呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

津山旅行6

 本日、会社が早めに終わり、ジムの用意をカバンに詰めていたのに、バックシートに眠らせたままの家路。

 行こうか、行くまいか、悩みに悩んで、結局アクセルを踏み込んでジムを通り過ぎてしまった。

まゆゆ』似の彼女に勇気を振り絞って挨拶をしたにも関わらず、絶句され視線は宙を舞い、ほとんど会話にならなかったからである。

 頭の中でシュミレートしてみる。ジムに入る、目の前にベンチが数台置いてあり、簡易休憩所になっている。

 そこに腰掛けて、Apple WatchiPhoneBluetoothヘッドフォンのセッティングをするのが常なのだ。

 まゆゆ似の彼女は噂では40歳、見た目、どう見たって30歳にしか見えないのだが。

 そのまゆゆ似の彼女がジムで時折話す、おそらく同年代であろうオバハン連中。何で可愛い人の取り巻きは、怪獣みたいな人が多いのであろうか。

「ちょっとあなた、いい?」

 ピグモンが私に話しかけてくる。

 オバハン連中の向こうには、まゆゆ似の彼女が泣きそうな顔をして俯いて座っている。

「あなた、彼女に話しかけたみたいね」

 ペスターも割り込んできた。

「一体どういうつもりなのよ、あなたジムにナンパ目的で来てるの?」

 ザラブ星人は怒りもあらわである。

「通路で鉢合わせしたから挨拶したまでですよ。っていうか私の挨拶にあんた達関係ないでしょ?」

 私も必死になって応戦する。

「怖がって傷ついてるのよ、彼女。どうしてくれるのよ。ストーカーみたいなオッさんにまとわりつかれたら、私たちだって泣くわよ」

 ガマクジラが平然と言う。

「あなたが怖くてジム辞める、まで言ったのよ彼女」

 ピグモンの唇は厚い。

「あの子に謝りなさいよ!」

 ペスターは小顔だが、作りが残念。

「なんで謝らなくちゃいけないんだ。綺麗な女性と鉢合わせしたら、挨拶するのが礼儀だろ?」

「きしょい、このオッサン超きしょい」

 ガマクジラの舌が飛び出す。

「オッサン、あの子と対等に話できるつもりに思ってたみたい。あの子超モテるのよ。アンタなんかお呼びじゃないわ」

 ザラブ星人の目は小さい。

 と、こんな風に集中砲火を浴びたら、二度と立ち直れないから、自然とジムに向かう足が遠のいてしまうのだ。

 もう何日か、事態が沈静化するのを待とう。オバハン連中なら囲まれても怖くはないが、もし彼女の親衛隊に絡まれたりしたら、格好が悪い。

 ※

 津山を抜け、岡山のパラダイス、万歩書店本店に夕方無事に到着した私と相棒の金平なのであった(ここまで書いて睡魔が)(笑)。

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〜続く〜

津山旅行5

 津山の万歩書店二軒を攻略し、時計を見れば十四時半。

呉「流石に腹減ったな」

金平「腹も減ったし、石段登って足痛いし、小雨の中の城めぐりは寒いし、ヘルニアに」

呉「わかりました、わかりました。すぐラーメン屋さんに入ります!」

 告知なしの津山城めぐりである。サプライズのつもりだったのだが、相棒は一向に城好きにはなってくれない。

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 暖房の効いた店内で、ようやくリラックス。

金平「今回の表紙、時間的にシビアやったぞ」

呉「バッチグーやったわ。ここはゴチさせて頂きます、金平しぇんしぇい」

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 二人で仲良くチャーハンセットを注文す。

 今回の我が妻との闘争2019〜ありがとラッキーちゃん〜。表紙は相棒の金平作なのだが、文字原稿は送っていないのだ。だからどんな内容の本なのか金平は知らないままイラストを描く。

