?」

爆音じゃ!

 友の目はマジでイカリング(怒りの最上級)であった。

「まぁそんなに怒るな。気を取り直して福山城行こか」

「みんなが城に行くの嬉しいと思うなよ」

 腰痛持ちの友はブツブツ言いながら付いてくる。気温は高く、少し歩いただけで汗が吹き出した。

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「おお!見えた見えた。素晴らしい」

「今回は山城じゃなくてホンマに良かったわ。ホテルから歩いて五分も最高やし」

 福山城天守こそコンクリート再建であるが、入り口に当たる伏見櫓、門は当時のまま残る貴重な遺構だ。

 本丸をぐるりと見渡す。そして城撮影の為に導入したニコンの一眼レフでバシバシ撮りまくる。

 じっくり味わいながら天守に向かう。そこで我々は信じられない看板を目にした。

ああっ!

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 なんと工事中であった。はるばる姫路からやってきて、この仕打ち。神よ、貴方は我々にどれだけの苦難を与えれば気がすむのですか。

「なんてこった。最上階から街を見わたそうと思ってたのに、なぁ」

「ん?」

 私は友の表情を見逃さなかった。振り向いた瞬間、きゃつは能面のような表情に戻したが、それまでは確かに微笑んでいたのである。

「お前、今喜んでなかったか?」

「暑いからな、5階まで階段で上がらんでもええやん」

「なんちゅう消極的なことを。頂上からの眺めが最高なんやないか」

「まぁ下調べしてないプロヂューサーさんのせいやな(笑)」

 ぐうの音も出ない。まさかこのタイミングで工事とは。がっくりしながら建物の奥を見ると

あ、ああっ!

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 私が集めている城メダル販売機があるではないか! ここでなんとか精神の均衡は保たれたのであった。

 私はホクホク顔で打刻機にメダルをセットする。これだけでも収穫であった。

 ここで福山城の感想を書き残しておこう。決して悪意でディスる訳ではない。愛のある意見だと思っていただきたい。

 これは街で何人かと話をしたことを含めて、のことだが。まず福山は駅前の真ん前にあるモールのビルが閉店したままになっている。

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 これがとても惜しいし、寂れた印象を旅人へ強烈に残す。そして市民はこの先に控える福山城400年祭に対しても『城ばかりにお金を使って』という意見が案外多いそうである。

 税金を城ではなく、駅前の活性化に使って欲しい、という意見が多いのだろう。

 市民が福山城にそれほど思い入れがない印象を受けた。それは朝の本丸でも感じた。天守に近づいて見ると、天守の真ん前に職員か業者かの軽四が駐車してあるのだ。

 仕方なく一枚撮ったが、絶好の角度に異質な軽四。歴史散策に来ているのに、福山城関係者はその辺の意識が薄いのだろうか。一般車は乗り入れできないはずだ。

 江戸時代の建物を写真に収めたいのに、その前に車を止める。姫路城、金沢城、熊本城ではまずそんなことはなかった。

『どうせコンクリートの再建だし』

 くらいの温度なのであろうか。それでも豪壮な伏見櫓、本丸門は貴重な建物である。

 地方創生に城は有効である。相棒と行った愛媛の松山城は賑わっていた(逆に宇和島城の市民の城に対する温度の低さは観光客数に如実に現れ、感じ取れた)。城を中心として街が盛り上げているところは活気があった。

 城ばかりに金を使って、という意見も否定はしない。だが平成を終え、令和の今の日本はどうか。

 どの街に行っても同じ牛丼屋、同じ眼鏡屋、同じ看板のコンビニ。同じ風景である。何が街の差を生むのか。それはその街特有の城、である。

 福山城内の寂れた感じ、30数年前に母親に連れられて行ったが、展示物は恐らく変わらぬままであろう。

 本丸には広場があるのだ。日曜には市民フリマなどを毎週開催すれば良い。城を動線とするのだ。このメルカリ時代、売りたい人はたくさんいるし、安く買いたい人もこの不景気時代にはもってこいだ。

『城に行けばなんか楽しいことがある!』

 と思わせるのだ。露天も出せば良い。そして福山城の建物はコンクリート再建だ。中央にある復元櫓、湯殿も閑散としている。

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 これも暑い日には建物前にミスト扇風機などを置き、湯殿の湯煙を演出する、とか。

 西端にはこれも寂れた鐘櫓が寂しく建っている。

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 これもどうせコンクリートなら解放して、二階に鐘を吊るすのだ。そして『愛の鐘』みたいな張り紙を添え、訪れる夫婦、カップルが二人で鐘をつき盛り上がる。みたいなことも楽しいではないか。少なくとも閉鎖したまま何もしないよりは。

 私の印象は『色々勿体ない』そして『城に力を入れていない』であった。

 なんか今宵は色々語ってしまったな。真面目か!

