呉エイジ 秘密の探偵小説読書日記

日記と探偵小説の読書録

尼崎城に行ってきましたよ

 昨日、嫁さんと二人で尼崎城に行ってまいりました。

 

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「安旅で済ますで」

 と嫁さんが言うので、私はこの尼崎城を進言しました。出来立てホヤホヤの復興天守です。

「なんかメリットあるんかい」

 嫁さんは全然城好きではないので、私は二つの策を用いました。

 

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 まず尼崎には、我々夫婦が入会しているスポーツジムの支店があります。会員ならば他府県であっても僅かな追加料金で利用できるのです。

 同じプログラムでも地方では違うのか、どんなインストラクターなのか? 私はこのルアーを投げ込みました。嫁さんは一発で喰いつきました。

 

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 そしてもう一つは『食』であります。尼崎には姫路には無い『徳島ラーメン』を食べられる店があります。

 以前、相棒の金平と四国一周ブックオフ完全攻略ツアーという狂った旅に出たときに食し、大層美味かったことを嫁さんに報告すると

「いつもアンタらだけ美味しいもん食べて。私もそれ食べたい」

 と駄駄をこねたのです。今回はそれも食べられるよ、と。

「なら尼崎城いこか」

 となりました。

 

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 この尼崎城は木造ではなく鉄筋コンクリートでの復興です。それも本来の位置とは別の場所に建てられました。ランドマーク的趣向の天守です。

 往時は甲子園球場の三倍の敷地面積を誇る大城郭でした。

 当時の絵図と、唯一残る不鮮明な古写真で(右奥が天守)復元が進められました。

 

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 ピントもヨレヨレな古写真ですが、大きな堀、天守に三層櫓もあって、かなりの大城郭だったことがわかります。

 これがそのまま残っていたらなぁ、と思わずにはいられません。

「城? そんなもんいらんいらん。もう明治やろ? これからはレンガやん? 木の建物古いやん。城ってまんま江戸やん? ダサいやん? チョンマゲダサいやん? 脇差し怖いやん? 壊そ、江戸思い出すからはよ壊そ」

 みたいな民衆の文明開化心理が働いたのだろうか。たくさんの城が明治に『無用の長物』として打ち壊された。

 私が当時の政治家だったなら

「あかんあかん。整備保存しよ。城郭保存令出そ。で、入城料とって市民の憩いの場にしよう。町の財源にもなるし。職を失った藩主も生活あるしな」

 みたいに持っていくのだが。

 その尼崎城、年輩の方も多く来場し、大いに賑わっておりました。

 それほど乗り気ではなかった嫁さんも、場内のコスプレコーナーを見て色めき立ちます。

「撮って、お姫様の格好するから、アンタ写真撮って」

 と、ノリノリでありました(写真は『怒りの局』)。

 

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 城内にはVRで当時の尼崎城を散策できたり、火縄銃のレプリカがあって持てるようになっていたり、と飽きさせない展示が目白押しでした。

 案外嫁さんの方が楽しんで城を出て尼崎の駅前を散策、昼食を済ませジムへ。

 街中にあるので、ジムの駐車場は有料だったのが驚きでした(姫路は無料)。違法駐車して買い物に行く人とかいるのでしょう。

 プログラム『ズンバ』『ボクシング』に入り(尼崎のインストラクターは二人とも上手かったです)クタクタになってジムを出ます。

 嫁さんは『眠い』と言い出しました。なら助手席で寝ていてくれ、と。近くにブックオフあるから寄る。

「お好きにどーぞ」

 嫁さんサービスが功を奏し上機嫌でありました。私は尻尾を激烈に降るチワワのようになって車を走らせました。

 

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 やはり姫路よりも都会です。品揃えは豊富でした。色々買ってしまいましたよ今回も。

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 寝ている隙に二軒のブックオフをハシゴ(笑)

 夕方になったので徳島ラーメンの店に移動しました。

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 これは本当にオススメのラーメンで、ラーメンがそれほど好きではない嫁さんも大絶賛の美味しさです。このラーメン、姫路にも来て欲しいなぁ。