『今回のタイトル〜ありがとラッキーちゃん〜で行くからシクヨロ』

 依頼はこれだけである。読んでくださった方は内容と照らし合わせてどのようにお感じであろうか。

 私は仕上がってきたトビラを見て『まぁドンピシャな絵を持ってくること』と感嘆した。

 即オッケーである。

 寒さと空きっ腹にラーメンが染み渡る。替え玉が食べたくて呼び鈴ボタンの数ミリ前で指をプルプルさせながら耐える。せっかく順調なダイエット、ここで替え玉をイッたら台無しだ。

 昨年の10月に74キロ、現在67キロである。以前の私なら替え玉二回はイッていただろう。

 やはりダイエットは地道な積み重ねなのだ。

 ラーメン店を出て津山のブックオフへ。ここは小さめの店舗で、今集めている日本推理作家協会賞受賞作全集は一冊もおいてはいなかった。

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 まだ15時過ぎだ。このまま姫路に帰るのは勿体無い。岡山の万歩書店本店を急遽ルートに組み込む。

 節約のため、高速を使わず下道を通って一路岡山市街へ。

 その道中、我々は二度目の城に遭遇した。

呉「何じゃあれは。ストーップ!」

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 かつてのドライブインの廃墟であった。城門には北斗の拳の敵のモヒカンの手下みたいな連中が吹き付けたであろうスプレーの落書きでデコレートされていた。

 いい味を出している。一周回って貴重な建物なのではないか? どこかの社長さん、改装して喫茶店なんてどうです?(すんごい山あいだったけど)

〜続く〜

津山旅行4

 津山城備中櫓内で買ったお土産を見てニンマリしながら歩く。

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 ありがとう、津山城。素晴らしい石垣に復元櫓、いつか古写真のような復元を目指して、頑張ってください、津山市

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呉「さぁて、じゃあ移動すっか。もう一軒の万歩書店へ行くか」

金平「待ってました」

 津山は良い雰囲気の街だ。城跡も整備され綺麗。春には桜の名所として花見客で賑わうそうだ。

 なるほど、お城の横には高層ホテルもあった。

 掘がわりの川も城の近くに流れ、街のムードに合って落ち着く。

 商店街もシャッター商店街ではなく、活気のある方だろう。

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 二軒目の万歩書店は、それほど遠くはなかった。

 あっという間に到着。

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 営業はしているが、いつ岡山のように閉店になるやもしれぬ。

 こういう中古ショップは街に一つは欲しい。最近の若い子は、こういう店を見てもテンションが上がらないのだろうか?

 私など、目は充血、心拍数は上がり、ヨダレも落ちそうになって、カウパーもヤバイ。

 20年前なら姫路でも至る所にあり、競争であった。それがネット通販、個人オークションが携帯端末で簡単に利用できる時代が来て、中古ショップも激減。

 かつて会社帰りに古本や中古ゲームを買い漁っていた店の跡地が、デイサービスになっていたりすると、たまらない寂しさに包まれる。

 いつまでも続いて欲しい。だが、5年後は無くなっているかもしれない。

 この写真も、今後貴重な一枚になるかもしれぬ。

 店内を物色、本もゲームも充実している。レトロゲームの棚に移動し、私は奇声を発してしまった。

金平「ど、どないしたんや」

呉「こ、こ、こ、これ」

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 セガサターンのプラドルシリーズを、ネット通販を使わず、店内で買う、という縛りを己に課し15年。

 何度も諦めかけた。それでも広島で一枚、大阪で一枚、奈良で一枚、名古屋で一枚、と旅先で出会うたびに歓喜に包まれた。全て相棒金平と共に旅をし集めてきたものだ。

 リーチになったまま三年。バタバタと閉店していく中古ショップ情勢を眺めながら、棚から引き抜いてのコンプリートは無理かな、と近年は絶望に近い思いであった。

 それが、今日、ここに来て出会えるとは。最後の一枚よ、津山にあったのか。

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 買い物の神が少しだけ微笑んでくれた。ここで一言。店舗でのプラドルコンプリートは、難易度高し、激ムズですよ。