〜続く〜

2019・9 だめなやつら福山旅行4

 家庭も仕事も忘れ、好きな音楽を鳴らし、車中で創作談義、これからやりたいことを具体的に話す至福。

 そういった私のささやかな幸せを、繊細さのかけらも無い嫁さんのラインメッセージはぶち壊してくれる。

「アンタ、モテへんアンタがまさかとは思うけどな、この旅行、変な女と一泊旅行みたいなことと違うやろな。証拠を送ってきて。今すぐ送ってきて。わかったか」

 私は渋々ケータイを取り出すと、休憩している隣人にカメラを向ける。

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 そうして送信ボタンを押した。既読になったまましばらく待つ。せっかく送ったのに、返信もリアクションも何も無い。

ガン無視かい!

 まぁ嫁さんに変な胸騒ぎが起こるのも理解できるのだ。退会してしまって二度と会う術はなくなってしまったが、ジムで出会った『まゆゆ似』の彼女、結果論ではあるが、きっとお互い好意を持っていたことは妄想では無いはずだ。

 私が二度目の挨拶を出来なかったから、愛想を尽かされてしまっただけのことで。

 煩悩だ。煩悩の塊だ。私の脳みそは。

 気分を変えるために夜の街へ相棒と繰り出す。

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 駅周辺では福山城の遺構、舟入がきちんと整備されていて好感が持てた。

 

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 夜風が気持ちいい。

「なぁ、金平、レストランじゃなく、酒でも飲むか」

「おっ、ええな。でもお前、下戸なのに大丈夫か?」

「嫁さんに晩酌で鍛えられて、少しだけ強くなったんやで」

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 キンキンハイボールが格安だったので、ここに決定。そうして姫路から福山へ、車での長旅、ようやく乾杯。

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 酒を飲みながらここに来る前に寄ったアニメイトで、売れ線の漫画や小説がどんな感じなのか見てきた二人の反省会。

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「キラキラしてたなぁ」

「ワシらとは違うなぁ」

「何冊か買って研究しよか」

「取り込めるわけないやろ(笑)」

 ここで私は、この前行った大阪での文学フリマで感じたことを相棒に熱く語った。

「こないだ文学フリマ行ったんよ」

ツイッターで言うてたな」

「そこでな、本もそうやけど、売ってる人も観察してたんや」

「ほぅほぅ」

「で、座って下向いて本読んでる人おってな。ムッスーとした難しい顔で、文学少女で対話は苦手なんかもしれんけど、お客さんおらへんかったわ」

「ワシはわからんでもないけどな」

「で、おっさんのブースで見てたら気さくに話しかけてくれてな。ならこっちも『笑える作品あります?』って聞いたら『ウチらは笑かせた後、泣かせます』言うてドヤ顔できてな(笑)『じゃあ買います』って感じでな。作品もそうやけど『人間力』で売ってるなぁ、と」

「なんやそれ(笑)」

「だからワシも人間力磨いて、ブログとかツイッターで発信して、人柄でも買ってもらおう、と」

「なんかちょっと違う気もするけど(笑)まぁ文章力磨きながら人間力も磨けや」

 

 

 私はハイボール二杯で撃沈、この後何を話したのか、よく覚えていない。

「次の旅行は大浴場付きにしよな」

「そうやな、もう少し予算出してな、やっぱ旅行来たら大きな風呂やな。松江はその点良かった。宍道湖見ながらな。ユニットバスは窮屈やな」

 私が風呂を済ませて出てくると、相棒はお約束のゆるキャラを書き残していた。

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 さぁ、明日は待望の福山城攻めである。


福山旅行2

 

〜続きます〜

2019・9 だめなやつら福山旅行3

 ちんかすのような仕事に日々追われ、消耗しきっていた私に、一年に一度のご褒美、とも言える相棒金平との城&御当地グルメ&中古ショップ巡り。

 体力の続く限り赴いた地での散策は続く。快調に飛ばし、次は古本市場へ16時過ぎに着。

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 ブックオフ古本市場しか、もう元気がないように感じる。ここ五年の間にブックマーケット、ブックマート、その他地元オンリーの中古ショップは軒並み姿を消した。

 そりゃそうだ。街からCDショップ、新刊書店が消えているのだから。大量消費の時代は終焉を迎えた。今は年収300万以下時代、若者の断捨離、晩婚少子化

 中学校のクラスが14組まであった我々の世代とは価値観が違う。

 私が時折記す全国の中古ショップの写真も、数年後には貴重なものになっているかもしれない。

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 古本市場では佐野洋の短編集を買う。短編集は寝る前に一本読み、勉強するつもりでいつも買っている。

 そして自販機で『ルーマニアで人気』という謎コピーに惹かれ、ファンタを買う。これはライチ系の味になるのか??