 帰りはブックオフで買ったスマップのベストを流しながら帰りました。

 平成も終わりますね。グッバイ平成。曲を流しながら同じタイミングで『青いイナズマ』の『ゲッチュ』をハモったので笑いながら帰りました。

 嫁さんサービスを徹底したので、珍しく喧嘩せずに帰れましたよ。

 

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 最後に宣伝も。アマゾンレビュー五つ目頂いております。一部には好評の新刊(笑)どうぞよろしく。

 

 

スマートウォッチを買う

 アップルウォッチを砂利の駐車場で画面側から落としてしまいバキバキに。

 それまで時計にはあまりこだわらず、仕事でもプライベートでもiPhoneで時間を確認していたのだが、ジムに通いだして筋トレのインターバル計測に腕時計が便利だったこともあり、なくなれば無くなったで不便を感じるようになった。

『じゃあもう一台アップルウォッチ?』

 そんな余力は無かった。

 そこでアマゾンを検索し、スマートウォッチを調べてみた。

 

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 なんか色々機能が付いて三千円台である。

 これならば仮に失敗したとしても、それほど痛手にはならないだろう。ということで注文。

 次のアップルウォッチまでの繋ぎ、みたいに考えていたのだが、これがなかなかの製品であった。

 ざっと感想を書いてみよう。

・アップルウォッチと違って3日は充電が保つ。

・メール、ツイッター、ラインの通知が振動でわかる。文字内容も確認できる。

・心拍数、血圧、歩数計という機能が地味に高機能。

・睡眠時間と睡眠品質が計測でき『へぇ』という感じ。

・軽いので寝るときに着けていてもアップルウォッチほど違和感がない。

 続いて物足りないところ

・腕を上げてもアップルウォッチのように画面表示しない(タップしないと点灯しない)

・Sirinのような音声入力ができない。

・街中で気に入った音楽を聴いてもアップルウォッチのように瞬時にタップして曲を見つけられない(アプリインストールに制限・限界がある)

・画面全体がタッチパネルではなく下部だけで、タップと長押しだけの操作に慣れないうちは違和感。

 総評、もっとガッカリするかと思ったが、意外に良い製品だった。

 それでもですね、贅沢とは思いますがやっぱりアップルウォッチは最高

俺は最低

 スポーツジムに通っている人なら知っている方もいるだろう。スタジオプログラムで『ズンバ』というメニューがある。

 野生的なダンスがメインで、音楽も民俗音楽をベースにした、リズムが強調されたサウンドを使う。

 最近『まゆゆ似』の彼女は、このメニューしか入らなくなった。

 足繁く通っても、他のプログラムには参加しておらず、逆にこのプログラムで見なくなったら、退会している可能性がある、という事だ。

 私は入口前から伸びる行列に加わった。何気ない風を装って、彼女の姿を探す。どうやら来ていないようだ。

 一番最後の事件、勇気を振り絞って話しかけて、返事がある、と思っていたのに、向こうは言葉を詰まらせて、目を泳がせながらかわされた格好になったのが最後であった。

 進展させるためには、もう一度自爆覚悟で挨拶をする。これしかないのだろう。しかし相当の勇気が必要であった。

 一度フルパワーで、いうなれば『界王拳五倍』である。『いつもダンス上手ですね』を繰り出したのだ。今、限界を突破し、ちょっと触られたら激痛が走る、そこまで精神を酷使してトライしたのだ。

 次に何といえばいいのだ。

 そんなことをボンヤリと考えていた。

『あと、五分で開始です。横四列で詰めてお待ちください』

 インストラクターが声をかける。その号令で人の波が動く。

 私の列は二列だったので、後ろから繰り上がって四列になった。

 私の左に後ろからスッ、と人が割り込んできて並んだ。

 私はガッツリ見るわけにもいかないので、横目で確認した。見慣れたウェアーの色。まさか!

 私は緊張した顔でゆっくり左を向いてみた。

 私の真横に『まゆゆ似』の彼女が座っていた。真剣な表情だった。いや、それはどうなのだろう。自分に都合のいい解釈をしてはいないか?