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 これだけで津山に来た価値はあった。私に買われるために、ここで何年も待っていてくれたんだね。

 私は少しセンチな気持ちに包まれながら、レジで支払いを済ませるのであった。

〜続く〜

津山旅行3

 プライベートで色々ありすぎて、この津山旅行の記憶も完全に忘却の彼方となってしまったのだが、写真を見ながら必死に思い出して、書き継いで行く次第である。

 お騒がせしているジムでの『まゆゆ似』の彼女のことは、あれから怖くて同じ時間帯に入るのを避けています。

 正直、私が勇気を持って挨拶をしたら、キラキラした瞳で返事をしてくれるはず、と思っていたのです。

 それが相手は視線を宙に彷徨わせてのあの始末。

 失意のズンドコで私は辛さを紛らわせるために創作に走りました。現在『The bottom of a pot(鍋の底)』という超面白い短編を書いています。プロレタリア文学です。2019年呉エイジの最新のモードで書いています。

 やはり女は失望させる。男は優しい。金平に走ろう。金平は嫌な顔をせず遊んでくれる。

 いや、アイツ、城巡りの時、そういえば嫌な顔してたな!

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 津山城の近くには古い建物、昭和初期の建築だろうか? が続いていた。

 城へ向かうまでに、剥製の博物館があり我々の興味を激しくそそる。

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呉「どうする? 入るか?」

金平「ブログのネタ的には美味しいけどな。写真撮影自由だし。でも、今回は消えゆく古本屋の旅やろ? 博物館に城に、お前のペースのオンパレードやんけ!」

呉「わかった、わかった。城はパッと回ろう。な」

金平「オマエはヘルニア持ちのワシに、あのような苦行を与えるのか?」

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呉「たいしたことないって(笑)適度な運動は腰のためにもええんやで。さぁ、行こうや」

 石垣を何段にも組み上げた陸の要塞である。その高さに圧倒される。

 近年、古写真と古絵図に基づいて、備中櫓が復元された。下から見ると小ぶりだが、中に入ると相当広い。そして当時の様式のまま、畳敷きの珍しい櫓である。

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 入り口で女性が番をしていた。私は旅先での会話は大好きなので、ぐいぐい話しかける。同年代くらいな番の女性も、知的で親切に応じてくれた。

呉「このお城が残っていたら、姫路城を凌ぐ規模ですね。姫路から来たんですけど」

女性「あら、そうですか」

呉「備中櫓は忠実に再現されていて、この調子で天守も復元してほしいものですね。古写真も色んな角度から数枚あることですし」

女性「そうなんですよ。それにこのお城には指図、図面も残っておりますから」

呉「古写真と指図? それじゃあいつでも復元オッケーじゃないですか! きっと観光客が増えますよ。お金の問題だけですか?」

 女性は苦笑いをしている。

女性「青年会は復元に向けて色々動いているようですけどもね」

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 この備中櫓のレベルで指図に従って復元されれば、史実を無視した観光天守ではなく、当時を再現でき町興しに必ずや繋がるはずである。

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 立派な天守台が残っている。その全盛期の姿に想いを馳せる。

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 津山市、頑張ってください。古写真、指図の残る、稀有な城です。いつかこの天守台に古写真のままの天守が再建されることを夢見ながら。

 私はキーホルダー、クリアケース、ガイド本を購入し城を後にした。

呉「結構歩いたな。腹も減ってきた。あのノボリを見てみぃ、津山名物『ホルモンうどん』ってあるぞ。どないや」

金平「ワシ、ホルモン駄目でな。あれ油の塊やん? お腹壊すねん」

 ヘルニア持ちの漫画家、油を食べただけで下すお腹。なんという弱い友であろう。ジムとは無縁のヒョロヒョロした身体で、古き友は城の石段をゆっくりと降りるのであった。

〜続く〜

『まゆゆ似』の彼女との一部始終。

 津山旅行記もぶった切っての緊急掲載である。

 こんなことなら、このブログのタイトルにもある通り、大好きな探偵小説を読んでストイックに感想を書く。そんな毎日を過ごせばよかったのだ。

 男子更衣室、女子更衣室から同時に出て廊下で鉢合わせしてしまったのだ。

 通路で並んで立ち尽くす格好になった。目が合ってしまったので、私は五十にもなるというのに、勇気を振り絞った。

「こんばんは」

 向こうは硬直している。アンケートも取ったので、ここで続かねばならない。

「いつもダンス上手ですね」

 

