呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

祝! 甲賀三郎『劉夫人の腕環』刊行

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劉夫人の腕環

 

 大陸書館さんから甲賀三郎の短編集が刊行された。復刻ではなく新規に編まれた短編集である。検索すると長隆舎書店「劉夫人の腕環」(1942)という単行本がヒットする。収録作品は違うようだ。当然持ってはいない(欲しいが)(笑)。

 

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 九本も収録されている。ありがたい。探偵小説好きなら、絶対にマストの一冊であろう。

 大体、甲賀三郎の復刻など、二十年くらい前に大手出版社が3〜5巻本の選集を出していなければならないくらいの重要な作家だ。

 江戸川乱歩と共に、この甲賀三郎大下宇陀児が切り開いた、日本の探偵小説の歴史を振り返るとき、乱歩、横溝が何度も蘇るのに対して、あまりにも不遇すぎる。

 面白くないから? 作品が古びてしまっているから? 採算が取れないから? 甲賀三郎の復刻事業は、日本ミステリ界の良心であろう。

 私は待った。昭和、平成を飛び越え、とうとう令和まで来てしまった。どこの出版社もガン無視である。誰も手をつけない。傑作選すら出る気配もない。大下もそうだ。

 多少風俗的に古びてしまっているかもしれないが、甲賀三郎大下宇陀児の、乱歩に比べ量産された作品群は、それでも作品毎に日本ミステリ黎明期のトライアンドエラーの軌跡がうかがえる貴重な足跡である(エラー判定を含め愛していきたい)。

 通俗など低俗だ、本格こそ復刻する意義がある、と編集部でしかつめらしく議論されているのかもしれないが、元来、通俗イコール大衆受けを狙った作品、なのだ。成り立ちからして面白くないわけがないのだ。偉い人にはそれがわからんのです

 冒頭の『支那服の女』など、ストーリーの着地地点が早い段階で分かったとしても、饒舌なほどの当時の女性の社会進出描写、女給や踊り子などの風俗、女性の社会的地位が垣間見えて、とても興味深いテキストだ。

 大陸書館さんには潤って欲しいなぁ。そうして甲賀三郎傑作選をシリーズ化して欲しいなぁ。

 元気玉じゃないけれど、私は両手を天にかざし『みんな、オラに少しだけ小遣いを分けてくれ』と念を送りながら、このサイトに誘導し、一冊でも多く売れてくれることを願うのみである。

 

劉夫人の腕環

 収録されている掲載誌を持っているので、私もテキスト入力の勉強をさせて頂きながら楽しもうと思っている。

 

古畑任三郎DVDコレクション2『笑える死体』

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 デアゴスのマガジンとDVDがセットになったシリーズの第二弾。

 エピソード3『笑える死体』を観た。今回は犯人役に古手川祐子である。若い! イイ女(笑)。

 

 初っ端から真相に触れていきますので、未見の方はご覧になってからまたお越しください。

 本作は同じ倒叙テレビシリーズのコロンボのフォーマットに沿った、まず犯行シーンを丁寧に見せてから古畑登場、という流れ。

 1回目の試聴では感心した。良くできてるなぁ、と。完璧な逆算の物語、である。ミステリにおいて、神の視点でも無い限り、過ぎ去った事件に対して、決定的な証拠、というものは難しいものである。

 その決定的な証拠は冒頭、古手川祐子と被害者が自宅で食事をしているシーンで被害者が思わせぶりに天井をチラ見して、視聴者に伏線として提示している。

 しかしこれは【推理】という形とはちょっと違う、視聴者を感心させるためのショー的な装置、であり、終盤古畑が気付かなければ(気付かせる為に紙吹雪をテーブルに落とす用心さ)機能しないものである。

 古手川祐子の行った犯罪は【正当防衛】である。帰宅時にストッキングを被った強盗が室内に居た為、バットで咄嗟に頭を殴って殺してしまった、というもの。

 被害者は別の女性と婚約してしまった。プライドの高い精神科医古手川祐子は、踏み躙られた気持ちが殺害動機へと繋がり、自分の誕生日を祝いに訪れた被害者に罠を仕掛ける。

・被害者の不意のサプライズ訪問、古手川祐子が帰宅するまでにこっそりと誕生日パーティーを準備していた。玄関先、クラッカーで祝福、ワイン、ケーキ、手料理、オーブンには鳥の丸焼きも用意していた。