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 陽も沈んできた。ラッシュアワーか、道路も混みだしてくる。

 

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 カラスが我々に向かって『アホー』と言った、ような気がした。誰がアホやねん! 私は言い返す。

 ここのハードオフではお宝に遭遇した。

「お、おい金平、このショーケースを見てみぃ」

「うわ、なんじゃこれ」

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 腕時計である。それも仮面ライダーの変身ベルトを模した本格的で重厚なウォッチだ。ダブルタイフーンの中が針になっている。超オシャレ。

 しかし値段を見ておったまげ、であった。

「くおぉ、これ欲しいけど高いなぁ」

「こんなもん買って帰ったら、また嫁さんに締め出されるど(笑)」

 友の助言はごもっとも、である。しかしこの時計、身につければモテるのではないだろうか?

 

「君の前で超変身したい」

 と、まゆゆ似の彼女に言えば、どうなるであろうか。進展するであろうか。ドン引きされるであろうか(笑)

「何ニヤニヤしてるねん呉、買わへんのなら行こか」

 私はお宝時計に別れを告げて店を出た。

 そうしてようやく本日のお宿、福山ステーションインに到着する。お城も近く、絶好のロケーションである。この距離ならば、ギリギリまで寝て、開城と同時に歩いていけるではないか。

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 カウンターに進むと、先客が先払いなので支払いをしている最中であった。我々よりも若い、工事業者のような制服を着た若い二人組であった。

 出張作業を終えたのであろうか、疲れた顔で受付をしていた。

「では一人一万二千円、お二人様で二万四千円頂戴いたします」

 受付の美形の女性が丁寧に応対する。そして我々の番だ。我々は今年でオン歳五十。先ほどの若者勢とは風格が違う。顔には年輪のようにこれまでの苦労が刻まれていた。

「大変お待たせいたしました。二名で姫路からご予約の呉様、お一人様三千五百円ですので七千円頂戴致します」

 そこで先に会計を済ませ、エレベーターに乗り込んでいた若者二人が、ドアの閉まる間際、鼻から吹いたような気配を感じた。

 軽い恥辱!

 私は貧乏旅を恥じながら、震える手で財布を尻のポケットからまさぐる。辱めを受けた心は手を痙攣させ、上手く財布が取り出せない。

 それもこれもケチケチな嫁さんのせいだ。他の亭主は『友人と旅行に行く』と言えば、三万くらいポーンと渡してくれるのではないだろうか。

 私は月二万の小遣いから旅行用にコツコツ積み立てをし、電子書籍の印税を足して、やっと一泊旅行できる境遇なのだ。

 なので財布に綺麗な万札など存在しない。

 支払いの七千円は、財布の中でシワクチャになった千円札を一枚づつ伸ばしながら、美人の受付お姉さんに手渡すのだ。一マーイ、二マーイ。

 ワシはお岩さんかっ!

 色々申し訳ない感じで部屋のキーを手渡される。五十になってこの旅の内容。若い頃の二人は『お互いビッグな作家になろうな』と目を輝かせて青春を語り合ったというのに。

 無言で通路を歩く。そして肩を落としながら二人して部屋へ逃げるようになだれ込んだ。

「狭っ!」

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 本当にベッドと机とバストイレのみであった。でも文句は言えない。このような格安料金で素泊まりを提供して頂けたのだ。

 我々のような貧乏旅行者にも優しく出迎えてくれた福山ステーションイン、最高でした!