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 これはアンケート結果を無視したチキン野郎行為だったのだが、よく震えずにスッと言えたな、と思う。

 すると彼女は下を向いて小声で

「いいえ」

 と宙を彷徨う視線で返答した。

 私は「こりゃ脈ないな」と瞬時に判断した。張り裂けそうな胸の内を悟られぬよう、早足で先にジムに入った。

 私は何故か泣きそうになって、あぁ、こんな気持ち、高校三年のフラれた時を思い出すなぁ。

 と、列に並び涙を堪え周りに悟られない様に佇んでいた。

 足は震え、手も震えていた。

 色々あったのは、全部男の都合のいい妄想だったのか。今、彼女は「気持ちの悪い思いをした」と身震いしているのだろうか。

 スタジオでエアロビの列を待つ。彼女が毎回入るプログラムだ。

 私は怖くて後ろを振り返る事が出来なかった。

 辛すぎてこのまま帰っても良かったくらいだ。

 私はただ、気軽に挨拶できるジム友になりたかっただけだ。それが女性には視線が宙を彷徨うほど怖い事なのかもしれない、その温度差。

 きっと「気色悪っ」と吐き気を我慢して、そのままUターンして帰った事だろう。

 私の淡い想いは終わった。

 スタジオに入り、最後尾に並ぶ。

 すると、帰ったと思っていた彼女がスタジオに入ってきた。正面のミラーに反射して、後ろから歩いてくる姿を盗み見たのだ。

 これ以上恥の上塗りは勘弁してくれ。

 恥にまみれ、プライドを引き裂かれ、私は穴があったら入りたかった。

 今、貴方は文学の誕生を目の当たりにしている。

 すると、どうだ、先ほど小声で迷惑そうに返事をしたクセに、私の真ん前にチョコンと座ったではないか。

 今更どうしろというのだ。もう私に次の会話の手持ちは無い。

 何故前に座る。

「逆恨みされたら怖いから普段と一緒にしておこう」

 という判断なのか。

 私は辛すぎて女心がわけわからなすぎて、何故平然と私の前に座る事が出来るのか、理解が全く出来なかった。

 怖いのなら距離を取れば良いではないか。

 体操座りで前後に並ぶ。開始まで二分、私は何も喋る事が出来ない。向こうはストレッチをしている。

 途中の給水タイムでも、私の水筒の横に彼女も水筒を置いている。

 何故、そんなことをするのだ。

 刺されたりしたら怖いから、きっと先ほどの挨拶を無かったことのようにしているに違いない。

 何度も給水で並んで歩くのだが、会話など出来る精神状態ではなかった。

 情けをかけるのはやめてくれ。結局プログラム中、前後にその距離1メートル以内に並んでいたのに、私の傷付いた心はそれ以上傷を広げることなど出来なかった。

 妄想とは怖い。気軽に挨拶を返してくれる、と半分以上思っていたのに。

 ジムを辞めようか、と思っている。

 

〜完〜

津山旅行2

この記事を書いている時、先日キンドルで出した『キンドル本を出版して人生を少しだけ変えてみる本』のことなのだが

 

 

 瞬間風速とはいえ、アマゾン書籍全体ランキングで1000番台を記録しました。パチパチパチ。

 

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 もうね、この本を読んで、皆さんもぜひ本を出してください。この本は私から貴方へのラブコールです。買ってくださった方、ありがとうございました。