古手川祐子は窓辺に立ち、泥棒を見た、という嘘をつく。見てきて、と被害者に頼む。

・被害者は表に出るが、当然泥棒などいない。その時、古手川祐子は玄関の鍵を閉める。締め出された被害者はドアホンを押すが返事が無い。

・その間に室内では古手川祐子はシャワーをひねり、風呂場に入っているように偽装する。

・締め出された被害者は、金属音を聞き振り返る。裏口のドアが開いている。裏口に周りベランダから侵入する。古手川祐子は夜のベランダにわざとストッキングを干す。

・よじ登ってベランダに侵入した被害者は、持ち前の性格から強盗を装い、ストッキングを被って音のする風呂場へ向かう。

・驚かすが、当然風呂場には誰もいない。振り返るとバットを持った古手川祐子が。ストッキングを脱ごうとする被害者の頭部を殴打。

 ここまで見てどうだろう。ストッキングを被らなければどうするのだ、という問題は被害者が被り物をして仲間を喜ばせる性格、という証言を得ている。

 そして三谷幸喜流のユーモアとして、脱ぎかけのストッキングの変顔、というギミックも効いている。それを検証するために古畑がストッキングを被ってタバコを吸えるのかどうか、のシーンも笑いを誘う。

 自宅に押しかけて料理をし、古手川祐子が料理が苦手なことを確認する。最初の現場検証でオーブンの中に入っていたものを引っ掛けで尋ね、正解が出なかったことで疑いを持つ、というのも効果が出ている。

 そして終盤、古手川祐子と被害者を結ぶ線が、医者と患者の(それも盗癖で診察という周到さ)関係だけで、何も無い、という言い分をビジュアルでひっくり返す装置、名前入りのくす玉で、ぐうの音も出ないところを視聴者に共感させる手際は見事である。

 が、私もすれっからしのミステリ読み。感心しつつも重大な欠点に気付いてしまった。純粋に楽しめない悲しい性である。

 天才呉エイジの(笑)気付いた点、泥棒がいる、と嘘をついて表に出させた。そこから描いた地図通りに完全犯罪は行われた、とはなっている。ストッキングを被ればそれは強盗だと思う。

 しかし、だ。締め出されてドアホンを押し、裏口に回る。何故裏口に回る。玄関から入れば良いではないか。サプライズで留守中に侵入したのではなかったのか? 被害者は【鍵を持っていた】のである。

 舌打ちして玄関前に立ち尽くす被害者。室内に入れないで困ることは何も無いのだ。そこで来た通りにまた鍵で侵入すれば良い。が、そうなるとストッキングを被れず、物語が根底から崩れる。

 ユーモア脚本家の三谷幸喜にそこまで求めるのは酷であろう。

 ワインで乾杯する室内のシーンで、ポケットから合鍵を出しテーブルの上に置くシーンと、締め出された時に『しまった鍵はテーブルの上だから正面から入れないや』というカットを入れておけば、本作は完璧な物語として仕上がった。

古畑任三郎DVDコレクション1『動く死体』

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 定期購読した本シリーズ、隔週刊行ということで油断していたら、もう次号がポストに入っていた。

「こりゃピッチを上げないといかんな」

 ということで視聴ペースを上げた次第。

 犯人役は堺正章、歌舞伎役者である。

 老婆をひき逃げしてしまった中村右近堺正章)は、目撃された警備員、野崎(きたろう)に口止め料を払い、隠蔽し通せたと思っていたが、良心の呵責に耐えられなくなった野崎が自首を決意、右近に口止め料を返し、出頭しようとしたところを口論となり揉み合い。

 野崎は突き飛ばされ、テーブルの角に後頭部を激しく打ち付け、死亡してしまう。ひき逃げした時点で人生は狂っていたのだが、それを隠したことによって、更なる悲劇に繋がってしまった。こうなれば平穏を守るために罪の上塗りをせねばならない。