 真剣な表情、とも取れるし『困惑』の可能性もあるではないか。インストラクターの号令で、私の後ろに偶然並んでいたのに

『あっ、この人、前に通路で面識もないのに、いきなりダンスのこと褒めてきた人だ。困ったな』

 という困惑、の表情。

 目が合った瞬間、私は目を大きく開いてしまった。驚いたからだ。

 そうして前に向き直って下を向き、下唇を噛んだ。

 横並び四人でスタジオの入り口から列が伸びる。前から全員綺麗に並んで体操座りをしている。

 私の真横に『まゆゆ似』の彼女が体操座りしている。

 横目で確認すると、向こうも俯き加減でボンヤリしている。

『あと三分ほどで入場です』

 どうする。どうするのだ。向こうは挨拶をして欲しいから、勇気を振り絞って私の真横で体操座りをしているのか?

『呉さん、今年50でしょ? 情けない。偶然ですよ偶然。向こうも40台でしょ? そんなロマンスあるわけない』

 という外野の声が頭の中で鳴る。声をかけない方が失礼じゃないのか?

 少し身体を動かせば肘が当たる距離だ。心筋梗塞を起こすのではないか? きっと私の顔は真っ赤であろう。

『時間です。皆さん立ち上がってご入場ください』

 タイムオーバー。そのまま人波に流されなだれ込む。

 もしも、もしもだ。彼女が今日、勇気を振り絞って挨拶をしてもらおうと私の横に座ったのであれば、きっと幻滅し、不甲斐なさに呆れたことであろう。

 そう、何も話せないまま、プログラムは終わり、解散となり、人波の中、私は彼女の姿を見失い、何も起こらないままジムを後にするのであった。

 


佐野元春  おれは最低 (ライブムービー)

俺のワンダーコア2

 リサイクルショップで買ってまいりましたよ。2700円。ワンダーコア2を。ババーン!

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 かなり周回遅れな話題ではありましょうが、これ、結構いいですね(※後ろのバネ無し自力腹筋台の事は触れるなと言うておろうが)。

 買うなら1より2の方が絶対にいいです。足を引っ掛けるところについているローイングバンド、これを座ったまま引っ張れば、大胸筋にもなかなか負荷がかかります。

 そうしてメインの腹筋運動。中年になったらですね、ガチの腹筋までやらなくとも、バネの補助で『腹筋を目一杯伸縮させる』運動ができればオッケーなんです。

 調子に乗ってですね、嬉しくてキコキコと百回くらい高速腹筋をしたらですね、翌日激痛ですわ。今の私ですわ。

 

 

 でもこれ、明確な意志がないと続きませんね。ほぼ毎日ジム通いしているから、最近は私も軽い運動は好きになりましたけど、仕事に明け暮れるサラリーマンの方々なら、早々に衣装置きになる可能性大です。

 小一時間もやっていれば、汗もなかなかです。

 これプラス、プロテインで、体型は変わってくると感じます。

 おっ、それからですね、遂にあたくし、健康診断でメタボ解除になりました!

 昨年のひどい時が76キロ、現在67(もうすぐ66キロ台)ですもんね。

 あとはウエストですよ、ウエスト。胸板、肩のあたりは筋肉で少し盛り上がりまして、鏡で見てもいい感じです。

 椅子の部分が回転しますので、ウエスト運動もできるようです。

 

 


ワンダーコア2 使い方DVD

 

 あと、新刊の話題など。「ぬるぬる棒でかき混ぜて」

 我が妻との闘争シリーズの五分の一の売上ですが(笑)これは届くところに届いてくれればそれだけで嬉しいです。

 待望のレビューも付きました。なかなかね、濃い話ですから、女性にアピールしにくい小説なのですが、レビューが付いた事で、次の作品の意欲に繋がりました。私は本当に恵まれている。ありがとうございます。

 

新刊『ぬるぬる棒でかき混ぜて』完成!