 先日、車上荒らしにあい、財布を盗まれて気分が落ち込んでいたのですが、この新刊にも書いてある通り、現実世界での嫌な出来事を、もう一つの世界の良い知らせが救ってくれて、精神のバランスが取れております。皆様には感謝しかございません。

 姫路からiPhoneのグーグルマップを使って、津山の万歩書店をセットする。

 高速道路を降り、横に川を眺めながら軽快に走る。きっと津山城はこの川を天然の堀として利用したのだろうな、と思っただけで口にしなかった。

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 口にしたところで、何度連れて行ってやっても城を好きにならない金平は

「で?」

 としか返答しないであろうことは容易に予想できた。

 テンションが高まる。古本、レトロゲーム、中古CD、雑貨。我々の世代のパラダイス。総合中古ショップ。その万歩書店も風前の灯である。看板は疲れ果てていた。

 

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呉「来てよかったな。やってるうちに」

金平「そうだな、来年は岡山のように閉店しているかもしれんもんな。やってるうちに来れてよかった」

 

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 姫路にあった中古ショップ『ブックマーケット』『キャンプ』『ブックマート』などは、数年前に全滅した。

 残っているのはブックオフとお宝倉庫だけである。お宝倉庫が残っているだけ、まだ御の字なのかもしれない。

 我々は店内を噛みしめるようにして味わった。平日の昼なので店内はガラガラ。少子化のせいで、このような『物』の流通が激減している。

 そして若い子の娯楽が物からスマホに移行したことも大きい。

 音楽も小説も映画も漫画も、全てスマホで事足りる。

 このような物にあふれた店は時代遅れなのかもしれない。私は心の奥で叫ぶ。こういう店が大好きだ! 古い雑誌『宝石』や探偵雑誌『妖奇』『幻影城』も置いてあった。

 もしここがなくなれば、街でそんな古い雑誌を目にすることもできない。

 ネットで買えばいい? なんて味気ない。若者よ、断捨離なんていいから、自分の目で娯楽品と出会ってほしい。少しでもこういう店を延命させてほしい。

 ここに掲載する写真も、数年後には貴重な一枚になっているかもしれない。消えゆく風物詩。中古ショップへの鎮魂歌。

 

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 古本は大量にあったが、今私が集めている日本推理作家協会賞受賞作全集と、雑誌『幻影城』の欠けは置いていなかった。

 それでもこの雰囲気を味わえて、本当によかった。

呉「こっちは収穫なかった。そっちは?」

金平「声優さんのCDでいいのがあった」

 相棒はご満悦でレジに向かう。

呉「万歩書店って全部で何店舗あるんですか?」

レジの女性「津山に二店と岡山に二店です。岡山は隣接しているので場所は一箇所ですけど」

呉「そうですか。減っちゃいましたね。頑張ってください」

レジ「ありがとうございます。そちらのお客さん、ポイントカードはどうされます?」

金平「いいです。姫路から来てますもんで」

 レジの女性は『まぁ』という顔をしながら驚いていた。

 駐車場に出る。雨は小雨になっていた。晴れ男の私のパワーが雨男金平の魔力を駆逐しているようだ。

呉「なんか、しんみりしてしもうたな」

金平「そうやな」

呉「じゃあ元気出るように、次は津山城へ移動すっか」

金平「ワシは更にしんみりしとるけどな!

 二人を乗せた車は津山城へと移動する。

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〜続きます〜

『キンドル本を出版して人生を少しだけ変えてみる本』発売

 

 

 作った動機は簡単です。『読むのが大好きだから、貴方の頭の中にあるストーリーを是非形にして』これだけです。今回、表紙は自作しました。素人デザインなので、ちょっとマイナーな感じですけども。

 説明するよりも、この本の『まえがき』を全文掲載する方が早いでしょう。

 以下は、この新刊の『まえがき』です。

 

■まえがき

 