 

※旅の終わりに配信したツイキャス その1


だめなやつら福山旅行その1

 

〜続きます〜

2019・9 だめなやつら福山旅行2

 我々の旅は事前に調べておいた中古ショップを、制限時間内に全て回る、というとてもストイックな旅であった。

 以前は『酒井法子のファーストを買う』『松本典子のオリジナルアルバムを買う』『セガサターンのプラドルCDをコンプする』という確固たる目的があったが、今はそのどれも達成してしまい、明確な目的は無くなっていた。

『ただそこに店があるから』

 みたいな尾崎豊のような世界観で旅を続けているのであった。

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 13時49分、福山で一発目のお宝倉庫。

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 どこの県のお宝倉庫も、大体こんな感じで、怪しい石像がお出迎えしてくれた。ここもレトロゲームが充実していた。ショーケースの中には、私の財布の中身ではとても対応できないお宝が陳列されており、ただ見て楽しむだけの店内散策である。

 ウインドウショッピングはオバはんだけの楽しみではない。親父二人旅でも十分楽しいのだ。

 この旅費も、相棒金平が表紙絵を描いてくれた電子書籍がバンバン売れてくれたことによる収益金で賄われているので、きゃつには足を向けて眠れない。

 

もしも宝くじが当たったら (呉工房)

もしも宝くじが当たったら (呉工房)

 

 行動は迅速に。ポイントを押さえたら次の店へ。

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 14時28分ハードオフ着。姫路を朝の8時半に出て4軒目。移動中は佐野元春杉真理浜田省吾松田聖子辺りを流しながら、お互いの創作談義に花を咲かせる。

 旅でのこの創作談義が私には非常に重要で、奴に宣言しておくことによって自分に締め切りを課し、これまでにいくつもの作品を形にしてきた。

「それはそうと呉」

「なんや」

「俺の知り合いがオマエのツイッターを見ているんやが、例のジムのまゆゆ似の彼女」

「ほぉ」

呉さん、あれは人としてどうなんですかねって聞かれてな」

「ぐおぁ」

「実際どうなんや、オマエ的には」

「作り手としてよ、嫁さん一筋に尽くしました。他の女性には目もくれませんでした。波風のない幸せな一生を送りました。おしまい。こんな物語、誰も読まんと思うわけよ」

「ほぅほぅ」

「だから俺は物書きの端くれとして、自分の内側から沸き起こる衝動をやな、スポイルせずに昇華させるべきではないか、と」

「ただの女好きやないかい!」

「違うわい!文学衝動じゃい。でもな、足の見える半パンから無駄毛一本もない手入れの行き届いた生足、体にフィットしたピチピチの半袖シャツ、同じ時間、同じ空間で同じ音楽を爆音で聴きながらインストラクターの動きを皆で真似るエアロビの一体感。大人のお遊戯よ。これは好きになってしまうよな」

「オマエ女性のどこ見てるねん」

「ここで降りて歩いて帰りたいんか!」

 誘っておいて無茶苦茶である(笑)

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 険悪なムードを察し、それに『まゆゆ似』の彼女への淡い恋心に対して説教をされたくないので、私は慌ててラーメン屋に車を向けた。

 美味しいものを食べればオッサン二人でも極上の笑顔。ンマーイ!

 腹ごしらえも済まし、太鼓腹を叩きながら店を出る。続いては姫路にはチェーン店のない『ジャンク堂』という店へ。15時23分着。

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 ここは家電、フィギュア、古本、ゲーム、CDを扱う、桃源郷のような店内で、我々の為にあるような店であった。

 熱いまなざしで店内を物色。

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 旧ライダーのフィギュアと、セガサターンのガビガビ実写ムービーが期待できそうな麻雀ソフトを購入。これはおっぱいも期待できそうなジャケットである。

 90年代のアダルト女優ぽい娘たちが並んでいる。子供向けのゲームマシンから表示されるおっぱいというものは、何故あれほどまでにいやらしいのであろうか。当社比で5割り増しくらいいやらしい。

 たとえそれがビットレートの低いガビガビムービーで、乳輪のフチが四角ドットであろうとも。

「我が生涯に一片の悔いなし」

 心の中で拳を天に突き上げながら、娘くらいの歳の可愛い女の子のレジ打ちタイムを、恥ずかしさを我慢しながらひたすら耐えるのであった。

 

〜まだ続きます〜

2019・9 だめなやつら福山旅行1

 2019年の9月10・11日、前回の日帰り津山旅行から久しぶりの再会を果たした二人。

 そう、平日に有給を取っての福山一泊旅行である。

 ホテルはスマホで事前に予約してある。こういう旅は、一年に一回くらい、息抜きと骨休めで行きたいものだが、相棒が収入の不安定な漫画家という自由業なので(笑)きゃつの本が売れてくれなければ、旅費もキツイことになってくる。

「食費を切り詰めてワシの城巡りに付き合わんかい!」

 と言いたいのを、喉元でグッと堪えているのである(笑)。

 

※宣伝!