 楽屋に野崎の死体を置いたまま、右近は演目を何食わぬ顔で演じ切り、深夜、隠蔽工作に取り掛かる。

 ここからはトリック等に触れるため、未聴の方はご注意を。

 倒叙物で犯人は最初から分かっているが、倒叙ものの特色として、秘密を抱える犯人に感情移入しがちになるものだ。

「あなたは嘘ついてる」

 いきなり古畑が右近に詰め寄る。『えっ、もうバレたの?』と見ている方はドキドキする。

「見た人もいるんです」

 隠蔽工作中に見られたのか? と思って引き攣った顔のままの右近同様、見ている方の鼓動も早くなる。

「昨日もクイズ番組に出てましたね」

 右近同様、胸を撫で下ろす。この時点で古畑は右近を疑っている。ミステリ慣れしている方なら冒頭の二人が出会うシーンの会話で既にピンと来ているはずである。

「後頭部を打ち付けて亡くなられてます」

「どこから落ちたの」

 後頭部打撲しか言ってないのに、落下を言い当てているのだ。偽装工作の方である。犯人の心情として落ちたことにしたい、そう見せかけたい心理が作用しているのだ。ミステリ慣れしていない一般の視聴者が感心する部分である。

 捜査が進行する中、猫を探しに天井へ登った野崎が懐中電灯を持っていないことに不審を持った古畑は、聞こえるように懐中電灯の重要性を右近の前で説く。

 焦って楽屋を一人確認している右近の元へ、入口からノック。古畑が楽屋を訪れる。その要件は「歌舞伎のチケットを一枚取って欲しい」という全然関係のないもの。

 名探偵の条件というのは個人的に、しつこく嫌われるようなことを能天気に平然とやる。ことだと思っていて、その点でも本作は私の趣味に合致する。

 ひき逃げはともかく、自らの地位を守るために罪の上塗りで揉み合いから予期せぬ事故で殺人を犯してしまった右近に哀愁と同情を感じる。

 右近は楽屋に隠しておいた死体を舞台まで引きずり、すっぽんと呼ばれる地下から迫り上がる機械で壇上に死体を置き、死亡時刻を誤認させるために腕時計を床に打ち付けて破壊した。これは早々にフェイクであろう、と古畑に気付かれるのだが。

 古畑の推理ポイントは。

・すっぽんは地下へ下げてあったのに、死体発見時、すっぽんは上がっていた。

・犯人は上げ方は知っていたが、下げ方を知らなかった。

・演じているとき、上げ方は見ているが、下げ方は舞台の上なので下げ方の操作を見ていない。

・操作は劇場関係者しか知らない。

・それを故障と思い込み、修理を依頼したのもおかしい。

・下げる方法を知らない者が犯人。つまり右近だ。

 二人の丁々発止のやり取り、犯行現場で茶漬けを食う意味の味わい。など、名作と呼んでもいいだろう。

 ここからは名作にケチをつけるのではなく、私が犯人だとして古畑にどうやって言い逃れするか、蛇足パートである。

 古畑の推理は絶対唯一のものではない。すっぽんが下がっていたのに死体発見時上がっていた、を根拠とするのなら、そこを言い通せば難なく崩すことができるのだ。

 野崎は右近に猫の駆除の言いつけを守り、地下通路から舞台へ上がる時、横着をしてスッポンでワープしたのだ、と言い切る。

 ここでギリ、劇場関係者しか操作方法を知らない、という縛りが活きてくるのだが、野崎も当劇場の関係者である。部外者ではない。外国製のすっぽんが導入された時、警備の問題上、設置に立ち合ったんじゃないんですか? と犯人は古畑に言い切れるはずである。

 そうすると野崎が自分で階段を使うのが面倒だから無人の舞台ですっぽんを使って上がっても不自然ではないだろう。役者でもないのに使うな、と怒る人は誰もその場にいないからである。

 懐中電灯の有無も、私なら楽屋で鏡を前に紅を引きながら。

「猫に勘付かれないよう、静かなすっぽんで昇降し、天井のすのこに上がって、館内の非常口灯の光だけを頼りに猫に近づこうとしたんでしょうかねぇ、野崎は。職務熱心なことです」

 と顔色変えず言い切れば、古畑も確証がなく、自分の懐中電灯を楽屋に置いて心理的圧迫を仕掛けてきたくらいだから、すっぽんが上昇したまま、というのは決め手だったはずである。

 そこを切り崩せば犯人に勝機はあった。

 ここまで難癖を普通の視聴者は付けないでしょうけどね。色々言ったが、演技、心理戦含め、傑作に位置するエピソードであることは間違い無いだろう。

古畑任三郎DVDコレクション1『死者からの伝言』

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 デアゴスティーニ古畑任三郎DVDコレクションを定期購読してしまったぁぁぁ!