『令和』の元号が発表されためでたい日に、新しい作品が完成しましたですよ。

 題して『ぬるぬる棒でかき混ぜて』であります。

 

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 これは1920年代に流行したプロレタリア文学、いわゆる労働に関する文学で、自分ではジャンルカバーのつもりで挑みました。

 昔の労働環境はそれはもう酷いもんで、人の命なんぞ虫けらのように扱われていたこともしばしば。

 小川未明の『砂糖より甘い煙草』という短編を読み、カルチャーショックを受けました。化学工場に勤める主人公の身体が、薬品に蝕まれ、タバコの味が変わってくる。という内容でした。

 こりゃ命を張ったギャグだな。悲壮感も極まると、滑稽に映る。不謹慎ですが読み進めながらこの作品の構想が固まりました。

 自分の中では正当なプロレタリア文学(爆笑の)カバーです。

 新しいスタイル、新しいモード、意識的に文体を変え、新たな表現方法の一部をつかめた実感があります。

 完成して読み返してみれば、思春期に流行ったニューウェーブ作品、筒井作品的なブラックギャグ、繰り返しギャグなど、多感な頃に吸収したものの再構築だなぁ、と自分の作品を読みながら微笑んでしまいました。

 まだ極めてはおりませんが(このやり方を進化させていこうと思います)、一人でも「これ最高」と言ってもらえれば、自分の中では成功のプロジェクトです。

 そして今回も願わくば、感想の方をアマゾンレビューしていただければ、作者は飛び上がって喜びます。お代は100円! 好評発売中です。どうぞよろしく!

 

 

彩流社のアンソロジーを揃えた

 彩流社のアンソロジーを揃えたのである。

 

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 昔から私は探偵小説読みで、中学から乱歩、横溝、夢野久作を読みふけり、現在に至っている。

 純文学など見向きもしてこなかった半生であった。

 それは何故か、国語の授業が総じて面白くなかったから、ということと、文学作品というものは『難しい語句や言い回し』『繊細な感情の機微』『どんでん返しやオチとは無縁の退屈なもの』という固定観念に縛られていたからである。

 それが何故ここにきて、この彩流社のアンソロジーを揃え出したか、取っ掛かりは装丁・装画のYOUCHANさんからであった。

 YOUCHANさんは私が楽しみにしている盛林堂さんの探偵小説復刻シリーズで、森下雨村や、大阪圭吉の装丁を手がけられて、お洒落でモダンな画風にすっかり魅了されてしまったのだ。

 そこで本屋で見た彩流社のアンソロジー佐藤春夫を見かけたのだ。佐藤春夫といえば江戸川乱歩との縁も深く、昭和の探偵小説を語る際には出てくる名前である。

 

奇妙な小話 佐藤春夫 ノンシャラン幻想集
 

 この一冊でこのシリーズのことを気に入ってしまったのだ。

 まず字が大きく読みやすい。いいフォントを使っているのだろう。心地良く読めるのだ。そして所有欲を満たしてくれる高級感漂う本の装丁。

 私の偏見はこのシリーズによって、だいぶ崩れ、楽しみながら読み進めている。

 シリーズの一冊、堀辰雄などどうだ。

 

羽ばたき 堀辰雄 初期ファンタジー傑作集

羽ばたき 堀辰雄 初期ファンタジー傑作集

 

『土曜日』という短編が掲載されているのだが、当時、芥川龍之介と恋仲、という風聞のあった女性に憧憬を抱き、買い物のテイで動向を伺う、という。

「今でいうストーカーじゃん」

 という内容なのであった。そういうのを書いてもいいんだ。という驚きと、前述の私の文学に対する固定観念とは真逆の『人間のダメー』な部分が描かれていた。

 時折私がここで書き散らす、ジムでの『まゆゆ似』の彼女の、乗っている車を物陰から特定したり、なんとか会話できぬものか、と妄想のスパイラルを描く私の嗜好にマッチする部分があったのだ。

 で、このシリーズを読みながら『文学作品、どんでん返しとは無縁だけど、面白いじゃん』と思ったのが今年の収穫であった。

 このシリーズと『モダン都市文学』シリーズの『プロレタリア文学』との出会いが、今年一番の衝撃であった。

 

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 余りに衝撃的すぎて、一本、短編を製作中である。現在も製作中。早く完成させて、皆さんに読んでもらいたい、という気持ちが高まっている。