 この本はマックとワードで電子書籍、アマゾンのキンドル用のデータを作る方法を解説していきます。

 これを読む貴方は運がいい。この本の代金、たった三百円を自分に投資するだけでキンドル出版ができるようになるのだから。私はキンドルで出版するまでに四苦八苦した。専門書もたくさん買った。三日三晩徹夜して(その間適度に昼寝して)後から考えれば簡単な箇所で何時間も躓いていた。

 この本は、その専門書にかかった費用を回収したい、という筆者(月の小遣い2万円)の切実な想いと『本を出してみたいなぁ』という貴方の想いの助け、となるべく作られた本なのであります。

 この本の目指すところは、アマゾンにアップロードする直前の、完成された原稿データを作るまでをアシストすることで、アマゾンのダイレクトパブリッシングへの入力、例えば貴方の銀行口座の入力等は、貴方ご自身で頑張ってもらうところであります。

 それでも私が躓いてきた場面は、キンドル用の書籍データを作るところまでであったので、それさえ完成すれば、あとは簡単に出版までたどり着けることでしょう。

 そして身も蓋もない言い方をしてしまえば、キンドル用の最終データを作るまでの過程は、詰め込めば数ページで書き切れてしまいます。でもそれではあまりにも味気ない。

 この本の特色としては

・中高年に届く声(筆者は執筆時アラフィフ目前です)で書こう。

・くすぶっている貴方のやる気を盛り上げていこう。

・私はパソコンの専門職ではない普通のサラリーマンなので、専門用語ではなく日常会話形式で進んでいこう。

・解説書だが読み物的な要素も入れていこう

 と思っております。

 キンドルのお陰で出版は非常に身近なものとなりました。パソコンとネット環境があれば、誰だって出版できる世の中になったのです。

 自分の本を世の中に出す。という行為はドキドキ、ワクワクがいっぱいです。そして自分の本が大勢の人にアピールする本であれば、それは『金銭』という形で作者に還元されます。

 私も印税のお陰で、嫁さんに内緒で欲しい本を沢山買っています。

 政府や政治は決して貴方個人を助けてはくれません。そして結婚をすれば『小遣い制』という方が大多数でしょう。キンドル出版はそんな貴方に『秘密のへそくり』を与えてくれます。

 出さない理由は? ないでしょ(『今でしょ』みたいに流行らそうとしているのか?)

 日々の仕事に追われ、夢を追う年齢でもないか、と肩を落としているだけの貴方。この本を読んで是非行動に移してください。

 貴方がこの本を読んで貴重な休日を費やし、その先に待っている『楽しいこと』を掴める可能性は、宝くじで当選する確率より何万倍も高いことでしょう。

 私も貴方の出す本を楽しみに待っています。

 

 2019年2月 積読本に囲まれた狭い自室にて

津山旅行1

 相棒の金平が姫路に帰ってきているので、ちょっと無理してでも行っておこう、という話になったのだ。

 前回の松江旅行で感じた『消えゆく中古ショップ』

 行く度にテンションが高まった岡山の万歩書店が、本店だけを残して閉店。昔は岡山だけで7、8店舗はあったと思う。

 後は津山に二店舗を残すのみとなった。大都市岡山ですら維持が難しいのだ。津山もあと何年持つか、というのは的外れな予測ではあるまい。

 いつまでも続いて欲しい。古本、中古CD、レトロゲーム、色々な雑貨。

 行く約束をしてから二週間、天気は晴天が続いていた。それが肝心要の攻略日当日。

 

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呉「オマエ大概にせいよ! どんだけ雨男やねん!」

金平「それはこっちのセリフや。日頃のオマエの行いが悪すぎるんとちゃうか?」

 行きの道中から口論である。

呉「土砂降りやないけ! 楽しみにしてたのに、どないしてくれるんじゃ!」

金平「おどれ、二度と表紙書かへんぞ!」

 

(※二人の結晶、キンドルシリーズ(笑)

呉「それは困る」

金平「イライラせんと安全運転で頼むぞ。まぁ、この雨はな、オマエの日頃の行いのせいや

呉「どういうことや」

金平「嫁さんもおるのによ。ツイッター見てたらなんどいや、あれ。ジムで女の尻ばっか追いかけて」

 