 子供の頃は自分が50になったら、財布に札束をうならせて、気軽にキャバレーとかに行けるものとばかり思っていた。

 実際は違っていた。小遣い制は厳しく、いつもピーヒャラリーである。

「アンタ、わかってるよな。無駄遣いしたらあかんで。アンタの浪費癖のおかげで、我が家は毎月赤字や。ETC許さんで。下道でのんびり行きな」

 のんびり行きな、でそのような過酷な要求を相殺できるとでも思っているのだろうか? 移動距離は姫路から広島県である。新幹線でも、まぁまぁかかる。

 そのくせ嫁さんは、ママ友と来月サンフラワーに乗って九州へ温泉旅行にいけしゃあしゃあと行くのである。自分に優しく、夫に厳しくなのだ。

「アンタが心入れ替えてくれな、老後までに二千万貯まらへんで」

 もう私は考えることを放棄したかった。ガス抜きをせねばメンタルがヘシ折れてしまう。ハムスターが同じ状況に陥ったら、五臓六腑がストレスで破裂しているに違いない。

 約束の時間に金平の家へ迎えにいったのが8時半。旅の始まりである。

「あれ? 高速乗らへんの?」

「すまん、いろいろ貧乏旅でな」

 そうして一般道をひたすら西へ、西へ、車を走らせるのだった。

 粘りに粘って岡山、ここでお宝倉庫を目視で確認してしまう。旅行の日程に組み込まれてはいなかったが、店に飛び込まねば、私のストレスは心に沈殿したままだ。

 気分を変えるために駐車場へと滑り込んだ。

 

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 お宝倉庫は楽しい。ブックオフとはまた違った楽しさがある。店によってはレトロゲームが充実していて、音楽CDも多く取り揃えている店が多い。

 景気付けに一発目、持っていない浜田省吾のシングルCDを購入。

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Dream Catcher

Dream Catcher

 

 ミニアルバムである。新曲1曲とリメイク4曲。ハマショーも我々二人のドライブには欠かせない音楽だ。

 ここで上機嫌になった私は、どうせ嫁さんもフェリーに乗って贅沢旅をするのだ、我々が広島まで下道で我慢する必要などなかろう、そんな狂った要求はブッチしてしまえばいいのだ。と、岡山から高速道路に乗った。

 やっぱり早い! 早い!

 

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 13時過ぎに、福山の一軒目に到着。天気は快晴。暑いくらいだ。汗が流れ落ちる。

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 お勉強のために松本清張の短編集と、ファミコンのレトロゲーが安かったので購入。

 さぁ、親父二人旅の始まりだ。

 

〜何回か続きます〜
 

福山城周辺

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 勝手に福山城旅行を計画している。相棒の金平を城好きにするため、引き回してあげるのだ。

 グーグル先生に聞くと、城周辺には結構我々の好きなお店がある。中古ショップは激減している。その姿をとどめておくのも我らの使命だ。

 10年後は完全にネット通販の時代となり、リアル店舗の中古ショップは『何それ?』と若者に言われてしまう時代が来るであろう。

BOOKOFF 神辺店 〒720-2122 広島県福山市神辺町新湯野3−39−6

開放倉庫福山店 〒720-2124 広島県福山市神辺町川南413−1

ハードオフ福山駅家店 〒720-1131 広島県福山市駅家町万能倉344

ジャンク堂 駅家店 〒720-1133 広島県福山市駅家町近田459

古本市場福山春日店 〒721-0907 広島県福山市春日町1丁目3−20

ハードオフ福山曙店 〒721-0952 広島県福山市曙町3丁目30−11

・(有)古川書店 〒720-0812 広島県福山市霞町2丁目3−23

児島書店元町天満屋ビル店 〒720-0063 広島県福山市元町1−12

BOOKOFF 福山野上店 〒720-0815 広島県福山市野上町3丁目5−3

古本市場 福山曙店 〒721-0952 広島県福山市曙町5丁目22−46

松永書店 〒729-0111 広島県福山市今津町3丁目3

BOOKOFF 福山松永店 〒729-0104 広島県福山市松永町6丁目10−48

 漏れているかもしれないが、簡単に検索をかけただけでも、こんなにヒットするぞ! 金平。こりゃ一泊二日だな。

 五層の天守を誇る福山城

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 天守第二次世界大戦の空襲で惜しくも消失。しかし手前の三層櫓である伏見櫓は木造で現存する貴重な遺構だ。

 昭和まで現存していたので、古写真は比較的多い方である。

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 最上階に改変は見られるが、基本的に破風等も含めコンクリートで再建されている。

 生きているうちに一つでも多くの日本の宝『城』へ、行かねばなるまい。なぁ金平(笑)