 

 コロンボの形式、先に犯人が分かっていて物語が進む形式、これを倒叙物と呼ぶのだが、これが個人的に大好物で、木々高太郎の提唱した【探偵小説芸術論】この完成形に想いを馳せた時、この倒叙形式を突き詰めればなし得るのではないか、と考えてみたりすることもある優れた形式なのである。

 言うだけでなく自分でも実践してみたので、興味のある方は私の倒叙作品も読んでね(芸術論など遥か高みで恐縮ですが)

 

 さて、このコレクション、ブログで紹介するのはディスク物なので『だめなやつら』かな、とも思いましたが、ミステリですし、冊子も付いているので、このブログで紹介していこうと思っています。

 実は古畑シリーズ、ちゃんと観たことなかったんですよね。ブログやツイッターから、どんな感じのものなのか、情報としては知っていました。それに脚本は三谷幸喜。【真田丸】大好きでしたからね。期待も高まります。

 本編はテレビシリーズということもあり、一本45分の作品のようです。コンパクト、で無駄なく一発ネタで毎回勝負する作品のようですね。

 そして犯人役が毎回豪華ゲスト。これもコロンボに倣ったのでしょうが、こういう企画こそ、今も作られねばならないものでしょう。役者、脂の乗った演技、際立つ個性、贅沢な娯楽ではないですか。テレビならでは、テレビでしか出来ない企画でしょう。ユーチューブに押されているテレビ業界、本作のような企画だけでワクワクするようなものを作り続けてほしいですね。

 第一回目の犯人は歌姫、中森明菜。薄幸の才人ですよね。画面の明菜ちゃん、若い! ザ・ベストテン世代ですからね。あの頃の明菜ちゃんにまずトキメキます。

 

 ここからは核心に触れますので、未見の方はここでお引き取りください。

 本作のトリック、不慮の事故を装った殺人です。観ながら何かイチャモンを付けてやろう、という気満々でしたが、大きな傷もなく、さすがの三谷幸喜です。

 

 本作は少女漫画家の中森明菜が担当編集者に遊ばれて、動機が復讐の事故に見せかけた殺人という形。

 漫画家の住まいは豪華な洋館で、地下室に資料庫として大型の金庫が備え付けられている。金庫と言っても銀行に見られるような部屋のようなものだ。

・漫画家と編集者は、それぞれ家の鍵を持っている。

・以前にも勝手に重い扉が閉まり、その時は一緒に居たので助けることができた。

・死後三日は経過している。中森明菜は一ヶ月前に来たのが最後だ、と古畑に証言。

 嵐の夜、古畑と中森明菜のやり取りで進みます。事故で押し切るならともかく、館の鍵を持つのは二人だけなので、まず鍵の持ち主が疑われても仕方がないか、と考える。

 殺害時、中森明菜は閉じ込めてダイヤルをグルグル回すので、その辺で露見しないか、とも思ったが、館の持ち主なので指紋が残るのは当たり前、問題は相手が死にさえすれば良いのだから、ここは何とでも言い逃れができる。

 決定的なポイントは二つあった。一つは停電して明菜が夜食に料理を振る舞うシーンで、冷蔵庫の卵を躊躇なく使う。これに対して古畑が一ヶ月前に来たのが最後だと言っていたのに、普通の感覚なら一ヶ月前の卵を使わない。イコール数日前に来ていて、卵が新鮮なことを知っている、というもの。

 もう一つは金庫内に被害者のスリッパが片方なくなっていたこと。これは飼い犬がイタズラして片方咥えていったから。当日は雨で金庫内に犬の足跡はなかった。なので殺害時、犬がいた。ということは飼い主、中森明菜もいた、というもの。

 これで観念して自白、という流れ。

 頭を真っ白にしてみれば、ウォー、面白かったぁ。となる。物凄く上質な娯楽作品だ。ここまでのレベルでミステリとテレビ娯楽を融合できるのは三谷幸喜ならではだろう。

 しかし私もミステリはまぁまぁ読んでいる。この場で古畑に尋問されたら、難なく切り返すことはできる。

 一つ目、卵の問題、これを指摘されたらなんと返答するか。それはこうだ。

「一ヶ月前には卵はなかった。不慮の停電で料理を作る羽目になったが、冷蔵庫を開けてみれば使い切ったはずの卵が補充されている。これはきっと不慮の事故で亡くなった編集さんが三日前に入れておいたのだな、と思ったから躊躇いもなく使えた」