 それについては近日公開、乞うご期待。の一言で結んでおこう。

本とジムの話など。

 昨日は本が届いた。木々高太郎のジュヴナイル『スペクトルD線』である。

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 六冊の『木々高太郎全集』を持ち安心していたのだが、目次を見ても『スペクトルD線』は収録されていない。慌てて注文した次第である。

@jigsawan  古本屋 ジグソーハウスさんで通販をしているので、同好の士よ、急がれよ。

 さて、およそ十日ぶりに夜のジムへいったのだが、私はビビリまくっていた。取り巻きや、男性ファンから絡まれたらどうしよう、と必要以上に警戒していたのである。

 ジムに入ると『まゆゆ似』の彼女の姿は無かった。

 肩透かし、というか残念というか、辞めてしまったのかもしれない、とその時に思った。

 しかし根性を出して挨拶をしたのだ。悔いはないではないか。

 私は清々しい気分でスタジオに入った。後五分でダンスの時間である。

 ストレッチをしていると、鏡に映るあの見慣れたウェアの彼女が入り口から入ってくる。

 来た。どうする? 私の心臓は高鳴った。だがもう会話の手持ちが無い。前回で全弾打ち尽くしたのだ。

 勇気を出して振り返り彼女の方を見る。彼女もこっちを見ていた。目が合う。困る。

 そして彼女はこっちに向かって歩いてきた。無理、もう目を合わせていられない。根性無しを笑ってくれろ。

 私はわざとらしく、下を向いた。すると彼女は一人置いて、私の右斜め前にスタンバった。他にもスペースがあるというのに。

 その距離1メートル。

 話をするにしても間に一人いるのが邪魔だ。ダンス中、向こうが振り返り、二度ほど目が合った。

 もう私は彼女と同じ時間、同じダンスでいられるだけで十分ドキドキするし、ときめいていた。

 結局プログラム中は、何の進展も無かった。

 その後、ジムから出るとき、同時になったのだ。向こうはこっちを認識していたのだが、私は彼女より先に彼女に気付き、見えていないふりをしてしまった。

 先に彼女がジムから出る。ジムから出てすぐの駐車場に彼女は車を停めていた。彼女は乗ってすぐエンジンをかけた。

 私は知らぬふりをしながら駐車場の奥に歩いた。向こうの運転席からは、横切る私の姿が見えていたはずである。

 そして私もこの前買ったアクアのエンジンを起動し、ジムの入り口の方へ車を移動させた。二分くらい経過しているのに、彼女はスモールランプを点けてまだそこにいるではないか。私は彼女の車を特定していた。

 彼女は奥から『私が何に乗っているか』興味があったのだろうか?

 向こうのフロントガラスを覗き込みながら前を横切ることなんて出来ずに、知らぬ風を装い通り過ぎてしまった。

 前のオンボロ軽四ではなくピカピカのアクアで良かった、という話だ。

『嫌いならエイジちゃんの近くに来んだろう。気味悪かったら女性は絶対に距離取るって。もう一回挨拶してみな』

 とは同僚のM君の弁である。

 それでもまた話しかけた時、俯かれて視線が宙に彷徨うあの状況になるのが、たまらなく辛いので、今日も1ミリも進展は無かったのである。

津山旅行7

 津山で万歩書店二軒を攻略した我々は、南に移動し、岡山にある万歩書店の本店に進路を取った。

 山陽と山陰、文字通り山陰はローカルだ。店の数も少ない。

 だが、ここのところの戦績はどうだ? 結城昌治の角川文庫を見つけたのも山陰の古本屋さん。何年も見つからなかったセガサターンのプラドルシリーズ最後の一枚も、津山の店頭に眠っていた。

 店は少ないかもしれないが、思わぬお宝に遭遇できたのは、みな山陰である。

 津山城松江城も下から見上げただけだったが米子城も良かった。最近の私は山陰イコール良いイメージである。

 万歩書店本店は、さすがに広い。ここのところ攻略してきたブックオフでは全滅であった絶滅危惧種日本推理作家協会賞受賞作全集も、欠けを数冊買うことができた。

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 あとコツコツと集めている扶桑社の昭和ミステリ秘宝も、手頃な値段で買えてホクホク顔。