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呉「嫁さんもやな、ジムで男性に声かけられまくってるし、それで嫌味いうたらな『アンタがジムの女性と仲良くなっても、私怒らへんで』言うからやなぁ」

金平「昔っからオマエは女好きやのぅ。そんな暇があったら作品書け」

呉「オマエが異性に興味なさすぎなんじゃ。AVと二次元専門で」

金平「おいおいおい、ちょっと待て。オマエここでワシのこと結構悪く書いてるやろ。あんまり暴露とかやめてくれな。結構ダメージきてるんやぞ」

呉「聖人君子やあるまいし。オイシイやんけ。作者に興味持ってもらったら作品購入に繋がるし」

金平「オマエみたいに神経図太くないねん。で、ワシもアンケート、三番にしたぞ。絶対に言えよな」

呉「結婚しとるのに、女性と、それもタイプの女性を目の前にすると、緊張して言葉が出てこんのよ。こんな調子でワシよぅ結婚できてるなぁ、思ってな。どうやって話しかけよ」

金平「ワシに聞くな。一番聞いても無駄な人間の部類やぞ」

呉「まぁ、この問題はもうええか。ネタとして昇華してな、自爆してもおもろかったらええやん、って思ってるんや。だから題して『妄想ジム日記』をキンドルで出す前提で、振られ覚悟で話しかけるのもありかな、と」

金平「ええぞ、そうや。そうやって人生切り売りしたらええねん。友達になったらオマエがドキドキする。振られたら本のオチとして最高。どっち転んでもええパターンやんけ」

呉「さぁ、あともう少しで津山や。津山にはな、万歩書店が二店舗、ブックオフが一店舗あるぞ。そしてサプライズや。津山城も入ろうや」

金平「何がサプライズじゃ。拷問じゃ。何が楽しゅうて雨の日に城行かなあかんねん」

呉「巨大な石垣にな、近年櫓も復元されてるんや」

金平「知らんがな

 この珍道中、また何回か続きます。お付き合いください。

 

〜続く〜

橋本治『ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件』を読んだ。

 橋本治『ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件』を読んだ。私はもう決定的に読むのが遅くて、一週間もかかってしまった。文章は読みやすく、個性的な一人語りなので、普通の方なら数日で読めてしまうだろう。

ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件

ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件

 

『異形の作品』を読んでしまった。というのが読後の感想。全編を覆う『昭和軽薄体』という独特の文体。これが目新しく映った。四大奇書への言及もあり、かなり接近した部分もあるが、私小説的要素の方が強く感じられる。

 60年代のクレージーキャッツを代表とする『モーレツサラリーマン』『テキトー』『無責任』とは違う、80年代の『シラケムード』この昭和の終わり、80年代の感覚を切り取った、そしてその時代での問題提起を孕んだミステリー仕立ての文学作品、といった趣。

 私は今年で50ですからね、小学生の頃の世間を騒がせた『金属バット事件』や『女子大生ブーム』『ケーハク』といった単語から、なんとなく当時の世相は理解できます、が、今の若い人がこの作品を読んだら、当時限定の流行語や芸能人が散りばめられているので、ちょっとその部分だけで敬遠されてしまうかもしれない。

 そういう世相を(作者も作品を延命させる気は無かったのか? という書き方だが)取り敢えず横に置いて、章の頭に引用される思わせぶりな名作推理小説からの引用、冗談交じりの推理合戦、というミステリーの道具立ても、作者の狙いは『そこ』ではなく、一人の人間が何故殺人を犯してしまったのか。という問いと、自分探しという言葉を超えた赤裸々な自分語りがテーマに密着して、読後色々と考えさせられた。