 というもの。完璧な言い訳だとは思いませんか? 私の場合、気が弱いのできっと目は泳ぐと思いますが(笑)

 そして決定打の二つ目、金庫内にスリッパが片方しかなかった。これもすれっからしのミステリ読みの私なら完璧に言い逃れできます。

「きっと編集さんは資料を探すうちに、重たい金庫の扉が閉まっていくのを離れた場所から確認したんだと思います。そして咄嗟につっかえねば、と判断したのでしょう。スリッパ飛ばしをして扉にかまそうとしたのです。しかしスリッパは扉をすり抜け、閉まってしまったんでしょうね。部屋の端にあったスリッパは、私が気が動転して被害現場を見ている横で、気づかぬうちに愛犬が咥えて別の場所に咥えて歩いた。だから金庫内になんの足跡もないんでしょうね。編集さんのご冥福をお祈りいたします」

 こう言いますね。

 でも、ここまで捻くれて難癖を付ける視聴者もいないと思うので、マイナス要素として捉えないでくださいね。本作をディスる気は全くありません。物凄く楽しめました。おススメです。

 興味を持たれた方は、ぜひ上のリンクからお買い求めくださいね。そうするとAmazon様から貧しい私に紹介料としてお一人様、二円か三円、チャリンチャリンと私の財布に入りますので藁にもすがる気持ちでお願いしながら筆を置きます。次はマチャアキの回でお会いしましょう。

謹賀新年

 あけましておめでとうございます! 2022年無事に迎えることができました。

 昨年末はギリギリでしたが、なんとか毎年恒例になっている我が妻との闘争のシリーズを、途切れさせることなく出すことが出来て、ホッとしております。

 今のところ、前作『ワガツマレザレクションズ』の時の【星一個】の悪夢に見舞われることもなく(まだダメージ受けとるんかい!)良い感じで受け入れて貰えているようであります。

 

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 一年の計は元旦にあり。今年の抱負をとりとめもなく語ってみましょうか。まず、昨年は電子書籍を三冊出せました。

 今年もワガツマシリーズと、あとオリジナルで一冊、最低でも二冊は出したいですね。まだプランは何もないですが。でも一年に三冊って、サラリーマンしながら四ヶ月に一冊でしょ? やってないようで頑張ってたんですね。偉い偉い。こんな偉い私に街角で痴女との出会いとかないものでしょか。

 あと読書、理想は寝る前に短編を一本でも読んでから一日を終えたい。会社から帰ってダラダラとスマホを見て、例えばショートムービーを選択して、可愛いお姉さんのボーリング動画とか、パンツが見えそうで見えない、そげなことで一喜一憂する大人なんぞには決してなりたくはない(なっとるやんけ!)

 今読んでいるのは曽野綾子。一本目の『ビショップ氏殺人事件』を読み出したのですが、一本目の表題作からびっくり。冒頭からド本格じゃないですか。

 

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 やはり吸収していかねば頭の回転が止まると思うのです。

 あと、これは実現できるかどうか分かりませんが、新年から何買っとるねん! という本が届きました。

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 動画配信をね、やってみたいな、と。iPhoneあれば撮影できると思うし、それというのも、私が好きなチャンネルで、延々と、自分が好きな事をやっているシーンを映し、そのバックで特撮のBGMがバンバン流れているチャンネルがあるのですが、怒られないのかなぁ、とも思いながら、観ていて面白いし燃えるし、後ろがフラットになる軽四ありますので、特撮のBGMを流しながら車中泊&執筆風景をお届けする創作チャンネル、みたいなやつ。

 長年避けてきた顔出しの問題は、コロナでマスクが当たり前になったから、半分隠してりゃ大丈夫か、と。会社が厳しいので、連載していた頃から副業と取られないよう気をつけてきました(給与以外の収入は、これまでも別で税務署に行っていました)。

 まぁ振り返ればですね、私が単行本を出せて全国連載できた人生を歩めたのも、マックがあったからこそなんですね。

 文章に限らず、昔から私をウォッチしてくださっている方にはご承知かと思いますが、私は決して小説家、などではなく、表現者の部類に入る人種だと思うんですよね。嫁さんに怒られる話を皆さんに聞いてもらいたい(小説)一人で多重録音したアカペラをバカペラと称して皆さんに聞いてもらいたい(音楽)当時絶滅寸前だったファミコンソフトを探し回る旅で、みなさんと実況で興奮を共有したい(8bitNOW)ホームページでは4コマまんがをアップしたりもしていました。