 あとは時間の許す限りiPhoneで『ブックオフ』を検索し、目一杯攻略する。

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 前から欲しかった『レキシ』のアルバム『レキミ』を見つけたので発作買い。

 

レキミ

レキミ

 

 このアルバムで特に聴いて欲しいのが、訳のわからない涙が聴きながら流れ落ちる(笑)『墾田永年私財法』であろう。ちょっと『いい曲風』になっているのが良い。

 そして昨年からイチオシのアイドル、吉川友ちゃんのライブDVDとも出会ってしまったので発作買い。

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 吉川友ちゃんは可愛いし、声が良い。歌のうまさに私は惚れ込んでしまったのだ。これからも定期的に宣伝していく。いつかライブにも行きたい。

 


吉川友『URAHARAテンプテーション』(You Kikkawa[URAHARA Temptation]) (MV)

 

 クタクタになるまで中古屋巡り。最後は金平と仲良くうどん。

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呉「五年後どうなってるかな。長らく旅行すれば中古屋巡りしてきたけど」

金平「ますますネット通販に駆逐されていくやろな」

呉「ブックオフ以外の店が無いもんな」

金平「この10年、絶妙のタイミングで地方の中古ショップ、巡れたかもしれんな」

呉「惜しむらくは、大部分は撮影したけど、全部の店を写真に撮って無いことだな」

金平「いつまでも『ある』と思うもんな。これからは夜でも店の写真残していこう」

 内容的には収穫物も含め、とても充実した旅となった。特に移動中話をして形がまとまった私の新作、爆笑プロレタリア文学の『The bottom of a pot(なべぞこ)』を書く意欲が高まったのが大きかった。

 現在も新作をこのブログと並行して書いている。完成したら短編一本収録のキンドル本として出そうと思っている。

 アンリミに入って利用してみて思ったことは、短編集として沢山収録するよりも、読み手はサクッと面白い話を短時間で読みたい、という層が多いのではないか? ということ。

 なので『シングル』のような感覚で新作は出そうと思っている。

 超面白い、ものになると思う。設計図通りに完成したら、の話だが。

 そして明日は月曜日『まゆゆ似』の彼女のいる時間帯のジムに、いよいよ行ってみようと思う。絡まれたら絡まれた、でいい、と思っている。

『妄想ジム日記』として、こちらも本にさせてもらおう。辛い思いをするのだ。それを本にしてもバチは当たるまい。変な恋心の行方を気にしてくださる読者さんが意外と多い、ということも励みになっている。

 ここでの活動報告も含め、これからも皆様のご支援を賜りたい。

※(オマケ、ボツ表紙案)