・昭和軽薄体という独特な文体が面白く、それを味わうだけでも価値がある。

横溝正史の作中人物と、依頼人の家族の名前が『被る』ので、きっと不吉なことが起こるはず、と騒ぎ出す依頼人の婆さん。そしてガールフレンドから適当に頼まれて適当に探偵になり、そのまま事件に飲み込まれていく主人公。

・終盤、発狂する犯人、それも探偵が事件の全容を二人きりで説明している途中で(これは相当怖い)温和な言葉遣いが、段々と方言交じりになっていく壊れ方の演出(個人的にポイント高し)

 文学的要素も高い。主人公の両親が離婚し、母親に気に入られようと『良い息子』を演じて、そのまま東大まで行った主人公の心の空洞。

 その人に合わせて、本来の自分は違うのに、その人に気に入られようと、頑張ってその役を演じる、というのは形を変え、誰にでもある心理だと思う。そういう掘り下げがチクチクと胸を突く。

 そして作品でも重要な要素の『都市論』とその犠牲。身近でもある話だ。昔ながらの国道沿いにあった喫茶店、しかしその道を迂回する大きな幹線道路ができれば、その沿線は一気に死ぬ。

 事件の舞台もそれに近い閉塞感に包まれているのだ。

 そして未読の方はこの先読まないでね。

 厳格な解決とは決して言えない、自供と状況証拠からの事件解決。

 犯人の動機が

「色々とやんなっちゃったから」

 という一見軽薄の極みのように見える、誠にリアルな心情。

 今だって変わらない。状況は当時より悪化しているだろう。抜け出せない貧困。富裕層との二極化。真面目に働いても明るい未来が待っている、とは決して思えない社会制度。貧乏人は死ね、とでも言っているかのような世の中。

 親の葬式が出せなくて、いい歳した大人が親の死体を放置したままニュースになる、その『仕方なさ』モロに我々の世代だ。

 この作品当時の『シラケムード』よりも(まだ日本は豊かで逆転のチャンスはあった)絶望が蔓延している現代。

「色々とやんなっちゃったから」

 という動機、未来を先取りした作品、とは言えないだろうか?

我が妻との闘争2019〜ありがとラッキーちゃん〜二位達成!

 このブログは私の日記と、読書感想と、活動報告の場ですので、もう少し新刊の話題でお付き合いください。

 

 1月に出しました新刊、おかげさまでジャンルで二位を達成いたしました。パチパチパチ。

 

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 これもひとえに読者様、フォロワー様のおかげであります。

 会社ではダメ社員ですがね、ネットではそこそこ結果出すのですよ(笑)

 出すまで散々悩みましたが、というのも今回の新刊、前作と同じペースで数は出ているのですが、反響や感想が掴めない、といいますか。

 

我が妻との闘争2018〜昼下がりの冤罪編〜 (呉工房)
 

 今年の新刊は『心情を吐露しすぎたかな』という思いや、いつもの感じを求めて来られた方が『真面目な話をしだして急にどうしちゃったの? 呉さん』みたいなことになってるのかな? と分析してみたり。戯作者に徹するべきであったか、という出した後での煩悶の小さな渦が回っている、といいますか。

 でもまぁそれも私の出す物の一つの形。これからも毎年出すのですから、人生山あり谷ありを書き記していけばいいか、と分析なり今後の指針なりとし、次回も頑張りますので、どうぞ皆様今後ともご贔屓に。

 個人出版でジャンル二位は大健闘でしょう。どうもありがとうございました。

 さて、今年の目標ですが、ノンジャンルの短編集を出せればと(もう一本強い話を入れたい)あと、数年前から練っている少年探偵物(ものすごく不謹慎)これを形にしたいのと、もう一本、これも長編なのですが、小栗虫太郎黒死館殺人事件』へのオマージュ的なもの、これが形になれば最高なのですが。

 ここで宣言したものは、ゆっくりでも形になっているので、今のところ有言実行は守られております。

 さて、もうしばらくツイッターで新刊の告知をしたら、また日記と探偵小説読書日記といういつもの日常&ペースに戻っていきたいと思っております。それでは今宵はこの辺で。