 ぶきっちょなので、テクノロジーの力を借りて表現し、隣にいる人を喜ばせてみたい。これが私の根幹だと思うのです。

 その延長としての動画配信。収益化できたら尚嬉しい。小遣い、印税、第三の柱ユーチューブ収入!(笑)

 あとはこっそりと復刻事業の勉強も。

 なんにせよ、ダラダラと目的もなくスマホで娯楽を享受するだけの一年にはしないでおこう、と。これだけは守っていきましょう、と。自戒を込めて。

 それもこれも、私が何か表現をして、受け止めてくれる皆さんが元気でいてくださらないと、何も始まらない話でございます。

 今年も私と遊んでやってください。本年もどうぞ、よろしくお願い致します。

神風が吹いた

 おありがとうございます。全国区の雑誌に連載していたお陰で、マックを買い替えの際、私の境遇を憐れんで、読者の方がお古を譲ってくださることがある。

 今までに何度か経験している。それを私は『神風』と呼んでいるのだが、本日また吹きましたよ。その神風が。

 ネットで知り合った方とは滅多に会わないようにしているのですが、本日のお相手はTwitterで十年来のお付き合いの、松平竹千代殿なのでありました。

 

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 白鳥城の近くのコンビニで待ち合わせしまして二十分ほど。お礼の日本酒をお渡しし、感動の対面。ブログではキリスト教看板ウォッチやら、鉄塔マニアぶりを見せていたので、怪しい人物をイメージしていたのですが、ご本人は企業の役職者か校長先生のような貫禄のある紳士で、期待を大きく裏切るものでした。

 私は逃げるように(笑)お古のマックを抱えて頭を何度も下げながら帰るのでした。

 

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 この内容、十分現役ではないですかっ! こ、コイツ、動くぞ……。

 マイルームにはまともなウインドウズ環境がないので、メルカリで騙し討ちにあった画面バキバキのウインドウズ10ノートがあるだけなので、ここはブートキャンプで動かそうかな、と。

 

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 ガラクタ箱を漁ってみると、ウインドウズディスクは見つかったのだが、Mojaveではウインドウズ7のブートキャンプサポートは無いらしい。

 そのことを呟くと集合知Twitter。たちまち解決策の助言を頂けました。

 しばらくいじくり倒そうと思います。連載していた効果は大きい。優しい読者の皆様、皆様のために、面白い話を書き続けていく所存です。いつもありがとうございます。

アマゾンの甲賀三郎の本

 アマゾンで【甲賀三郎】と検索してみたら、見慣れない画像がヒットした。

 

 

 どこのどなたかは知らないが、甲賀三郎の復刻はありがたい。読み放題対応も助かる。販売価格は500円であった。

 

 収録作品を紹介しておこう。

・従弟の死〜松村博士の手記〜

・拾った和同開珎

・気早の惣太

・惣太の経験

・惣太の喧嘩

・惣太の幸運

・惣太の受難

・惣太の意外

・女を探せ

・原稿料の袋

・夜光珠を綾る女性

・恋を拾った話

・黒衣を纏う人

 

 青空文庫からのコピペではないところは好感が持てる。ブックオフで手に入るような作品でもない。レアな作品だと言えるだろう。

 編者が丹念にテキスト打ちをしたのだろうか。それならば大変な労力だ。500円の定価は妥当であるし、良心的だろう。読み放題対応なのも親切だ。

『恋を拾った話』などは、とても良質な短編である。オススメしておこう。

 個人で入力、校正ならば相当時間がかかったことだろう。目次でいきなり和同開珎が和同開【珍】になっている。もし甲賀三郎の業績を広めたい、という高い志で取り組んでおられるのならば、これくらいの誤植でめくじらを立てずにおこう。(※追記 珍の字で正しいようです。赤っ恥でした(笑))

 そうして私の心情も吐露しておこう。正直言って『羨ましい!』私もやりたい。いや、死ぬまでにやりたい。採算度外視で、次の入力用の古書代の足しに(高いのだ)なるくらいの価格設定で不遇な巨匠、甲賀三郎を広めたい。

 

 

佐々木俊介『魔術師・模像殺人事件』を読む。

 佐々木俊介『魔術師・模像殺人事件』収録の『魔術師』を読んだ。

 

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 ミステリ、というよりも探偵小説、という呼び方が似合う作品である。探偵小説好きにはたまらない世界観と空気だろう。