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津山旅行6

 本日、会社が早めに終わり、ジムの用意をカバンに詰めていたのに、バックシートに眠らせたままの家路。

 行こうか、行くまいか、悩みに悩んで、結局アクセルを踏み込んでジムを通り過ぎてしまった。

まゆゆ』似の彼女に勇気を振り絞って挨拶をしたにも関わらず、絶句され視線は宙を舞い、ほとんど会話にならなかったからである。

 頭の中でシュミレートしてみる。ジムに入る、目の前にベンチが数台置いてあり、簡易休憩所になっている。

 そこに腰掛けて、Apple WatchiPhoneBluetoothヘッドフォンのセッティングをするのが常なのだ。

 まゆゆ似の彼女は噂では40歳、見た目、どう見たって30歳にしか見えないのだが。

 そのまゆゆ似の彼女がジムで時折話す、おそらく同年代であろうオバハン連中。何で可愛い人の取り巻きは、怪獣みたいな人が多いのであろうか。

「ちょっとあなた、いい?」

 ピグモンが私に話しかけてくる。

 オバハン連中の向こうには、まゆゆ似の彼女が泣きそうな顔をして俯いて座っている。

「あなた、彼女に話しかけたみたいね」

 ペスターも割り込んできた。

「一体どういうつもりなのよ、あなたジムにナンパ目的で来てるの?」

 ザラブ星人は怒りもあらわである。

「通路で鉢合わせしたから挨拶したまでですよ。っていうか私の挨拶にあんた達関係ないでしょ?」

 私も必死になって応戦する。

「怖がって傷ついてるのよ、彼女。どうしてくれるのよ。ストーカーみたいなオッさんにまとわりつかれたら、私たちだって泣くわよ」

 ガマクジラが平然と言う。

「あなたが怖くてジム辞める、まで言ったのよ彼女」

 ピグモンの唇は厚い。

「あの子に謝りなさいよ!」

 ペスターは小顔だが、作りが残念。

「なんで謝らなくちゃいけないんだ。綺麗な女性と鉢合わせしたら、挨拶するのが礼儀だろ?」

「きしょい、このオッサン超きしょい」

 ガマクジラの舌が飛び出す。

「オッサン、あの子と対等に話できるつもりに思ってたみたい。あの子超モテるのよ。アンタなんかお呼びじゃないわ」

 ザラブ星人の目は小さい。

 と、こんな風に集中砲火を浴びたら、二度と立ち直れないから、自然とジムに向かう足が遠のいてしまうのだ。

 もう何日か、事態が沈静化するのを待とう。オバハン連中なら囲まれても怖くはないが、もし彼女の親衛隊に絡まれたりしたら、格好が悪い。

 ※

 津山を抜け、岡山のパラダイス、万歩書店本店に夕方無事に到着した私と相棒の金平なのであった(ここまで書いて睡魔が)(笑)。

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〜続く〜

津山旅行5

 津山の万歩書店二軒を攻略し、時計を見れば十四時半。

呉「流石に腹減ったな」

金平「腹も減ったし、石段登って足痛いし、小雨の中の城めぐりは寒いし、ヘルニアに」

呉「わかりました、わかりました。すぐラーメン屋さんに入ります!」

 告知なしの津山城めぐりである。サプライズのつもりだったのだが、相棒は一向に城好きにはなってくれない。

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 暖房の効いた店内で、ようやくリラックス。

金平「今回の表紙、時間的にシビアやったぞ」

呉「バッチグーやったわ。ここはゴチさせて頂きます、金平しぇんしぇい」

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 二人で仲良くチャーハンセットを注文す。

 今回の我が妻との闘争2019〜ありがとラッキーちゃん〜。表紙は相棒の金平作なのだが、文字原稿は送っていないのだ。だからどんな内容の本なのか金平は知らないままイラストを描く。

『今回のタイトル〜ありがとラッキーちゃん〜で行くからシクヨロ』

 依頼はこれだけである。読んでくださった方は内容と照らし合わせてどのようにお感じであろうか。

 私は仕上がってきたトビラを見て『まぁドンピシャな絵を持ってくること』と感嘆した。

 即オッケーである。

 寒さと空きっ腹にラーメンが染み渡る。替え玉が食べたくて呼び鈴ボタンの数ミリ前で指をプルプルさせながら耐える。せっかく順調なダイエット、ここで替え玉をイッたら台無しだ。

 昨年の10月に74キロ、現在67キロである。以前の私なら替え玉二回はイッていただろう。

 やはりダイエットは地道な積み重ねなのだ。

 ラーメン店を出て津山のブックオフへ。ここは小さめの店舗で、今集めている日本推理作家協会賞受賞作全集は一冊もおいてはいなかった。

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 まだ15時過ぎだ。このまま姫路に帰るのは勿体無い。岡山の万歩書店本店を急遽ルートに組み込む。

 節約のため、高速を使わず下道を通って一路岡山市街へ。

 その道中、我々は二度目の城に遭遇した。

呉「何じゃあれは。ストーップ!」

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 かつてのドライブインの廃墟であった。城門には北斗の拳の敵のモヒカンの手下みたいな連中が吹き付けたであろうスプレーの落書きでデコレートされていた。

 いい味を出している。一周回って貴重な建物なのではないか? どこかの社長さん、改装して喫茶店なんてどうです?(すんごい山あいだったけど)

〜続く〜