 まず島、が舞台。それも実業家が無人島を買い、そこへ中世の洋館を建て、四人の子供に英才教育を施し、学校にも通わせず、島からも出さない。

 リアリティが、荒唐無稽、という真っ当な意見など、この作品に対しては的外れ。

 読み進めた事件の推移と、冒頭で、その洋館に住んだ唯一の生き残りに聞き込みをした内容が、終盤で食い違う。

「え? なんであの人から死んだの?」

 慌てて読み返す。いや、間違えずに読んでいるはずだ。この作品の肝は、孤島の、洋館内で起きた事件の、死亡順が違う、という豪速球が、無理なくミットに収まる。これに尽きる。

 復讐するための方法も「それ本当に出来る?」級の内容でニヤニヤしてしまうほどだ。探偵小説とは、そこまで陶酔するものだろ? という宣言を聞いているかのようだ。

 併録の『模像殺人事件』も楽しみである。

 

最新刊 呉エイジ『ワガツマレザレクションズ』発表!

 

 完成しました。前々から呟いておりました、呉エイジ私小説、で予告しておいたドキュメント。最後にタイトルが決まりました。それまでは『ある不幸』という仮題で端末に保存したままになっておりました(売れなさそーなタイトル)(笑)

 マトリックスの新作に乗っかって、レザレクションズと名付けました。まだここのツッコミはありませんが。

 好評、不評、初めて星一つを喰らいましたね。何が届かなかったのか。フリマあるあるをお笑いのベースとした、自分ではエンタメの新境地のアプローチで取り組んだのですが、届かなかった方もいたみたいです。

 さて、ここでは何を語りましょうか。裏話、というか、創作論になるのですが、完成してみて気付いたことなどを書き残しておきます。

 今、創作中の方、構想中の方のヒントやひらめきに繋がれば嬉しいです。面白い作品読むの大好きですから。

 読んでくれた方の感想でですね『なんかこう、頭の奥の方で、ずっと『借金の理由ってなんだろう』って引っかかってた。それが読む原動力にもなってた』という意見をいただきましてね、なるほどそうか、と。

 作り手としては、単純に言いたくなくて、触れたくなかったから一番最後に回した、という程度なのですが、これは今まで読んできた小説、特に結城昌治の作品とかでよく摂取してきたかな。

 物語の最初の方で登場人物が当たり前のように軽く謎に対する会話をして(キャラクターは当然深いところまで知っている風の会話)読む側は全部を把握していないので、なんとなくの推測で読み進める格好のスタイル。

 読み返してみて、あぁ、あの会話はあの謎のことを指していたのか、みたいな形のもの。

 それに偶然なっていたな、と。初稿の段階では、冒頭でまず借金の原因のシーンがあったのですが、書いていて辛く、消しました。そして言い訳のように『徐々に明らかにしていきます』とだけ書いて、その後のフリマ生活から物語をスタートさせました。

 それが読む人によってはボンヤリと『で、原因って一体なんなんだろうなぁ』と思わせながら読んでもらう効果に繋がったみたいです。

 これは創作論として結構有効な引きになるのではないか、と今回強く感じました。

 想って想って、やっと口説き落とした美魔女、そこに至るまで妄想しまくりです。そうして迎えたラブホテル。

 もし自分がシャワーから出た時に、美魔女が全裸で、床にM字開脚のままタバコを吸っていたらどうです?

 どんな乳輪をしているのだろう、陰毛は薄いのであろうか、そういう妄想からの期待が段階を踏まず一気に目から全情報として飛び込んでくる。

 楽しみとしては相当なマイナスですよね。やはりガウンを肩から徐々にずらして、行為(物語の進行)を楽しんでいく。

 最初に物語の核心全てを公にせず、焦らしながら小出しにするのが、エンタメにおいて有効なのではないでしょうか。

 そんなことを感じた次第。賛否両論の本作、どうぞ一つ可愛がってやってください。

康綺堂『康綺堂の推察ノートvol.1』を読む

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 康綺堂さんの個人誌が届いた。横溝正史夢野久作関連の考察本である。

 まず出版されたことに敬意を表したい。素晴らしい。やはり自分のラブは形にするべきである。

 そして康綺堂さんは仕事の傍の出版である。これも素晴らしい。私も力を頂いた。私も作ろう、という気持ちにさせてもらった。

BOOTHで取り扱っているので、皆様もぜひ。